3話 思い出は湯気と共に
第一章 散歩のお邪魔虫
時間が進む速さは僕が考えるより遥かに早い。
気づけばもう14時を回ろうとしていた。
「お腹空きましたね〜。近くで何か食べて行きますか?」
「おい、何のためにこんな量の材料を買ったと思ってるんだ。今から家に帰ってたこ焼きを作るんだろ?」
「それは夜の話ですよ〜。たこ焼きパーティーなんで普通昼からやったりしませんよ。先輩、友達とか呼んでお泊まりで遊んだことないんですか?」
え、そうなのか?
僕はこの2年、確かにお泊まりなどしてこなかった。
学校では上手く立ち回ってある程度の地位を築いていたと思っていたのだが。まさかこれは僕の思い違いだったのか?
そんなことを頭で考え内心焦ってはいたものの、僕は表情筋を全く使わずとも喋れるロボットか何かのように答えた
「全然お泊まりとかするけど、自分家ではやらないんだよね。大抵は他の誰かの家に泊まるからさ」
何をこんな奴に対して焦っているんだろうか。
僕は心底恥ずかしく、そして腹が立った。
「へーーそうですか」
「なんだその目は。僕を疑っているのか?」
「いえ、ただ納得したくないだけです」
なんだこいつは。
「それよりも…ほら先輩!ラーメンの屋台ですよ!」
ラーメン亞里。
それはこの中央公園にたまに来ている屋台ラーメンである。味は確かなものであり、かの有名な遊抽罵の鈴瑠があまりの美味しさに天に召されかけたほどだ。
「あれ?お前金ないよな」
「そうですよ〜!なのでここは先輩の奢りで!」
「まじでか…」
「まじです」
僕の金がなくなっていく。
ああバイト増やさなきゃな。
そんなことを考えながらしょうがなく僕はこいつにラーメンを奢ってやった。
まあ、これくらいは多めに見てやってもいい。
「大将!チャーシュー麺一丁!」
「じゃあ僕は普通のラーメンで」
ラーメンが出るまでの時間、最初に口を開けたのは鼎の方だった。
「先輩、昔の思い出とか覚えてますか?例えば最初に会った時とか」
「ああ」
とは言ってもなんとなくではっきり覚えているわけではない。
「確か、僕が5歳の時だっけか?」
「そうです!まぁ私に3歳の時の記憶なんてないんですけど」
「お前は覚えてないのかよ」
なんだこいつは。
「私は気づいたら先輩の家によくた気がします」
僕とこいつの母親は仲がいい。
歳が近いというのもあるが、そもそも家が隣同士なのだ。
僕が生まれた時は、お互いの家でパーティーまでしたそうだ。
そうして鼎が生まれてからは、よく僕の家に遊びにきて相手をしていた。
こうやって思い出すと小さい頃はただ可愛かっただけの妹のようなものだなと思う。
今となっては厄介な僕のお邪魔虫だ。
「どうかしましたか?先輩」
「いや、昔はお前も可愛かったんだろうなと思ってな」
「今だって十分可愛いでしょうが」
そんな適当な会話を交わしているうちに、ラーメンが出来上がったみたいだ。
目の前に置かれるただのラーメン。
隣の奴には、さらに花形に盛られた豪華なチャーシュー麺だ。
「そんなに食べて腹いっぱいならないのか?」
「大丈夫ですよ。だって今、私は成長期ですから」
言い訳になってない気がするが、まあいいだろう。
本人が大丈夫と言っているんだ。
この心配はこいつに対してではなく、大量に買ったたこ焼きの具材に対しての心配だ。
その心配を一旦頭の隅に置き、目の前のラーメンを一口啜った。
「うん、美味しい」




