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I am drowning

Helo me to breath.

「はぁ……。気にするなよ」


「そーいうわけにはいかん」


 カナの心臓が暴走した翌日の土曜の事である。


 針井の家にインターフォンが鳴り、父も母が不在で、もちろん兄もいない彼は、たまたま早起きだったのを良いことに、来訪者を出迎ると、そこには私服のカナと翠、それによそよそしく古椅子の姿があった。


「昨日は本当に悪かったわ……。今でも信じられへんけど、やっぱ、あたしの心臓がジュン同様にヘンになってたんやな……」


「まぁ……」


「でな? ジュンはあたしを止めてくれたんやろ?」


「まぁ……」


 針井は厚かましい態度こそ見せず、興味が無いように振る舞った。通常のフランクなカナの印象と全く違う姿を見ているから、彼は少し調子を狂わしていて、それを察せられるのが嫌だったのだ。


「だから、今日は何か御馳走しようと思うねん」


「オーサカらしくお好み焼きとかか?」


「んーな定番行くかアホ。普通にたこ焼きやでタコパ」


「?」


「気にしないであげて。カナにしてみれば、呼吸と同じくらいにたこ焼きを食べているの」


 論理の欠落したカナのセリフに針井が困惑をしていると、翠が耳打ちをする。その言葉を聞いて、針井はカナの得意げな表情がこれ以上になく滑稽に覚え、ついでに同情を感じた。


「それで、4人でイオンに買い物でもしようか、って話だったんです」


 と、傍らにいた古椅子。


「ジュンも来るやろ?」


 聞くまでもないだろう、と言いたげなカナの口調に、天邪鬼な針井は少し反感を含む言葉を投げかけてやろうかなんて思いつつ、しかしすぐに諦めた様子で、


「おう」


 と低い声で返事をする。


「よっしゃ! あたしが作ったたこ焼きが旨すぎて漏らしたらいかんで!」


「じゃあオムツも買ってこないとな。な? レーサン?」


「その微妙なネタを自分に振らないでください……。反応に困ります」


「オムツならウチにあるよ。実母とインド人の義父の間に生まれた義弟がまだ2歳なんだ」


「その話題はまた今度聞くから今は止めよう」


「おでんとたこ焼きって合いますかね……?」


「なんで三野さんが……?」


 古椅子がギョッとした顔を見せる。


 三野は見るからに中身がぎっしりと詰まったリュックを背負い、両手にはスーパーの袋。袋の中身には野菜だったり、蒟蒻だったり、卵であったり、つまりはおでんの材料がパンパンに入っている。その姿はまるで、山にキャンプへ向いにでも行くようである。プリミティブな姿で、蛇口をひねって水を得る人類の文明と乖離しているようにさえ思えた。


「あの、すみません……。ええっと、そのですね……」


 三野はそう言うだけで、あとはちょっと古椅子に照れるとか、お茶を濁すような言葉を使うだけで、古椅子の「なぜ三野がここにいるのか?」という疑問に答えることはなかった。

 

 「おいおい……三野さん。またおでん作って来たのかよ。レーサンや古椅子家も困ってるから少しは遠慮しようや」


「あの、最近、がんもどきに凝ってるんです……。良い豆腐を使うと本当にいいんですけど、案外、安い豆腐も馬鹿になりませんね。やっぱり、とうふさんすこです」


「あの、言いたいことがたくさんあるんですね。わかります……。ただ、ジュンさんを無視するのはちょっと……」


「完璧スルーが定番になって来たなこの女」


 今まで、針井は彼女に多少の不躾な扱いを受けようとも、気にしないか呆れたものだったが、しかし今回に限って、古椅子は妙に困惑する様子が強く、針井はそれだけが気に食わなかった。


 三野がいくら恋慕を暴走させた行動をしようとも、古椅子が迷惑をしていないならば、それは針井が突っ込むことは野暮だろう。しかし、古椅子が嫌な思いをしているのならば、それは迷惑行為以外になく、友人としては首を突っ込むべきでないか、針井はそんな思惟を巡らせて、


