あの人のウワサ
温かい料理が運ばれてきた。俺はとうもろこしの入ったスープに手を付ける。
ホテルの朝食は、いくつになってもワクワクする。
普段とは違って量や種類が豊富で、形式も様々だからだ。
黙々と食べ進めていると、バミンが呟いた。
「はあ、高めの宿は格が違うね…。」
外に出ると、空が曇り始めた。そのせいか、この状況に対しての不安が押し寄せてきた。
「さて、今日は久々に、あの占い師のとこに行ってみるか!
バミンはすでに行先を決めていたようだった。
商店街の通りでは、バミンが先頭に立って進んでいった。
「おい!黒い兄ちゃん!」
ちょび髭の中年の男がバミンに声をかける。
「昨日はうちに来なかったじゃないか!正直、結構心配したぞ!」
「悪いね。でも僕の連れにあんたの宿なんて使わせたくない。」
「連れ?その坊主か?」
俺は黒い甲冑の男について行ってるから、結構不審な子供に見えてしまう。そのことは承知だ。
「そいつはどっから来たんだ?
「森で魔物に襲われてるとこを助けた。それだけだ。
「捨て子か?善人のお手本みたいになりやがって。
「おい!からかうような口調だな。
バミンが話を続ける。
「この子はとても不思議で、どうやって、どこを経由してここにきたかも理解していない。だから見過ごしちゃいけないと思ったんだ。
「……怪奇だ。
中年の男は不審に思ったようだ。
「まあいい。どこに向かうつもりだ?まさかあそこに…
「そう、占い師に聞くんだ。
男は呆れる。
「はぁ…あの変人ババァにか?
「馬鹿にはできない。あの人は、流浪してここにたどり着いた僕に助言をくれたんだ。だから今回も…
男は何も言わずに去っていった。
「バミン、あの変人?占い師って…
「これ以上案ずる必要はない。行こう。