第95話 あの日の事件
「アレン。お前には、話しておかなくてはいけないと思ってな」
「どうしたんですか。ベルダ先生……何があるんですか」
「今回行われる交流大会だが、この行事は、ここ数年間行われていなかった。
――なぜだか、分かるか?」
「いえ……僕には」
「数年前、ある事件があったんだ」
「事件……?」
「アレン。君がここに来た時、皆が君を歓迎しなかった理由でもある」
「……」
「数年前、この交流大会で行方不明者が出た。
公に伝えられたのは、それだけだ。
だが、本当は――」
ベルダ先生は、一度言葉を切った。
「その行方不明者によって、ここの生徒は殺され、そして逃亡した」
「……!」
「そして、その生徒は君とまったく同じような力を持っていた。
さらに言えば、その子も君と同じ転入生だった」
「僕と……同じ力……」
「私も、直接見たわけではない。
私は、その事件の後にここの教師になったからな」
静かに語られる言葉が、胸に重くのしかかる。
「事件以降、信用を失った学園の生徒数は激減した。
だが、なぜか二年前、急にこの学校の評価が上がり、生徒数は十倍以上になった」
「……」
「そして今年、あの悲劇を生んだ行事を、校長が再び行うと言い出したんだ」
「……そんなことが……」
「アレン君を選抜した理由は、一つだ」
ベルダ先生は、真っ直ぐにアレンを見る。
「守ってくれ。
もし何かが起きた時、またあの事件が再来した時――
止められるのは、恐らくアレン君だけだ」
一瞬の沈黙。
「そして、気をつけてくれ。
この交流大会で、確実に何かが起こる気がする」
アレンは戸惑いながらも、ゆっくりとうなずいた。
「……分かりました。
今度こそ、救ってみせます。
そう、決心しましたから」
「ありがとう。頼む」
ベルダ先生はそう言い、部屋を後にした。
だが、その背中から――
とてつもない怒りと憎悪を感じた気がした。
⸻
三日後
交流大会にて、生徒の一人が暴走。
さらに、何者かが侵入。
それを追った者のうち、
行方不明者一名、死亡者一名。
不法侵入者は、姿を消していた。
⸻
三日前
――明後日が、交流大会か。
ベルダ先生の言葉が、頭をよぎる。
不安は尽きない。だが――
「……みんなを、必ず守ってみせる」
アレンはそう強く思い、眠りに落ちた。




