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悪役女王の足跡  作者: 綴月 結
第一章 悪役女王の目覚め
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7.悪役令嬢は涙する

 お父様とお母様に続きながら、今から見せられるのはお金の山で、決して無駄遣いされておらず、そのままの額があるという奇跡が起きることを、切実に、切実に、切実に祈った。


「さあこの部屋よ! 感動のあまり泣き出しちゃったらお母様の胸をかしてあげるわ!」

「いやいや、お父様だってかすぞ!」

「そういうのいいんで、なんか見たくないような気もするけど早く開けてください」


 二人が満面の笑みを浮かべて両開きになっている扉のノブを片方ずつ持った。


「「じゃじゃーーーん!!」」


 扉の向こう側に広がっていた光景が衝撃的すぎて言葉が一切出てこなかった。あぁ、神は私を見捨てたもうた。


「やっぱり!! エイミー、嬉しすぎて言葉にならないのね!!」

「やはりこれを買って正解だったな」


 お父様とお母様が盛大に勘違いしてる⋯⋯。


「いやいや、なんですか、このジュエリーの数は!! うちはジュエリー博物館でしたっけ!? うぅ、こんなことに使われていたなんて⋯⋯。お父様、お母様、胸かしていただけます? 悲しすぎて泣きたい気分です!」


 そこにあったのは、壁一面ジュエリーで埋め尽くされた、きらっきらの光景だった。いくら掛かったのかと思うとぞっとする。


「ど、どうして⋯⋯。エイミーはジュエリーが好きなんじゃなかったの⋯⋯」


 そんなことは記憶を取り戻す以前から思い出しても言ったことはないぞ??


「どうしてそう思われたのですか⋯⋯」

「だってね、エイミーがうちに来たばっかりの頃、はじめて笑ったのが私のブローチを見た時だったのよ!! 私はエイミーがジュエリーが大好きだって確信したわ!!」


 なぜそれで確信にいたった??お母様の思考回路は謎すぎる⋯⋯。


「申し訳ありませんが、私はあんまりジュエリーに興味ないです。小さいあかちゃんって、何かに満足すると笑うのではなかったのでしたっけ。お母様、それはおむつを替えた直後とかミルクをあげた後だったんじゃないですか?」

「そういえば、あの時はミルクをあげたすぐあとだったわ⋯⋯」

「じゃあきっと笑ったのはそのせいですよ⋯⋯。だいたい、あかちゃんって視力悪いから、ブローチみたいな小さいものは認識できないんですよ」

「エイミー、よく知ってるのね⋯⋯」


 前世で、CМにでてたあかちゃんが可愛すぎて、彼氏も旦那もいないのにあかちゃんがほしくなって、せっかくの休みを潰してあかちゃんについて調べたことがあった。思いだしただけで悲しくなってきた。


 お父様とお母様が悲しげな顔になる。せっかく私を思って買ってくれたのに言い過ぎちゃったかな⋯⋯。まあ、無駄遣いだけど。

 と思ったら、お母様の顔がパァァァっと明るくなった。


「でもねでもね! その宝石のほとんどがちょうど去年の今頃亡くなった職人さんの作品なのよ! 亡くなるまで全然有名じゃなかったから安く買えたんだけど、今や人気が出過ぎて彼の作品は高値で売買されているわ! この人の作品を持っていることが女性たちの間で権威の象徴になっているのよ! うちはあのバミアス公爵家よりたくさん持っていると思うわ!」


 どうだ、すごいだろう、という顔でお母様がこっちを見てきた。

 高値?!高値って言ったよね!!


