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さめまる 台本置き場  作者: よぼし
3/6

【1:1】水平線が私たちを繋ぐ。

川口真澄(かわぐちますみ):

葉山隆紘(はやまたかひろ):




ーーーーーーーーーー




真澄M:私たちは、身体だけの関係だった。




真澄:今日、空いてますか?


隆紘:空いてるよ。


真澄:じゃあ、いつもの場所で。





ーーーーーーーーーーー



【とあるBARにて】



隆紘:……遅いな。



【BARのベルの音】



真澄:葉山さん!


隆紘:遅かったな。


真澄:残業が長引いてしまって。


隆紘:そうか。もう少しして連絡がなかったら、帰るところだったぞ。


真澄:私からお声がけしたのに、連絡もできず、すみません。


隆紘:まぁ、いい。少し飲んでから行くかい?


真澄:じゃあ、1杯だけ。


隆紘:何飲む?


真澄:葉山さんのおすすめで。


隆紘:そうだな。マスター、アプリコットフィズをお願いします。


真澄: アプリコットフィズ?


隆紘:アプリコット、杏を使ったカクテルだよ。


真澄:初めて聞きました。ちょっと楽しみです。


隆紘:仕事、忙しいのかい?


真澄:えぇ、まぁ。内部でちょっとした亀裂が入って、ちょうど真ん中を取り持ってます。


隆紘:それは、大変だね。


真澄:そうなんです。もう何もかも忘れ去りたいくらいに。


隆紘:だから、今日は連絡くれたのか。


真澄:急でしたよね。すみません。


隆紘:いいんだ。久しぶりだったからね。少しびっくりしたよ。


真澄:仕事中、限界すぎて。


隆紘:明日は休みだろ?のんびり過ごそうじゃないか。


真澄:そうですね。やっと休みだァー。


隆紘:マスター、ありがとう。こちらの方に。


真澄:ありがとうございます。


隆紘:さ、飲んでみて。


真澄:では、いただきます。



【真澄、カクテルを飲む】



隆紘:いかがかな?


真澄: スッキリとした味わいで、すごく美味しいです。


隆紘:それは良かった。


真澄:私の好みをピッタリ当てるなんて、さすがです。


隆紘:なんだかんだ付き合い長いからな。


真澄:そうですね。


隆紘:そういえば、出会った時も、今みたいに色々忘れたいって言ってなかったか?


真澄:確か、彼氏に振られたーって大騒ぎしてた気がします。


隆紘:あれからもう、どれくらいだったんだろうな。


真澄:2年くらいですかね?


隆紘:そんなに経つか。


真澄:あの時の葉山さん。ずるかったですよ?


隆紘:ん?


真澄:耳元で、忘れさせてやるよ。って


隆紘:そんなこと言ったかな?


真澄:言ってました!


隆紘:記憶にないな。


真澄:むぅ。


隆紘:そう、むくれるなって。


真澄:別にむくれてないです。


隆紘:そうか。


真澄:……もう2年も経つんですね。


隆紘:そうだな。


真澄:葉山さんは、彼女さんとか作らないんですか?


隆紘:俺か?


真澄:はい。


隆紘:彼女ねえ〜。


真澄:その反応は、いい人でもいるんですか?!


隆紘:そうかもしれない。


真澄:えっ?!そ、それ本当ですか?


隆紘:さぁ、どうだろうな?


真澄:誰なんだろう。葉山さんの……好み。








隆紘:……いつ振り向いてくれるのかな。


真澄:なにか言いました?


隆紘:いや、何も。


真澄:そうですか?


隆紘:さて、そろそろ向かおうか。


真澄:はい。いい感じにほろ酔いです。


隆紘:マスター、ご馳走様。


真澄:また来ますね。



【BARのベルの音】



真澄:うぅ。最近、夜は冷えますね。


隆紘:そうだな。でも、今から暖かくさせてやる。


真澄:……っ……恥ずかしいこと、言わないでください。


隆紘:ごめん、ごめん。


真澄:もう。




ーーーーーーーーーー



【ホテルの一室にて】



真澄:ここ、初めて来ましたね。


隆紘:そうだな。


真澄:設備もしっかりしてますね。お布団ふかふか〜。


隆紘:そのまま寝るなよ?


