2-15
「三十にもなって、泣き虫なままのデカい子供の世話もしなきゃいけないからな・・・」
「・・・お前のせい、だろ・・・?」
「そうだよ。僕のせいだ。謝るし、もう出来るだけしないからさ。泣くな。昔も今も、リリィとお前に泣かれるのが一番困るんだよ」
ソファーの背凭れに背中を預け、メルヴィンはシュテンの両腕を引っ張って彼の顔を自身の胸元にへと引き寄せた。
まるで子供をあやす様にヨシヨシと頭を撫で続けるその行為は、彼がシュテンと知り合ったばかりの頃によくやっていた、落ち込む彼の慰め方である。
冒険者時代、パーティを組んだばかりの頃に何度かシュテンを庇ってメルヴィンが怪我を負うことがあった。
それでも大抵はたいしたことのない傷で、直ぐにリリアンやイツキに治してもらい、シュテンの警戒の甘さを指摘したり、彼の弱点と解決策を提示したりと色々と世話を焼いていたのだが、一度だけリリアンやイツキの治療でも一度では治りきらない程の大怪我を負ったことがある。
何時ものようにヘラリと笑いかけてくるメルヴィンの姿はそこにはなく、真っ赤に染まる彼の防具と地面、大きく抉れた彼のわき腹には魔獣の爪痕が三本ついていた。
苦痛に歪むメルヴィンのあの顔は、まだ十代という若さのシュテンにとって、忘れることのできないモノであり、彼の精神にも多大なダメージを与えたのだ。
然し、確かにメルヴィンは彼を庇って傷を負ったが、その時ばかりは仕方のないことだったとメルヴィンもリリアンもイツキも思っている。
あの時の騒動にシュテンの落ち度は無いのだ。
何故なら彼らを襲った魔獣はただの魔獣ではなく、迷子になって狼狽えていた竜人族の管理下に合ったはずの竜種だったのだから。
主人を探してウロついていたところに、『魔力量の多い初めて見るモノ』が四人もいれば・・・といった具合である。
幸いその竜種の主人が騒動に気づき、直ぐに来てくれたことでメルヴィンは助かったのだが、自分にもっと力があれば、自分で竜種に対応できていればと、シュテンは自身を責めていた。




