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第6章 灰の里に差した色彩

◇ 朝の道、三人の影が伸びる


森を抜け、白んだ朝日が差し込む山道。

ヴォイド、白羽、スレイ──三人はいつもの距離感で歩いていた。


……はずなのに。


スレイ

「……ん、むに……」


白羽の肩にスレイが寄りかかる。


白羽

「ス、スレイさん!?

 歩きながら寝ないでください……!」


スレイ

「この前のダメージが……まだ……」


スレイは白羽の肩にもたれたまま、くたり。


白羽は困り笑いを浮かべ、

スレイを支えようとするが──


ぱしんッ。


空気が叩きつけられたような音。

スレイの後頭部に“見えない拳”が直撃した。


スレイ

「ぎゃあああああッ!?!?」


白羽

「い、今のは……!?」


ヴォイド

「甘えるな。白羽が潰れる。」


スレイ

「潰れないわよ!?

わたしそこまで重くないからね!?」


ヴォイド

「重い」


スレイ

「重いの!?!?」


白羽は笑う。


白羽

(……このやり取り、懐かしい……

 いつも通りの三人……)


だがその“日常”は、

すぐに異質な影によって揺らぐことになる。



◇ スレイが語る“四災”の噂


昼前、街道沿いで一休みしていると、

山の向こうから来た旅人たちが恐怖を押し殺した声で話していた。


旅人A

「……灰の里、危ないらしいぞ。

 最近夜になると音が消えるって話が出てる。」


旅人B

「音が?」


旅人A

「足音も声もなくなる。

 それで里の中、

向きが分からなくなるんだと。」


旅人B

「……四災《絶界》か。」


旅人A

「たぶんな。

 見たって奴はいるけど、何を見たかは説明できねぇ。」


旅人たちは、こちらに気づくと慌てて話を切った。

まるで“絶界”という言葉を

外に漏らすことさえ恐れているように。


旅人たちが去ると同時に──

白羽とスレイの間に、張りつめた空気が生まれた。


白羽

「……今の噂、四災《絶界》って……

本当にいるんですか?」


スレイは口元を引き結び、

珍しく冗談を挟まずに言った。


スレイ

「“感覚の死”。

 目も耳も肌も、ぜんぶが役立たずになる。

 敵だけじゃない、味方も一緒に巻き込む。

 だから戦場じゃ、出た時点で隊が壊れる。」


白羽の喉が鳴る。


白羽

「……じゃあ、使い手は……?」


スレイは小さく息を吐いた。


スレイ

「そもそも、普通はそんな力を“持ってるだけ”で終わる。

 制御できる奴は――化け物。

 災厄っていうより、歩く事故みたいなものよ。」


白羽

「……さっき言ってた灰の里……

そんなのが近くに……」


スレイ

「近くにいるなら、里はもう……

って普通は思う。

 でも噂が出てるってことは、逆に言えば――

 “いるのに消えてない”。

それが一番不気味。」


白羽

「……」


スレイは、わざと怖がらせるみたいに指を立てた。


スレイ

「聞いた話だとね。

 絶界は“姿”より先に来る。

 まず音が抜けて、 次に匂い。

最後に――

 自分の身体がどこにあるか分からなくなる。」


白羽

「……っ」


スレイ

「で、見たって言う奴はだいたい決まってる。

 『金色だった』とか『紫の目だった』とか――

 そういう断片だけ言って、その先は喋れない。

 喋ろうとすると、なぜか言葉が抜けるんだって。」


白羽

「そんな……」


スレイは明るく笑ってみせる。


スレイ

「まぁ、何が出てきても殴ればなんとかなるけどね!」


白羽

「スレイさん……

 この前に死にかけたの忘れました?」


スレイ

「や、やめて!?

  あれはラスティナが強すぎただけだから!!」


白羽がくすっと笑って空気が少し緩む。


だが──ヴォイドは黙ったまま。


静かに立ち上がり、山の奥を見つめた。


白羽

「……ヴォイドさん?」


スレイも、彼の反応に眉をひそめる。


スレイ

「ねぇ、また何か知ってるんでしょ?」


ヴォイド

「……灰の里へ行く。」


短く、それだけ。


白羽

「……え?」


スレイ

「……なんでよ。

 危ないかもしれないのに……」


ヴォイド

「だから行く。」


白羽とスレイ、同時に息を飲む。


白羽

(……まただ……

 ヴォイドさんの中だけ、何か知ってる……)


ヴォイドは振り返りもせず、歩き始める。


ヴォイド

「行くぞ。」


白羽

「は、はいっ……!」


スレイ

「ったく……

 いつも言葉足りないのよ……」


二人は慌ててつき従い、

灰の里へ向かう山道を踏みしめた。



◇ 道中──“静かすぎる”山


灰の里へ近づくほどに、山の気配が変わっていく。


スレイ

「……ねぇ。

 なんか……鳥、鳴かないわね」


白羽

「動物の気配、ほとんどないです」


スレイ

「絶界の噂通りなら……

 音が消えるって話……」


白羽の指がふるりと震える。


白羽

「……こ、怖い……」


白羽の腕をスレイが軽く引いてやる。


スレイ

「平気よ白羽ちゃん。

 あんたが怖がるとヴォイドさんが

 無言で敵を潰しに行くから。

グチャって 」


白羽

「それは、ちょっと安心かも」


スレイ

「えっ、安心なの!?

