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ジャンル・やかた  作者: あしゅ
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ジャンル・やかた 47

リハビリ部のアリッサの整体室には常連が多い。

アリッサは主に整体を担当していて、何でもニコニコと聞いてくれるが

ちょっと頭が弱く、聞いた話をすぐ忘れるのを、皆よく知っていた。

 

肩が凝った腰が痛い寝違えたなどの、ちょっとした事で立ち寄っては

リラックスして世間話をしていく者が多いのである。

この館で、アリッサのマッサージを受けた事がない者は少ない。

 

 

デイジーはマティスを失ってから、泣き暮らしていた。

そんなデイジーに何かと世話を焼いたのが、アリッサである。

ふたりが急速に親密になった事を、皆は気付かずにいた。

それは正にアッシュの相続真っ最中の時期で

館全部がアッシュの動向にのみ注目していたからである。

 

それをデイジーは利用した。

アリッサの背後にデイジーがいるなど、誰も想像はしないだろう。

 

アリッサは聞いた話を忘れているわけではなく

伝達する意志も技術もないだけなのだ。

ちゃんと事細かく指令を与えれば、言われた通りに動いてくれる。

 

デイジーの、アリッサに対する友情は深かったが

今はとにかく主様命で、アリッサも同じ気持ちだと信じていた。

何よりも主様を優先しなくちゃ・・・

デイジーはこの強固な決意を、アリッサにも無意識に植えつけていた。

 

 

デイジーのアリッサへの情報収集は、アッシュの鼻先で行われていた。

アッシュのその日のマッサージ時間の予定を伝えに行くのは

デイジーの仕事のひとつになっていたのである。

 

送り迎えは、館内護衛のローズが付いてくるが

リハビリ部のアリッサの整体室には、基本的に患者ひとり以外は入らない。

デイジーがアリッサに連絡に行き、アッシュが行く直前になって

またデイジーが、不都合がないように整体室を整えに行くのだ。

 

準備が終わると、ローズに連絡を入れ

アッシュがやってきたら、デイジーは整体係の控え室に行く。

ローズはアッシュが整体を受けている間、ドアの前で待つ。

 

アッシュがローズと帰っていったら、整体室の片付けを手伝った後に

世話係の控え室に戻っていくのである。

アッシュは結構VIPな待遇を受けているわけだ。

そのアッシュの整体の前後に、デイジーとアリッサは密談をしていた。

 

 

そんなある日、アリッサがデイジーに言った。

「主様のわるぐちばかりいうヤツがいるだよ。」

「それは誰?」

アリッサはデイジーに耳打ちした。

 

数日後、館の敷地内の池に男性が浮いているのが発見された。

池の周囲には人だかりができ、遺体の引き上げを見守っていた。

 

デイジーもその場で、いかにも恐がってるような素振りで見物をしていたが

握った拳を振るわせる男を、群集の中に発見する。

 

 

酔っての溺死だと館の医師が判断し、ほとんどの者はそれを信じた。

「そんなわけあるかい!」

深夜の食堂で酔い潰れて、クダを巻く男にデイジーが近寄った。

「あんた、こんなとこで寝ちゃ風邪引くよ。」

 

「ん・・・? おめえは・・・誰だったっけ・・・?」

「あたしはデイジー。

 主様の明日の食事の打ち合わせさ。

 今日は仕事が立て込んじゃって、こんな時間だよ。

 まったく人使いが荒いったらありゃしない。」

 

イラ立った口調のデイジーに、男はつい口を滑らせた。

「ん、ああ、まったく何様だっつんだよ、あいつはよー。

 おめえ、一杯付き合えよ。」

「あたしゃまだ仕事が残ってんだよ。」

「そうか、おめえも大変だな、俺はディモルっつんだ。

 夜は大抵ここで飲んでるから、おめえも来いよ。」

「ディモル、ね。 またね。」

 

デイジーは食堂を悠々と出て行ったが、動かす足のその膝は震えていた。

 

 


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