01
俺の私生活は充実していると思う。
それは俺自身が感じていた。
仲の良い友人がいて、趣味があって、バイトをして。
別にクラスで特別目立っているわけではないが、俺は高校生活というものを楽しんでいる人間だと思う。
毎日が新鮮で、毎日が充実している、そんな日常がこれからも続けば良いと僕はそう思っていたのだが……。
「ねぇ、貴霞君……そろそろ答えてくれない?」
「そうですよ! 明島さん!」
「明島君……もちろん私よね?」
俺は現在、夕方の公園で地面に正座させられ、三人の美少女がら見つめられ、責められていた。
なんでこんなことになってしまったのか……。
明島貴霞15歳、ただいまとてつもない修羅場を経験しております。
*
学校生活というのは、大人になるといい思い出になるらしい。
修学旅行の思い出や体育祭の思い出など、大人になると輝いて見えるらしい。
まぁ、まだ子供の俺にはそんな感覚は分からないのだが、きっと俺は学生時代の思い出で一番楽しかったのは高校時代と答えるだろう。
俺は普通の高校に通うごくごく普通の男子高校生明島貴霞。
部活には所属しておらず、その代わりに喫茶店でバイトをしている。
年齢は15歳の高校二年生だ。
「おはよう」
「おーす」
「おはよう、明島」
教室に入るとクラスメイトが挨拶を返してくれる。
クラスの奴らもいいやつで、特別嫌いな奴もいない。
「おはよう、水鏡さん」
「あ、明島君……お、おはよう」
俺は自分の席に鞄を置きながら、隣の席の黒髪の女の子に挨拶をする。
彼女の名前は水鏡澄香、一年生の頃から同じクラスのクラスメイトだ。
「あ、これこの前貸してもらったゲーム返すよ」
「あ、うん、どうだった?」
「いや、めちゃくちゃ面白かったよ! オープンワールドのゲームって初めてだったけど、時間を忘れてプレイしちゃったよ」
「でしょ? やり込み要素もあって、かなり長い時間プレイできるからおすすめだったんだぁ」
水鏡と俺は結構仲の良い友達だ。
意外にも水鏡は女性では珍しいかなりコアなゲーマーだ。
俺もゲームが好きなので、仲良くなるのにそう時間はかからなかった。
「あぁ、本当はもっとやってたかったけど、それだと今度発売するあのゲームができなくなるからな」
「なるほどね、買ったら教えてね! あれ、協力プレイもできるから!」
「おう、また一緒に朝までやろうぜ」
「おいおいご両人、何を朝までやるんだぁ~?」
俺と水鏡の会話を聞いて話に混ざってきたのは、友人の芳川大成だった。
大成とは中学時代からの友人で、一番仲の良い友人だ。
チャラチャラした感じの見た目をしてはいるが、本当は真面目で優しい優等生だ。
「な、ななななにってその……」
「おいおい、茶化すなよ、ゲームの話に決まってるだろ?」
「なんだぁ~つまんねぇ~なぁ~、俺はようやくお前らが……」
「よ、芳川君! 一体何を言おうとしてるの!!」
「おっといけねぇ……秘密だった」
「なんだよ」
「なんでもねぇよ」
大成言いかけた言葉、水鏡が遮って止める。
一体何を言おうとしたんだろうか?
教室では大体この三人で過ごすことが多い。
水鏡はその容姿と性格の良さから、クラスでは人気者だった。
そんな人気者とゲームを貸し借りしてるなんて、入学当時では考えられない。
「なぁ、貴霞。放課後どっかいこうぜ、バイト無いだろ? 良かったら水鏡さんもどう? たまには家庭用じゃなくて、アーケードで遊ばない?」
「あぁ、悪い大成……今日は俺、放課後に用事が……」
「え? まさかまた生徒会の手伝いか?」
「うん……すぐに終わるって言われてるんだけどね……あと、そのあとはバイト先に来週のシフトを出しに行かなきゃいけないんだ……」
「マジかよ……それじゃあ、水鏡さんも行く意味ないな」
「え?」
「芳川君!!」
大成の言葉にまたしても水鏡さんが反応する。
二人の間で何かあったのだろうか?
*
放課後、俺は生徒会の手伝いをするべく生徒会室に足を運んだ。
生徒会長である嶋野宮瑠実さんは俺の一個上の三年生だ。
なんで俺がこうして生徒会の手伝いをしているかというと、それはこの人が大きくかかわっている。
一年前だった、嶋野宮先輩が放課後、生徒会の倉庫整理をするために段ボールを倉庫に運んでいたところ、足を滑らせて段ボールをひっくり返し、中身をすべて出してしまったことがあった。
偶然そこに居合わせた俺は、先輩を手伝い段ボールの中身を拾ってあげた。
その時の俺の手際を見て、嶋野宮先輩は何を思ったのか、俺を気に入り、ことあるごとに雑用の手伝いを俺に頼むようになっていたのだ。
「はぁ……あれがなかったらなぁ……」
俺は生徒会室の前に立ち、そんなことをつぶやく。
まぁ、過ぎたことを嘆いても仕方ない。
俺は生徒会室の扉を二回ノックし、生徒会室に入る。
「失礼します」
「あら、貴霞君……やっと来てくれたのね」
うっすらと笑みをこぼし、嶋野宮会長は俺の方を見る。
会長はいつも通り生徒会長専用の机に向かっていた。
しかし、いつもとは違って他の生徒会役員の人たちがいない。
珍しいな、どこかに行っているのだろうか?
