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第1章 不老不死の呪い
アルヘイム領
ーシュテンの執務室ー
「そういえば、メル?」
「はい?何ですか?アルヘイム様」
「・・・何度も言うけど・・・敬語、何とかならない?俺たちは元々パーティメンバーだろ?」
「なりませんね。今は上司と部下ですから」
「そこをなんとか・・・俺、お前にその言葉遣いされるとなんかこう背中がムズムズと・・・」
読んでいた書類を机の端に投げ、シュテンは執務室のデスクの上に上半身をうつ伏せに置きながら顔だけを横にいる秘書官に向けて拗ねて見せた。
「イツキだって、そう思うだろう?」
「・・・ノーコメントでお願いします。自分、今忙しいので」
部屋の中央にある応接用のソファーに座り、机に書類を広げて仕分けをしているもう一人の部下、イツキにシュテンは同意を求めるが、忙しいと一蹴される。
彼がこの領地を父親より継ぐ前、冒険者をしていた頃に三人は出会い色んな場所へ旅をした仲である。
だが、シュテンがこの領地を継ぐと同時に三人は揃って冒険者をやめ、今は上司と部下の関係になったのだ。