 いや分かるけど!」


そんな軽口が続くのも、

ヴォイドが前を歩いているから。


だが、ヴォイドの背中は静かで──

どこか“緊張に似た硬さ”を帯びていた。


白羽

(ヴォイドさん

 絶界って本当は、どんな存在なんですか)


その疑問は、

もうすぐ答えを持って現れる。



◇ 灰の里へ到着


昼前。


森を抜けると、そこに“里”が広がっていた。


外壁もない。

兵士もいない。

ただ整然とした木の家と、遊び回る子供たち。


白羽

「子供がこんなに。

 災厄の近くなのに」


スレイ

「いや、待って白羽ちゃん……

 子供、多すぎない……?」


その時だった。


子供

「ヴォイドおじちゃぁぁぁあん!!!」


スレイ

「お、おじ……っ!?」


スレイが振り向く間もなく──


子供の群れが

どーーーーっとヴォイドに突撃!!


白羽

「わっ……! すごい……!」


子供たち

「ヴォイドおじちゃん来たーーー!!」

「肩に乗せて! 肩に!!」

「ねぇねぇ!今日泊まる!!?」


ヴォイド

「……騒ぐな。落ちる。」


完全に慣れた手つきで、

一人ずつ受け止めながら、

子供たちを頭の上にひょいと乗せていく。


白羽

「す、すごい……からだの上に三人も!!」


スレイ

「いや無理でしょ!? なんで落ちないの!?」


子供

「ねーねー! これ!」


一人の子供が、ぎゅっと握った手を差し出した。

中には、白い花が一輪。


子供

「そとに咲いてた!

 きれいだったから、とってきた!」


白羽

「……わぁ……」


ヴォイドは何も言わず、

その花に一瞬だけ視線を落とした。


ほんの一拍。

それだけだった。


次の瞬間には、もう別の子供を肩から下ろしている。


少女

「しらないお姉ちゃん、変な髪ーー!」


少女がスレイの髪を掴む。


スレイ

「ぎゃあああああ!やめろ!!

 髪引っ張るなぁぁ!!」


少女

「赤いお姉ちゃん、

なんか……弱そう」


スレイの横腹を蹴る。


スレイ

「し、失礼なガキね!

わたし 強いわよ!!?」


白羽は子供に囲まれながら。


白羽

「ふふ、子供ってかわいい!」


スレイ

「あんたは癒されてる場合じゃないってばぁぁ!!」


ヴォイド

「スレイ、泣くな。」


スレイ

「泣いてない!!」


和やかで、温かい。

まるで戦いなんて遠い昔のような、そんな光景。


──だが。


その温度が、一瞬で凍りつく。



◇ “音が……消えた”


突然──世界が“薄膜の下”に沈んだ。


風の揺れも。

焚き火のぱちぱちも。

子供たちの笑い声でさえ──


ひゅう、と吸い込まれたように消える。


世界の音量がゼロになったのではない。

世界そのものが、耳を塞いだようだった。


白羽

「……え? 風の……音が……?」


息の音すら遠い。

自分の心臓の鼓動だけが、やけに響く。


子供

「動かないで……」


隣にいるはずの声が、水底からの囁きに変わる。


スレイ

(この感覚……

 間違いない……絶界……!)


子供たちも異変を感じていた。


泣くでも逃げるでもない。

ただ“一斉に”口を閉じ──


全員が、同じ細道を見つめた。


暗い茂みの奥。

灰の里の中でただひとつ、光が届かない道。


白羽の五感が、そこだけ“世界から排除されている”と告げていた。


白羽

(……気配が……吸われてる……

 音も匂いも……全部……)


背中がぞわりと逆立つ。


スレイ

「っ、やっば……本物だわコレ……

 四災《絶界ぜっかい》……!」


横でただひとり、黒衣の男だけが動かない。


まるで──

“誰が来るか分かっていて、

迎えに行くでも逃げるでもない者の静けさ”。


次の瞬間。


──ひたり。


音のない“足音”が、闇を歪ませた。


影が震え、空気が押し返される。


その中心から、ひとりの少女が現れた。

挿絵(By みてみん)

金色の髪が月に照らされて揺れる。

深い紫の瞳は、光を拒むように沈んでいる。


歩くたび、世界から“五感が一枚剥がれる”ような恐怖。


白羽

(……ひ……怖い……

 絶対……人間じゃ……)


スレイ

(ま、まじで……この子が絶界……!?

