表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わたしとビートと大怪獣さんの物語。  作者: 小空Q
第1章 ~はじまり~
5/70

ついに見つかった?


『えーーー、まためたの!?』


 そのばん、姉様との電話でのこと。

 おどろくどころか大笑いしていた。


『なんで? 心の中でくらい何言ってもいじゃん。私なんか心の中で社長でも同僚でも同級生でも、ざっと100人は呪殺してるよ?』


 ……姉ながら恐ろしい女だと思った。


『まあ次の仕事も決まってるんならいいよ。でもさー、たまには自分がやってみたいって仕事にいてみたら?』


「…………」


『他人の意見とか自分の心持こころもちが気になるって仕事に集中できてない証拠でしょ?』


 私のやってみたいこと。口にしたらまた大笑いされるから言いたくなかった。


『そういえばかなの新しい仕事ってなに?』


 ひいらぎかなで。これが私の名前。


「……配達の仕事だけど」


 おや、と姉様は驚いた声を出した。


『ずいぶん変わったねー。前はパソコン関係でしょ?』


「うん、ちょっと」


『……なに?』


 私はそれ以上、教えなかった。

 試用期間の間、車に乗ってパンフレットとか機材とか色んなものを運ぶ仕事……姉には配達業なんて言ったけど、実態じったいはその時々で運ぶものが変わる雑用係みたいなもの。にも関わらずお給料が意外と良い。

 何より仕事の中でひとりだけでいられる時間が多くて、けっこう楽しくて。


 でもたぶんここも長くはいられないと予感はしていた。

 運転は楽しいし、運んだ先で機材を組み立てるのも好きだけど、重い荷物を運ぶのが私にはきつい。


「不思議なんだけど、車の運転って意外と楽しいね」


 姉様は『ハア!?』と全力でひとを小馬鹿にするようにわらった。


『何をいまさら。車を運転してお金貰える仕事なら柊家ひいらぎけの人間は全員喜ぶわ!』


「私は柊家ひいらぎけの人間じゃないから。例外だから」


『またそうやってすぐ私は特別だって顔する』


「してない!」


『してる!』


 そんなこんな『してる』「してない」と、どーでもいいクチ喧嘩ゲンカで通話をえる。


(……私が特別な人間だったら、どれだけらくか)


 車の運転がさほど好きじゃないって女は周りにいくらでもいる。運転が苦手だって言って車に興味ないと言うと特別扱いされるのは心外もいいとこだ。

 私をのぞ柊家ひいらぎけが変なだけだ。

 でも、兄様の言葉を思い出す。


『マツダの車はいやか?』


 マツダといえばロータリーエンジン。と連想するのは、やっぱり私のどこかに柊家の血が流れているのかもしれない、そんな風に苦笑しつつ私はスマホを操作した。

 ロータリーエンジンは超高回転型の……という所までしかわからないけど、機械的なメカニズムは目をく。


「すごい、ピストンを使わずにハウジング内をローターが回って……」


 お父さんは生まれ故郷の特産品であるロータリーエンジンにあこがれていた。よく話もしていた。

 だけど子供が3人もいたからスポーツカーは断念した。

 けれど今なら、


(……私が乗ったら、喜ぶかな)


 実家に帰った時に運転させてあげたら泣くかも。

 とか思いながらロータリーエンジンについて調べ続けていた。


「ふむ、値段も手ごろ」


 中古で条件に合うのがあった。

 赤くて、ミッションで、軽自動車ではないけどわりと小型で69万。

 ついに見つかった? 私のクルマ




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