「うふふ……いつもありがとうね」
「いえ、まぁ正直面倒ですけど……会長の頼みですし」
「うふふ……じゃあさっそく、この資料をハンコの有る物と無い物に訳てもらえる? 見ての通り、他の役員は出払ってるから……」
「はい、わかりました」
俺は嶋野宮会長に言われた通り、資料を分けていく。
なんてことない簡単な作業で、十分ほどで作業は完了した。
「ふー、これで良し」
「お・つ・か・れ」
「うぉ!! 先輩! ビックリするからいきなり背中に抱き着いてこないでください!」
「うふふ、頑張ってくれた貴霞君にご褒美あげようと思ってぇ~」
「いや、こんな十分そこらの仕事でご褒美なんて……」
「えい」
「うぷ……」
嶋野宮会長はそういいながら、俺の頭を自分の胸に抱きよせる。
高校三年生にしては育ちすぎたその胸が俺の顔を覆う。
なんていうか……上手く言えないんだが……確かにこれはご褒美です!!
しかし、天国があれば地獄もある、俺は次第に嶋野宮会長の胸のせいで息が出来なことに気が付く。
「む、むぅぅ!!」
「あら? なんだか苦しそうね」
わかってるならさっさと手を離してくれ、苦しくて死にそうだ!!
俺がそんなことを考えていると、嶋野宮会長はようやく手を離してくれた。
「はぁ……はぁ……ご、ご褒美なのかお仕置きなのか、なんかわからなくなってきた……」
「うふふ、ごめんなさいね抱き方が悪かったかしら?」
「あ、あの……こんなことをしてもらってから言うのもなんなんですけど……あんまりこういうことはしないでください……」
「え? どうして? うれしくなかった?」
「男としてはかなり嬉しかったです」
「そんな決め顔で言われてもかっこよくないわよ」
「いや、あの……男にあんまりべたべた触るのは……色々誤解を生むというか……なんというか……」
「うふふ、真面目ねぇ……でも、安心して、こんなことするのは貴霞君だけだから」
「え? そうなんですか?」
あぁ、あれか、生徒会の手伝いをする一般生徒なんて俺くらいだからな……そういう意味でか。
そんなことを考えながら時計を見ると、時刻はすでに17時を過ぎていた。
「あ、ごめんなさい会長、自分これから用事があるので失礼します」
「あら、そうなの? 残念ねえ……もっとお話ししていたかったのに……」
「すいません、それじゃあ自分はこれで……」
「あ、まって貴霞君!」
「はい?」
「明日なんだけど……放課後少し私に付き合ってくれない?」
「え? 生徒会の用事ですか?」
「いえ、違うわ……私個人的なお願いよ」
「え?」
生徒会室を出ようとした俺に嶋野宮会長はそういった。
まぁ、別に明日は特に用事がないので良いと返事をしたが、一体何のようだろうか?
生徒会の用事以外に嶋野宮会長から呼び出されるなんて初めてだ。
俺はそのまま真っすぐ自分のバイト先に向かった。
*
俺のバイト先は個人営業の喫茶店だ。
個人営業と言っても、その人気は高く、雑誌に載ったりテレビの取材なんかが来る店だ。
そんな喫茶店で俺は週に三日アルバイトをしている。
「お疲れ様でーす」
「やぁ、明島君お疲れ様」
「店長お疲れさまです、これ来週のシフト希望です」
「あぁ、わざわざありがとうね」
このダンディなおじさんはこの店の店長だ。
俺は店長と呼んでいるが、お客さんや他のバイト仲間はいろいろな別な呼び方で呼んでいる。
シフト希望も提出したし、俺は今日はシフトに入っていないので、そろそろ帰ろう……なんてことを考えていると、今度はフロアから背の低い金髪の女の子が厨房にやってきた。
「あ! 明島さんじゃないですか! シフトに来たんですか?」
「そんなわけないだろ、俺は今日は休み」
「えぇ~折角来たんだから手伝って行ってくださいよぉ~」
「嫌だよ、俺は今日は家に帰ってゲームするの」
「うわぁ……オタク」
「おい、誰がオタクだ! ゲームくらい普通だわ!!」
彼女の名前は辻田胡桃ちゃん。
店長の娘であり、俺の一個下の後輩だ。
店長がコーヒーの修行で外国に行っていいたときに知り合った奥さんとの間に出来た子らしく、瞳は青く、綺麗な金髪を片側で結っている。
「あ、そんなことより聞いてくださいよぉ~パパがひどいんですぅー」
「え? 店長また何かしたんですか?」
「ま、またとは何だね明島君、私はただ娘との親子の関係を深めようと……」
「高校生になった娘と一緒に寝ようとしたんですよ!! 親じゃなかったら犯罪ですよ!」
「あぁ……」
「そ、そんな目で見ないでくれ!」
まぁ、こんな感じで店長は娘である胡桃ちゃんを溺愛している。
可愛くて可愛くて仕方ないらしい。
だからか知らないが、うちのバイトは男性が極端に少ない。
きっと娘に出来るだけ悪い虫を近づけたくないのだろう。