威圧感……やば )


少女は、まっすぐ男の前に立つ。


静かに。

淡々と。

けれどその沈黙は、空間を押しつぶすほど重い。


たった一拍の間。


少女の唇がかすかに震え──


その瞬間。


ぱぁぁっ、と笑顔が弾けた。

表情だけが、完全に“子供”になった。


「…………ぱぱ!!」


両手を全力で広げて叫ぶ。


白羽&スレイ

「「……………………は??

  はああぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?」」


絶叫が同時に上がる。


周囲の子供は爆発したように叫びだす。


子供たち

「シオンだー!!」

「シオン!ぱぱきたよーーー!!」

「シオン、行け行け!! 抱っこだー!!」


四災とは。

災厄とは。

いったいどこへ。


満面の笑みでぴょんぴょん跳ねながら、


シオン

「……ぱぱ、だっこ。

だっこして。」


声だけ一オクターブ高い。


ヴォイド

「……シオン。

大人しくしてたか」


シオン

「うん」


シオン

「でも、ぱぱ……ひさびさ。

 抱っこしてくれないと、

シオン……泣く……」


小さく膨れて抗議。

その瞬間だけ静寂が“揺れる”。


完全に、“パパに甘えるただの少女”だった。


白羽はぽかん。


白羽

(……絶界……この子……?

こんなかわいい、子どもが……?)


スレイ

「うそでしょ……

 あの絶界がパパぁ!?」


シオンはヴォイドのコートを掴んで揺らす。


シオン

「ぱぱ……来るのおそい。

 きょう二回もないた……

 はやく……だっこして」


子供たち(大歓声)

「だっこー!!」

「シオンだけずるいー!」

「でもシオンが一番だから仕方ない!」


スレイ

「こ、この村……!!

 どんな教育してんのよぉぉ!!?」



◇  里の外れ──静かな場所で


子供たちの騒ぎから離れた裏庭。

古い井戸と風車の影だけがある、静かな小道。


ヴォイドの膝には、

金髪の少女が当然のように座り込み、

胸元に頬をくっつけている。


白羽は近くでそわそわしながら、

きらきらした目でその様子を見守る。


スレイは深呼吸を何度も繰り返し、

ようやく震えた声で切り出した。


スレイ

「よし、落ち着いたわ……

 じゃあ、説明して。お願い。」


シオンはその言葉も気にせず、

ヴォイドの胸元をつつきながら言った。


スレイ

「ぱぱ……

 この人、シオンのこと睨んでた。

 こわい」


スレイは盛大にこける。


スレイ

「睨んでないわよ!?

 いや確かにテンパってたけど!!」


白羽が慌ててスレイの腕を掴む。


白羽

「お、落ち着いて……!

 相手は子供ですし」


シオンはスレイをちらっと見て、

ぷいっと顔をそむけた。


シオン

「赤いお姉ちゃん……

 さっき、ぱぱの近くにいた。

 そこ、シオンの場所……だめ」


スレイ

「はぁぁ!?

 私、それで嫌われてんの!!?」


白羽

「しょ、しょうがないよ……

 シオンちゃん……

 すごく“ぱぱ大好き”みたいだから……」


シオンは白羽を見ると、

一転ふにゃっと微笑む。


シオン

「白いお姉ちゃんはすき。

 やさしくて、かわいい……」


白羽

「~~っ……!」

(※嬉しくて昇天しそう)


スレイ

「ちょっ……ちょっと待って

 なんであたしだけ!?

 点数差がひどくない!?」


すると突然。


シオンがふと、

ヴォイドの胸元にくっついたまま

小さく眉を寄せた。


シオン

「……ん……痛っ……」


白羽が心配そうに身を乗り出す。


白羽

「だ、大丈夫!?」


シオンはこめかみを押さえ、

呼吸が荒くなる。


ヴォイドは少女の頭を軽く撫でる。


ヴォイド

「……だいじょうぶだ、シオン」


少女は数秒、歯を食いしばって――

ふっと肩の力を抜いた。


シオン

「……もう、なおった。

 ぱぱ、いるから……」


何事もなかったように

またヴォイドへぎゅっと抱きつく。


ふたりの胸に、かすかな不安だけが残った。



そこでようやくヴォイドが口を開いた。


ヴォイド

「……先に言っておく。

 俺とシオンは血は繋がっていない。」


その瞬間、

スレイの肩から一気に力が抜けた。


スレイ

「……っは……はぁぁ……

 な、なんか……安心した……」


白羽も胸を撫でおろしている様子。


スレイは顔を真っ赤にしながら、

やけに早口で言い訳のように続けた。


スレイ

「い、いや深い意味はないのよ!?

 ただ……ほら……なんか……

 いろいろ……心の準備が……無理っていうか……

 とにかく……安心しただけ!!」


少女はそんなスレイの慌てっぷりを

ぽかんと見ている。


シオン

「……赤いお姉ちゃん、

うるさい……」


スレイ

「わ、悪かったわね!!

