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01

 ときは昭和の時代。戦後のころ。季節は、まだ雪の残る春先のことである。

 東北地方はA県、その北域の山地の中に拓かれた、林業で活気ある町が、B町であった。

 そこに住まう鍼医(しんい)(たいら)家に、子が生まれた。

 新米の父母となった若き夫婦は、傍目から見れば喜劇的な熟考ののち、三日後に漸く子に名を与えた。


一吉(かずよし)……」

 口の中で何度ももごもごとその音を繰り返した岳父、三島(みしま)銭右衛門(せんえもん)は、今は子の母となった娘、佐恵(さえ)から赤子を抱き取ると、やっと笑顔を見せたのだった。

「これ……かずよし。かずや……じじだよ……」

 一吉はふぎゃあと泣き出した。

 笑いながら佐恵に返し、銭右衛門は娘の夫、小吉郎(こきちろう)に向き直る。商用にかこつけて、たまさかの体を装って、このような田舎にまで出張ってきた彼ではあったが、ここに来て押しも押されもせぬ豪商の貫禄を取り戻し、

「……娘と孫を、くれぐれも頼む」

 と、重々しく声をかける。

 平小吉郎はその名の通り、古畳に平たくなって、頭を下げたのだった。


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