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06

 幸いにして一吉には妹がいた。二つ下であるが、この妹がずいぶん毛深い(たち)で、かつ秘伝にも理解があったので、まことに都合のいい練習相手となった。

 まず頭髪から始めた。妹は当初、

「痛いし、毛に癖がつくよぅ」

 と不満を漏らしたが、一回目で目出度くも体内に響く波紋を感じたのだろう、以降、何も言わなくなった。

「今のが、俺が初めて施してもらった術だ」

 一吉は解説してやったものである。

 ところで頭髪が終わると、あとはやる所がないことに気づいた。

 妹は女だった。

 髭はないし、身体の毛も産毛だった。一吉としては、願わくば脇毛、陰毛でも試してみたかったのだが、さすがに拒否するだろう。

 家に二人きりでいるときに、兄の腕力を振るって妹に思いを遂げることは、可能ではあることだと思考した。が、そんな変態的行為をしてしまったらそのあとが恐ろしい。兄の権威は失墜し、さらに親父にどんな折檻されるかわかったものではない。

 拳骨でぶん殴られるだけならまだしも、当代の煙丸・小吉郎は針の大天才なのである。神経を断ち、せっかくの自分の感覚を、永遠に封じ込めることくらいやりかねない。

 妹の陰毛は、諦めざるを得なかった。


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