「はぁ……これが反抗期か……」
「まぁ、当然の反抗だと思いますが……」
「もう! 今日も部屋に来たらパパとは口聞かない!」
「そ、そんなぁ~胡桃ぃ~それはないよぉ~」
娘の前で泣き崩れる店長……あんまり見たくない姿だなぁ……コーヒーを淹れてるときはあんなにカッコいいのに……。
「じゃぁ、私もうシフト上がりだから先に家に戻るねパパ」
「ぐすっ……娘に嫌われた」
「いい大人が泣かんでください」
俺もそろそろ家に帰ろう、そう思って店を後にしようとした瞬間、俺は胡桃ちゃんから腕をつかまれた。
「明島さん、途中まで一緒に行きましょうよぉ~」
「えぇ……嫌だよ、早く帰りたい」
「まぁまぁ、こんな美少女と並んで外を歩けるんですよぉ~」
「え? そんな子どこにいるの?」
「明島さーん、ぶん殴りますよぉー」
仕方なく俺は胡桃ちゃんが着替え終えるのを待ち、一緒に帰ることにした。
まぁ、とは言っても胡桃ちゃんの家はこの喫茶店から歩いて五分もかからない。
本当に一瞬だからまぁ良いか……。
「お待たせしましたぁ~! どうですか? 制服姿の胡桃ちゃん可愛いでしょ?」
「普通」
「明島さんの時給、パパに頼んで下げてもらおうかな?」
「え、何この子めっちゃ可愛い! ちょっと、写真撮っても良いですか?」
「うふふ~! 素直でよろしい! 三枚だけですよぉー」
脅したくせになんて白々しい……。
胡桃ちゃんの通っている高校は俺が通っている高校とは違い、女子高だ。
だから制服も違うのだが……確かに自分で言うだけあって普通に可愛い。
この性格さえなかったら、危うく好きになっていただろう。
「それで、なんで俺と帰りたがったんだ?」
「いやぁ~実は明島さんに大事な話があって……」
「大事な話? なんだよ?」
「そ、それを明日言うので明日、学校が終わったら真っすぐうちに来てほしいっていうお願いだったんです!」
「なんだよそれ……面倒だから今行ってくれないか?」
「だめなんです! 今じゃダメなんです!!」
「なんでだよ?」
「あぁ……いや……あの……ふ、風水的に?」
「胡桃ちゃん、風水のふの字も知らないよね?」
「と、とにかくダメなんです! ダメったらだめぇ~!!」
「はいはい、わかったわかった。まぁ良いけど……少し遅くなるかもしれないけどそれでも良いか? 実はちょっとした用が学校であってさ」
「良いです! 来てさえくれれば!」
「な、ならいいけど……」
なんだか必死に頼んでくる胡桃ちゃん。
一体なんなんだろうか?
それにしても明日は嶋野宮会長の用事に付き合ったら、すぐに胡桃ちゃんの家か……なんか放課後の用事が増えてきたな……。
「じゃあ、俺はここで」
「はい、明島さん、可愛い女の子がいても襲っちゃだめですよ!」
「君は俺をなんだと思ってるんだ……」
「え? 抑えきれない性欲を持った変態高校生」
「あのねぇ……」
「あはは、冗談ですよぉ~、からかったお詫びに後で私の部屋着姿をスマホに送ってあげますから、今日はそれで抜いてください」
「余計なお世話だ! まったく……人をからかうのもいい加減にしなさい」
「うわぁ~怒った怒ったぁ~、怖いよぉー」
胡桃ちゃんはわざとらしくそう言いながら、自分の家の敷地内に逃げて行った。
「じゃあ、明島さん! また明日です!」
「あぁ、じゃあな」
家の前でかわいらしく敬礼をする彼女に俺はそう返して家に帰った。
容姿は良いんだけどなぁ……一緒にいると少し疲れる……。
*
「ただいまぁ……」
俺は家に帰り、部屋の電気をつける。
俺は訳あって現在一人暮らしをしている。
それと言うのも、俺が高校に入学する直前に親父が海外赴任することになってしまったからだ。
初めての海外での生活を心配した母さんも親父について行ってしまったので、俺は今現在一人暮らしを満喫している。
「さぁ~て、今日は何を食べるかなぁ~」
自炊はするが、面倒なので最近はカップ麺ばかり食べている。
俺はお湯を沸かしてポットに入れると、カップ麺とポットを持ってテーブルの上に置く。
ポットのお湯をカップ麺に入れ、三分間待ってやった後に俺はカップラーメンの蓋を開けて卵の雷をカップ麺に落とす。
「やっぱりこの組み合わせが最高だなぁ……」
一人暮らしだから出来るからこそ出来るこのジャンキーな食べ方……やっぱり一人くらいは良いものだ。
俺はタブレットを取り出してスタンドに置き、動画サイトで動画を見ながら食事を済ませる。
「ふぅーごちそうさまぁ~」
ちょうど飯を食べ終えたころ、俺のタブレットに誰かからメッセージが届いた。
メッセージの送り主は水鏡だった。
【そろそろイベクエ】
そのメッセージを見た瞬間、俺は飛び起きて自分のパソコンの家のパソコンの置いてある部屋に向かった。
