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『道化師』による支配を受け数年が経ち、『彼』の視界から逃げるようにして生き延びてきた民たちもそろそろ諦めが出てきた頃の話である。
一人の男が魔剣『愚者』を手に、『道化師』の前に現れたのだ。
「お前がこの周辺の土地を荒らしまわり、略奪・殺戮などの悪逆非道の限りを尽くしているという『道化師』・・・で、相違ないな?」
魔剣の剣先を『道化師』に向け、男は静かに問うた。
アハハ!と、何時ものように嗤いながら肯定した『彼』を一瞥し、男は眉間にしわを寄せる。
『道化師』の纏う空気が変わったからだ。
オーラとして視認できるほどに高められた魔力を感じ、対話による解決は不可能と男は断定する。
「もとより話し合いで解決するとは思っていなかったが・・・ここまでとは・・・仕方ない。遊んでやるか・・・」
はぁっと大きなため息をつきながら魔剣を構え直した。
そうして激闘の末、男は仲間と共に『道化師』の軍団を打ち破り、その手に勝利を収めるのだった。
そしてこの男こそが、後の魔王である。
― カムロスの歴史書、カムロスの物語より一部抜粋 ―
完成された物語は全てが消され、白紙に戻る。
そうしてイレギュラーを受け入れた、新しい物語が始まった。