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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第三章 因果応報編

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第71話 馬を生み出そう

 二人は朝食を最初に食べた食堂に行って、最初に食べたシチューを食べて腹を満たすと、町の外に出た。

 そして改めて振り返って、オブスルの白い門と外壁をみつめた。


「そんじゃ、行くか!」

「行くか!」



 しっかりと休息も取ったため、気合も十分に次の町を目指して進んでいった。

 そうして人気のないところまでたどり着くと一度立ち止まった。



「ここから空を飛んでくの?」

「いや、あれは目立つからなあ……。

 それに俺が常に集中しなきゃいけないから、もっと楽で、そこそこ速い移動手段を考えてみた。という事で──カモンッ」

「とうっ」



 手を広げる竜郎に向かって、愛衣は飛び込んで抱きついた。

 そうしてステータスをブーストしながら愛衣の感触に浸ると、カルディナを呼び出して周辺警戒を頼んでおく。

 それから《アイテムボックス》から追加で大量購入してきた鉄のインゴットをいくつか並べると、土と闇の混合魔法で軽くて頑丈な鉄をイメージしながら形を整えていく。


 まずは車輪にあたる物を造っていく。

 車輪は全部で四つで、一本の棒で繋いで二つで一対ずつになる様にする。

 そうして二対出来上がると、それぞれのタイヤの衝撃を和らげるサスペンションを四つ取り付け、その上に床になる板を乗せてくっつける。



「ちょっと乗って確かめてみるか」

「任せて!」



 愛衣は竜郎からバッと離れると、一瞬で板の上に飛び乗った。

 竜郎は安全の為にもゆっくりと乗るつもりだったのでギョッとして見れば、ちゃんとサスペンションも効いているようで、飛び乗った衝撃も抑えつつ、しっかりと愛衣を支えていた。

 竜郎も飛び乗って、その上で二人一緒にジャンプして耐久性を確かめた。

 一通りテストをした後、他の部分も造っていく。

 二人で寛げる程度の大きさの個室の様な箱を板の上に乗せ、前面部には御者席の様な座る場所を造り、そちらと個室に繋がるスライド式の扉と、四方に小さなのぞき窓、それに上に出られる開閉口も造る。

 そこから上に出てカルディナが入れる鳥籠のような物も用意して、外側の天面部にくっつけておく。

 そして背面部には、帆の様に広く伸ばした板を張り付けた。

 そうして最後に馬に取り付ける金具もあつらえて、完成となった。



「なんか馬車みたいだけど、おんまさんはどうするの?」

「馬は新しい魔力体生物を生み出して、その役割を任せたいと思ってる」

「新しい子を生むんだ」



 それに頷いて、竜郎は愛衣に背中にくっついてもらう。

 それから光と闇をLv.5ずつの力に調節してから合成して生み出すと、思いついた時から決めていた風魔法の因子を組み込んで行った。

 そして目の前の球体に、どんな存在になってほしいのか思いを込めていく。



(俺たちの旅路を突き進んでくれる、頼もしい存在が欲しい)



 球体が次第に形を変えていき、やがて四足歩行の動物の形になっていく。

 そして竜郎の想像した通り…………?



「ねえ、たつろー」

「…………なんだ、愛衣」

「この子、どう見てもサイだよね」

「おう、立派なサイだな───ってなんでだよ!?

 あるれええ? 馬をイメージしたつもりなんですけど」



 目の前には二メートル級の黒い体皮に真っ白な角を生やした、それはそれは立派なサイが竜郎の体にすりすりと頭を擦り合わせていた。

 厳つい見た目のわりに人懐っこいというギャップに、可愛くなってきた二人はサイの体を撫で繰り回した。



「この子の名前はどうしようか?

