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わたしとビートと大怪獣さんの物語。  作者: 小空Q
第1章 ~はじまり~
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私だけのルール


 私のこういうウジウジ悩むクセは、子供の頃から続いていた。


 好きなように、思うように。


 よく言われるけど幼少期の頃から思うようにならない体験と、それら失敗経験が根強ねづよく残り、たぶん気持ちを前に出すことを嫌っているのだと思う。


「あんたみたいにマイナス方向にばっかり考えてると、未来もそんな風になる!」


 つとめていた会社の女社長のセリフだった。

 私は裏で思う。

 彼女はたまたまうまく事業がいっている幸運や、その成功体験を重く受け止めているのだと。そしてこんなことを裏で考えている私は最低な人間だと。

「……テストで」私がつぶやいた。


「テストで点数が悪いのは事前の準備をおこたった結果ですから……。ねがっても成績は良くならないし、のぞむだけで好きな大学に入れるわけじゃないですから……」


「そういう考え方がいちばんムカつくんだよ!」


 口答えした私に思いっきり怒鳴どなってきた。

 怒鳴られなくても自分の性格は大嫌いだから。でも性格はいちばんなおしようがない。


 腹立たしいことがあるとすれば、それは彼女に対してひとつもムカつかなかったことだろう。

 えて反論すべきところは決まり文句のように続く、彼女の


「あんたみたいな考え方する人間が、世の中を悪くするんだ! あたしはそういう日本を変えるために生まれてきたんだ!」


 ……人は力を持つと、すぐ運命だの使命だのを口にする。

 彼女は”熱意”だと言いたいのだろうけど、断言できる自信の裏付けをただしく一言ひとことうならアイデンティティ。


 自分の存在価値や存在意義。

 本来はなおしようのない性格への意味を、何らかの幸運結果に求めて肯定こうていしていくスタイル。

 そのこと自体は否定ひていしないし、人格が肯定こうていされることは得難えがたい成功だと思うし、むしろ私だってそうなのだろうけど……けれど会社経営は残酷ざんこくなまでに数理的で偶発ぐうはつかさなりによるもの。

 肯定こうていされた個人的成功体験アイデンティティを他人にまで求めていくなら、賭事ギャンブルを他人に押し付けることにひとしい。


(長くはねーな、この会社も……)


 私が入社する会社はことごとくつぶれる。

 唯一、幸いなことは不思議と転職するたびにお給料が上がっていくこと。これだけは助かってるけど、どうしてこうなるのかはわからない。


 ただひとつ、私だけのルール。


 そこで食べていく以上、裏切うらぎるのだけはぜったい駄目。仮に会社に裏切られても、私から裏切るのだけは駄目……。

 心の中でも社長に口答くちごたえした私は、その数日後、大した理由もべずに会社をめさせてもらった。




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