第69話 再びの絶望。
「アレン。あいつ、行けるんじゃないか!?」
「ふふふ。まぁ、ここからですよ。トラシオンの片割れくん。」
「ここから?」
「結末は、変わらないのです。」
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――勝てる。
そう思った、その瞬間。
声が、聞こえた。
「「「アレン!!!」」」
三人の声。
反射的に、後ろを振り向く。
魔王から、目を離してしまった。
その一瞬の油断が、命取りだった。
「友情とは弱さだ。そんなものがあるから、負けるのだよ。」
魔王の拳が、アレンを殴り飛ばす。
今までとは比にならないほどの重み。
体が、動かない。
「なぁアレン。お前を殺せば、こいつらからどんな悲鳴が聞けるのかなぁ。」
「……なんだ、人間。そこを退け。」
「できない。」
目の前に、微かに見える人影。
――カルロス先生。
「お前は、死ぬことしか出来ない。」
「分かっている。だが――」
カルロスは叫ぶ。
「誰かを守るために、命を賭けてここまで来た生徒を!
子供の未来を奪わせる訳には行かない!!」
「くだらんな。」
その横に、シュウとマリカも並ぶ。
「人間は、バカだ。死ぬがいい。」
魔王の拳が、振り下ろされる。
――死なせるわけ、ねぇだろ。
俺の親友を。
恩師を。
俺の居場所を。
無くせるわけが、ない。
アレンは立ち上がり、魔王の拳を左手で受け止める。
そのまま、右腕で魔王を吹き飛ばした。
「……ばか。来たら、危ないだろ。」
息を荒げながら、そう言う。
「アレンを、ひとりにはできなかった。」
「そうだよ。バカアレン。」
……カルロス先生が、動かない。
「せん……せい?」
「アレン。お前は遅い。もうすでに、その男は死んでいる。」
「え……」
カルロスの体が、崩れ落ちる。
「……なん、で。」
守れなかった。
守るって、言ったのに。
なんで。
なんで、なんで、なんで、なんで。
僕は弱い。
このままじゃ、守れない。
どうすればいい。
どうしたらいい。
強くならなきゃいけない。
どうすれば、強くなれる。
その瞬間。
――アレンの中で、何かが壊れた。
リミッターが、外れる。
そうだ。
魔王。
――お前を、殺さなきゃいけない。
お前を殺せば、全部終わる。
なら、どうなっても勝つ。
死んだとしても。
「……コロス……コロ……ス……」
「何を言っている。お前では勝てな――」
言葉を言い切る前に、魔王は吹き飛ばされていた。
「ッ!!!? 何をした!?」
「……コロ……ス……」
「クッ……! お前は俺に支配されるべき人間だ!!!」
「――不知火!!!」
魔王が叫ぶと同時に、前方に巨大な火柱が立ち上る。
アレンには、効かない。
いや――効いている。
だが、本人が痛みを自覚していなかった。
初めて浮かぶ、魔王の驚愕の表情。
どちらが化け物なのか、分からないほどに。
アレンが、魔王へと手を向ける。
「なんだ!? なぜ俺に手を向ける!!?」
突如、無数の火の玉が現れる。
「ッ!? これは……俺の《球電》!!?」
驚きつつ、魔王も同じ技を放つ。
「お前がそれを出来たところで! 相殺すればいいだけの話だ!!!」
――だが、遅かった。
技を放った時にはすでに、
魔王の足元から、火柱が噴き上がっていた。
「グァァァァァァァ!!」
魔王は悶え苦しむ。
火が消えると、魔王は胸を押さえ、膝をついた。
「……私は、貴様に勝てないかもしれない。今は、な……」
荒い息のまま、魔王は嗤う。
「だが、お前の友達は、どうした?」
アレンは答えず、攻撃を続ける。
魔王は避けながら、言葉を投げる。
「この数千℃の熱に、人間が耐え切れると思うか?」
――その言葉に。
アレンの動きが、ほんの一瞬、止まった。
視界には、映らない。
だが。
もう、シュウとマリカは、この世を去っていた。
「私は逃げる。貴様が動きを止めるまでな。」
魔王は嗤う。
「もうすでに死んでいる貴様の友達と、恩師を……
意思もないまま、壊し続けるがいい。」
高い笑い声を残し、魔王は闇の中へと消えた。
――アレンの暴走は、三日間続いた。
半径二キロ。
そこには、何も残っていなかった。
残ったのは。
後悔と、絶望だけ。
アレンは、立ったまま気絶していた。
彼が目を覚ました時。
この光景を、どう受け止めるのか――。




