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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第一章 森からの脱出編
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第6話 元の世界への帰り方

「だよねー。システムやら、あんなおっきいイモムシやらが出てきておいて、地球でしたーって言われる方が驚くよ」

「結構気楽そうだな。帰れないかもしれないんだぞ」

「わかってるよ。でも、もう来ちゃってるんだからどうしようもないじゃん。

 そりゃ、お母さんやお父さんに会えないのは寂しいけど、一人じゃないし!」



 そう言って愛衣は竜郎の腕に抱きついた。それに「だな」と微笑み返す竜郎もまた同じ意見だった。

 お互い一人きりでこんな所に飛ばされていたら、耐えられなかっただろうなと。



「けどまだ帰れないって決まったわけじゃないしな。

 魔法だってあるみたいだし、案外ぴゃーと帰れるかもしれない」

「だねだね! それに帰れなくても、たつろーがそばにいてくれるなら我慢できるし!

 だから私を置いてっちゃダメ! だからね」

「それはこっちのセリフだよ」



 そうして二人は見つめ合うとキスをした。それは触れ合うだけの一瞬のものだったが、それでもお互いの気持ちが通じ合っている気がした。



「そういえば、魔法で帰れる方法があるのならヘルプでわかんないかな」

「さすがに無理だろ。日本どころか地球の地の字もしらないヘルプ(笑)さんだぞ?

 もし知ってたら今後ヘルプ様って呼ぶわ」

「ほう、言うねー。じゃあ、さっそく調べてみる?」

「ああ、まかせとけ」


 

 もう慣れてきたシステムを起動し、ヘルプを出した。



「えー地球の帰り方を教えて ……そもそも地球がわからないっと。ほらな」

「いやいや、聞き方が雑だよたつろー。

 地球なんて異世界の星の名前なんてそりゃ知らんでしょ。

 もっとふわっとしたとこからアプローチしてみてよ」

「ふわっ? んー……じゃあ、異世界に行ける魔法はあるか。……あるんかい」

「ほら!」


 

 手を叩いて喜ぶ愛衣に「まあ待て」と視線を送り、次の質問に移っていく。



「それはどんな? ……時空属性に分類される転移の魔法なら理論上可能」

「時空ってあの(1000)ポイントも取るって言ってたやつじゃん」

「理論上と言うと? ……まず大前提として転移魔法は具体的にその場所を想像でき、なおかつ行ったことがあることが転移魔法の発動条件になっており、異世界に行くために異世界に行く必要があるという矛盾が生じるため、理論上可能と言うしかない。

 それに、その取得難易度から《時空魔法》をシステムから取得し使った人間は誰もいないので、ヘルプも実例を観測できていない。……と」

「あれ? その理由だと取得さえできれば私たち帰れるってことだよね」

「だよな!」



 「イエーイ!」と二人でハイタッチをしたり、抱きしめあいながらグルグル回ったりして喜んだ。

 竜郎のスキルならいちいちレベルを上げなくても、その辺の生き物からかっぱらってくればいいのだから、ポイントの多さは文字通り時間の問題なのだ。



「ん~それにしても(1000)かあ。ちょっと大変だよね。

 なんか近道と言うか効率のいい裏ワザとかないのかな」

「一応ヘルプ様に聞いとくか」

「ほんとにヘルプ様になってる」

「ああ、ヘルプ様は素晴らしいからな。きっと裏ワザでも何でも御提示下さることだろう」

「さいですか」


 

 「ダメだこりゃ」みたいな顔で見られてもなんのその、竜郎は再びヘルプ様を起動した。



「では教えてください! 時空属性取得の効率のいい裏ワザ的なアレをっ──……ん?」

「どしたーん? ヘルプ様はなんだってー」

「え? あれ……はあ!?」

「ちょっと、ほんとにどうしたの?」

「緊急事態発生! 時空属性を取得するにはスキルポイント以外にも条件がある模様っ」

「はぁ、条件てどんな?」

「時空属性を取得するには他の全属性魔法をLv.10の上限解放までしたうえで、重力属性を取得し、そこでようやく取得できるようになるらしい」

「近道どころか、めっさ遠回りじゃん!」

「おう。それでもう一つ厄介なことも判明した」

「それはどんな?」

「ああ、実は──」



 ここで竜郎は、ヘルプを使ってわかったスキルポイントとスキルについて説明した。


 その内容によると、まずスキル取得に必要なスキルポイントは、その人物においての習得難易度を表しているという。


 取得ポイント(1~3)のスキルは、健康体なら誰でも訓練すれば身に付くレベル。

 (4)は、健康体で厳しい訓練をすれば誰でも身に付くレベル。

 (5)は、才能ある者が厳しい訓練をすれば身に付くレベル。

 (6)は、種族的恩恵があり、かつ才能ある者が厳しい訓練をすれば身に付くレベル。

 (7)は、種族的恩恵があり、かつ才能ある者が特に厳しい訓練をすれば身に付く可能性があるレベル。

 (8)以上では、実質自力取得は不可能。 

 となっている。

 これで言うとマップ機能は(9)だったので、自力での取得は不可能だった。


 そしてここからが問題で、自分の生き方のスタイルを決める《剣術》や《火魔法》などのスキルをとると、そちらにリソースを割かれ他のスキルがどんどん取りづらくなるという。


