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03 君のためにできること ~1

残酷な表現が出てきます。

ご注意ください。

 夕べ、アーサーくんのすぐ横、でもアーサーくんの寝相を考えて少し距離を置いた所で横になった訳ですが。

 みんなで焚き火を囲んで寝ることになり、流石に地面の上に直接寝るのは身体が痛かった、とかそんなことを言いたい訳ではなく。

 実はひっそり眠れないんじゃないかなーとか何とか思っていたわけですよ。

 だってそうでしょう。

 仮にもいきなり事故ったと思ったら漫画の世界で目が覚めました、なんて。

 有り得ないにも程がある、ってなもんで。原作者だって登場人物が勝手に増えててビックリだ!、な感じで。

 そんな状況の中、普通に考えて今後のことだとか、もしかしたら明日の朝になったら置いて行かれてたなんてことになってるんじゃないか、とか心配事ならわんさかあるんだもん、眠れないかも…なんて思って当たり前でしょう。

 ところがですよ、気が付いたらアーサーくんのいびきも気にならないほど熟睡してしまってました。

 どこまでも睡眠欲に弱い私のようです、情けない…。

 ついでに実は目が覚めたら病院のベッドの上でした、なんてことになってないかな-と思ったんだけど、それもありませんでした…。

 まぁたぶん夢なのは確かだとしても、夢の中で寝て起きるなんてのはよくあることだもんね。きっとまだ夢の続きなんだよ。うん。


 で、私が目が覚めた時に他に起きていたのはエイトさんとアレク様だけ。

 そしてその後、ディオンさんとアーサーくんが起き出して昨日の夕食同様、エイトさんと私とアーサーくんで朝食の用意をし、また賑やかな朝食が始まったのだけど。

 そろそろ全員食べ終わるかなって時になって。



 それは突然やってきた。



「@$*≠Θ∑#ωっ、ゼロ&¥$*φΠッ!!!」


 何処からともなく大きな声が響いてきて、四人がやれやれといった風に溜息を吐いた。


 しまった、そうだった! この四人は日常的にいろんな人達に狙われてるんだった!!

 ってことは確実に今の声は野盗かどこかの国の刺客達だ!!


 そう頭が理解した時には、既に周囲をたくさんの男達に取り囲まれていた。


 このスレナイの世界はいくつかの国があり、その一つがウェストリア国だ。その中にあってゼロ騎士団の四人はウェストリア国の王族、しかも次期国王候補が二人、更にこの世界最高位の魔法師とウェストリア国の騎士団内で実力トップの剣士が揃い踏みなだけに、他所の国からすればこの四人を制圧すれば、ウェストリア国を制圧したも同然の価値があると思われている。しかもこの四人、主人公属性のせいもあってめちゃくちゃ強い。四人で世界征服すらも可能な強さ。

 そんなわけで、自国の安全を確保するためだとか、ウェストリア国をのさばらせないためだとか、自分が最強であると証明するためだとかいう理由をつけて、旅に出ている彼らを襲撃する人達が後を絶たない。

 まぁ当然のように、こういう理由付けがされているということは、邪な願いを持った他国を含む多数の人物達が彼らを自分のいいように使いたい思惑が多大に紛れていて、それを成すために裏の世界では多額の懸賞金が掛けられていたりする。彼らの立場を考えれば正面切って挑めない者達が多く、そうなると裏から手を回されるのは致し方ない現実。

 とはいえ前述した通り、最強の四人組なので煩いコバエを追い払うが如く、鬱陶しそうに毎回毎回襲撃されると容赦なく敵を殲滅していくのがこの漫画のお約束であり、定番の光景だ。

 正直、とても少女漫画とは思えない設定である。殲滅だよ、殲滅。敵を殲滅しちゃうんだよ。捕縛とか追い払うとかじゃなくて、殲滅。

 ……恐ろしい。絶対、敵にはなりたくない。

 そしてその定番の光景が今目の前で繰り広げられようとしている。


 うわぁ、すっごい人数がいるんですけど!! なんで人の気配がわかる人達なのにもっと早くに気付かなかったのさ、みんな!!

 っていうかこういう場合、二次創作だと私にも特殊能力があって応戦出来るとかなんだろうけど、あいにくそれは期待出来ないみたいだ。だって神様の声とか聞こえたりしないし、自分の身体に何か異変を感じたりもしない。

 まあ簡単に言うならあくまでも私は一般ピープル、もっと端的に言うなら只の雑魚キャラ、つまりモブ。

 なんて都合の悪い夢なの、なんて文句を言ってる場合でなくて、これは一体どうするべきでしょうか?


 そんなことを考えている間に、よいしょ、という感じで立ち上がった四人が私を取り囲むように四方に立つ。

 勿論その間に敵さんに対して暴言らしき言葉を吐くのは忘れてない、と思われる雰囲気。


 あちゃー、これは完璧にお荷物決定だな、私。

 でもせめて手伝えないまでも邪魔にだけはなりたくない。


 心の中で自分にそう言い聞かせると、何処かに隠れる場所はなかったかと周囲の風景を思い出す。

 でも四方八方囲まれてるこの状況で今更隠れるなんて到底無理な話で、どうしようかと困惑していると、目の前でアーサーくんとエイトさんが何かを話したあとエイトさんが私の名前を呼んだ。

 だからその声にエイトさんへと視線を向けると、いつもの笑顔を見せたまま何かを言いつつ彼が自身の背中側を指差した。

 どうやらこれは自分の背後にいてくれと言われているような気がする。

 たぶんそうなんだろうと勝手に決め付けると、エイトさんとアーサーくんを安心させたくて頷いた。

 すると二人が満足そうに笑ったので自分の想像があっていたのだろうと思う。


 でもそこで思い出す。

 確かアレク様以下三人共、いつもそれなりに動きながら団体さんと戦っていたはず。

 だとすれば、お荷物に気を配りながら立ち位置を変えないように戦うのは至極大変なんじゃなかろうか?

 いや、普通に考えて大変だろう。

 これはマズイ、マズイぞ。自分のせいで四人が怪我するなんて絶対に嫌だ。何がなんでも嫌だ。

 本当だったら一緒に戦いたいところだけど、確実に私にその能力はない。

 だったら、私が出来ることは限られている。とにかく邪魔にならないように、指示されたらすぐに動けるように、覚悟を決めておこう!


 そして私が早鐘のように鳴り響いている自分の心臓に落ち着けと言い聞かせている最中に、戦闘は始まった。



 目の前で繰り広げられる惨劇。


 アレク様の剣が敵を一人ずつ確実に切り裂き、ディオンさんの剣の持ち手に加工された鎖付きの鎌状のナイフが狙い澄まして振り回された導線で一遍に数人ずつの身体を二つに分け、アーサーくんが二刀流と体術を駆使して斬ったり蹴り飛ばしたり、エイトさんも数人単位で魔法によって地に倒していく。

 おびただしい量の血が流れ、ひっきりなしに殺傷音と断末魔が響く。

 周囲に漂うのは先程までの清々しいものではなく、まるで空気まで赤く染まったかのような鉄分を含む血生臭さ。

 目の前は既に赤黒い海。それこそ小さな時から昔話や何かで聞かされた地獄そのもの。

 漫画やアニメでも描写されていたことだけど、目の前のそれはあくまでも今の自分にとっては現実で。

 何をどう言っても今この場所に繰り広げられているのは生臭い地獄絵図でしかなかった。

1話の文字数がちょっと多いな、これだと次の更新まで時間かかるな、と思ったので、1話中の文字数を少し減らして更新速度を優先してみることにします。

誤字脱字とかあったら教えていただけると助かります。

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