 スーパーサイヤちゃんとか、強そうでピッタリじゃない?」

「いやいや、確かに強そうだけどそれは無いだろ……。 

 ───というか、またちゃん付けって事は、女の子って事でいいのか?」

「そうじゃない? 女の子って感じだし」

「そ───う、こりゃあ女の子だわー!」



 そうか? と言おうとした瞬間サイが悲しそうな顔で見つめてきたので、竜郎は過剰に女子アピールをして撫でまわし機嫌をとった。

 するとサイも嬉しそうに目を細めてくれ、竜郎はほっと息を吐いた。

 そしてほっておくと勢いで妙な名前を付けようとする愛衣の軌道を修正すべく、あれこれ意見を言っていく。



「女の子だけど凛々しいというか、勇ましい感じの名前にしたらどうだ?」



 そんな様な意見を出しつつ、何度目かの名前の候補を却下し続けた結果。



「ん~~~じゃあジャンヌ?

 女の子で勇ましいときたら、もうこれくらいしか思い浮かばないよ」

「ああ、ジャンヌダルクか。いいじゃないか、ジャンヌって名前はどうだ?」



 竜郎の呼びかけに鼻息をフンッと鳴らして頷いたので、本人も気に入ってくれたようだ。

 そうして新しい仲間であるジャンヌを加え、さっそく次の町を目指すことになった。

 馬用に作った金具を加工し直し、ジャンヌに合わせて仕立てた物をとりつける。

 それから金具が痛くないか、馬車改めさい車に乗っても大丈夫かと、色々テストを繰り返し、二人は御者席にモチモチ素材の寝袋を敷いて、座布団代わりにして硬い座席からお尻を保護する。



「じゃあジャンヌ、〈風魔法を使って車体を押しながら、向かい風も避けるように進んでみてくれないか?〉」

「ヒヒーーーンッ!」

「そこは馬なのかよっ!?」「そこは馬なのっ!?」



 馬の嘶きとそっくりな声を上げて、あえて広くした背面部に風魔法で風をあてて押し出しながら、徐々にスピードを上げていく。

 その時の向かい風も風魔法で避けているので、時速五十キロ近い速さで走っているのに、外に身を出した状態でもなかなか快適に過ごせていた。



「最初の頃を思うと、かなり楽になったな」

「だね。普通に車くらいのスピードが出てるし。ところで、これから行くのは何処だっけ?」

「ああ。このスピードで移動できるなら、一番近い町はスルーして、その先の町に寄ろうと思う。

 そこはそんなに離れてないし、どうせどちらかに着くまでに一回は野営を挟むことになりそうだし」

「今回は準備も万端だし、気持ちよく過ごせそうだよね」



 その言葉に竜郎はしっかりと頷いた。

 もう何も持たず、何も知らないわけではない。

 魔物がでてきても対応できるだけの力を手に入れたし、食料も道具も有る。

 そして何より、二体になった頼もしい仲間もいてくれる。

 これだけあれば、今の二人にとっては余裕でこなせると確信しているのだ。



 そうしてカルディナに犀車の上の出入り自由な鳥籠の中で探査魔法をしてもらいながら、道順をジャンヌに伝えて二人は一度個室に入って、そちらの乗り心地も確かめた。

 風も避けているのもあってか、中もほとんど揺れずになかなか快適で、どうしても陸路で急ぎたいときは、ジャンヌに走ってもらい、夜は寝ながら先へ進むことも出来そうだった。