「お母様、すごいです! お母様はすごいセンスの持ち主だったんですね! これを売ればすごいお金になるんじゃないですか!! さすがです! 今度は嬉しくて泣きそうです!」


 そう言うと、二人の顔が曇ってきた。


「う、売っちゃうの⋯⋯?」

「はい!! これを売れば家庭教師のみならず、領政の改革までできちゃうんじゃないですか!! 今、我が領民は苦しんでいるはずです。できる限りのことをするべきだと思いませんか?」


 そう言うと、お父様とお母様がはっとしたような顔になった。


「うん。そうだねエイミー。エイミーが特に気に入ったものだけ残して、残りは売ろう」


 本当は全部売っちゃいたいところだけど、お母様がせっかく選んでくれたものだからそう言うのはかわいそうだ。


 部屋の中に入り、ジュエリー達をじっくり見ていく。何か魔法が使われているのか、埋め込まれている宝石がいろんな色の光を発していたり、金属の部分の色や光沢がそれぞれ違ったりして、すごく綺麗だった。


「綺麗ですね⋯⋯。お母様、ありがとうございます」


 お母様に後ろから抱きしめられた。


「喜んでもらえて嬉しいわ。エイミーはどれが好き?」


 残すのはどんな服にも合うものがいいだろう。そういう視点で五点の作品を選んだ。


「エイミー、いい選び方ね。それならどんなドレスにも合うわ」

「じゃあ残りは明日買い取ってもらおう。明日から領政の話ももっと進めないとな」


 よーし!久しぶりの大仕事だ!!!すごくワクワクしてきた!キャリアウーマンの血が騒ぐ!


「皆さーん! 夕食の支度ができました! 夕食はちゃんとダイニングで食べてくださいね!!」


 いつの間にか姿を消していたミシェルの声が聞こえた。ミシェルってあーーーー!!髪と瞳の色を変える魔法教えてもらってない!!今日中に教わりたいのにー。


「ミシェル-! 夕食食べたら魔法教えてー!」

「寝る支度が早く終わったらいいですよー!」


 よし、まずはソッコーで食べよう。私がダッシュでダイニングに向かったのでお父様とお母様までつられてダッシュし、皆で黙々と夕食をとり、急いで解散して寝る支度を整えた。

 いつもより一時間以上早く終わった。我ながら好タイムだ。


 ミシェルと一緒にうちで一番広い、ダンスホールだとされている何もない部屋に行くと、寝る支度を整えたお父様とお母様も待っていた。部屋に入るとミシェルが扉を閉め、周囲に結界を張った。たぶん、覗き見盗み聞き防止のためだろう。


「準備完了しました。魔法を解いても大丈夫ですよ」


 お母様が目を閉じた。すると床全体が淡く光りはじめ、次第にその光が集まって複雑な模様を作ってゆく。きっとこれはうち全体に広がっている魔法陣の一部なんだろう。綺麗な模様だなーっと思っていると魔法陣がパンッと音をたてて消えた。


「エイミー、床ばかり見てないで鏡を見てごらん」


 そう言われたのでお父様が持っている鏡をのぞいてみると、「マジカルレボリューション!」の女王様の面影が感じられる、プラチナブロンドの輝く髪と、輝く金色の瞳を持った少女が映っていた。


「こ、これが私ですか!? 髪と瞳の色が違うだけでずいぶんと印象が変わりますね⋯⋯」


 なんか女王様感が増し増しなんですけど⋯⋯。自分があの女王様だということを改めて実感してしまい、すっごくテンションが下がった。そんな私にお構いなく、お父様、お母様、ミシェルの三人はすごく興奮している。


「おーーー!!! エイミー!! すごく似合ってるよ! この色になるのはあかちゃんの時以来か。やっぱりこの色を見るとエイミーがあいつの娘でもあることが嫌でもわかるな⋯⋯」

「ほんとほんと! 顔立ちはセシル様にそっくりなんだけどこう見るとモーガン様に似てる気がするから不思議よねー。でもそんなことよりエイミーが可愛すぎるわ!! どうしましょう! 写真を撮らずにはいられない⋯⋯! でも撮っちゃダメよね⋯⋯。目に焼き付けるわ!」

「お嬢様の髪と瞳のその輝き⋯⋯⋯⋯! 素晴らしいです!! 国王陛下以上ではないですか!! 鍛え甲斐がありそうでワクワクしてきました!」

「あの⋯⋯、三人とも⋯⋯。そろそろ教えていただいてもいいでしょうか⋯⋯」


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