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美形なんてくそくらえ  作者: 部須田部洲男
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美形なんてくそくらえ

 僕の名前は部須田部洲男。不細工な両親の不細工な遺伝子を受け取ったどこにでもいる不細工な童貞早漏短小キモオタデブスニートである。その不細工さは折り紙付きで、さらに僕は自分の顔面に誇りを持っているわけであるから徹頭徹尾、一挙手一投足すべての言動において僕は不細工らしい不細工な行動しかしない。

 例を挙げよう。例えば道端に雑草があったとする。大抵の美形であれば雑草を見た瞬間その恐ろしくも気高い美形で固められた美形による美形のための行動と信念に突き動かされ、さながら社交ダンスの相手を見ず知らずの令嬢の手を取り踊りだす英国紳士のように雑草を抜き取り一晩のダンスに明け狂うだろう。だが僕は違う。雑草を見たらまずは脳内で擬人化、わずか三秒にして裸に剥き、一晩の視姦にあけ狂った後、結局抜き取らない。

 さて、この文章からにじみ出るほどの回りくどくわかりずらい、いかんともしがたい不細工な文章から察せられているように、もはや説明の余地もなく僕は不細工である。

 そんな僕ではあるが生きる希望を見失わないかと言われたら別にそういうわけでもない。過去に死にたくなるような思いでなんて腐るほどしてるのだが、それでも天から奪い取ったこの命。親の脛をかじろうとも、借金を踏み倒そうとも、数少ない友人を裏切ろうとも、不細工に醜く生きてやる所存だ。

 僕がドロドロと気味の悪い目つきで近所を散歩をしていると視界に幼女が入った。しかしこの幼女。ただの幼女ではない。目から大粒の真珠のような涙をナイアガラフォールズのように流し、鼻からは鼻水がターザンのように伸びている。大きく開けたその口からは幾量かの涎とマンドレイクのような断末魔の声を上げている。おそらく母親を呼んでいると思われる。迷子だろう。僕は少し心配になり声をかけようとしたとき、視界の端からまたもや誰かが現れる。ちらりと視線をそちらに移そうとしたとき、思い切り頭に衝撃が走った。

 おそらくは数メートルは飛ばされたであろう。僕は朦朧とする意識と、重く響く鈍痛に耐えながらよろめきつつ立ち上がった。次に幼女の安否を確認するために探すと、予想だにもしない姿になっていた。

 幼女の背中、おそらく肩甲骨のあたりから禍々しいゴリラのような腕が二本生え、両腕は蛇の頭に変わっている。下半身は大量の固そうなうろこで覆われており、傷一つついていない。

 「なんぞ・・これ・・・」

 僕の少ないボキャブラリーではこういう風にしか形容できないほどに今の状況は常軌を逸していた。もちろん僕が戦えるわけもなく、武器も現在十円硬貨二枚しかポケットにはない。せめて百円硬貨が後一枚でもあればジュースでも買ってなだめれたかもしれん。

 がしかし、逃げるにしてもいかがなものか。50メートル走9秒台の僕がこの怪人から逃げれるはずもない。もはや万事休すか。

 さらに運が悪いことにこの幼女は先ほど母親を読んでいた。とどのつまり。

 「ピエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!}

 上記のようなマンドレイクでも何でもない激高を上げながら母親と思しき化け物が地中からコンクリートを盛り上げ出てきた。僕は無宗教者であるから、死なばそれまでの信長リスペクト精神。石山本願寺だって燃やしちゃう。そんな僕は余計な救済など臨まず死を覚悟した。来世も不細工で生まれますように。

 意味不明な状況に突然襲われた僕は、あまりにも俗的な願いを残してこの醜い一生を終えた。

 

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