「なぁ、三野さん。ちゃんとレーサンの様子を見ろよ。普通に、キミの存在に困ってるぞ。押しては押せ、が恋の上等な策略じゃないだろ? 少しは数歩引いた大和なでしこに憧れないのか? そしてなんで2年もおでんを持って古椅子家に通えるんだ? どんな精神強度してるんだよ、君。まじで2年前からずっと疑問が強くなってるんだけど」


 針井は言いたいことを全てぶつけるように三野へと言い放つ。すると、今まで影にいた女性陣が顔を出し始め、


「たしかに、ちょーっと、出しゃばりすぎやで。三野ちゃん」


「ま、まぁ……。確かにそうだね。古椅子くんも毎日おでんを食べれないよね」


 カナは図々しくも的確に、翠は遠慮がちで強く責めない口調で三野の行動を否定した。


 __今日はやけに三野さんの異常性を指摘するな、3人とも


 針井の正直なところは、2人の女性陣はもちろん、三野に対し薄く戸惑いの表情を見せる古椅子でさえ、針井の助け舟にはなりえないと踏んでいた。それはいつもの事であるし、特に性格的に古椅子の翠はなかなかに正直な感情をぶつけないだろう。しかし、今回の4人の意見が合致し、それを各々の形でアウトプットをしている状況に、針井は一抹の不自然さを感じている。


「つっ……」


 と、三野の口から舌を打ったような音が鳴る。


 __うっわ……。舌打ちしやがったこの女……。心象最悪だろ……。


 針井は顔にでるほど愕然とし、古椅子に翠、カナの3人も、三野を自分勝手だと思うとか、舌打ちはもしかしたら聞き間違いかもしれない、などと強い印象を受けた様子でいた。


「そ、そう言えばなんだけど、針井君って意外にお金持ちなの?」


「ん? いや、とーちゃんは普通の公務員で、かーちゃんはパートと騙って浮気相手に会いに行くような家庭だよ」


「そうなの? じゃあ、お母さんは円光で稼いでるのかな?」


「翠ちゃん、普通に失礼な言い方やで」


「あっ! あの、ごめんなさい! うちのお母さんがやってたから……つい、浮気と聞くと」


「あの、話を戻しましょうよ……。そうするべきです」


「なんで、うちがお金持ちだと?」


 翠の発言に、針井と古椅子は矢継ぎ早に話題をそらそうとする。


「だって、そこの車……ベンツだよね。それに、まだ新車っぽいし……」


 翠が指した方を見ると、そこには確かにベンツのロゴが入ったオープンカーがあった。それもSクラスの新車。ハリウッド男優を無理矢理に車の形へとデザインしたようなスポーティ&スタイリッシュな外観は、高校生の彼らにでも、並々の存在でないと圧倒される。


「……ホントにベンツか? 俺んちの車はマツダのデミオだぞ。あと、スズキのクロスビー」


「でも、どうみてもロゴはベンツですよ。マツダとちょっと似てますけど。それに、あんな大きさのロゴをド真ん中に置く車はベンツだけですし。ほら、ちょっと波動砲が出そうな感じに」