 あんたが急に“ぱぱぁぁ!”とか言うからでしょ!!」


ヴォイドは無表情のまま淡々と告げた。


ヴォイド

「……シオンはこういう性格だ。」


スレイ

「“こういう性格”で済ませないで!?

 感情のジェットコースターすぎるのよ!」


少女はスレイを気にしなくなったのか、

ヴォイドの胸へぎゅっとしがみつく。


シオン

「ぱぱ……ずっと会いたかった……

シオン置いていくの、やだ……」


白羽の胸がきゅっと温かくなる。


白羽

(シオンちゃん……)


スレイは少し落ち着き、

混乱の中にも優しい声音でぽつり。


スレイ

「拾われた子、なんだね

 あんたも……」


少女は嬉しそうにこくんとうなずく。


シオン

「……うん。

こわいとこでひとりでいたら、

 ぱぱが来てくれた……」


シオン

「だからシオンは……

ぱぱのむすめ。」


白羽

「……素敵」


スレイ

「……そっか」


そして、少女はスレイをじろりと見た。


シオン

「……でも、赤いの

 ぱぱの近くいすぎ、やだ……」


スレイ

「まだ嫌われてるの私!?!?

 あと、赤いのやめろ!!」


白羽があたふたしながら二人の間に立つ。


白羽

「ふ、二人とも

喧嘩しないでぇ」


ヴォイドはため息をひとつつき、短く言った。


ヴォイド

「……説明を続ける。」


混乱・嫉妬・愛しさ・安心の入り混じった空気の中で、

静かに話が始まった。



◇ 静かな裏庭──“四災”の真相


ヴォイドがようやく説明を続けようとすると──

シオンは胸に頬を押しつけたまま、ちらっと顔を上げた。


シオン

「ぱぱ、シオンのこと話すの?

 ……いや。」


ヴォイド

「必要だ。」


シオン

「……むう……

じゃあ、抱っこしたまま。」


ヴォイド

「好きにしろ。」


シオン

「……うん……」


器用に膝に収まり直し、ぎゅっと腕を回す。

完全に固定された。


スレイ

(なんでその体勢で会話できんのよこの子……)


白羽

(……尊死……)


ヴォイドは淡々と、しかし迷わず口を開く。


ヴォイド

「まず、シオンが第四災《絶界ぜっかい》であるのは事実だ。」


ぴん、と空気が張り詰める。


スレイが喉を鳴らす。


スレイ

「……そうなの、ね。」


ヴォイドはシオンの柔らかい髪を一度撫でた。

シオンは気持ちよさそうに目を細める。


ヴォイド

「……“感覚の死”。」


白羽が小さく震える。


白羽

「……かんかく……」


ヴォイド

「五感の一部、または全部を“消す”。

 相手ではなく、“世界”に対して作用する。」


スレイ

「──っ……!」


白羽

「せ、世界に……?」


ヴォイド

「シオンが本気を出すと、

 音、匂い、温度、色、重力……

 その場の“認識”が一時的に死ぬ。」


白羽の息が止まった。


白羽

(さっき……

 風の音が消えたのも……

 子供たちの声が途切れたのも……)


ヴォイドは淡々と続ける。


ヴォイド

「──シオンが泣いた日、

 村がひとつ“音ごと”消えたことがある。」


白羽の顔色が一気に青ざめる。


白羽

「村……ひとつ……?」


シオンはむくりと顔を上げた。


シオン

「……ぱぱが来てくれたから、戻った。

 ぜんぶ。

 だから大丈夫……」


スレイ

「大丈夫じゃないのよ!?」


スレイが叫びかけるのを白羽が慌てて押さえる。


シオンは得意げに胸を張った。


シオン

「シオン、こわかった。

 ひとりで泣いて……

 世界が“きゅっ”てなった……」


シオン

「でも、ぱぱが来て──

『もう大丈夫だ』って……」


白羽

(ヴォイドさんが助けてくれたんだ……)


ヴォイドは短く付け足す。


ヴォイド

「その時だ。

 シオンと出会ったのは。」


シオンは嬉しそうにヴォイドの服をぎゅっと掴む。


シオン

「ぱぱ……抱っこしてくれた。

 あったかくて……

 世界がもどった……」


シオン

「……だから、シオン……

そこから、ぱぱの娘になった……」


白羽の胸がじんわり熱くなる。


ヴォイドはため息を落とす。


ヴォイド

「シオンが泣くと世界が揺れる。

 だから灰の里に預けた。

 お前を守るためだ。」


シオンはむくれながら言う。


シオン

「……シオン、

ぱぱだけいればいい……」


ヴォイド

「無理を言うな」


シオン

「……ぱぱが一緒なら泣かない」


ヴォイド

「……本当か。」


シオン

「ほんと。」


白羽

(……無理。かわいすぎる……)


スレイ

(世界規模で迷惑かけるくせに……

なんでこんな愛嬌が……)


ヴォイドは静かに結論を落とす。


ヴォイド

「──シオンは災厄だが、

 意図して人を傷つけたことは一度もない。」


白羽の顔がふわりと柔らぐ。


スレイも肩の力を抜く。


スレイ

「……ちょっと安心した。

 ていうか、この子の場合は

 本当に“被害者”なのね……」


シオンは即座に訂正する。


シオン

「……シオン、

被害者じゃない。

 ぱぱの娘……」


スレイ

「はいはい、分かったわよ……」


シオンは満足そうに微笑む。


そして、スレイが核心を問う。


スレイ

「世間の評価は?