「ヤバイヤバイ、そうだ今日はイベントの日だった……」
俺はパソコンを立ち上げながら、水鏡にメッセージを返信する。
【悪い! 飯食べてた! 今ログインする!!】
【大丈夫だよゆっくりで、それより電話していい?】
【少し待って、ヘッドセット準備するから】
俺と水鏡はこうやって毎日電話をしながらゲームをする。
大体はオンラインゲームを遊ぶのだが、時々二人して時間を忘れてしまう時があるので要注意だ。
俺はヘッドセットを用意をし、水鏡に電話を掛ける。
「もしもし?」
『もしもーし? 明島君ログインした?』
「あぁ、今したよ。今日のイベントってあれだろ? あの人気アニメとのコラボイベント」
『そう! 限定装備が欲しくてさぁ~、ドロ率低いから今日は周回しよ!!』
「よっしゃ! じゃあさっそく行くか!!」
俺と水鏡はイベントの周回を始めた。
水鏡はかなりのゲーマーでゲームも上手い。
一緒にやり始めたのは半年程前からだが、俺はついていくのがやっとだ。
『ねぇ~明島君ドロップしたぁ~?』
「いや、まったく……なんだよこの鬼畜設定……」
『うぅ……欲しい……』
「だけど、もうそろそろ日付回るぞ? そろそろ寝ないと明日持たないぞ?」
『そうだけど……うぅ……ほしぃ……』
「また明日も付き合うから、今日は寝ようぜ」
『うぅ……まぁ、それなら……あ! そうだ』
「ん? どうした?」
『いや……明日なんだけどさ……ちょ、ちょっと話たいことあるからその……家に行っても良い?』
「え? なんで家なんだ?」
『い、いや……その……そう! ついでに話してたコントローラー貸しに行こうかと思って!』
「それなら学校でも……」
『い、良いから! じゃ、じゃあ明日部屋にいくからその……綺麗にしておいてね!』
「いや、なにを?」
まいったなぁ……これで明日の放課後は大忙しになってしまった。
しかし、みんな話しがあるって一体何だろうか?
俺はそんなことを考えながら、水鏡に別れを告げて通話を切りヘッドセットを外す。
「ま、いっか」
この時の俺はまだ知らなかった。
明日という日が俺の人生にとっての大きな分岐点になることを……。
*
そして、翌日の放課後。
俺はまず先に呼ばれていた嶋野宮先輩の元に向かった。
昨日と同じ通り、俺は嶋野宮先輩が居る生徒会室のドアをノックして開けた。
「失礼します」
「あら、早かったのね」
生徒会室は昨日同様に嶋野宮先輩だけだった。
「すみません、実はこの後も用事がありまして……」
「そうなの? それなら早く用を済ませるから安心して」
「えぇ、そうしてもらえると助かります」
というか、俺は何をすればいいんだ?
生徒会は関係なって言ってたけど……。
「貴霞君……初めて会ったときの事覚えてる?」
「え? まぁ、はい……二年生ながら生徒会長をしていた嶋野宮先輩が段ボールをひっくり返して」
「そのころ私ね……生徒会で嫌われていたの」
「え?」
「私ってね……自分が出来ることは他人も同じくできるんだって思っちゃってたの……だからかしら……生徒会の皆が私を目の敵にしていた……」
「そ、そうだったんですか……」
嶋野宮先輩は優秀だ。
それもかなり優秀だ。
だからこその思い込みなのだろうが、まさか先輩にそんなことがあったなんて……。
「あの倉庫整理も半ば嫌がらせみたいな感じで上級生の役員に押し付けられたのよ」
「そうだったんですか……」
「なんでみんな私のように出来ないんだろう、出来ないなら自分一人でやろう、そう思ってた時に……あなたが現れたの」
「え?」
「あなたは覚えてないかもね……でもあの時の貴方の言葉に……私は救われたの……」
あれ?
俺なんかそんな重要なこと言ったっけ?
「そのあとも貴方を生徒会の手伝いと言って呼んだのは私が貴方と会いたかったから……」
「え? そ、それはどういう……」
「………ここまで言っても……わからない?」
「えっと……その……しょ、正直なんとなく……」
「……じゃあ、ちゃんと言うわ……だから、ちゃんと聞いて……」
「は、はい」
俺はこの時、嶋野宮先輩に何を言われるのか薄々わかってしまった。
嶋野宮先輩の頬は真っ赤に染まり、いつもの先輩らしくなく、なんだかそわそわしていた。
俺はそんな先輩を眺めながら先輩の言葉を待った。
「私……貴霞君が……好きなの………」
「………」
「……大好きなの」
「………っ」
「愛してるの……」
「……そ、その……」
「もう、本当に好きなの!!」
「あの……わ、わかりましたからちょっと声を……」
「愛してるの!!」
「だから! ちょっと声を抑えてくれます!? は、恥ずかしいから!!」
徐々に声の声量を増していく嶋野宮先輩に俺は思わずそう言ってしまった。
ま、まぁ薄々何を言われるかと途中で気が付いてはいたよ?
