第1話「カゼマル」
「何で私は不幸なんだろう…ウゥッ…」
ずっと聞かされるお母さんの声。
僕は「大丈夫だよ。」と慰めた。
お母さんが悲しいのは嫌だから。
起きたらお母さんが僕の首を絞めていた。
「ごめんね。颯」
必死で抵抗すると、お母さんの力は弱まり泣きながら止めてくれた。
「何でそんなことするんだよ」と泣き叫び、僕は布団を厚く被って無言になった。
それから数年後、俺は中学二年生になった。多分もうそろそろ中二。不登校である。別に学校に行きたいとも、行くことが大切だとも思わない。みんな社会社会って何を定義に言ってるんだろう。楽しく生きてたらそれで良い気がする。
「今日はLV70まで進めよ」
「ウワー最悪、こいつ俺が倒した敵のアイテム取ってんじゃん。"か・え・せ・よ"」
「ねえ、颯、今日三年生の卒業式だって先生から電話来たよ。あと学校に残したままで受け取らなきゃいけない物もあるって」
「だから?てかそんな事どーでもいいんだけどw部屋入んないでくれる?」
「…」
ハッキリ言ってウザい。死んでほしい。ただ死んでほしいっていうとヒステリックになるからメンドイ。あ~どうでもいいから早く消えてくれないかな、一生食える分のお金残して。
ピコピコ
「あ…もう3時、まだ12時くらいかと思った」
「……久々に外行きたいな。空気がうまくて空が見えるところ。」
作りおきしてあった米2合をサランサップで包んで塩持って、自転車で30分の森へ向かった。
久々に来た。蓬森
小学校低学年の頃はよく遊んでたな…はっ…嫌な事思い出した。どーでもいいから先に進もう。
「確かここら辺に小屋があって、その奥に…」
ん?なんか、人みたいな物がぶら下がってる。
人?
「ヒッ…」
ビュン
死体を見て頭が状況を処理する前に、光線みたいな物が飛んできて吊るされているロープを切った。
ドサッ
「…えっ」
「また…また助けれなかった」
振り返ると、俺より少し小さい少年が呟いていた。
「また…ウゥ…」
悲しんでいる。助けられなかったことを悔し泣きしているようにみえた。
「…だ、大丈夫か?」
「…うん…。僕、この人、助けたかった…ウゥ…」
「そ、それは仕方ないと思う。この人はきっと死にたかったんだ…。」
「それは違う。おじいちゃんが、"死にたい人は誰一人いない"って言ってた。だから、僕、助けたかった。」
「…」
「とりあえず…小屋で休まないか?」
「うん…。僕の家。」
こんな所に住んでいるのかと、さっきの光線は何なんだと、色々気になることがあるけれど、少し冷えた体に木の実の入ったスープが染みて、かなり落ち着いた。
「な、なあ、これどうやって作ってるの?」
「木の実と、葉っぱと、塩」
えっ……それだけでこんな旨いのか…
「お前…なんなんだよ、何でここにいんだよ」
「おじいちゃんと暮らしてたから。少し前に死んじゃったけど」
…なんか訳有りなんだな。多分親の祖父に引き取られたんだろう。
「俺も…親はいないのと同じ。」
「えっ、死んじゃったの…?」
「いや、いるけど、居なくなっても同じ。」
「…よくわかんないけど、側にいる人が居なくなるのは悲しいよ。」
「…別に。世の中には色んな奴がいんだよ。」
「おにーさん名前はなんていうの?」
「…はやて」
「そっか!僕カゼマル!」
「よろしくね颯」
「呼び捨てかよ…」