 四災として、どう噂されてるの?」


ヴォイド

「『沈む里の亡霊』

 『歩くだけで世界が薄くなる子』

 『絶界の娘』色々だ。」


白羽

「それは……怖い……」


スレイ

「聞いてるだけで背筋寒くなるわ……」


シオンはその噂に何の興味も示さず、

ヴォイドの胸に額を乗せたまま目を閉じる。


シオン

「ぱぱ……

シオンねむい……」


ヴォイド

「寝ろ。」


シオン

「うん……」


そして、すうすうと寝息が聞こえてくる。


白羽

「ね、寝た……!?

 この状況で……?」


スレイ

「肝が据わってるとか

そういう問題じゃないわよ……」


ヴォイドは膝の上の小さな身体を片腕で支え直し、

静かに言った。


ヴォイド

「──これが第四災《絶界》。

 シオンの全てだ。」


裏庭には、

災厄の寝息と、

三人の戸惑いだけが静かに残った。



◇ 灰の里──“預かり人”との再会


裏庭の静寂を破ったのは、

乾いた足音だった。


トン、トン──

迷いなく、まっすぐこちらへ向かってくる。


白羽がそわっと肩を震わせる。


スレイ

「……誰?」


茂みを押し分けて現れたのは、

灰色の外套を羽織った長身の男だった。


鋭い目つき。

無造作な短髪。

腰には一本の長ナイフ。


その胸元で、小さな装身具がわずかに揺れた。

七つの短い線と、

それらを囲もうとして、閉じきらずに途切れた輪。

古い金属のそれは、磨かれてもいないのに、

なぜか目に残った。


だが、その顔に浮かぶ表情は険しさではない。


???

「……やっと姿を見せたかよ。」


スレイ

「え? 誰に?」


男の視線はまっすぐ──

膝にシオンを抱いているヴォイドへ。


???

「ずいぶん久しいな、“隊長”。」


白羽

(隊長……?)


ヴォイドは微動だにせず、一度だけ瞬きをした。


ヴォイド

「……お前か。」


その一言に、男はふっと笑みを浮かべた。


謎の男

「しかし……

 あんたが"また"災厄持ちを連れて戻ってくるとはな。」


続けて。


謎の男

「第三災《死祟しづく》の少女なんざ、

普通は近づけやしない。」


白羽がびくりと肩をすくめる。


スレイ

「白羽のこと知ってんの!?」


男は肩をすくめた。


謎の男

「ここまで“死の気配”が濃くなりゃ、嫌でも分かる。

 ……それに、あんたが誰か拾って来るのなんざ珍しくもないしな。」


スレイ

「拾って……?」


白羽

(ヴォイドさん、昔から……?)


男は軽く会釈した。


ガルド

「名乗ってなかったな。

 俺はガルド。“灰の里”の預かり人。

 ……元《灰鳴旅団はいめいりょだん》の副隊長だ。」


白羽

(灰鳴……旅団?)


スレイ

「灰鳴……? 何それ?」


ガルドは横目でヴォイドを見た。


ガルド

「昔な。

 戦場の死体すら逃げ出す、最強の傭兵集団があった。

 世界のどこにも属さず、どこの軍にも従わない独立傭兵団。」


そして淡々と付け足す。


ガルド

「その“化け物の親玉”が──こいつだ。」


白羽が息を飲む。


スレイ

「ま、マジ……?

 ヴォイドさんって……そんな……?」


ガルドは笑いながら言う。


ガルド

「隊長は昔からそうだよ。

 戦場じゃ無敵で、感情も読めねぇ。

 おまけに強すぎて神にも悪魔にも嫌われた、

 どうにも扱いづらい野郎だった。」


スレイ

「褒めてんのか貶してんのか分かんないんだけど!」


ガルド

「両方だ。」


白羽

(ヴォイドさん……)