でもまさかこんな情熱的に言われるなんて……。
「そ、それで……へ、返事は?」
「あ、えっと……」
先輩は涙目で俺の顔を見ながら、顔を真っ赤にしてそう尋ねてくる。
正直言うと……メチャクチャ可愛い……。
正直告白なんて人生で初めてだし、しかも嶋野宮先輩みたいな綺麗な人からなんてうれしすぎる!!
正直もうノリで「良いよ!」とか言っちゃいそうだ。
だが、勇気を出して俺に告白してくれた先輩にそんな答え方じゃあまりに不誠実だ。
ここは俺もちゃんと考えなくてはいけない。
「ご、ごめんなさい……あ、あの! 少し時間をくれませんか? その……今すぐに答えを出せないので……」
ごめんなさいって言ったときの先輩の絶望した顔……正直見てられない。
あぁ……もし断るとしたらあの夢も希望もない絶望しきった顔を見なきゃいけないのか……それはいやだなぁ……。
「そ、そうよね……ぜ、全然いいわ……ちゃ、ちゃんとその……返事をくれれば」
「ありがとうございます……」
「………」
「………」
気まずい……何を言って良いのかわからない!
これって帰って良いの?
ねぇ、帰って良いの?
帰りずれーよ!!
これって男として俺から切り出さないといけないの?
ねえ! 誰か教えてよぉぉぉ!!
「……私頑張ったのよ……」
「え? あ、は……はい……」
俺が戸惑っていると、嶋野宮先輩は顔を赤くしたまま俺に向かってそう言った。
「わ、私は貴方に……その……頑張ったらいつもご褒美を上げてたわよね?」
「は、はい……そうですね」
いつもありがとうございます……。
先輩はそう言いながら俺の方に一歩づつ近寄ってきた。
「だ、だから……その……わ、私にもご褒美頂戴……」
「え? あ、あの……会長!?」
うぉぉぉぉ!
し、嶋野宮先輩がお、俺に抱き着いて!!
てか、このお腹の辺りにある柔らかくて大きい感触なに!?
嶋野宮先輩はそうやって俺に三秒ほど抱き着いた後、俺から離れてこう言った。
「ご、ごめんね……わがまま言って……」
「い、いえ……す、すいません……自分そろそろ用事があるので……」
「あ、あぁそうだったわね……じゃ、じゃぁその……と、途中まで一緒に帰ってもいい?」
「え? あ、えっと……はい」
本当は断りたかった、正直帰り道で何を話せば良いかわからないし……でも俺が聞きあえした瞬間にまたあの絶望した顔……卑怯だよあの顔!
可哀想になっちゃうじゃん!!
そんなわけで俺は嶋野宮先輩と途中まで一緒に帰ることになってしまった。
*
困った……実に困った。
この後は胡桃ちゃんに会う約束だったのだが……まさか嶋野宮先輩まで一緒になってしまうとは……。
聞いた話によると、嶋野宮先輩の家の方向は胡桃ちゃんの家と同じであり、しかも通り道だ。
それを嶋野宮先輩に言ったら……。
『じゃあ、話が終わるまで待ってるわ』
と、言われてしまった。
まさかこんなふわふわした精神状態で胡桃ちゃんと会うことになるなんて……。
まぁでも逆に考えれば、今までも順風満帆だった俺の学園生活がさらに充実したものになるんじゃないか?
そうだ!
学園生活において、彼女が居るのと居ないのとでは充実度は天と地ほどの差がある!
嶋野宮先輩は綺麗だし優しいし!
そ、それに……さっきの告白の時とか今とか……照れてるところすげー可愛いし!
告白を断るを探す方が難しい……そうだ、明日改めて正式に俺からよろしくお願いしますと言おう。
それが勇気を出して告白してきた嶋野宮先輩への礼儀だ!
よし、そうと決まれば早く胡桃ちゃんとの用事を終わらせて、いつものように嶋野宮先輩と楽しくお話しながら帰ろう!!
俺はそんな事を考えながら、胡桃ちゃんの家のインターホンを押す。
ちなみに先輩は胡桃ちゃんの家の角で待っている。
「はーい。あ! 明島さん!!」
「よ、仕方ないから来てやったぞー」
「あ、ありがとうございます……わざわざ」
ん?
なんだこの違和感は……なんでこの子、今日はこんなに塩らしい態度なんだ?
いつもならもっと俺を小馬鹿にしてくるのに……。
「えっと……それで話って何? てか、なんかいつもと雰囲気違うけど、化粧してるの? もしかして出かけるの?」
「ち、違いますよ……あ、明島さんに見てほしくて……」
んんん???
なんだろうかこの感覚は……なんかつい一時間ほど前にもこんな感覚を味わったことがあるぞ?
