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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第三章 因果応報編

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第89話 追加ミッション

 夜食を食べ終わり、ようやく落ち着いた頃。

 竜郎は広い部屋の隅に、子供の身体にしたカルディナとジャンヌを出現させ、部屋の隅に待機していてもらう。

 それから愛衣に協力してもらいながら、竜郎はついに二体の魔力体生物の、新たな体造りを始めた。

 まずは、竜力と魔力を混ぜ合わせた竜魔力を練り上げる。

 後は今まで以上に負担が多くなった事を除き、いつもの様にその魔力を使って光と闇の混合魔法を使うだけである。



「たつろー、頑張って」

「ああ、やってみる」



 愛しい人の頑張ってと言う言葉は、それだけで気分が上がっていく。

 竜郎は張り切って、次のステップに踏み出したのだった。


 それから一時間もかけて、ようやくカルディナの分が完成した。



「だあっ、まじか。たった一体分造るのに、こんなに時間がかかる様になるなんて」

「でも、完成はしたんだよね?」

「そのはずだ。じゃあ、まずはカルディナ〈これを新しい体にしようと思っているんだが、何か嫌な感じとかするか?〉」

「ピュィーピュィー!」



 嫌な感じどころか、首を勢い良く横に振って、特に嫌な感じなどないから、早くその新しい体にしてくれと、今まで以上に乗り気になっているほどだった。



「大丈夫そうだな、じゃあカルディナ」

「ピュイッ」



 そうしてカルディナは、その魔力の塊に飛び込んでいった。


 それからの作業も今まで以上に集中力を必要とし、いつも以上に時間をかけて成功した。

 なので早速、新たなカルディナのお披露目をしようとしたら、体を成す前に竜郎の身体の中に還ってしまった。



「カルディナ?」

「どうしたの?」



 今までとは違う挙動に、何かまずったかと焦りながら、自分の魔力の中に確かに存在するカルディナに呼びかけた。

 すると今回は、仕様が変わった体をより知りたいといった様な感情が伝わってきた。

 それに問題は起きてないか聞いてみたが、心配しなくていいという感情が伝わる。



「ゆっくり、自分の身体を確かめたいんだそうだ」

「じゃあ、大丈夫って事?」

「ああ。心配はしなくていいってさ」

「なら、安心だね」



 そうして、その一連をじっと眺めていたジャンヌが、次は私ね、と言わんばかりにソワソワしていた。

 正直、ジャンヌの分もやると思うと気が重くなっていたが、一匹だけ贔屓にしているようになるのも可哀そうだ。

 なので竜郎は気合を入れ直して、また時間をたっぷりかけてジャンヌの分も造り上げていったのであった。


 それからジャンヌのボディチェンジも無事に終わり、こちらもカルディナ同様、体の変化を確かめたいと、体を成す前に竜郎の中に還ってしまった。

 すぐにでも二体の成長を見てみたかったが、じらされるのも楽しみの一環だと割り切って、その日の晩は疲れた頭を休めるように、愛衣に癒してもらいながら過ぎていった。