少し沈黙が落ち──

ガルドは視線を里へ向けた。


ガルド

「……でもよ。

“灰の里”がこうして存在してるのは、

 隊長のおかげだ。」


スレイ

「え? どういうことよ?」


ガルド

「戦争で焼けた村で……

 泣く子供たちを置いて来れなかったんだとよ。」


ヴォイドは目を伏せるでもなく、ただ無言。


ガルド

「拾って、背負って、食わせて……

 行く宛てのない子供たちに“居場所”を作った。

 それがこの里だ。」


白羽の胸がじん、と温かくなる。


ガルドは眉をひとつ上げる。


ガルド

「ただの善意じゃねぇよ。

 隊長は“善行をした”なんて思っちゃいねぇ。

 ただ──」


そこで視線がヴォイドへ移る。


“目の前で人が死ぬのを見るのが、

 気に入らなかった”


……それだけだ、と。


白羽

(……ヴォイドさんらしい……)


スレイ

「なんか、そういうとこ……

 ほんと、ずるいわね……」


ガルドはシオンへ視線を落とす。


ガルド

「……シオンを預かったのも、“そういうこと”だ。」


白羽

「シオンちゃん……?」


ガルド

「泣いて世界を壊しかけたガキを抱えて来てな。

 『二度と“あんな泣き方”をさせない。』

 って言いやがった。」


ヴォイドは否定しない。


シオンは寝息を立てたまま、

ヴォイドの胸にしがみついている。


白羽

(ヴォイドさん……やっぱり……)


スレイ

「……あんた本当に……」


(なんでそんなに子供に優しいのよ……)


ガルドは肩をすくめた。


ガルド

「昔からそうだった。

 戦場じゃ死神、里じゃ子供の味方。

 ……変わらねぇよ、隊長。」


ヴォイドは静かに立ち上がる。

眠るシオンを抱いたまま。


ガルドが言った。


ガルド

「まあ、ゆっくりしていけや。

灰の里はあんたらを歓迎するぜ。」


灰の風が、四人の周りを静かに通り抜けた。


ヴォイドの過去。

灰の里の始まり。

そしてシオンがここで育った理由。


ようやく、その一部だけが明かされた。



◇ 傭兵時代の相棒との会話


ヴォイド

「ガルド……いつも感謝する。

 子供たちを見ていてくれて。」


ヴォイドがぽつりと告げた。


ガルドは肩をすくめる。


ガルド

「礼なんざいらねぇよ。

 好きでやってんだ。」


ガルド

「……それにさ。

 シオンはあんたが来る度に、

 “ぱぱ好きを更新”してくんだよな。」


ヴォイド

「……俺も、そう感じている。」


ガルドは、

しばらく黙って里の方を眺めていた。


子供たちの声。

風に揺れる家々。


それを背に受けたまま、ぽつりと呟く。


ガルド

「隊長……」


ガルド

「あいつも、

 強くなったぞ」


一拍。


ガルド

「会いたがってたぞ」


ヴォイドは、何も返さない。


ただ一瞬だけ、

視線がわずかに落ちた。


ガルドは、それを見て話を切り替えた。


ガルド

「しかし……不思議なもんだな。」


ガルドは石段に腰を下ろし、

独り言みたいに続ける。


ガルド

「“零絶れいぜつのヴォイド”。

 昔は、人にも災厄にも区別つけず、

 近づくもん全部、切り捨ててた男が……」


小さく息を吐く。


ガルド

「今じゃ、拾って、預けて、

 子供が笑う場所まで残してる。」


ヴォイド

「……昔の話だ。」


ガルド

「そうだな。

 でもな――」


言葉を選ぶ間。


ガルド

「あんたが“人に興味がなかった”のは、知ってる。

 守るとか、救うとか、

 そういう言葉が一番似合わなかった。」


風が吹き、

子供の声がかすかに届く。


ガルド

「それでも……

 目の前で消えるのだけは、許せなかったんだろ。」


ヴォイドは否定しない。

ただ、眠るシオンの頭を静かに撫でる。


ガルド

「この里も、この子も……

 選んだんじゃない。

 “見過ごさなかった”だけだ。」


一拍。


ガルド

「……だからだ。」


ガルドは、はっきりとそう言った。


ガルド

「救われた奴は、山ほどいる。

 里の連中も、旅団の残りも……俺も。」


ガルドは立ち上がり、短く言う。


ガルド

「礼は言わねぇ。

 あんたは、そういうの嫌いだ。」


一瞬だけ、口の端を緩める。


ガルド

「……でもな、隊長。

 俺は感謝してんだ。ずっと」


風が通り抜け、

子供の笑い声が、やわらかく揺れた。


ヴォイドは、静かに目を閉じた。



◇ “恋愛相談”はパパのいないところで


しばらくして、シオンが寝返りを打った。


ヴォイドはそっと抱き上げ、

ガルドに預ける。


ヴォイド

「外周の見回りに行く。

 ……シオンを頼む。」


ガルド

「任せとけ。

 また、ぱぱ、ぱぱって起きるだろうけどな。」


ヴォイドが去ると──


ガルドは、にやっと笑いながら白羽とスレイを手招きした。


ガルド

「おい、そこの二人。」


スレイ

「ん? 何よ……」


白羽

「はい?」


ガルド

「隊長がいねぇ今だから言える話がある。

 お前ら、座れ。」


二人が並んで腰を下ろすと、

ガルドは妙に真剣な顔で言った。


ガルド

「まず確認させてくれ。

 隊長のどこが好きなんだ?」


白羽&スレイ

「「っっっ!!??」」


白羽は真っ赤。

スレイは爆発寸前。


スレイ

「す、すす好きとかじゃなくて!!