 そうして二人はこれから中の設備も増やしていこうと話し合った後で、丁度時間も出来たので、今まで放置していた新しく得た称号や、ステータスを確認することにした。



 --------------------------------

 名前:タツロウ・ハサミ

 クラス:光魔法師 → ----

 レベル:49 → ----


 気力:86

 魔力:1008


 筋力:132

 耐久力:132

 速力:127

 魔法力:808

 魔法抵抗力:796

 魔法制御力:816


 ◆取得スキル◆

 《レベルイーター》《光魔法 Lv.10》《闇魔法 Lv.5》

 《火魔法 Lv.10》《水魔法 Lv.10》《生魔法 Lv.1》

 《土魔法 Lv.7》《解魔法 Lv.7》《風魔法 Lv.8》

 《魔力質上昇 Lv.3》《魔力回復速度上昇 Lv.3》《魔力視 Lv.3》

 《集中 Lv.3》《全言語理解》

 ◆システムスキル◆

 《マップ機能》《アイテムボックス+4》


 残存スキルポイント:23


 ◆称号◆

 《光を修めし者》《火を修めし者》《水を修めし者》《打ち破る者》

 《響きあう存在+1》《竜殺し》

 --------------------------------



 --------------------------------

 名前:アイ・ヤシキ

 クラス:体術家

 レベル:31


 気力:4270

 魔力:35


 筋力:853

 耐久力:825

 速力:613

 魔法力:33

 魔法抵抗力:33

 魔法制御力:33


 ◆取得スキル◆

 《武神》《体術 Lv.7》《棒術 Lv.1》

 《投擲 Lv.8》《槍術 Lv.7》《剣術 Lv.7》

 《盾術 Lv.6》《鞭術 Lv.8》《気力回復速度上昇 Lv.7》

 《身体強化 Lv.9》《集中 Lv.1》《空中飛び Lv.2》

 《全言語理解》

 ◆システムスキル◆

 《アイテムボックス+2》


 残存スキルポイント:19


 ◆称号◆

 《打ち破る者》《響きあう存在+1》《竜殺し》

 --------------------------------



「「あれ?」」

「たつろーのクラスとレベルの横に、変なの付いてる」

「やっぱり、50以上には条件があるかもしれないな」

「やっぱりって?」



 竜郎は魔竜を倒した時に、感じた疑問を語りだした。

 まず一番初めに感じたのは、《レベルイーター》でレベルの吸出しをした時。

 普通の魔物よりも、明らかに時間がかかったのだ。

 もちろん、かなり高いレベルだったというのもあるが、感覚的に量が違う気がした。

 その証拠にレベルが上がったばかりの愛衣が、たった1レベルの魔竜を倒しただけで31レベルに上がった。

 普通の魔物を倒しても、こんな事は一度もなかった。

 だからこそ86レベル全てを吸収したのにもかかわらず、19レベルしか上がらなかったことに疑問を感じていた。

 その中でのステータスに謎の記号が追加されたことにより、予想していた事に真実味が帯びてきた。



「久しぶりに、ヘルプに聞いてみる?」

「ああ、でもまずは称号を確かめてからかな」

「それもそっか」



 そうして、新たな称号を確かめていく。

 まずは大体効果の解っている、《水を修めし者》から。



 --------------------------------------

 称号名:水を修めし者

 レアリティ:10

 効果:ステータスの魔力、魔法力、魔法抵抗力、魔法制御力に+100。

    水魔法において制御能力上昇。

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「まあこれは予想の範囲内だな」

「これだけ違っても、おかしいしね」



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 称号名:竜殺し

 レアリティ:8

 効果:竜素材の装備数に付き、ステータス極微増

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「これは、レアリティの割にちょっと微妙だな」

「あれだけ苦労したのに、極微増だもんね。それに竜素材の装備は持ってないし」

「それはまあ、あの魔竜の素材で何か作ってもらえば良いんだけど、上昇率が悪いなぁ。

 まあ、これはいいとして、最後はこれだな」



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 称号名:響きあう存在+1

 レアリティ:14

 効果:この称号を同時に取得した人物との念話が可能になる。

    同人物へ心象伝達が可能になる。

    同人物と接触している間、疲労回復速度上昇。

    同人物と接触している間、気力、魔力の回復速度特大上昇。

    同人物と接触している間、全ステータス大上昇。

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「なんか増えたり、上がってたりするのがあるけど、心象伝達ってなんぞ?」

「心象……心の象? イメージとかそんな意味かな。ちょっとやってみるか」



 竜郎は念話の時の様な感覚で、自宅の自分の部屋を思い浮かべてみた。

 すると愛衣がビクッと動き出して、驚いた声をだした。



「すごいよっ、今たつろーの部屋のイメージが頭の中にハッキリと浮かんできた!」

「心象伝達っていうのは、心に思い浮かべた風景とかを送れるって事か。

 これと念話を合わせれば、情報共有ツールとしては携帯以上だな」



 そうしてあれこれと、新しい玩具で遊ぶかのように犀車の中で実験をし始めたのだった。

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