真澄:寝ないですよ。


隆紘:寝そうじゃないか?


真澄:そんなことないですー。


隆紘:先、シャワーでも浴びてこいよ。


真澄:じゃあ、お先に失礼します。



【シャワーの音】



【隆紘、電話が鳴る】



隆紘:ん?もしもし。はい。



【真澄、シャワーから戻ってくる】



隆紘:……はぁ。


真澄:すみません。遅くなりました。


隆紘:あぁ、大丈夫だ。


真澄:なんか疲れた顔してますね。お仕事ですか?


隆紘:ま、そんなとこだ。


真澄:葉山さんもご苦労様です。


隆紘:ありがとう。


真澄:いいえ。



【隆紘、真澄を押し倒す】



真澄:わっ……。葉山、さん?


隆紘:俺も色々忘れたいから。


真澄:お互い忘れましょう?


隆紘:……。



【隆紘、真澄にキス】



真澄:……っ……。




真澄M:こうして、私たちは忘れるために一夜を共に過ごした。







【ホテルにて、朝】



隆紘:こんな時間が続けばいいのにな。


真澄:んー……。


隆紘:ずるいな、その寝顔。



【隆紘、真澄の頭を撫でる】



真澄:……はやま、さん。


隆紘:ん?


真澄:……。


隆紘:寝言か。ゆっくりお休み。





真澄M:どうして、葉山さんはこんなにも優しくしてくれるのだろう。とっても暖かくて、安心する。これは……。





隆紘:おーい、そろそろ起きる時間だよ。真澄くーん。


真澄:……んー……


隆紘:しょうがないなぁ。



【隆紘、真澄にキスして起こす】



真澄:……っ!


隆紘:起きたかい?


真澄:お、おはようございます!えっ、私、寝すぎちゃいました?!


隆紘:いや、大丈夫だよ。


真澄:そろそろ出なきゃですか!?


隆紘:いや、急がなくていい。


真澄:準備します!!


隆紘:落ち着け!


真澄:……っ!すみません。





隆紘:真澄くん。今日は空いてるかい?


真澄:え、えぇ。空いてますけど。


隆紘:俺と出かけよう。


真澄:へ?


隆紘:君と、出かけたいんだ。


真澄:ふふ、いいですよ。準備しますね。


隆紘:あぁ。俺も準備するよ。





ーーーーーーーーーー


【ホテルから近くのパーキングに向かう】



真澄:葉山さんと出かけるのは、初めてですね。


隆紘:そうだな。


真澄:付き合いは長いのに、出かけたことないなんて。


隆紘:なんだかんだ、いつもヤって終わりだったからな。


真澄:……葉山さんって、恥ずかしいことサラッと言いますよね。


隆紘:そうか?


真澄:少しは、周りを気にしてくださいよ。


隆紘:周りのヤツなんて自分のことばかりで、俺たちの言葉に耳を貸したりしないさ。


真澄:そうですけど。


隆紘:真澄くん。今日は、ドライブしてもいいかな?


真澄:ドライブ、ですか?


隆紘:あぁ。ちょっと連れていきたいところがあるんだ。


真澄:分かりました。


隆紘:じゃあ、乗ってくれ。


真澄:車で来てたんですね。っと、失礼します。


隆紘:BARも近いし、そのまま置いていたんだ。


真澄:なるほど。葉山さんの車、久しぶりに乗りました。相変わらず、かっこいいですね。


隆紘:褒めても何も出ないぞ?


真澄:いや、そういう訳じゃ。


隆紘:ふふ、分かってるよ。







真澄:どこに向かってるんですか?


隆紘:んー?内緒。


真澄:もう。からかってるんですか?