 あれよ! 尊敬!

そんで!なんか!その……!」


白羽

「わ、私はただ……

そばにいたいだけで」


ガルドはケラケラ笑いながら、


ガルド

「まあまあ、どっちでもいい。

 ただな──

 隊長落としたいなら、“覚悟”いるぞ。」


白羽&スレイ

「「覚悟……?」」


ガルド

「隊長は、自分の心には鈍い。

 でも、“守ると決めた相手”には絶対に裏切らねぇ。

 死んでもだ。」


白羽の胸がぎゅっと鳴る。

スレイは拳を握りしめる。


ガルド

「つまり、嬢ちゃんらに必要なのは……

 “離れない勇気”だ。

 これさえあれば──

 隊長は落ちる。」


白羽

「……」


スレイ

「……」


二人の頬がまた赤く染まる。


ガルドは大笑いしながら締めた。


ガルド

「よし、講義終わりだ!

 がんばれよ。

 “隊長争奪戦”な。」


白羽&スレイ

「「戦わない!!(です!!)」」


でも、

その声は少しだけ震えていて──

少しだけ、期待が混ざっていた。



◇ 朝霧の里──静寂から始まる異変


霧の色は、灰の里と同じ淡い銀。

夜露が溶け残り、世界はまだ目を覚ましきっていない。


ヴォイド一行は門の前に立っていた。


旅支度は済んでいて──

けれど、どこか踏み出すのをためらうような空気があった。


ガルドが背後で腕を組み、静かに見送る。


その影から、

シオンがそっと顔を出した。


眠気も、寝起きの機嫌悪さもない。

ただ、ひどく静かで……

ひどく寂しそうで。


シオン

「……ぱぱ……」


声は、朝霧みたいに細かった。


ヴォイドはゆっくりと振り向く。


シオン

「行くの……

もういくの……?」


ヴォイド

「……ああ。」


その返事は、いつもと変わらない淡々としたもの。

けれど、シオンの肩がほんの少しだけ震えた。


シオンは唇を噛んで、うつむいた。


シオン

「そっか……

 なら……いいの。

 ぱぱ、忙しいもん……」


そう言って笑おうとした。

だけど、笑顔になりきれなかった。


白羽は胸の奥がきゅっと痛み、

スレイも少しだけ視線を逸らした。


その瞬間だった。


◇ “方向の死”──空気が歪む


ふ、と。

風がねじれた。


霧の粒子が逆流するように揺れ、

鳥の鳴き声が途中で“ちぎれた”。


白羽が強く息を飲み込む。


(……何……

この感じ……!)


スレイの肩が震える。


スレイ

「な、なにこれ……

 感覚の死じゃない……

 もっと……変……!」


空気そのものが、

“行き先”を失っていた。


霧が上へ落ち、

石ころが震えたまま転がらない。

遠くの子供の声が、耳元へ“寄って”きたと思ったら、

次の瞬間には背後から聞こえる。


シオン

「……っ、あたまが……ゆれる……!」


シオンが突然、頭を押さえた。


シオン

「―――うぅ……」


膝が折れ、

地面に手をつく。

震えは小刻みで、止まらない。


白羽

「シオンちゃん!?!?」


白羽が駆け寄りかけて、

足がもつれて転ぶ。


――視界がぐらつく。


スレイも支えようとして、動きが止まる。


スレイ

「……気持ち悪いっ。

 これ、絶界じゃない……

 “方向感覚”が狂わされてる……!」


ヴォイドだけが即座に動いた。


シオンの肩を抱き寄せ、

額に手を当てる。


ヴォイド

「……シオン、落ち着け」


シオンは震える声で縋りつく。


シオン

「ぱぱ……やだ……

 あたま……ぐちゃぐちゃする……

 いや……っ……!」


涙をこぼすその声さえ、

霧の中で距離を失い、

近くなったり遠くなったりする。


白羽の視界が揺れ、

スレイの顔色が失われる。


そのとき──

ほんの一瞬。

世界の“向き”が歪んだ。


その沈黙の中で、

ヴォイドは低く、ぼそりと呟いた。


「《歪因ゆがみ》―――」


誰に向けたわけでもない。

吐息みたいな、かすかな独り言。


白羽は聞き取れなかった。


白羽

「……え?

