第14話 折れた心
「ねぇコウキ〜。アレン、今日も学校来ないね。
やっぱり……あの日のこと、気にしてるのかな〜」
教室の片隅で、アイネが小声で言った。
それに対して、コウキは露骨に顔をしかめる。
「っせぇ。近づくな、アイネ」
「でもさ。アレンは頑張ったよ。
どう転んでも、全員が生き残れる道なんて……無かったと思う」
「……」
コウキは何も言わず、視線を逸らした。
「それに……あの子、サナだって——」
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「サナ。本当に……すまなかった」
アレンは拳を握りしめ、深く頭を下げた。
「頭、上げてよ」
セナは静かに言い、少し困ったように笑った。
「すごく悲しいよ。正直、今も胸は痛い。でもね……不思議と、心は少しスッキリしてるの」
アレンは顔を上げる。
「アレンくんがいなかったら、私は彼に会えなかった。
話もできなかった。ちゃんと、気持ちを伝えることも……」
サナはそっとアレンの手を取った。
「でも、アレンくんがその未来を変えてくれたの」
「……」
「だからね。アレンくん、ありがとう」
その笑顔は、最初に会った時とはまるで違っていた。
悲しみを抱えながらも、前を向いている、清々しい笑顔だった。
——だが、その瞬間。
アレンの頭が、ぐらりと揺れた。
《お前は守れなかった。また》
《誰も守れない》
《お前は、この先も——大切な人を守れない》
どこからともなく、そんな声が響いた気がした。
アレンは何も言えず、その場を去った。
そしてその日から、自分の部屋に閉じこもるようになった。
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「おーい、みんな〜。授業始めるぞ〜……アレンは今日も...か」
ベルダ先生が呟くと、教室のあちこちから小さな声が漏れる。
「やっぱ裏で何かやってんじゃねぇの」
「怪しいよな」
「お前らもそう思わね?」
「どうでもいいわ」
「……僕は興味あるよ。彼に」
「おい、静かにしろ」
ベルダ先生が注意するより早く、
コウキが勢いよく立ち上がり、机を叩いた。
「おめぇら、うるせぇぞ」
教室が静まる。
「人がいねぇところで、勝手なこと言ってんじゃねぇ」
「いや、お前だって——」
「俺は見た」
コウキは睨みつけるように言った。
「誰かのために動くアレンを。
勇気を、希望を与えるアレンをだ」
「……」
「なんでアレンが来てねぇかも分かんねぇのに、
適当なこと言ってんじゃねぇよ!」
「コウキ……」
「悪ぃな、先生。俺、アレンのとこ行くわ」
「ちょっと〜、私も——」
「来んな。これは漢の話だ」
そう言い残し、コウキは教室を出ていった。
ベルダ先生は、生徒たちを静かに見渡す。
「……この学園で、過去に何があったかは分かっている。
だが、それはアレンを傷つけていい理由にはならない」
「今後の発言には、気をつけろ」
その声には、重みがあった。
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アレンの部屋の前で、コウキは立ち止まる。
「おい、アレン」
少しだけ間を置いて、ドアを叩いた。
「いるんだろ。……開けろ」




