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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第三章 因果応報編

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第87話 竜力の活用法

 あれから長い夜を過ごした竜郎が目覚めたのは、すっかりお昼を回ったあたりだった。

 そのことを懐中時計を見てから知った竜郎は、二泊分の料金を事前に払っておいて良かったと安堵してから懐中時計を置いて、隣で寝ている少女に向き直った。



「相変わらず、可愛いな」



 涎が口の端から垂れて、小学生の様に健やかに眠る様さえ可愛く見える竜郎は、その瞬間を目に焼き付けながら、そっと抱き寄せて生魔法で起こしていった。



「おは……おはよー。たつろ」

「おはよう、愛衣」

「んぐ……」



 竜郎は水魔法で濡らしたハンカチで口元を拭ってあげながら、遅い起床の挨拶を交わした。

 それから朝食の時間は過ぎてしまっているため、昼食を昨日と同じ方法で頼んでおいた。

 今日もまた料理名は違うが、魚と野菜メインである。

 それから素早く普段着に着替え終わると、食事が来るまでの間、ソファに座って寛いでいた。



「はあ、昨日までは散々働いたし、今日くらいだらけてもいいよね」

「だなー。いくら若いって言っても、やっぱり徹夜はしんどいわー」



 そんな風にだらけながら待っていると、扉をノックする音が聞こえた。

 昨日は愛衣が取りに行ってくれたので、今日は飛び出そうとする愛衣を抑えて竜郎自身が食事を受けとりに行った。

 それをソファの前のテーブルに並べて、その美味しそうな匂いに腹の虫が鳴いた。



「それでは」

「「頂きます」」



 しっかりと手を合わせてそう言うと、二人はマイ箸を使って食べだした。



「今日ふぉあふぁりだね。はぐはぐっ」

「今日も当たりなのは解るが、口に物を入れながら喋るんじゃありません」

「まふぁ、そうやってこふぉふぉ扱いすふー」

「やってる事が、子供そのものだからだろうが……」



 二人きりの時はこんなでも、他人の前ではキッチリする方なので良いと言えばいいのだが、彼氏としては注意したくなってしまうのだ。

 そんな小言も挟みながら食事を楽しみ終わると、食器を外のフロア入り口付近にあるボックスに返しておいた。

 それから約一時間、本当に何もしないでただ二人でソファに転がってだらけまくり、荒んだ日々に負った精神的疲労を回復していった。



「ふう。これで明日からは頑張れそうだな」

「だねえー」



 竜郎は体を起こして座り直し、未だに冬眠中の熊の様に寝転がり続ける愛衣を尻目に、時間に余裕が出来た所で前から少し試してみたかった事を実験してみることにした。

 これは別にお遊びみたいなものなので、手慰みにはちょうどいいと、竜郎はさっそく愛衣にくっついて称号効果を得ておく。



「およ。なんかするの?」

「ああ、ちょっと試してみたいことがあってな」



 竜郎は今現在微量なのもあって、放置していた竜力を何とかして活用できないかと合間合間に考えていた。

 そこで思いついたのが、気魔混合を発想の原点とした竜魔混合である。

 犀車の上で暇な時に読んだ辞典や本によると、竜に属する生物は気力も魔力も無く、竜力をそれぞれの力に変換して戦うらしい。

 なので気魔混合の様に、気力でもない、魔力でもない別のエネルギーを生み出すというより、竜の力を持った魔力を生成できるのではないかと思ったのだ。

 その利点は魔力の上乗せと言う点も勿論あるが、こちらも集中力を必要とするのと、今の量ではあまり意味がない。

 では何に使えるのかと言えば、それは魔力体生物の生成ではないかと考えた。

 こちらは作り上げた魔力自体が、その生物に直接影響を与える。

 そこで《闇魔法 Lv.7》に上がった光と闇の混合魔法を、竜力の籠った魔力で生成すれば、少しだけでもカルディナとジャンヌの強化に繋がるのではないかと思ったのだ。

 しかし、ぶっつけ本番で造った体を与えるのはかわいそうなので、今日一日使って試行錯誤してみることにした。



「ああ、そう言えば一日一回は冒険者ギルドに顔を出さなきゃいけないのか」

「強制ではないけど、きちんと対応してもらったんだから、こっちも相応の態度ででないとだめだよね」

「そうだな」



 いいことを言っていたので、竜郎は自分のすぐ横で仰向けに寝転がっている愛衣の頭を撫でた。