 具体的には、なにもスキルを取得していない者の場合、《剣術 Lv.1》《槍術 Lv.1》のどちらかをスキルポイントを使って取得する場合(1)で取得できる。


 しかし、その人物が《剣術 Lv.1》を取得した場合、他の武術系スキル、例えば《槍術 Lv.1》を取得しようとすると(2)必要に、また《槍術 Lv.1》を(2)で取って、今度は三個目の《棒術 Lv.1》を取得しようとすれば(3)にと、取得したスキルの個数分取得に必要なポイントの倍率が上がっていくことになる。

 

 ちなみに武術系スキルを取ったものが魔法系スキルを取ろうとすると、スキルの個数+2の倍率になる(その逆も然り)ため、武術と魔法を両方使いこなすのは非常に難しい。


 ここまでのことを踏まえると、竜郎たちが必要とする時空属性を取るために、他の12属性+重力を取る必要があるため、


 最初の一個目は光と闇と重力以外、

 Lv.(n)=必要スキルポイント=(n)

 だが、二個目は、

 Lv.(n)=必要スキルポイント=(n)×2

 三個目は、

 Lv.(n)=必要スキルポイント=(n)×3

 となり、十二個目になる頃には、

 Lv.(n)=必要スキルポイント=(n)×12

 と、倍率が上がるため最終的に必要なスキルポイントは膨大に必要となっていく。


 また、光と闇の属性は

 Lv.(n)=必要スキルポイント=(n+10)

 なので、最初に取得せずに最後に回してしまうと

 Lv.(n)=必要スキルポイント=(n+10)×12

 と、なってしまうので要注意。



「ということだ」

「えーと、つまり新しい属性魔法を取得すればするほど、SPが上がって取り辛くなると」

「SP? ああ、スキルポイントね。まあ、ざっくり言えばそうだな」

「じゃあ、ちなみに時空属性を取るために必要なSPは合計いくつになるの?」

「えーと、ヘルプお願い」

「もう様が消えてるよ…」



 あっさりとヘルプへの態度を変えたことに愛衣が嘆息していると、さっそく調べ終わった竜郎が再び前を向いた。



「あー……光と闇を最初に取った場合で(8490)ですって」

「まあお高いこと」

「ちなみにこれ、普通にレベル上げだけでSP稼いだ場合、2830レベルにならなきゃいけない」

「そりゃ誰も使えないわけだーね」

「まったくだ。俺みたいなスキルがなきゃ不可能だろうな。

 ん~一日100SPを毎日集めても85日、50SPなら170日ってとこか」

「どっちにしても帰れる方法は解ったんだから、無理しないで確実にやってこ。

 早く帰りたくないわけじゃないけど、無理して体壊してもなんだしさ!」



 と、そこで話がまとまりそうになったところで不意に愛衣が何かを閃いたのか、手をポンと叩きながら口を開いた。



「あっ──そうだ! 私なら直ぐにレベル上げられるし、それを《レベルイーター》で吸って何度もSPを回収できないかな?

 それができたらすぐに帰れそーでしょ?」



 たしかにそれができれば、面倒な手順を全部省けそうではある。

 だが名案だとばかりに目を輝かせて提案してきた愛衣に対し、竜郎は渋い顔をして首を横に振った。



「実は俺もその方法を考えなかったわけじゃないんだ。だがやる気はない」

「えー? なんで? 手っ取りばやそーなのにぃ」

「考えてみてくれ。システムだのスキルだのっていうが、これはいったい何なんだ?」

「何だと言われても、私もわかんないよ?」

「そう、わからないんだ。もしかしたらこの《レベルイーター》は魔物なら何の影響は無くても、人には致命的な害を与えるかもしれない。

 さらに人が大丈夫でも、俺たちみたいな異世界人は?

 異世界人だけを害する何かがあるかもしれないし、愛する人に使ったらなんて制約があるかもしれない。

 ヘルプだって、全部ほんとうのことを教えてくれるとは限らないんだ。

 そんな怪しげなものを、なんだって一番大切な人に使わなくちゃいけないんだ」

「──っ。そ、そうだよね。そう言われると、私も使えないや。

 だっ、だって……私だって、たつろーのことが、その……一番大切なんだから、さ」



 竜郎に面と向かって『一番大切な人』と言われ、愛衣の顔は真っ赤にしながらそれだけ言うと、恥ずかしくなってふいっと顔をそむけた。

 それに竜郎も自分が何を言ったの気が付き、同じように顔を真っ赤にして俯いてしまった。



「ま、まあ、そういうことだな。──ってことで、のんびりやっていこうっ!」

「おー!」



 恥ずかしさを紛らわせるようにやけっぱち気味に気合を入れた二人は、こうして一先ずの目標が定まったのであった。

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