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序章:来る日


陶器のように透き通る白い肌。耳元に掛けられた髪は、夜を溶かしたかのような深い黒。

その毛先は魔力を宿した青へと染まり、サファイアを埋め込んだかのような幻惑的な目と合う。

彼女の名は、クリスタリア伯爵家令嬢──ウラ・ヴェナステリス・クリスタリア。


昼下がりの陽光が柔らかく降り注ぐ応接室。外では小鳥たちが囀り、穏やかな時間が流れる。

テーブルには茶会のための上品な甘味と芳醇な紅茶が並び、来客をもてなしている。

ウラはメイドが気を利かせて用意してくれた好物のマカロンを一つ手に取り、軽くひとかじりする。

口内でふんわりと広がる甘味に、ほんの一瞬だけ口角をわずかに上げた。

ティーカップに注がれた適温の紅茶を持ち、彼女は静かに立ち上がる。そして──


青ざめた顔でテーブル脇に跪く婚約者──デミトリオス・グレイヴズ・ヴァレンティアの頭上に、紅茶をゆっくりとかけ始めた。




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