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第11話 火蓋は切られた。

海底の空気が、低く震えていた。

青く澄んでいるはずの海水は濁り、無数の黒い影が蠢いている。


アレンたちは、深海の底を進んでいた。

肌に突き刺さるはずの冷たさは、もはや感じない。


胸の奥で燃え続けるのは、抑えきれない怒りだけだった。


「……ここか」


岩の奥。

巨大な珊瑚で形作られた宮殿の中央に、魚人の王が玉座に座り、不敵な笑みを浮かべていた。

周囲には数十体の魚人たちが槍を構え、円を描くように取り囲んでいる。


「貴様……どうやってここまで来た?」


王は薄く笑い、肩をすくめる。


「まあいい。お前ら、やれ」


号令と同時に、水流を裂いて魚人の群れが襲いかかる。


その瞬間――

コウキが、一歩前に出た。


「……暴れ足りねぇんだよな」


低く吐き捨てる声。

拳を握り、歯を食いしばる。


「胸糞悪ぃもんばっか見せやがって……。来いよ。てめぇらまとめて――ぶちのめす」


【ネビュラ解放!!!】


次の瞬間、コウキは魚人の群れへ突っ込んだ。


【雷纏・閃撃】


拳に宿った光が、水を裂く。

正面から槍を叩き砕き、反動ごと相手の身体を吹き飛ばす。


「ぐっ……!」


【閃撃・刹!!】


背後から迫った魚人の喉元へ、肘を叩き込む。

鈍い衝撃音と共に泡が舞う。


「チンタラしてんじゃねぇ!」


【閃撃・玉!!】


振り抜いた拳が、三体まとめて壁へと叩きつけた。

水の抵抗など意にも介さず、破壊だけが連鎖していく。


その背を見て、アレンは一歩踏み出す。


「コウキ、俺も――」


振り向きもせず、怒鳴り声が飛ぶ。


「来んな、ボケ!」


魚人を殴り飛ばしながら、吐き捨てる。


「倒すんだろ、アイツ? 譲ってやる。さっさと行け!」


一瞬、アレンは目を見開き――

すぐに前を向いた。


「……悪い」


アレンは魚人の王へと歩き出す。

背後では、コウキの怒号と衝撃音が絶え間なく響いていた。


剣を構える。

黒い魔力が剣身を包み、紅い雷のような軌跡を描く。


「ほぉ……私を倒そうというのか。来るがいい」


「黙れ」


次の瞬間――

剣と槍が激突し、爆発にも似た衝撃が海底を揺らした。


「お前は……やっちゃいけねぇことを、やりすぎたんだ!」


王の身体が吹き飛び、壁に叩きつけられる。

血を吐きながらも、歪んだ笑みを浮かべた。


「ゆ、許してくれ……! あいつらは返す!

それに悪いことなんてしてないだろ? この世界は弱肉強食だ!

人間だって同じだ! 上の者が下を使い潰し、犠牲を払って進歩する!

騙される方が悪いんだよ!!」


その言葉を聞いた瞬間、アレンの瞳が燃え上がった。


「……確かに、この世は弱肉強食だ」


力が溢れ出し、海水が震える。

その声には、怒りと深い悲しみが滲んでいた。


「俺も昔、地を這うように生きてた。

でも――俺を助けてくれた人がいた」


紅の光が、さらに強まる。


「だから今度は、俺が誰かを助ける番なんだ。

“強い奴”が好き勝手していい理由なんて、どこにもねぇ!!」


魔王の力が爆ぜる。

海底が揺れ、岩が砕け、泡と光が舞い上がる。


「騙された方が悪い……?

それが、子供にすることか!

無垢な心を利用して、自分の欲のために弄ぶような奴を――」


剣を王の肩へ突きつけ、

拳を振り抜く。


「俺は、絶対に許さない!!」


王の身体が、凄まじい速度で吹き飛ばされる。

その瞳に、初めて“恐怖”が宿った。


「……ふ、ふはははは!」


狂ったように笑い、両腕を掲げる。


「ならば――あれを出すしかない!」


轟音と共に、海底が裂けた。

暗黒の渦から、巨大な影が這い出してくる。


魚でも、人でもない。

歪んだ鰭、腐食した皮膚、そして――人魚に似た女の顔。


「……まさか……」


「そうだ!」


王は高笑いする。


「あの人魚の母親を素材に、海の生物で改造した最強生物だ!

不老不死の再生能力を持つ、究極の怪物!」


アレンの拳が、震えた。


「……ふざけるな。命を、何だと思ってやがる……」


一歩踏み出し、王を睨み据える。


「お前だけは――絶対に許さない!!」


赤黒い閃光が、海底を切り裂いた。

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