プロローグ
目の前で化け物が大切なものを蹂躙していく。
「や、やめ‥‥て!」
その時、小柄の少女が現れ、匠に問いかける。
「妾と契約して悪しき存在を駆逐しよう」
少女は手を差し伸べる。
匠は無意識にその子の手を取る。
「契約する‥‥‥君の名前はなんて言うの?」
「妾の名前か?そうだなぁ、妾の名前は…………スサノオ」
神は笑顔で答え、僕の中に消えていった。
暗い室内で、目覚まし時計が電子音を鳴らしていた。
時刻は五時。神楽坂匠は目を覚まし、手探りで目覚まし時計を止めた。
目を擦りながら俺はベットから起き上がって、カーテンを開いた。
暗い部屋の中に太陽の光が差し込んだ。
『主殿、今日も朝が早いな』
「そうでもないさ」
俺は10年前に契約した少女にそう答えた。
『今日も道場に行くのか?』
「まぁね。後、鍛錬中に話しかけるなよ。気が散るから」
俺は道着に着替えて家の裏にある道場に向かった。神楽坂家では代々子孫に剣術を受け継いでもらっている。その中でも匠は剣術の才能に長けている。
道場に着くといつも通りに道場の中に入った。
俺は道場の中にある倉庫に木刀を取り、妹の隣で素振りを始める。
「素振り千回ぐらいしようかな」
木刀を上から下に降ろして素振りをする。
剣術は素振を沢山している人ほど技の切れが増す。
素振りに集中してると後ろから声がかかる。
「兄さん!ご一緒してもいいですか?」
後ろを振り返るとそこには紺色の髪色にお下げの髪型をした妹、結月が木刀を持って立っていた。
「ああ、どうぞ」
「今日こそは負けません」
俺と結月は学校の時間まで素振りをした。
途中で結月は素振りを断念したが俺はいつもしている事なので慣れたのか、疲れた様子を見せない。その様子を結月は苦笑いしながら「よく息を乱さないで振り続けられますね」と呟いている。
素振りを振りながら俺はこのような何気ない普通の毎日が続けばいいなと心の底から思った。
素振りを終えた俺と結月は結月が用意してくれた朝食を2人で食べて学校の支度を整えた。
母さんと父さんは仕事の事情で海外に居て、あまり家に帰って来ないので家ではいつも2人きりだ。
それに対して不満があるわけではないし、結月がいるので、寂しいわけでもない。
ただ、一般的な家庭みたいに家族団欒でいつか食事をしてみたいと思ってしまう。
俺はテキパキと学校の支度を済ませ、階段を降りて玄関へと向かった。
すると、キッチンから出てきたセーラー服姿の結月がこちらに近づき、お弁当を俺に手渡した。
「はい。兄さん、今日のお弁当です」
「いつもお弁当ありがとう」
「お礼を言ってもらえることではないですよ」
結月が照れたように顔を背ける。
たまにこういうようなお礼の言葉とか不意に言うと照れた表情をする。
「「……行ってきます」」
俺達は学校に向かった。