隆紘:そんなつもりは無いよ。ちょっといいところに連れていきたいんだ。


真澄:なんですか、それ。


隆紘:まぁ、着いてからのお楽しみだよ。


真澄:楽しみだなぁ。




隆紘M:このまま君を連れ去りたくて、ドライブに誘った。俺たちは、セフレという関係。なのに、なぜこんなにも君に惹かれるんだろうか。君をあの場所へ連れていきたくなるんだ。



【水平線が見える海岸にて】



隆紘:真澄くん。着いたよ。


真澄:んん……。あ、すみません。寝ちゃってました。


隆紘:少し長い道のりだったからね。降りていいよ。



【真澄、車を降り、背伸びをする】



真澄:あ。海の匂い。


隆紘:当たり。こっちにおいで。


真澄:よいしょ。うわぁ。すごい綺麗。


隆紘:俺の好きな場所なんだ。


真澄:この青い空と海に心惹かれますね。


隆紘:……。


真澄:……。


隆紘:真澄、くん?



【真澄、ポロリと涙が流れる】



真澄:あ、れ?なんで涙が。


隆紘:どうした。


真澄:この景色見たら、思い出してしまいました。


隆紘:何を思い出したんだ?


真澄:私の故郷です。昔、離島に住んでて、泣きたくなったら、いつも島の海岸から水平線を見てました。


隆紘:故郷には帰らないのか。


真澄:今は、帰る気はありません。



【真澄、ペンダントを握る】



隆紘:それは?


真澄:メモリアルペンダントと言って、本当は遺骨とかを入れるためものなんですけど、私は島の海岸で取った砂を入れてるんです。


隆紘:砂を?


真澄:私がいつも見ていた景色を忘れないために。


隆紘:なるほどな。通りでいつも不思議な形をしたペンダントをしてるなと思ったわけだ。


真澄:島を離れる時から、ずっと持ってます。お守りみたいなものですね。


隆紘:そうか。でも、それももう要らなくなるな。


真澄:え?


隆紘:これからは、俺がそのペンダントの代わりになるよ。


真澄:ペンダントの代わり?


隆紘:あぁ。辛くなったり泣きたくなったら、いつでもここへ連れてくる。そして、忘れたくなったら忘れさせてやる。


真澄:ほんとですか?


隆紘:あぁ。約束する。


真澄:分かりました。じゃあ。



【真澄、隆紘にペンダントを渡す】



真澄:このペンダント、葉山さんが持っててください。


隆紘:いいのか?


真澄:これからは、葉山さんが私のお守りになってくれるので。


隆紘:わかった。預かっておくよ。


真澄:私、仕事で滅入ることが多いので、沢山連れてってもらうかもしれないですよ?


隆紘:心配ないさ。



【隆紘、真澄の頭を撫でる】





真澄:葉山さんって、どうしてそんなに優しいんですか?


隆紘:優しくなんかないよ。


真澄:優しいじゃないですか。


隆紘:いや、弱みにつけこもうとする悪いやつさ。


真澄:そんなことないですよ。


隆紘:あるんだ。今だって。


真澄:今……?



【隆紘、真澄を背後から抱きしめる】



隆紘:君を、連れ去りたくなった。


真澄:……っ。


隆紘:ほら、悪いやつだろう。


真澄:そんなこと……!




【隆紘、真澄を抱きしめたまま、少しの間】




隆紘:……すまない。



【隆紘、真澄から離れる】



真澄:あ……。


隆紘:……。



【波の音】



隆紘:そろそろ、落ち着いたか?


真澄:はい。


隆紘:帰るか。


真澄:……はい。







真澄M:帰宅したあと、葉山さんに言われた言葉を頭の中でぐるぐると考えながら過ごしていた。君を連れ去りたい。出会ってから、今までそんなことを言われたことはなかった。




ーーーーーーーーーー



【真澄、職場にて】


真澄:鈴木さん、資料作成お願いします。


真澄:渡辺さん、この後の会議の書類まとめておいてくださいと伝言です。




真澄M:なんで私が、お互いの仕事を伝えに行かなきゃ行けないの。伝書鳩じゃないんだから。





【真澄、ペンダントを握ろうとする】



真澄:ペンダント、渡したんだった。


真澄:何やってんだろ。私。




【真澄、同僚が自分の悪口を話しているのを聞いてしまう】



真澄:えっ……。





真澄:……っ……うわあああああああああ。




【雨の中。泣きながら、隆紘の家に走っていく】



【隆紘の家、インターフォンが鳴る】




隆紘:はーい。


真澄:……。


隆紘:真澄くん?!どうしたんだ、そんなずぶ濡れで。


真澄:……っ。



【真澄、隆紘に抱きつく】



隆紘:……真澄くん?