「なんや、もしかして不法侵入なん?」


「ベンツを買うような奴が泥棒するほど俺の家は裕福じゃないつーの。まぁ後で父ちゃんにでも聞いてみるわ」


 と、針井はあしらうように返事をした。


「それより、買い物に行くんだろ? 早く行こうぜ」


「ん? せやな。せっかくだし、いろいろと買い物しようや? 田舎町だとジャスコくらいしか娯楽施設無いの辛いわ」


「イオンだよ」


「あの、ではこの荷物をお願いします」


 三野は突然割って出てきて、針井の前にリュックや袋を地面に置いた。ドサッ、という重量を感じる音が響いた瞬間に、周囲は氷でも当てられたみたいに空気が冷えた。


 では、と言わんばかりに三野は、針井に背を向けて、古椅子の片手を抱いた。


「ちょっとちょっと! 三野ちゃん! このリュック、ジュンに持たせるつもりか!?」


「えっ!? でも、重いものは男の人に持たせた方が……」


 本当に驚いたような顔をした三野の姿に、誰もがとぼけているとは思わなかった。だからこそ、彼らは言葉に詰まり、非難のしように困った様子でいた。


「あの、なら自分が……」


 苦い顔をして古椅子は名乗り出る。


「そんな! そんなのはダメですよ!」


「なぜ……?」


「そんなのは……言わせないでください……。とにかく、先輩はダメです! ダメってことでお願いします!」


 その場が唖然とした。小胆な古椅子と翠はしどろもどろに精いっぱいで、普段は鉄砲玉みたいなカナでさえ、相手が女の子だからか強気になれずにいた。


「なんでお前みたいな小娘のためにこんなリュック背負わないといけないんだよ。そんなに要らないモノならそこらの犬に食わせてればいいんだ」


「男の人なのに、小言ばかり言わないでください!」


「その喧嘩、買うわ」


 針井が低い声でそう言うと、彼は親指を中節骨に添える形で拳を握り締め、左足に重心をかけ、体を捻ってバネのように拳を下から上へと突き上げる。


 拳はそのまま三野の下あごに突き刺さり、彼女は数センチほど空を舞った。運よく舌は噛まなかったようだが、無防備な顎への強烈な一撃は彼女の脳を揺らす。当然だが、三野は受け身を取る余裕すらなく、その体を地面に直撃させて、そのまま起き上がらなかった。


 針井はその無様な三野に勝ち誇る訳でも憐れむ訳でもなく、ただ唾を彼女に吹き付けた後、


「どうだ。男らしく拳で語ったぞ。これならてめーみたいなオベンチョちゃんも文句はないだろ?」


「なにやっとんねん!」


 カナは鬼のような形相で針井の胸倉を掴む。彼女は心臓の反物質を使ったわけでもなかったが、その勢いは凄まじく、針井は彼女の気迫に押される。重心が後ろになった上、彼女に突かれるように仰け反った。


「なんでそんなに怒る?」


「怒るに決まっとる!! 女の子、女の子を殴るなんて!!」


「男なら殴っていいのかよ」


「当たり前や! 男でも殴ったらイカンのに女の子なんてもってのほかや! 女の子の顔はな! その子の命より大事な物や! それを殴るなんて、酷すぎる!」


「だが、子犬みたいなペットだって、叱ることで便所の場所を覚えるだろ? 人間は嫌なこと思いをして、そこの社会にある常識を覚えるんだ。嫌な思いをしたくないから、嫌な思いをしないことをするんだ。それが生き物ってもの、進化ってものだ」


