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押しが強すぎる隣クラスの同級生との邂逅を経て、体育とはまったく関係ないところで疲れた桃香は6限目の「総合」を受けていた。
「では今日の総合は、先程の体育で言ったように球技大会に出る人を決めます。ではまず出たい人は手を挙げて下さい」
「「「はいっ!!!」」」
男子数名が手を挙げる。同じ少年野球チームに属していたり、一緒に野球をして遊ぶことが多い彼らは出る気満々であった。
「えーっと6人ね。他にいませんか?特に女子も3人出ないといけませんからね!」
「じ、じゃあ、はい」
様子見のために手を挙げなかった現役女子選手が手を挙げ、男6人、女1人が決まる。
それ以上自主的に手が上がる事は無く、残り5人を他薦くじ引きじゃんけんなどで決めるターンに入ると思われたが、橘は一人の生徒をじーっと見つめていた。
桃香である。
「・・・えーっと、桃園さんは出場に興味無いかなー?」
「はい。私は少し肩が強いだけですから、他の方にお譲りしようかと」
(こういう皆で楽しむ経験はもう積んでいるからね。多少無理矢理でも今の子達が経験したほうが楽しめるでしょ)
桃香は他の子を想って辞退していたが、クラスメイトと先生の心は一つの意見で一致していた。
(((少し肩が強いだけとか絶対にウソ!!!)))
既に立候補している生徒達ですらそう思っていたので、他薦が始まったら桃香を祭り上げるのは確定していた。
なので残り4人が枠として残った。
「おいヤマト!お前も一緒にやろうぜ!」
「えぇ!いや、僕は・・・」
「最近お前めっちゃ反応良いじゃん!守備で輝けるって!せんせー!俺、ヤマト推薦!」
「えぇ〜」
自信の無いものに推薦をされてつい弱音を吐くが、内心では褒められて嬉しいヤマトである。
その姿を桃香は近所のお兄さんのような温かい目で眺めていた。
「じゃあ他の人の推薦に入りましょうか。えっと檜本君ね。他にいますか?」
「「「桃香ちゃんを推薦します!!」」」
「えぇ!?」
「はい、桃園さんね」
推薦されて驚いていたのは桃香のみで、他は当たり前のごとく拍手をしていた。
そこからは互いに警戒をして他薦が出なくなってしまったのでじゃんけんで決めることになり、結果、男子8人と女子4人の戦士たちが決まったのであった。
決めるべきものが決まり、余った時間は騒ぎすぎないことを条件で自由時間になった。
だが、選ばれた12人は別の話し合いをしていた。
誰が何試合目に出るかである。
「うーん・・・どう決めればいいんだ?とりあえず俺達3人は決勝戦でいい?」
自ら立候補した男子の一人が両隣の二人を指さしながら提案した。
それに対して橘は懸念を伝える。
「決勝戦に行けなかった場合は出られないけど、いいの?」
「あっ、そうか。じゃあ・・・とりあえず1戦目は俺達3人で!まあ、2戦目でも3戦目でもいいけど」
仲間と共にプレイ出来れば構わないというスタンスを主張する。
それを聞きながら桃香は思った。
(やっぱり小学生の球技大会にしては複雑すぎだよね。色々外部から言われた影響だろうけど)
単純に考えれば一番上手い子を決勝戦に配置するのが定石になるだろうが、最初のリーグ戦を突破できなければ決勝戦に行けないためその定石を当て嵌めていいのかという懸念が生まれる。
他のクラスが決勝戦ではなくリーグ戦に全力を注ぎ込んだ場合、決勝戦に回した戦力が無駄になってしまう。
だからリーグ戦が重要かと言えば、リーグ戦に全力を費やした場合の決勝戦で勝てるのかという不安もある。
(・・・明らかに小学生に考えさせる判断じゃないと思うんだけどなぁ。クラス単位で試合だと時間も場所も足りなくなるんだろうな)
大人の事情に振り回される現実に少し悲しさを覚えながら、自分に出来ることをしようと口を開く。
「では、経験者である下谷さん以外の女子3名が3戦目に出ても良いですか?」
「えっ、あの」
自分がハブられたと感じた下谷が寂しそうな顔で桃香を見る。
それに対して桃香は誤解なきようにしっかりと説明する。
「球技大会は予選も決勝も戦力を偏らせないのが重要だと思います。とりあえず2戦勝てば決勝に行けるでしょうから、経験者ではない私達3人を纏めて出したほうが可能性は高いのではないでしょうか?その、共に出て頂く二人には失礼なのですが・・・」
「全然!実際下手くそだし!」
「う、うん!私も桃園さんに賛成!」
一応運動が出来るという理由で選ばれたが野球の経験なんてまるでない二人は桃香に賛同した。
下谷もその話を聞いて、確かに勝ちに行くのなら戦力として怪しい二人を桃香に任せた方が良いかと考える。
既にチームを決めていた男子が口を挟む。
「桃園、さんはともかく、他の二人は守備いけるのか?四人を二人ずつに分けた方が良いと思うんだけど」
「出るのは十二人中九人なのですよね?」
「えっと、守備は九人だけど、バッティングは十二人で回すっていう変則型ね」
「であれば三人は守備に出なくていいですから、そこに二人を入れられるように交渉します。一人ならば私が内野に入ってその後ろに配置してもらえればフォローも出来るでしょう」
「そうなのか?それでいけるならいいんだろうけど」
野球選手としての技術力は圧倒的に低いだろうが、持ち前の動体視力で小学生レベルなら対処出来るだろうと桃香は考えている。
もし他の選手達もそういう立場であれば勝つことが非常に難しくなるが、5年生6年生に枠を譲るという方法で最低でも一人はベンチに座らせるつもりでいる。
3年生が全員ベンチに座るつもりでも、機会平等の観点で(先生を巻き込んで)最低でも一人は出場させる気満々である。
桃香の提案を皆が受け入れ2チームが出来たことでそこからは早かった。
男子5人と女子1人で限定ジャンケンを行い、グーを出した3人とパーを出した3人に別れたのだった。
最後にどの順番で試合に出るかを決める段階でふと桃香が顔を上げると、ポーカーフェイスで固まった。
「ヤマト、決勝戦行こうよ!」
(えぇ、皆が決めてるから僕はちょっと・・・)
「今のヤマトならきっといけるって!」
(ヤマト君!それ、しまいなさい!)
ヤマトの傍にどこからか現れたぬいぐるみが浮いていたのだ。
力持つ桃香とヤマトにしか見えない相棒だが、自分が認識出来ると悟られてはいけない桃香は優雅に髪を梳いてから視線を下ろした。
ここからたまに相棒を見かけては、どうしても冷や汗をかくようになる桃香である。
東京から戻りました
つらたん




