02
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なんだここは?
真っ暗な空間?
一体ここはどこなんだ?
俺がそんな事を考えていると、俺の目の前に、嶋野宮会長、水鏡、そして胡桃ちゃんが立っていた。
「ねぇ、貴霞君? 私を選んでくれるわよね?」
「明嶋さん、もちろん私ですよね?」
「明嶋君、私だよね?」
「み、みんな……なんでここに? そしてなんで包丁!?」
「私よね?」
「私ですよね?」
「私だよね?」
三人は包丁を構えながら、俺にそう言って迫ってくる。
や、やめてくれ!
そ、それ以上近づいたら包丁が俺の全身に!!
「あ……あぁぁぁぁ!!!」
……と言う夢をを見て俺は目を覚ました。
「夢か……」
波瀾万丈の告白三連続から一夜明けた今日、俺は自分の部屋のベッドの上で先程見た夢を思い出してため息を吐く。
「マジで夢みたいな展開とかにならないよな……」
あの後、俺たちは話し合いと言う名の言い合いを三十分ほど公園で繰り広げた。
結局は俺が誰か一人を選べばすべて済む話しなのだが……それが直ぐに出来れば苦労なんてしない。
話し合いの結果、三人からの告白は保留という事になり、その日は解散になった。
「はぁ……なんかとんでもない一日だったなぁ……」
まさか三人が俺の事をそんな風に見ていたなんて……正直、三人とも容姿が良すぎて俺には完全に高嶺の華だと思って、恋愛対象にすら入れていなかった。
そんな美少女三人からの告白は正直言うと嬉しい。
しかし、誰かを選んで付き合うと言うことは、残りの二人を不幸にしてしまうということである。
それに……彼女達は俺を好きでも、俺は彼女達をそう言う目で見たことが無い。
選ぶにしてもちゃんと皆の事を見て選ばないと不誠実な気がした。
「はぁ……絶対一生分の運をここで使っちゃったよ……」
俺はベッドから起き上がり、朝食の用意を始めた。
朝食は面倒なので、焼いたトーストとヨーグルト、そして牛乳で済ませる事が多い。
簡単に準備が出来て、尚且つ後片付けも楽なので俺の朝食は毎回こんな感じだ。
さっそく準備をしようと、俺がキッチンに立つと丁度同じタイミングで、部屋のインターホンが鳴った。
「ん? 誰だ、こんな朝っぱらから……」
俺は部屋着のまま、インターホンのモニターを見る。
そして、そこに写っている人物を見て、一気に目を覚ました。
「し、嶋野宮会長!?」
なんで朝からここに!?
と言うか、正直昨日あんな事があった後だから会話しづらい!!
ど、どうする?
てか、会長は何をしにうちに来たの!?
俺はとにかく会長を部屋に入れようと、インターホンに向かって声を掛ける。
「は、はーい……」
『あ、貴霞君、私だけど……』
「か、会長、一体どうしたんですか? こんな朝早くから……」
『い、いえね……貴霞君の食生活がちょっと心配で……良かったらその朝食を作ってあげようかと思って……』
「あ、あぁ……そ、そうでしたか……」
そう言えば昨日言われたなぁ……カップラーメンばっかり食べてるのを知って、心配して来てくれたのか……。
「そ、そうでしたか……と、とりあえず開けます」
『お願いね』
追い返すなんて事も出来ないので、俺はとりあえず会長を部屋の中に入れた。
「は、早いですね……」
「昨日、貴霞君の家を始めて知ったけど、以外と私の家の近くでビックリしたわ」
「そ、そうでしたか……で、でも悪いですよ、朝食を会長に用意させるなんて」
俺がそう言うと、会長は頬を赤らめながら俺に恥ずかしそうに言う。
「わ、私は貴霞君と……その……先輩後輩以上の関係になりたいから……その……あ、アピールかな? 料理が出来る彼女なんて良いと思わない?」
「ま、まぁ……はい」
「それに……うかうかしてると貴霞君取られちゃいそうだったから」
それはきっと、胡桃ちゃんや水鏡の事だろう。
あぁ、やっぱり夢じゃなかったのか……。
俺はそんな事を考えながら、朝食の準備をする会長を眺める。
自前で持ってきたエプロンを付け、会長はさっそく準備に取りかかる。
なんというか……制服にエプロンって良いね……。
いつまでもそんな会長を眺めて居たいが、俺もそろそろ着替えないと学校に遅れてしまう。
俺は奥の部屋に制服を持って引っ込み、着替えを始めた。
「会長……来てくれるのは嬉しいけど、こっちにも準備が……」
なんて話しをしていると、またしても部屋のインターホンが鳴った。
今日は朝から来客が多いな……。
俺は制服のボタンを締めながら、今度はインターホンをで返事をせず、そのまま玄関にむかった。
「はい? あでっ!」
「あ、明嶋さん! おはようございまーす」
「お、おはようじゃねぇよ……」
まさか玄関を開けた瞬間、そのまま腹にタックルされると思わなかった……。
「なんだよ、朝から……」
「なんですかその顔! もっと嬉しそうにしたらどうなんですか? 彼女が朝食持ってきてあげたのに!」
「いや、彼女ではねーだろ……って朝食?」
「はい、昨日の喫茶店で出たあまりですけど」
「あぁ、それはどうも……って何上がってんだよ!」
「え? 明嶋さんまだ準備出来てないでしょ? 待ってますから途中まで一緒に行きましょうよ」
「いや、まて! 胡桃ちゃん!!」
俺は会長の存在を思い出し、声を声を上げて胡桃ちゃんを止めようとした。
しかし、俺の声は胡桃ちゃんに届かず、胡桃ちゃんは部屋の奥に行ってしまった。