 太陽が完全に顔をだし、時刻は九時を回った頃、竜郎は目を覚ました。

 例の如く隣で寝こける愛衣の顔を堪能しつつ、起こしていった。

 それから着替える前に昼食分も含めた量を朝食として注文し、料理が届く間に支度を済ませていく。

 量が多かったせいか、支度が終わっても未だ来ず手持ち無沙汰になったため、愛衣の髪を竜郎が櫛で梳いてあげている時になってようやく、ドアがノックされた。

 それを受け取って、朝食を食べながら今日の予定を改めて詰めていった。



「カルディナやジャンヌは、もう出てこれるの?」

「ああ、さっき確認したらもうばっちりらしいぞ」

「そっか、なら安心だね」

「そうだな。それで今日はジャンヌに湿原まで連れて行ってもらって、その後はカルディナと探査魔法で警戒しつつ巣を見つけて燃やすってとこかな」



 竜郎はそこで魔物図鑑を開いて、デプリスについて調べた。

 それによれば毒針には気を付けた方がいいと記載されているものの、個としてみれば大した魔物ではないらしい。

 また、巣の中には一体ビプリスという女王蜂に値する魔物がいるらしいので、これは出てくる前に巣ごと焼き払う事を推奨していた。



「これなら、数がいても大丈夫そうだな。特殊な攻撃や、魔法系の攻撃も無さそうだし」

「それなら、私でも安心だね」



 そうして最終確認も済ませて、二人は宿を出て門外に向かった。

 門に着いた際に以前話した白髪交じりの衛兵がいたので、軽く挨拶を交わしてから外に出た。

 それからブープロン湿原の方向に歩いて向かい、人目が無い場所にまでくると、いよいよ二体を呼び出すことにした。



「カルディナ、ジャンヌ、出てきてくれ」

「ピュィー」「ヒヒーーンッ」



 竜郎の呼びかけと共に、二体がその姿を現した。

 まずカルディナは、元々鋭かった足の爪はより鋭くなり、さらに胸の辺りから肉食恐竜のような、鋭い爪を持った小さな手が生えていた。

 また鳴いた時に開いた嘴の中には、ギザギザの細かい歯が生えていた。


 そしてジャンヌは、サイそっくりの見た目で、どっしりとした体形だったのが、ほんの少し手足が長く細く、体もシャープになって、分厚い皮の鎧は竜の様な鱗の鎧に変わっていた。

 そして鼻先に生えていた角はより尖り、凶悪な武器になっていた。



「なんか……見た目が───強そう!」

「魔法使わなくても、ガチンコで戦えそうな見た目になったな」

「なんというか、存在感? ここにいるっぞって感じが、かなり増した気がするね」

「増しすぎて、街中で出したらパニックになりそうだ。〈竜力を使わなかった状態になることは可能か?〉」



 別にできなくてもいいが、できたら色々便利そうだと聞いてみると、純粋な成長系にも変化できるようで、その体を見事に変化させていた。

 そちらの姿は今までとそう大差はなく、より引き締まっていたり、肉体が大きくなったりしていた。

 そっちの身体と、さっきの身体の何が違うのか聞いてみると、竜力に影響を受けた方の身体の方が、魔力消費量微減、身体能力増と、やはり十全に能力を発揮するにはさっきの方がいいらしい。

