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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第三章 因果応報編
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第78話 地中の探査魔法

 世知辛い現実に屈しながらも立ち直った二人は、綺麗になった犀車にジャンヌを繋ぎ直して再び走り出した。

 そんな中で、竜郎は地面の中にまで探査魔法を使う方法を考えていた。

 解魔法だけでも、ごり押しで地面に魔力を通せばできないことも無い。だが大気中と違って、密度の高い地中などの場所に探査魔法を行使し続けるのは、かなり魔力を消耗する。

 いくら体のレベルが上がったとはいえ、そんなことをカルディナに長時間させ続けるのは難しい。

 という事は、就寝中にずっと任せることも出来無くなってしまう。

 ただ、魔法とはイメージの産物である。何か抜け道があっても不思議ではない。

 その考えの元、愛衣に手を繋いでもらいながら色々自分で解魔法を使って実験していた。



「うーん。解魔法の密度を薄くすると広がらなくなるし、濃すぎると魔力の馬鹿食い……。

 どうしたら省エネで探査できるんだ?」

「地面の中まで探査かぁ。難しそうだね、そういうのは土魔法でできる様にしといてくれればいいのにね」

「確かになあ。土魔法で生成した魔力は、なんの抵抗もなく地面に広げられるからな。

 でも解魔法みたいに、どんな物体なのかまでは解らないし」



 そこまで言ったところで、竜郎は有る事に気が付いた。



「あれ? じゃあ、解と土の混合魔法でならどうなんだろう」

「合体させれば、お互いの良いとこ取りできるとか?」

「その可能性もあるな。やってみよう」



 さっそく、その思いつきを試してみた。

 まずは解と土の混合魔法を作り出して、解魔法だけでは地中に広げられない魔力密度で地面に放出してみた。

 すると予想以上にスルスルと地中に潜り込んでいき、大気中に近いレベルで魔力を広げていくことができた。



 (解魔法単一より情報量は落ちてるけど、何か生物がいればすぐに発見は出来そうだな。燃費もそこまで悪くはないし、有りかもしれない)



「たつろー、どお?」

「これは実用的かもしれない。これなら解+水で水中探査とか、色々できることが広がった気がする。愛衣のおかげだな」

「ふふーん。褒めていいんだよ?」

「愛衣は偉いなぁ」



 そう言いながら竜郎は、隣にいる愛衣の腰を寄せて、ぎゅーっと抱きしめて頭を撫でる。

 すると愛衣も腕に力を込めてきて、さらに互いが密着していった。

 石鹸と愛衣の匂いが混じった様な、ホッとする香りに竜郎は癒されながら、首筋に吸い付いてみたり、吸い付かれたり、最初の目的とは違う結果になってしまったが、密着したままちょっかいを出し合って二人は満足げに離れた。