「知らん! とにかく女の子を殴るなんてジュンは悪魔や!」


「理屈じゃないんだな」


「ジュン君、今のは流石に……さ」


 物怖じな翠でさえ、顔の色を薄くして針井の行動を責める。


 しかし、当の針井は自分の行動を受け入れない周囲に反発するとか、逆に他人の批判を恐れて怖じ気づくなんてこともない。ただ、平常心を装っているようにも見える。


 針井は少しだけ古椅子に視線を送る。古椅子は何も言わず、目線をそらした。


「なんでジュンはそんなひどいこと出来るんや! お前、自分のかーちゃんが目の前にいても同じこと出来るんか!? かーちゃんに申し訳ないとか思わんか!?」


「さっきも言っただろ。俺のかーちゃんは、俺を躾けるより夫以外の男に躾けられてたんだ。とんだ糞アマだよ」


「自分の母親を侮辱するな! どんな教育受けたんやお前!」


 カナは掴んでいた針井の胸倉をそのまま放り投げる。針井はそのまま地面に叩きつけられ、カナはそんなことお構いなしに怒声を続ける。


「なんで自分の親をそんなに馬鹿にできるんや!? お前を大事に育ててくれたんやぞ!? 何で少しも感謝しないんや!」


「なんでって……」


 針井は流れるように反論しかけたが、カナの心臓にひびが割れ、エネルギーのエンジンがかかり始めていることに気付き、口を閉ざす。


 その場でかなり察しの良かった古椅子は、針井の行動からカナの暴走寸前な状態を推理する。そして、すぐさま翠にそのことを耳打ちし、カナを止めるように画策した。彼は針井のようにカナの心臓を直接的に認識できるわけでもないのにも関わらず、針井の逡巡からすべてを把握した洞察力は優れているといえよう。


「カナ、落ち着こう?」


翠の一言で、カナは怒りから少し解れたようだった。「そうやな、すまん」と添えただけのような一言を言って、針井から目を逸らした。


「悪かったよ。ごめ……」 


「あの、どなた?」


 針井が謝罪をし終える寸前で、その女は現れる。

 

 ブラウンのカットソーに花柄のロングスカート、肩にメッシュのトートバックをかけている着飾った女性。カナと針井の剣幕な雰囲気の中でも、彼女は柔和にほほ笑み、落ち着いた様子で彼らの中に入って来る。


「あぁ……純さんの、お母さん」



 戸惑い半分に古椅子は呟いた。


「あら、礼くんだよね? 久しぶりだね!」


 針井の母は、にかっ、と笑いだし、高い声を出しながら古椅子の傍に寄り、彼のことを観察する。そして、「大きくなったね、身長はいくつ?」とか「男前ねぇ……モテるでしょ?」などと彼を伺っていた。その様子を見て、さっきまで気まずそうに謝罪を仕掛けていた針井は睨むような顔をした。


「ジュンのお母さん? ……わっかいなぁ」


 さっきまでの緊迫を引きづっているのか、カナは少し強張っているようだった。


「あんまり羨ましいものじゃないよ。恥ずかしい」


「……ジュン。親の悪口なんていうもんちゃうで」


「そうしたいよ。本当に」


 またカナはピリピリするような顔を針井に向けるが、彼の母親の前だからか大きな声を出すようなことはセーブした。針井はもちろんカナの様子に気づいていたが、しかし煽ったことを後悔する素振りは見せない。むしろ別の事で頭がいっぱいの様だった。


「もしかして、この女の子たちって、純に会いに来たの?」


「あはは、そうです」


「まー! まー! まー!」


 ガラスが割れるくらいに高い声で針井の母親は鳴いた。溢れんばかりに笑みを浮かべ、カナや翠を神と見ているくらいに有難そうに接し、針井と長い付き合いをしてくれとか嫌わないでほしいとか頼んでいる。


「なぁ、とりあえず、ジャスコ行くんだろ?」


「イオンだよ」


 翠が指摘。


「はいはい、イオンな。はい、イオン行こうぜ。……ああ、母さん、夕飯はいらないから」


「そう? お母さん、今日もお仕事頑張ったし、夜は美味しいものにしようと思っていたけど……」


「仕事……仕事か……。何の仕事だっけ」


「え? ……今日は、ファッションのデザインとか……」


「ジュンの母さん、ファッションデザイナーやっとるん? カッコいいなぁ」


「良いなぁ。服もお洒落だよね」


「ジュンさん、あの、止しましょう」

 

 カナや翠は、ファッションという言葉に反応し、針井の母に羨望のような感情を盛り上げていたが、反面、古椅子は全く別の危機感を抱いているようだった。


「だから昨晩は帰ってこれなかったのか。ふーん。昨日の夕方に出て、今日の朝に帰って来るのか。変な時間に仕事をしてるんだな。そりゃあ、息子の飯も用意できんな」


「ちょっと、いろいろあって」


「ていうか、つい数日前まで事務とかコンビニのバイトとか言ってたけど、そこはクビになったの? いやそれ以前に、ファッションデザイナーやってるって初耳だけど、あーいう仕事って素人でも大丈夫なの? 資格とか経歴とか必要じゃないの? 母さん高卒だし、そんなのなかったよね?」