真澄:……


隆紘:泣いてるのか?


真澄:……葉山さん。私って、なんですか。


隆紘:え?


真澄:葉山さん……。私、なんのために頑張ってきたんでしょうか。


隆紘:……。


真澄:私の存在理由ってなんですか。





【隆紘の家、リビングにて】



隆紘:はい、ホットコーヒーだ。


真澄:ありがとう、ございます。


隆紘:落ち着いたかい?


真澄:はい。急に押しかけてしまい、すみませんでした。


隆紘:大丈夫だよ。


真澄:……。


隆紘:……。


真澄:何も、聞かないんですか?


隆紘:ああ。


真澄:なんで聞かないんですか?


隆紘:聞いたら、嫌なことを思い出すだろう。


真澄:そうですね。今もまだモヤモヤします。





隆紘:真澄くん。着替えて。


真澄:え?


隆紘:出かけるぞ。


真澄:えっ、今からですか?


隆紘:今からだ。


真澄:えっと、どこに……?




【水平線が見える海岸にて】



真澄:ここは。


隆紘:久しぶりに来たな。雨も止んだようだし、少し降りようか。


真澄:海の匂い。


隆紘:ほら、こっちにおいで。



【真澄、涙が溢れる】



真澄:ずっと、ここに来たかった。


隆紘:最近、連絡も少なかったから忙しいのは分かってたよ。職場で何かあったんだろう?


真澄:……はい。本当にちょっとしたことなんですけど、同僚が私のこと気に入らないみたいで。


隆紘:その悪口が聞こえてしまった。そんな感じかな。


真澄:はい。すみません。


隆紘:謝ることじゃないさ。





真澄:ふとした時に、ペンダントがなくて、それでも頑張らなくちゃって思ってたんです。でも、頑張れなくて。


隆紘:もう1人で頑張らなくていいよ。


真澄:……え?


隆紘:もっと早く気付いてれば、こんなふうに辛い気持ちにさせなかったのにな。


真澄:葉山、さん?



【隆紘、真澄を抱きしめる】



隆紘:ペンダントの代わりに君を支えると言ったのに、何も出来なくて、何も気付いてあげられなくてすまない。


真澄:そんなこと、ないですよ。


隆紘:もう、そんな辛い思いはさせない。


真澄:葉山さん。


隆紘:君を1人にしない。


真澄:……。


隆紘:真澄くんが好きだ。


真澄:えっ……。


隆紘:俺たちはセフレだから、君には触れてはいけない、そう思ってた。触れるのが怖かった。でも、君を支えたい。守りたいと思う気持ちは抑えられなかった。


真澄:……。


隆紘:急にすまない、こんなこと言って。


真澄:私も。


隆紘:えっ?


真澄:私も葉山さんのことが好きです。葉山さんといるとなんだが安心して、心がポカポカします。


隆紘:そうか。


真澄:私たちは身体だけの関係。そんなふたりが恋愛になって発展しない。私なんか好きじゃないって心にそう言い続けてました。


隆紘:……。


真澄:でも、葉山さんの気持ちを聞いて、私もこの気持ちに向き合っていいんだと思いました。


隆紘:……。


真澄:葉山さん、こんな子供っぽくて、弱い私ですが、そばに一緒にいてくれますか?


隆紘:あぁ。



0:隆紘、真澄を抱きしめる。



隆紘:これからは、辛くても俺が支える。絶対離さないからな。


真澄:はい。





真澄M:こうして私たちは、セフレとしてではなく、恋人として過ごすことになった。


隆紘M:この先、たくさんの困難があったとしても、俺は君を支えていく。もう1人で苦しい思いはさせないから。

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