 それに嬉しそうに反応する愛衣が可愛くて、一度キスをしてから集中しなおす。

 まず最初の課題は、竜魔混合を実際にやってみるところからである。



「んじゃ、いっちょ頑張ってみるか」

「がんばれー」



 気の抜ける声援を胸に、竜郎は気合を入れて取り組んでいった。


 それから三時間を費やして、時に休憩と言う名のいちゃつきも挟みつつやってみた結果、時間をかければ確実に竜魔混合を生成することができるようになった。



「これで準備は整ったな」

「じゃあ早速?」

「いや、その前に軽く飯を取ってから、先に冒険者ギルドに行ってみよう。

 落ち着いてやりたいしな」

「それもそっか」



 ということで食事を食べてから、冒険者ギルドを目指した。

 楽と言えば楽なのだが、エレベーターの様に真上に行かないため、そこそこの時間をかけてリフトで降りていき、宿泊期間を延ばしてもらうために一度フロントに顔を出した。

 人数は変わらないが、人が変わっていたので、昨日とは違う人に話しかけた。

 そこで期限なしで泊まる方法を聞いてみると、一週12日分の宿代を納めて、出立日数が11日以下だった場合、お金は返金してくれるらしい。

 ちなみにそれ以上泊まる場合は、12日ごとに料金を払って更新すればいいらしい。

 という事で、今日を含めた昨日払った宿代に加算した額を、12日分渡しておいた。

 これで晴れて、この宿がリャダスの拠点となった。



「よし。これで一時的に住む場所と寝る場所は確保できたし、冒険者ギルドに行きましょうかね」

「だね、買い物も明日でいいかな」

「ああ。またここを出れば暫くは外で生活なんだし、今はゆっくりしよう」



 そうして、動く道路に乗ってゆっくりと自分の足でも進みだした。

 来た道を戻る様に進んでいき、町の門まであと二百メートルという所で、お目当ての場所を見つけたので、動く道から降りた。

 昨日今の宿に向かう途中に見ていたので知っていたが、ここ冒険者ギルドは数少ない石造りの建造物だった。



「こう、どこに行ってもブレない感じが、冒険者ギルドっぽいよね」

「そうだな。でも、都会に建ってるだけあってデカいな」



 見上げてみれば、オブスルにあったものを外見そのままに巨大化させたような建物だった。

 一瞬だけ立ち止まってそれを見た後は、後ろに続く人が見えたので、通行の邪魔にならないように、そそくさと入っていった。

 入ってみれば内装もこれまたそっくりで、懐かしさも感じながら一番近くで受付をしていた大柄な女性に話しかけた。



「あの。僕らはこういうものですが、誰か訪ねてきた人はいましたか?」

「はい?」



 自分の身分証を提示しながら話しかけると、ずいと身を乗り出して顔をそこに近づけた。

 間近で見ると、その女性は本当に体が大きく、二メートルは軽く超えていそうな程だった。

 竜郎は思っていた以上大きかったことに、内心驚きながら、身分証の位置はそのままに、後ろに上半身だけ距離を取った。

 すぐに失礼だと思って体の位置を戻したが、女性は特に気が付いた様子もなく、身分証を凝視しながら、受付カウンターの下から何か資料を取り出して見比べていた。



「タツロウ・ハサミさん、ですね。という事は、そちらの方がアイ・ヤシキさんですか?」

「そうだよ。はいこれ、身分証」

「…………はい、確かに。えーと、お二人を訪ねてきた人ですが、ちょうど今応接室にいらっしゃいますね」

「随分ちょうどよくいますね。ずっと待っていたんですか?」

「いえ、お二人の事を話した後から、ずっと別件でギルド長と会談しているようですね」



 自分達を監視でもしていたのかと勘繰ったが、そうではないようだったので、一先ず安心した。



「会談中という事ですが、僕らへの要件はどういった物かは解りますか?」

「それは解りかねますが、もし自分がいる間に訪ねてくることがあったら遠慮なく来てほしいと仰っていました」

「……それが誰か聞いても?」

「はい。この町の町長をしている、ジョエル・ウイッカム氏です」



 この町の町長という事はリャダス領主のすぐ下、実質この領内では領主家の次に偉い身分である。



『随分大物が出てきたな』

『面倒事に巻き込まれなきゃいいけど』



 そんな大物が自ら出張ってきたことに衝撃を覚えながらも、二人はカテジナ・リサークと名乗った女性に案内されながら、その町長の待つ部屋に向かったのだった。

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