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めざわりテレビ・フライアンさんにインタビュー・1週目

毎週水曜日にわたって、巷で大顰蹙となっているフライアンさんにインタビューさせて戴きました。

どうか皆様、お食事をなさらないようにご視聴をお願いします

『では、改めて自己紹介からお願いします』


 テレビに映っているのは、大学を卒業し、テレビ局に入社したばかりであろう若い女子アナとハエの顔面をした男。ハエの男は、顔のほとんどを覆う赤い複眼に、人間の鼻に当たる場所には二本の触角。下側は体毛に覆われ、それに隠れるようにストローのような長い鼻が伸びている。


『籠山 守。46歳。かの事故以前は、コンピュータの販売や修理をしていました』


『えっ!? ナガノにコンピュータなんて現代的なものがあったんですか!?』


『当たり前です。ナガノを何だと思っているのですか』


『すいません。以前のナガノを知らなくって……。そうなんですか、ナガノなんて事故なんかなくても発展途上の田舎町だと思っていて……』


『……』


『おっほん。それでですね。フライアンさん』


『その、フライアンって呼び方、止めてくれません?』


『ええっと……どうしてでしょう? 私は可愛いと思いますけど』


『可愛くありません。僕はなりたくてこんな姿になったわけじゃない。ハエなんて……こんなみっともない姿。ネットの人間は僕を笑うようにそう呼びますが、正直に言って不快です』


『それならば……ええっと』


『籠山』


『はい。籠山さん。では、貴方を知らない方の為に、なぜこのようなお姿になってしまわれたのかを説明いただけますか?』


『僕は、もともとナガノに住んでいました。しかし、あの放射線バーストの事故が起き、ナガノはそれこそ壊滅状態になりました。ナガノを出ようにも、政府は早々に隔離を始め、ついには壁なんかが出来て、出入りなんてとてもできない状況に……』


『ご愁傷さまです』


『荒廃したナガノで、僕は山の動物や虫を食べて生きていました。ナガノは内陸県なので、虫料理なんかが発展していて、まぁ、スーパーでもたまに虫が売っていましたし、実際に何度か食べた経験もあり、特に強い抵抗はありませんでした』


『虫料理ですか。ナガノの文化の1つとして、今も残っていますね。ほとんどがGifやグンマー産ですが』


『ええ。しかし、政府公認の科学機関が非人道的な生物実験や放射能を起こす実験を始めてからは、それが難しくなりました。というのも、生物実験の失敗作が放流されるようになったからです。ナガノの生態系は一気に崩壊し、さらにそのカオスな環境からか、他の生物も指数関数的に狂暴で強力になり……ついに僕はハエくらいしか食べるものがなくなりました』


『おやおや』


『それからです。ハエを食べ続け……気づいたときには私の目は細かく分かれて肥大化し、口は象のように伸び、ついには翅が生えてきました』


『なるほどぉ……。生物って不思議ですねぇ』


『空を飛べるようになってから、僕は壁を超える決心をしました。壁にはセンサが搭載されていて、危険な生物は出ることが出来ませんでした。僕はこんな成りですから、センサが反応して、コンピュータ制御の機関銃や熱光線なんかが飛んできましたが、すべて避けることができました。今は、Ichに住んでいます』


『ほう。それは凄いです。ちなみに、どうしてIchに?』


『もともと、Ichの大学にいたんです。だから、僕の第二の故郷とということで、住むならばIchしかないと』


『しかし、壁のセンサが反応したのだから、フライアンはナガノで生活するべきだ、という意見もあります。それについて、フライアンさんはどうお思いに?』


『籠山です』


『申し訳ありません、籠山さん』


『ええ。そういう意見もあるでしょう。しかし、僕は平穏な生活を望んでいます。別に、人間を焼いて煮て食おうなんて思いませんし、以前は普通の人間として生活していました。大学まできちんとした教育を受け、社会で生活するための倫理やルールもわかっています。見た目はこんな風ですが、化け物でも怪物でもありません。僕は人間なんです』


『なるほど。つまり、まだ自分はハエではなく、人間だ、と主張したいわけですね』


『まだ、って何ですか? どういう意味で?』


『ちなみに、現在のお仕事は何を?』


『……。職は探していますが、やはり難しくて。とりあえず、波速博士の研究対象として、彼の研究室に住んでいます』


『かの高名な波速博士ですね。いやぁ、科学が1つ発展する音が聞こえる気がします』


『止めてください。研究の対象なんて。僕は実験動物なんかじゃない!』


『えっ、フライアンさん!? ちょっと……!』

 

 フライアンが突然、暴れだす。アナウンサーはビックリとして、スタッフの数人が暴れるフライアンを制止しに彼を囲む。


『いいですか! 僕は普通の人間として生活したいんです! 普通に働いて、帰ったら家族が出迎えてくれるような、そんな生活がしたいんだ! なんでみんなそれを許してくれない! 僕がナガノ出身だからか!? いいじゃないか! ナガノのどこが悪いんだ! 放射能があるからか!? 虫を食べるからか!? 未だに部落があって、怪しい呪術を研究しているからか!? 僕は好き好んでナガノに生まれたわけじゃない! 誰か僕を愛してくれよ!』


『ちょっ、フライアンさん落ち着いて! カメラの画面いっぱいに映らないで! えっ? フライアンさんが画面いっぱいに移った瞬間、視聴率が8割近く減少? ああっ! フライアンさん! 一度落ち着いて! フライアンさんの顔が映ると、視聴者さんは番組を変えてしまうんです!』


『別にンゴヤのブス女でも、キョートの腹黒女でもいい! 僕を愛してくれ! 頼む! このまま誰の理解もないまま、人間の社会でも1人なんて嫌だ! 誰かーっ! 誰か―っ!!』


ブチッ


 大変申し訳ございません。

 不快な映像が放送された為、しばらく放送を中断しています。。

 現在、復旧に勤めております故、しばらくお待ちください。






この度はこのような事態になってしまい、大変申し訳ございませんでした。

次回のインタビューは来週の水曜日のこの時間となります。


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