「あ、でもカルディナって土魔法使えないよね?」

「そうだな。だから、次の休憩のときにでもやってみようと思う」

「何を?」

「複数の属性魔法の因子の組み込みって奴を、な」



 竜郎は不敵に笑いながら、愛衣にそう言ったのだった。


 それから暫くの間、竜郎は本を読み返して光と闇の混合魔法について復習しなおしていると、やがて落ち着ける平地を見つけたので、道を外れてそこに止まった。

 では早速──といきたいところだが、時間にしたら昼時はとっくに過ぎていたので昼食を先に頂くことにした。

 今回は塩だけではなく、何だか良く解らないままに購入した香辛料もかけて味を変えてみた。

 と言っても、毎度おなじみバーベキュースタイルではあるのだが。



「ん~、これだったら塩だけの方が私は好きかな」

「ちょっと、この香辛料の癖が強かったな。少し振りかけるぐらいの方が良かったか」

「元の素材が美味しいから、まだ飽きていないけど、そろそろ野菜も食べたいなあ」

「サラダ的なものは、確かに欲しくなってきたな」



 野菜よりも肉派の二人であっても、連日肉ばかりでは体が自然と欲してくるようだ。

 なので町を出る前に購入して、できるだけ日持ちさせようと思っていたのに、強制退町状態で出てきてしまったので、買ってくることができなかったのだ。

 樹魔法でなら野菜類を出せるらしいが、さすがにサラダが食べたいからと言う理由で取得順を決める訳にはいかない。

 なので、リャダスに着く今日を含めた残り三日は肉食で我慢するしかない。



「でも最初と比べたら、食料が安定供給されるだけでも良しと思わないとな」

「衣食住、どれをとっても比べ物にもならないくらい充実してきてるからね」



 初心を思い出して、湧き出てくる不満を押し込めながらバーベキューセットを《アイテムボックス》にしまう。

 それからカルディナを呼んで、ジャンヌに番を任せて犀車の個室に入っていった。

 そうしてカルディナに、魔力だけの球体状態になってもらいつつ愛衣と密着する。

 ステータスの強化を確かめたら土魔法の魔力を作り出して、解魔法の因子と混ざり合わない様に集中しながら定着させていく。

 そんな作業を十分ほど続けると、ようやく安定した状態に戻った。



「よし。〈元の姿に戻ってくれ〉」



 竜郎のその言葉を切っ掛けに元通りの姿に戻っていき、新しい力を試したいと言う様に外に向かって飛び出していった。

 そんな玩具をあたえられた子供みたいにはしゃぐ姿を微笑ましげに見送りながら、二人は手を繋いでゆっくりと外に出たのだった。

 外に出れば、カルディナがジャンヌの横で地面に穴を開けたり、逆に山を造ったりしていた。



「ほんとに新しい属性が増えてるね」

「ああ。色々制限はあるがな」

「制限?」

「ああ。二つ目の属性はな───」



 そこで竜郎は、魔力体生物の二つ目以降の属性魔法について説明し始めた。

 その内容を要約すると、6以上のレベルの魔法で生み出された魔力体生物は、二つ目の属性を受け入れる余裕が出てくる。

 そしてそこから、プラス5レベル刻みでさらに一つずつ追加していくことができるのだという。

 しかし第一属性に定めた魔法なら、光と闇の混合魔法で使われたレベル分だけ扱うことができるが、二つ目の属性ではマイナス2レベル分の魔法しか受け入れられないのだそうだ。

 さらに三つ目ではマイナス4、四つ目ではマイナス6と追加されていくごとに、使える魔法が弱くなっていく仕様になっていた。



「じゃあ今カルディナちゃんは6レベルの魔法でできてるから、解魔法は6レベルまで使えるけど、土魔法は4レベルまでしか使えないって事?」

「そういう事だな。でも解魔法に土属性が混じっていればいいから、地中の探査魔法にはそこまで支障はないはずだ」

「それなら安心だね」



 そう言いながら愛衣は、土魔法に飽きたカルディナが、ジャンヌと遊んでいる光景を見つめた。

 竜郎もしばらくは好きにさせた後に、地中探査の方法を実地でレクチャーしていく。

 すると覚えがいいのか、元からそういう体質なのか、すぐにやり方を覚えて使ってみてくれた。



「どうだ? 〈ちゃんとできてるか?〉」

「ピュイ!」

「おー、良い子だねー!」

「ブルルルッ」

「お前も良い子だよ」

「ヒヒーンッ!」



 愛衣がカルディナを良い子良い子しだしたところで、馬が口を震わせた時の様な声でジャンヌが鳴いて見つめてきたので、こっちは竜郎が撫でてあげた。

 そうしていると今度は愛衣が頭を突き出してきたので、竜郎はもう片方の手でそちらも撫でてあげた。


 癒しと、集中して疲れていた竜郎の休憩も済むと、また犀車に乗り込んでいく。

 ジャンヌは車と留め具で繋がれて、カルディナは車上でリラックスできる体制を取りながら解魔法と解と土の混合魔法を器用に使い分けて、地上と地中両方に探査魔法を行使しだした。

 前よりも魔力の消費量は増したが、それでも一晩は持たせられるくらいなので、竜郎は問題はないと判断した。



「ジャンヌ、〈進んでくれ〉」

「ヒヒーンッ!」



 風魔法で車を押し出しながら、ジャンヌ自身の力でも引っ張っていく。

 もうその動作にはなれたのか、初動にガクンと揺れることも無くスムーズに進みだした。


 それからは魔物も盗賊も来ずに、ただ道を行くという退屈な時間を二人で紛らわしながら進んでいく。

 すると時間は過ぎていき夜になってきたので、今日の移動はここまでとなった。

 道から外れた場所に犀車を止めて、ジャンヌだけは竜郎の魔力の中に戻って貰い、カルディナに魔力補給してから夜食を取り、交代で風呂に入って眠りにつく。

 もちろんカルディナにめいっぱい魔力を注いでから、二人で抱きしめあうようにして意識を手放した。




 朝と言っていい時間に目が覚めたのにもかかわらず、未だに視界は暗いままだった。そこで竜郎は、今日が光属の日だと思い出した。



(という事は、今日はずっと暗いままか。夜間移動だから、いつもよりややゆっくりめでジャンヌに走って貰おうかな)



「愛衣、おきろー」

「んん? まだ……外……暗いよぉ……?」

「こっちの世界では、12日に一回そういう日があったろ?」

「………………ああ。あったねぇ」



 寝ぼけた頭脳でようやく極夜を思い出した愛衣は、竜郎の魔法で強制的にすっきりした状態になっていった。

 意識がはっきりした所で改めて朝の挨拶を交わした後、もはや恒例とかしたおはようのキスを五回程してから、月明かりの中で朝食を取って支度を済ませ、ジャンヌに出てきてもらった。



「今日もよろしく頼むな」

「お願いね!」

「ヒヒーーーンッ!」



 気合十分に嘶くジャンヌをなでながら、犀車につないでカルディナにも定位置についてもらう。

 そうして準備を万端に整えると、二人は御者席に乗り込んで、いつもよりゆっくりしたスピードで暗い朝の道を移動し始めたのだった。

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