第15話 漢の友情
「……コウキか。今は少し、一人にさせてくれ」
扉の向こうから、かすれた声が返ってきた。
「サナが来てる。お前に会いたいってさ。話したいことがあるらしい」
「……わかった。向かうよ」
そう言って、アレンは扉を開けた。
「嘘だよ」
コウキはあっさりと言い放ち、アレンの腕を掴んだ。
「アレン。ちょっと付き合え」
「いや、でも僕は——」
「ダチだろ。少しくらい、俺の話聞いてくれ」
アレンは俯いたまま、しばらく黙っていたが……小さく頷いた。
⸻
「ここだ」
連れてこられたのは、学園の敷地内ではあるが、校舎から少し離れた場所だった。
植物が生い茂り、人目につきにくい、静かな空間。
「俺がいつもサボってる場所なんだ」
コウキは少し気まずそうに笑い、そして真剣な表情に変わった。
「なぁ、アレン……ごめん」
「え……?」
「俺さ。アレンより何もできてなかったのに、
本当に謝るべきだったのは俺だったのにさ……」
「コウキ、それは違——」
「違くねぇ」
コウキは遮るように言った。
「俺、自分のこと買い被りすぎてた。
でもな……あの時のアレンを見て、正直思ったんだ」
少し間を置いて。
「すげぇ、カッコいいって」
「……でも僕は、守れなかった」
「アレン」
コウキはまっすぐにアレンを見た。
「確かに、俺たちは守れなかった。
でもさ……心は、守れたと思わねぇか?」
「……心?」
「死ぬ時ってすげぇ怖いと思う。なのにさ、みんな最後に悔しそうだったか? 絶望してたか?」
アレンは思い出す。
「……いや」
「だろ。みんな、笑ってた」
「……うん」
「だからさ」
コウキは少し照れたように視線を逸らし、拳を突き出した。
「俺、アレンのこと人として好きだ。
一緒に成長させてくれよ」
その拳を見た瞬間、胸の奥が、少しだけ軽くなった気がした。
アレンも、そっと拳を突き出す。
二つの拳が、静かに触れ合った。
⸻
「へぇ〜。コウキにも女々しいところ、あるんだね」
「は?」
背後から聞こえた声に、コウキが振り返る。
「アイネ!? なんでここにいんだよ!」
「ずっと付けてたの。
“漢の友情”ってやつ、見てみたくてさ」
「……チッ。なんだこいつ」
「一段落ついたみたいだし。
ねぇアレン、もう大丈夫そう?」
「……うん。少し、元気になったよ」
「お〜、やるじゃんコウキ。良かった良かった。
いや〜、熱い話聞かせてもらったな〜」
コウキの顔が、みるみる赤くなる。
「黙れクソが!! ぶちのめすぞ!!」
そう叫びながら、コウキはアイネを追いかけた。
「怖〜い」
アイネはそう言いながら、楽しそうに逃げ回る。
その光景を見ているうちに、気づけばアレンは笑っていた。
「見てコウキ。アレン、初めて笑ったよ」
「……んぁ?」
久しぶりだった。
こんなふうに、何も考えず笑える日常が。
——こんな時間が、いつまでも続けばいい。
アレンは、そう願っていた。