 今……なんて?」


ヴォイドは答えない。

ただ、その目には

この異常の“正体”を完全に理解した確信が宿っていた。



雲ひとつない空なのに、

世界の“向き”だけが合わなくなる。


子供の笑い声は近いのに遠い。

泣き声は背後なのに前から来る。

距離も方角も、ちゃんと立ってくれない。


全部が「進むべき方向」を失っている。


そして──

シオンの身体が、がくりと沈んだ。


シオン

「ぱぱ……

これ、きらい……」


ヴォイドの瞳がわずかに揺れる。

ただの危険じゃない。


災厄の影響を“最も強く”受けているのは──シオンだけ。


白羽は唇を噛む。

スレイは拳を握りしめる。


二人とも、悟ってしまった。


ここに置いていけば、

近いうちにシオンは“確実に”壊れる。


だが──

旅に加える危険も、理解している。


白羽の声が震える。


白羽

「一体どうしたら……」


スレイも、息を詰めるように呟く。


スレイ

「……これは……

 どっちに転んでも……重いわ……」


沈黙。


そして──

その沈黙を破ったのは、

シオンの小さな手だった。


震える指が、

ヴォイドの服の端を掴んでいた。


シオン

「……ぱぱ……

 シオン……迷惑かけないから

おいていかないで……」



◇ ヴォイドの決断


ヴォイドは静かに目を閉じた。


歪因の気配はまだ遠い。

だがシオンだけが、その歪みに呑まれ始めている。


覚悟を固め、

彼はそっとシオンの手を握り返した。


ヴォイド

「……シオン」


シオン

「……ぱぱ……」


震える声。

震える指。

今にも壊れそうな小さな体。


そして──


ヴォイド

「俺と一緒に来い」


その一言が落ちた瞬間だった。


シオンの顔から、

みる見るうちに恐怖が無くなる。


最初は、涙だった。


頬を伝う雫が

次から次へとこぼれ落ちて──

声にならない息が震えた。


(……ほんとに……?)


という感情が、

“まだ痛みに寄りかかっている泣き顔”として揺れる。


でも──

次の瞬間。


その泣き顔の上に、

陽が差すように“笑み”が咲いた。


涙と笑顔が同時にこぼれ落ちて、

表情が混ざる。


泣きながら、笑って。

笑いながら、もっと泣いて。


そして──

これまで見たどの笑顔よりも眩しい、

“シオンの最大の笑顔”が生まれた。


シオン

「……っ……!!

 ……いく……!!

 ぱぱと……いく……!!」


声が震えて、裏返って、

言葉になりきらないのに──

その全部がまっすぐヴォイドに向いていた。


白羽は息を呑み、

胸が勝手に熱くなる。


スレイは思わず顔をそむけ、

目元を指でぬぐった。


ヴォイドは表情を変えない。

変えないのに──

腕に込めた力だけで、

答えを返していた。


シオンはそれに気づいて、

また泣き笑いになる。


世界が歪んでも。

歪因の影が迫っていても。


その瞬間だけは──

たしかに“救われた子供の表情”だった。


その時。



◇ 子供たちの涙と髪飾り


里の子供たちが駆け出してきた。


子供たち

「シオン!!」

「もう行っちゃうの!?」

「寂しいよ!」


その小さな手には──

草花と糸で作った手作りの髪飾り。


子供たち

「これあげる……!」

「シオンの、おまもり……!」

「ぜったい、わすれないで……!」


シオンは目を大きく見開き、

すぐに涙で揺らした。


シオン

「……これ……

 シオンに……」


震える両手で受け取り、

胸にぎゅっと抱き締める。


シオン

「……きれい……

 すごく……きれい……」


そして、泣き笑いみたいな顔で言った。

挿絵(By みてみん)


シオン

「……シオン……

 里とみんなのこと……

だいすき……」


子供たちも泣いて笑う。


子供たち

「また帰ってこいよ!!」

「ぱぱと旅しても!!」

「シオンは里の家族なんだから!!」


ガルドがその全てを見つめ、

ヴォイドに視線を向ける。


誇らしげに笑う。


ガルド

「……なぁ、隊長。

 これがあんたが救った子供達だ。」


ヴォイドはわずかに目を伏せて答えた。


ヴォイド

「……ああ」



◇ ふたたび旅立ち


シオンは髪飾りを頭につけた。

金の髪に、小さな色が咲く。


白羽は息を呑み、

スレイは思わず口を押えた。


スレイ

(……かわいい……

 こんなん……泣くでしょ……)


ヴォイドはシオンの手を取り、

門へと歩いていく。


白羽とスレイが横に並ぶ。


ガルドが大きく手を振った。


ガルド

「気ぃつけていけよ、隊長!!嬢ちゃん達!!

 お前らの敵は……全員ぶっ飛ばしてこい!!」


霧の中へ踏み出す四つの影。


金色の髪に光る、小さな髪飾り。

その輝きは──

まぎれもなく“家族の証”だった。


そして四災《絶界ぜっかい》シオンは、

世界を揺らす旅へと歩き出した。

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