「あ、明島さん……あの……私って結構モテるんですよ……」
「え? あ、あぁそれは知ってるけど……」
そりゃあ、店に来る若い男のい大半は胡桃ちゃん狙いだからな。
モテることくらい知ってる。
「ちゅ、中学の頃なんか、毎月告白されてたし……だ、大学生から連絡先渡されたことあるし……」
おい、その大学生はやばいんじゃないか?
普通に犯罪だろ!
「そ、そんなモテモテで美少女な私が彼女とかだったら……その……明島さん嬉しくないですか?」
「え? そ、それってどういう……」
俺はここまで聞いて、何となく胡桃ちゃんが何を言おうとしているのか気づいてしまった。
そして、それと同時に家の角で待っている嶋野宮先輩の事が気になって仕方なかった。
なんだろうか、このさっきの嶋野宮先輩からとは少し違う緊張感は……。
てか、お願い!
それ以上言わないで!!
最低な願いなのは分かってるけど、今ここでそれを言うのは状況をややこしくしちゃう!!
しかし、俺の願いとは裏腹に胡桃ちゃんは俺の制服の袖を掴んで恥ずかしそう頬を染めながら俺に言う。
「明島さん……好きです……私の彼氏になってください……」
はい、可愛い!
何この可愛い生き物!?
いつものあの面倒なキャラはどこ行った!!
てか、絶対この会話聞こえてるよな?
やべーよ……なんでよりにもよってこんな時に!!
今度の天国から地獄はまさにここからだった。
胡桃ちゃんの話を聞き終えた後、狙ったかのように嶋野宮先輩が俺の後ろからやってきた。
「い、今の話はどういうこと!?」
「え? だ、誰!?」
「ですよねぇー……」
さっきまでのピンク色の雰囲気が一転、何やら暗雲の立ち込める嫌な雰囲気になってきた。
「あ、貴方誰ですか! 人の告白を勝手に聞いて!」
「あ、貴方こそなに? 貴霞君には私が先に告白したのよ!」
「え!? そ、そうなんですか明島さん!!」
「そうよね? 貴霞君!!」
「え、えっと……」
まさに修羅場……一体俺はどうしたらいいんだ……てかなんで同じ日に告られるんだよ俺!
「大体、お姉さんと明島さんはどういう関係なんですか!!」
「お、同じ学校の……その……付き合う予定の関係よ!!」
そうなるの!?
「はぁ!? なんなんですかそれ!! 胡桃聞いてない!!」
「貴方こそ、貴霞君のなんなのよ!!」
「わ、私は……明島さんの可愛い彼女です!!」
おいコラ、嘘をつくな嘘を!
「嘘を言わないでもらえる? さっき告白してたじゃない」
「これからなるの!! 明島さんは年下好きの変態だから、私みたいなのがドタイプなの!」
誰が年下好きの変態だ!
俺はそんなものになった覚えはない!!
「何を言ってるの! 貴霞君は年上好きのおっぱい星人よ!!」
いや、違うよ!
嶋野宮先輩そうでもないよ!
ま、まぁ……お、おっぱい星人はその……否定できないけど……。
「貴霞君!!」
「明島さん!!」
「は、はいぃぃ!!」
「「どっちと付き合うの!」」
二人は声を揃えて、俺にそういった。
まぁそうなるよね……。
「大体! 今日のこの日の為に、私お化粧してオシャレな服着て、先輩を待って、勇気を出して告白したのに! なんですかこの結末!! 私の勇気を返すか付き合ってください!!」
「あ、あの……それはほぼ付き合えって言ってるのと変わらないんじゃ……」
「わ、私だって入念に準備をして貴霞君の為にいつもはつけない香水をつけて頑張ったんだ! 責任とって付き合うか、香水代を支払いなさい!!」
「会長……もしかして結構高い香水買いました?」
結局このままここで話ていてもらちが明かないということで、また日を改めて三人で話をすることになった。
なったはずだったのだが……俺の一言で状況は再び変わってしまった。
「じゃ、じゃあ……俺はこの後も用事があるから……」
「待ちなさい」
「待ってください」
帰ろうとする俺を自称俺の彼女(仮)達が止める。
「な、なんでしょうか?」
「いや……そのもしかしたらだったら良いんだけど……」
「この後も女の子に会ったりしませんよね?」
「え?」
二度あることは三度あるという。
彼女たちはそれを気にしているのだろう。
しかし、大丈夫だ。
確かに俺はこの後、クラスのゲーム友達の女子と部屋であう。
しかし問題ない、彼女とはただのゲーム友達、あっちだって俺に興味なんて微塵もないはずだ。
俺はそのことを彼女たちに伝える。
「だ、大丈夫だって、確かに女の子と会うけど、そういう関係の子じゃないし……」
「……本当?」
「私は信じられないんですけど」
「しかも部屋で二人きり……」
「確か明島さんって一人暮らしでしたよね?」
「一人暮らしの男の家に来る女子……」
「………」
「………」
「え、えっと……なんでしょうか?」
「「私たちもついていきます!」」
「えぇ……」
まさかの事態である。
*
一日に美少女二人から告白されたら、どんな男子でもうれしいだろう。
もうこの世の運をすべて使ったと言っても納得できてしまうかもしれない。
