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第29話 メモ書きの全容

 藤田は再度確認しようと最初からメモ書きを読み直した。


『土でできた蛇に追われる』

『ひとを飲みこんだあと土蛇は崩壊する、ひとは消滅』

『土蛇に飲みこまれたひとが脱出、全身血まみれ、土蛇は崩壊』


 ここまでは実際に目撃したから確かな情報だ。

 問題は残る二行は……。


 次の行に視線を移動させた。


『地中地獄』

『光の玉』


 最初の三行は文章であったが、四行目からは単語に代わっている。


 なぜ急に文章から単語に変えた?


 特別な理由があるかもしれない。

 そう考え、しばらくのあいだ思案した。

 だが、それらしい理由が浮かばない。

 

 単語の意味は?

 

 視点を変えてみた。


 地中地獄……。

 光の玉……。


 地中と地獄。

 光と玉。


 単語それぞれの意味はわかる。

 だが、単語が繋がると途端に途方に暮れてしまう。


 わからない。

 どうすれば謎が解けるのだろうか。 

 これまで通りの行動をしていては、永遠に答えに辿りつけない気がする。

 かといって、消滅の危険をおかすほどの度胸はない。

 

 ではどうするか……。


 細く長い息をゆっくりと吐いていく。

 完全に出し切ったところで、突破口を発見した。


 七志——。


 危険人物であると同時に怖いもの知らずでもある。

 新たな情報を得るためならば危険を恐れたりしない。


 七志を利用しよう。


 藤田はにやりと笑った。


 わしの手足となって危険の矢面に立ってもらう。

 そうして、この世界の謎を解く。

 

 七志は間違いなく危険人物だ。

 だが、その危険を引き受ければ情報が得られる。


 いずれたもとわかつ相手だ。

 利用価値があるあいだは耐える。

 この世界を知るために……。


 藤田は覚悟を決めた。


「なんだ、それは」


 突然、頭上から声が降ってきた。


「なっ!?」


 反射的に顔を上げる。

 すると、もたれかかっていた大樹の太い枝に七志が座っていた。


 いつからそこにいたんだ? 

 全く気配がしなかった。


 背中に冷や汗が流れる。


「なにか隠しているな」


 七志は枝から飛びおり、藤田の隣りに着地した。

 膝を軽く曲げた状態のまま、素早く次の行動へつなげる。

 藤田が動くより先に手元を狙う。


「貸せ」


 七志は藤田が持つメモの上部を持ち、奪おうとした。


 冗談じゃない、これはわしのものだ。

 渡してなるものか!


 メモを持つ手に力を込め、必死の抵抗を試みる。

 だが、力の差は歴然だった。

 

 このままでは奪われてしまう。

 どうにかしないと……。


 とっさに名案が浮かんだ。


「綾香ちゃん!」


 一か八かの賭けにでる。


 藤田は叫んだ。

 綾香に助けを求めると同時に、七志の油断を誘う一挙両得の策。

 

 ほんの一瞬だが、七志の力が弱まった。

 その隙をつき、藤田はメモを思いきり引っぱる。


「ちっ」


 七志は眉間に皺をよせ、つかんだメモを奪いとろうとした。

 藤田も取られまいと力を込めて抵抗を続ける。

 その結果、双方向の力を受けたメモが破れた。

 上部を七志、下部が藤田の手に残る。


「そっちもよこせ」


 七志が手を伸ばした。

 身をよじり、藤田は七志の手から逃れる。

 だが、体勢が悪く大樹にぶち当たった。

 痛みに足がよろける。


 まずい。

 次の攻撃を仕掛けられたら避けられない。


 七志が勝ち誇ったように藤田に手を差しむける。

 絶体絶命の危機。


「なにやってるの!」


 七志の攻撃より先に綾香が叫んだ。


「助けてくれ。

 七志くんが急に襲ってきたんだ」


 藤田の言葉に七志は目を見開き、これでもかというほど睨んできた。


「協力するって約束、忘れたの?」


 綾香の言葉に七志の手が止まった。


 襲ってくる気配はない。

 藤田は慌てて七志から離れた。


 こやつは想像以上に危険だ。

 一緒にはいられない。


 発見のためとはいえ、これ以上危険はおかせない。

 一瞬にして結論がひっくり返った。


 この世界にいてはならない奴だ。

 排除しなければ。


 藤田は手に残った破れたメモの下部分をポケットに隠した。

*月・水・金曜日更新(時刻未定)

*カクヨム(https://kakuyomu.jp/works/16817330647661360200)で先行掲載しています。



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