マツダは嫌いか? いいえ、普通車が苦手なんです。
結局、もういちどライフは車検を通し、2年が過ぎた。
――少し刻は流れて迎えた2013年。
法事で実家へ戻っていた私を、駅まで兄様がマツダの青いミッションのスポーツカー(名前知らない、ごめんなさい)で送ってくれていた。(※注3)
どこまでクルマ好きなのか、兄様はマツダで開発の仕事をしていたりする。
「車、見つからない?」
「……うん」
「マツダは嫌いか?」
「普通車が苦手なの」
助手席に座って、ガチャガチャとシフトレバーを操作する兄様の手をちらっと見つつ、私は溜息をついた。
180万で恐れおののく私に普通車なんて絶対むり。
歳の離れた従妹たちや、甥、姪も、とうとう免許を取って車に乗り始めた。全員もれなくミッション車。
車探しを始めたからこそ感じる事だけど、一族総出で時代に逆行していると思った。
「マツダからも軽自動車は出てるけど、でも何でも良いって思ったら、今のライフのままでも良いかなって思えて」
「けどライフは限界がきてるんだろ?」
「……うん、まあ」
そもそもが父の御下がり。私の荒い運転と雑な整備。オイルやプラグの交換はおろか洗車もロクにしない。
そのせいで限界が近づいている。
「でも私は思うの。車を大事にしないこんな人間に新車は勿体ないし、貧乏だし、ほんと10万円くらいの軽自動車がお似合いじゃない?」
「…………」
兄様はしばらく口を開かなかった。
駅が近づく頃、兄様はようやく喋った。
「いちど、新しくて綺麗な車に乗ってみたら変わるんじゃないかな」
「…………」
「新車なら大事にしようって思うだろうし、整備もマメにするようになるだろ」
私は兄様から目を背けて「……どうかな」って心の中で呟いた。
注3)兄様が美化されてます。