しかし、現実はそこまで甘くなかった。
「もう、貴霞君ダメよ? 毎日カップ麺ばっかりじゃ、体に悪いわ」
「は、はい……」
「も、もしよかったら……今度から私が夕飯だけでも作りに来ようかしら?」
「あ! ちょっとおっぱいさん! 抜け駆けしないでくださいよ!」
「なんですか、その呼び方! 私は嶋野宮瑠実です! 貴方こそ、そろそろ自己紹介くらいしてもらえませんか?」
「私は辻田胡桃です! おっぱいさん」
「だからその呼び方をやめなさい!」
あの後、二人は半ば無理やり俺の部屋に押しかけてきた。
二人いわく、これ以上ライバルが増えないか確かめる必要があるとのことだったけど……俺と水鏡に限ってそんなことは絶対にないんだが……。
「でも、以外でした……明島さん、以外に掃除とかちゃんとしてるんですね」
「まぁな、今日は水鏡が来ることになってたし、それにあいつも綺麗にしておけっていってたし」
「ふーん」
「そうなんですねぇー」
「な、なんだよ二人とも……」
「「別に―」」
なんで仲悪いのに、そういうところは息ピッタリなんだよ。
俺がそんな事を考えていると、部屋のインターホンが鳴った。
「あ、来たみたいだ」
「それじゃあ、私たちは隠れてるから」
「明島さんは普段通りでいて下さい!」
「お、おう」
そう言って二人はクローゼットの中に身を潜めて行った。
なんか嫌だなぁ……こんな状況で水鏡の話を聞くの……。
俺はそんなことを考えながら、玄関の戸を開けた。
「あぁいらっしゃい」
「お、お邪魔します……」
「あれ? 着替えてきたのか?」
「う、うん……」
「そっか……まぁ上がれよ、立ち話もなんだし」
「お、お邪魔します……」
なんだかいつもより口数が少ないな……きっと大事な話をする気なのだろう。
だから口数が少ないのだろう。
俺は部屋に水鏡を通し、水鏡にお茶を出した。
「それで話ってなんだ?」
「あ……うん……あ、あのね……」
ドン!
「今何か聞こえなかった?」
「あ、ぁぁ! ここは壁が少し薄いからな!」
あの二人……頼むから大人しくしててくれよ……この状況がバレたらまた面倒なことになるだろうが!
「あ、それでその話って言うのがね……」
「あ、あぁ……」
水鏡は顔を俯かせ、何やら頬を赤く染めながら話始めた。
「あ、あのさ……明島君って……その彼女って居るの?」
「え?」
彼女っていうか……告白ならされたが……この場合はどう答えるのが正解だ?
実質的にいないし、居ないって答えておくか。
「いないよ」
ドン!
ドン!
「まただ……本当に壁薄いんだね」
「あ、あはは……まぁね……」
あの二人めぇ~今のはわざとだろ!!
「で、でもそっか……居ないんだ……えへへ……」
「どうかしたか? 急にそんなこと聞いて……」
「あ、ううん! なんでもないの……」
水鏡はそういうと、深呼吸をし始め俺の方を向いた。
頬を赤らめ、彼女は俺を見ながら真っすぐにこういった。
というか、流石に一日に三回目ともなればいろいろわかってくる。
しかし、勇気を出そうとしている水鏡にやめろなんて言える訳もないし……かといって、言わせてしまったクローゼットに潜む魔物達が何をしでかすかわからな……。
どうする?
いや、どうするって言ってもどうにもならないんだけどさ。
「あ、あのさ……わ、私たちってその……し、知り合ってその……もう一年以上経つよね?」
「ま、まぁそうだな……」
「しゅ、趣味とか会うし……そ、そのあの……い、一緒にいて楽しいって私は思ってるんだけど……」
「そ、それは俺も同じ気持ちだぞ」
ドン!!
ドン!!
ヤバイ……クローゼットの中の二人が相当お怒りのご様子だ……わからんけど。
このままじゃいつ外に出て来るか分からないぞ!
「だ、だからさ……えっとね……あのその……私的には今まで以上の関係になりたいというか……なんていうか……あの……えっと……」
もう水鏡の顔は真っ赤だった。
相当緊張しているからか言葉にも詰まっている。
まぁ、流石にこういわれたらもう気が付いていないフリもできないな。
「えっと……それって……」
「あの……その……つ、付き合わない? 私たち?」
今にも泣きだしそうな真っ赤な顔で彼女はそう言った。
そしてそんな彼女に返事を言う前に、クローゼットから二匹の獣が飛び出してきた。
「「やっぱり!!」」
「え、えぇ!? だ、だれ!?」
「貴霞君! これはどういうこと!?」
「説明してください明島さん!!」
「ま、待て! 俺だってこんなことを言われるなんて思ってみなかったんだ! ま、まぁ正直今日の出来事全部そうなんだけど……」
「ちょ、ちょっと! そ、その前に貴方たちなんで明島君の部屋に? っていうかなんで人の告白こっそり聞いてるんですか!!」
「わ、悪い水鏡……今から説明するから、少し落ち着いてくれ、なぁ?」
「こっちはこの後の事を考えて、勝負下着に着替えてきたのに!!」
なぜ勝負下着を?