 しかし道中もしすれ違う人がいたら、そちらの方の心臓が心配である。

 なので戦闘行動時以外は、一先ず竜力形体は温存していて貰うことにした。

 それから犀車をだして、少し大きくなったジャンヌに新たに成形しなおした金具を付けさせてもらい、それを犀車と連結させた。



「じゃあ、あっちの方角に向かってくれ」

「ヒヒーーン」



 どこか声も凛々しくなった感じがした竜郎は、成長した我が子を眩しい目で見つめたのだった。



 それから聞いた道をそのまま辿っていき、すれ違う人も来ず、何も問題なく目的の場所手前までたどり着いた。

 今いる場所は石畳の上なので問題ないが、ここから先は湿原地帯なので足場が悪くなる。

 なのでここでひとまず休憩を挟んでから、一気にサクッと終わらせるつもりだったのだが、予想外の事が発覚した。



「巣の数が、想像してたより多いな。カルディナと調べた限りでは、全部で十六個もあるぞ」

「大きさはどれくらいなの?」

「6メートルくらいだな。デプリス自体は三十センチくらいか」

「三十センチの蜂って、日本で出会ったら失神する人がでそうだね」

「まあ、蜂じゃないが、もっとでかいのと何回も戦ってるから俺達はもう驚かないけどな」



 そんな事を言いながら、竜郎はどのルートで行くのが効率がいいのか、マップ画面と睨めっこしていると、突然愛衣が騒ぎ出した。



「思い出した! 確かデプリスって」

「突然どうしたんだ?」



 竜郎の声も聞こえていないのか、愛衣は一心不乱に何かの図鑑らしきものを取り出して、目当ての項目を見つけた。



「たつろー、これこれ。食べられる魔物辞典のこのページ!」

「食べられる魔物辞典って、まさかハチの子で佃煮でも作る気か? 俺そういうの苦手なん──」

「私だって苦手だよ! そうじゃなくて、ここだよっ」

「えーと、なになに……」



 愛衣に促されるままにその項目を読んでいくと、デプリスの蜂蜜について書かれていた。

 それによると、デプリスの巣の中には蜜の詰まった部屋があるらしく、味が普通の蜂蜜とはまた違う深みのある美味しさがあり、わざわざそのために飼いならして育てている養蜂所もあるほどらしい。



「これが食べてみたいと?」

「うんっ」

「やってみてもいいが、あまりにも手間になりそうなら諦めてくれよ」

「それでいいよ!」



 竜郎としても興味はあるが、安全かつ効率を求めるなら蜂蜜ごと焼却した方が早いのだ。

 愛衣がこう言わなければ、解っていてもそうしていただろう。

 しかしあまりにも欲しい欲しいオーラを醸し出す愛衣にはかなわず、すでにどうすればデプリスだけを倒して、巣を確保できるか考え始めていた。

 まずは探査魔法で、蜂蜜のある場所を特定していく。

 どうやら統一性はなく、巣ごとに場所が違うようだった。

 しかし、特定は可能だと解った。



「んじゃあ、やりますか」

「おー!」



 そうして新たに、蜂蜜取りのミッションが追加された。

 まずは、水魔法と土魔法を駆使して足場を固めつつ、他の巣と一番離れていて、尚且つ現在地から近い場所にあるものを目指すことにした。

 ジャンヌは巨体なので、一旦竜郎の中で待機してもらう。

 それからカルディナに周辺警戒を任せつつ進んでいき、目的の巣から数メートルと言うところに来た。


 その巣は地面の上に堂々と造られていて、いびつな円形で穴の開いた茶色い物体だった。

 そうして観察しながら慎重に近寄っていた時、それを発見した一匹が他の仲間も引きつれてやって来た。

 しかしそれも織り込み済みなので、慌てず騒がず丁寧にを心がけながら、竜郎の火魔法と、愛衣の鞭でその命を散らしていった。

 そのまま強行軍で進んでいくと、太刀打ちできないと悟ったのか、巣の中から追加で何十匹も現れて、その半数は竜郎達に、もう半分は巣を地面から持ち上げる為に巣の下部分に群がり始めた。



「持ってかれちゃうよ!」

「大丈夫だ! ジャンヌ!」



 竜郎はそう言ってジャンヌを呼び出すと、すぐに指示をして行動に出て貰う。

 それは風魔法で、竜郎たちに向かって来るデプリスの飛行を邪魔をするというものだ。

 ジャンヌはデプリス達の周辺の気流を滅茶苦茶に操作して、まともに飛べないようにしていると、愛衣がその隙をついて始末していく。

 そして竜郎自身は、杖の先からレーザーを連射して、地面から巣を持ち上げようとするデプリスと、蜂蜜の区画から離れた巣の場所に当てて、破壊と殲滅を繰り返した。

 そこまで来ると、巣を運ぶことを諦めて総力戦になった。

 巣を壊されて、怒りながらこちらに向かって来る大量のデプリスを、竜郎は自分の周りに造った突風で巻き上げかき集めてから、そこに火を加えていっぺんに燃やし尽くした。



「これでこっちは終わりっと」

「こっちも終わったよ」



 愛衣の方も全て片付けが終り、竜郎は蜂蜜の部屋だけは壊さないように、細かく巣を砕いて行き、中に残っていたものも殲滅していった。



「まずは一個めだ」

「やったあ。たのしみー」



 そうして喜色を浮かべながら、竜郎達はデプリスの巣の回収に向かったのだった。

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