「ちょっとジュン! なに問い詰めとんねん! 母ちゃんが困っとるやろ!」


「ジュンさん、落ち着きましょう。気持ちはわかりますけど、今はあんまり良くないです」


「カナもおちつこ。怒るとまた……」 


 針井は古椅子やカナの言葉も、念仏のように聞き入れず、静かな表情だが叩くような視線を母に送り付ける。その様子に古椅子は懸念が、カナはストレスがそれぞれ積もっているようだった。


「純? これでもね、一応は純のために……」


「こんなみっともない嘘をつくことが、俺にできる精いっぱいのことかよ」


 その低くも印象的に響く声と同時に、針井の母親が持っていたトートバックの底がジワジワと赤みを帯びたあと、黒く焦げ、バッグの中身がボロボロと落ち始める。


「あっ! どうして!?」


 針井の母親は急いで中身を回収し始めるが、その前に、針井はバッグから落ちた1つの箱を拾い上げる。それは煙草の箱くらいの大きさで、市販されているようなデザインにも関わらず、どうにもパッケージに中身を特定させるような情報が載っていない。


「なんや? それ」


「あー。これ、たぶんコンドームだよね」


 翠は似たようなものを見た覚えがあるらしく、すぐに推察が出来たらしい。


「当たり。でも、春野に当てられるのちょっと、うん、なんか」


「ちょっと翠ちゃん!?」


「ああ、気にしないで。まぁ、そういうこともあるよね」


「はぁ……」


古椅子の大きな溜息。


 対して、針井の母は今にも失禁しそうなまでに震えている。


「ち、違うの……っ。こ、これはちょっと貰っただけで……」


「見栄なんか張るなよ。女の子の友達の前でだけ良き母親でいる必要なんてないし、そっちの方がみっともない。浮気してたんだろ? また父ちゃんに殴られても知らないぞ」


「やい! ジュン!」

 

 カナは怒り狂って吠える。


「みっともないなんてことはないわ! お前のかーちゃんはかーちゃんなりに思いがあったんや!」


「……」


 針井とカナはしばらく睨み合う。しかし、針井はカナの強情な姿をすぐに察し、諦めた様に、


「……すまん。先にジャスコに行っててくれ。ちょっと頭冷やしてくる。後で合流するから」


「イオンだよ」


 と、翠。


「うん。イオンだったな」


 針井は空しさを微かに、カナを通り過ぎて、そのまま外に消える。途中、古椅子と顔を合わせると、小さく「すまんな」と再度の謝罪した。もちろん、古椅子は咎める様子もなく、「待ってますよ」と返す。



__________________ΩΩΩΩ__________________


 

「ずいぶんと、修羅場な感じだったな」


「まぁな。母さんが来たのは兄貴の差し金か?」


 針井の隣に、兄貴と呼ばれた男がいた。突然の登場だったが、針井はさして驚く様子もなく、自然に言葉を返す。


「ははっ。でも、あの女がデザイナー気取るなんて俺すら予想してねーよ。やっぱネジが壊れてるんだな、あの女。ある意味、尊敬するわ」


「そっか。また兄貴の悪戯か」


「怒ってる? ごめんごめん。それより、これからどこ行くんだ? 良ければ送ろうか?」


 兄貴がそう言うと、後ろからベンツが走って来る。ベンツは兄貴の傍に泊まると、運転席に座る小柄の女性が助手席を開けた。その女は、顎を殴られたみたいに、顔にあざがあった。


「そっちまで兄貴が絡んでいるのかよ」


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