この後水鏡は俺に何をする気だったんだ?
「うわっ……体で誘惑とかないわ~、明島さんをそんあド淫乱さんに渡せません!」
「ド淫乱!?」
「おっぱいさんにも渡せません!」
「だから、その呼び方はやめなさい!」
「お、おい……頼むから落ち着いて話を……」
俺がそんなことを言っていると、急に部屋のインターホンが鳴った。
「「「また別の女?」」」
「ちげーよ!!」
インターホンが鳴った瞬間、三人とも俺をジト目で見ながらそう言ってきた。
なんか浮気してないのに、浮気男になった気分だよ……。
俺がそんなことを考えながら、ドアを開けるとそこにいたのは隣の部屋のお兄さんだった。
「あのさ……正直ご近所トラブルとか面倒だからあんまりこういうこと言いたくねーんだけど……少し静かにしてもらえないか? 勉強に集中できないんだけど」
「あ、すいません……」
「まぁ、いつもは静かだから何かあったんじゃないかと思って、心配してきたのもあんだけどよ……友達呼んで楽しいのはわかるけど、もう少し静かに頼む」
「は、はい……」
「じゃあな」
そういって隣のお兄さんは自分の部屋に戻っていった。
俺が部屋の中に戻ると三人にも話が聞こえたのか、場所を変えようという話をしていた。
「ここじゃ、他の住人にも迷惑です、別なところで話ましょう」
「賛成です」
「私も異論はありません」
バチバチと火花を散らす三人の美少女。
俺、今この瞬間で一生分の運を使い果たしたんじゃないか?
*
そうして、現在に至る。
あの後、俺たちは近くの公園に場所を移して話しをしていた。
俺はなぜか三人から地面に正座をするように言われ、何も悪いことをなんてしてないのに、三人から責められていた。
「まさか貴霞君にこんなに女の子の知り合いがいたなんて……」
「本当ですよ、私は明島さんの事を女っ気のない寂しい男子高校生だと誤解してました」
「むぅ……一番仲良いのは私だよね? 毎晩ゲームしてるし!」
「何を言ってるの水鏡さん、一番仲が良いのは私よ、彼とは一年以上の付き合いになるし、二人きりで買い物なんかも行ったわ」
「ふ、二人で買い物!?」
「ちょっと明島さん! それどういうことですか!!」
「生徒会の買い出しだよ!! いろいろ買うものがあったから付き合ったんだ!」
「なんだ……結局生徒会の業務じゃないですか、結局は先輩と明島さんの関係なんて、生徒会が解散したら終わる関係だったんですよ!」
「だからこのタイミングで告白したのよ! そうしたら、貧相な体系の子がいきなり割って入って来たんでしょ!」
「ひ、貧相ってなんですか!! 胸ですか! 胸のことを言いましたね!! これから大きくなるんです!!」
まぁ、確かに胡桃ちゃんはお世辞にも大人っぽい体付とは言えないな……どっちかって言うと中学生?
いや、最近の中学生は発育良いしなぁ……。
「二人ともいいじゃない! ちゃんと好きって告白出来て! 私なんて二人の登場でちゃんと告白できなかったんだよ!」
「どうせあの後色仕掛けで落とすつもりだったんでしょ? 淫乱ちゃん」
「あのままだったら明島さんの貞操はなくなってましたよ、淫乱先輩」
「だから私は淫乱じゃない!! だ、だって……こ、告白したら最近の高校生は流れでその日のうちに全工程を済ませちゃうってネットの記事で……」
「工程って……」
「もうやる気十分だったってことじゃないですか!! やっぱり淫乱先輩です!」
「ち、違うわよ! 友達に相談したら、明島君みたいなタイプは一回やると罪悪感で責任を取ろうとするから、この方法がおすすめって言われて……」
おい、その友達出てこい!
俺が説教してやる!
水鏡に何をやらそうとしてんだよ!
そして危うく俺の貞操がなくなるところだった!!
「まったく……それで貴霞君はどうするの?」
「え?」
「そうですよ明島さん」
「えっと……あの……」
「誰と付き合うの? 明島君!」
「そ、それは……」
俺の前の三人の美少女は俺を見てそういう。
いや、無理だろ!
この中から一人選ぶの!?
しかも、一人を選んでも他の二人とはその後も仲良くなんてできるの!?
嶋野宮先輩を選べば、俺は胡桃ちゃんのお父さんから殺されて、数少ないゲーム友達を失う。
胡桃ちゃんを選べば、勉強なんか教えてくれた仲の良い先輩がいなくなり、ゲーム友達も失う。
水鏡を選べば、仲の良い先輩を失い、胡桃ちゃんのお父さんに殺される。
なんか圧倒的に胡桃ちゃんを選ばないリスクがデカすぎないか?
だ、だが……かといって胡桃ちゃんを選んでも胡桃ちゃんのお父さんに殺されるかもしれない……俺は……俺は……。
「どうすればいいんだぁぁぁぁぁぁ!!!」