表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第二章 オブスル大騒動編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/634

第66話 先手必勝…

 誰もいない街角で二人は誓いを交わすと、すぐにミーティングを開始する。



「まずはっきりとしておきたいのは、俺たちの目的は魔竜とかいうやばい魔物を倒すことじゃないって事だ」

「戦わずに助けられるなら、そうした方がいいって事だよね」

「そうだ。そして次に注意したいのは、あの声だ」

「あれかあ……」



 愛衣は実際にその声にやられてしまった時の事を思いだして、苦い顔をする。

 あれは自分の中の遺伝子レベルで刻まれた、根源的な恐怖を呼び覚ますのだ。

 できれば、二度と味わいたくはない。



「音を媒介とする魔物の魔法は、威力は低いが効果が広いうえに躱しにくい。今後はこれに常に対策出来るような何かを考えていくとして、今回は時間がないからカルディナに頑張ってもらおう」

「カルディナちゃんに?」

「ああ。もうあの声の魔法は解析済みだから、アレがきた瞬間に中和する結界を愛衣の周囲に張れば、あの攻撃には対抗できる」

「すごく強そうな奴だけど、その魔法はカルディナだけで対抗できるの?」



 愛衣はあの巨体が放つ攻撃を、鳥の中では大きいと言えるレベルでしかないカルディナで大丈夫なのか不安になったが、竜郎は自信を持って頷いた。



「まだやっていないから、絶対とまでは言わないが、かなり高い確率でいけるはずだ」

「そっか、たつろーがそう言うなら。信じるよ」

「ああ。信じてくれていい」



 そして他にも、いくつか話し合ったうえで、最後に竜郎はこんな提案をしてみることにした。



「もし戦闘になるんだったら、あの金のクマゴローを倒した時のアレを、しょっぱなにぶち込んでみないか?」

「アイツも倒せたんなら、少なくともダメージくらいは負わせられそうだもんね」

「ああ。わざわざ正面から、ガチンコバトルしなくたっていいんだから」



 そうして必要事項を話し終えると、竜郎は牛頭やレベルアップでのSPを使って、今できる最大まで能力を伸ばすことにした。

 そこで注目したのは、風魔法。今回相手にしようとしている魔物は、空を飛ぶ事が出来る。なのでそれを上げることにより、空中戦での機動力向上、風魔法の制御力上昇を狙う。

 そして現在のSP(138)なので(120)消費して、《風魔法 Lv.8》まで上げておく。



「よし、後は最後の確認だ。ステータスを見よう」

「そうだね」



 そう言って不備はないか、他にできることは無いかを互いに確認し合うために、システムを立ち上げた。



 --------------------------------

 名前:タツロウ・ハサミ

 クラス:光魔法師

 レベル:30


 気力:67

 魔力:687


 筋力:94

 耐久力:94

 速力:89

 魔法力:534

 魔法抵抗力:518

 魔法制御力:542


 ◆取得スキル◆

 《レベルイーター》《光魔法 Lv.10》《闇魔法 Lv.5》

 《火魔法 Lv.10》《水魔法 Lv.2》《生魔法 Lv.1》

 《土魔法 Lv.7》《解魔法 Lv.5》《風魔法 Lv.8》

 《魔力質上昇 Lv.3》《魔力回復速度上昇 Lv.3》《魔力視 Lv.3》

 《集中 Lv.3》《全言語理解》


 ◆システムスキル◆

 《マップ機能》《アイテムボックス+3》


 残存スキルポイント:18


 ◆称号◆

 《光を修めし者》《火を修めし者》《打ち破る者》《響きあう存在》

 --------------------------------



 --------------------------------

 名前:アイ・ヤシキ

 クラス:体術家

 レベル:30


 気力:4155

 魔力:35


 筋力:833

 耐久力:805

 速力:593

 魔法力:33

 魔法抵抗力:33

 魔法制御力:33


 ◆取得スキル◆

 《武神》《体術 Lv.7》《棒術 Lv.1》

 《投擲 Lv.8》《槍術 Lv.7》《剣術 Lv.7》

 《盾術 Lv.6》《鞭術 Lv.8》《気力回復速度上昇 Lv.7》

 《身体強化 Lv.9》《集中 Lv.1》《空中飛び Lv.2》

 《全言語理解》


 ◆システムスキル◆

 《アイテムボックス+2》


 残存スキルポイント:19


 ◆称号◆

 《打ち破る者》《響きあう存在》

 --------------------------------



「俺の方は、ついに魔法制御力が三つの中で一番高くなったな。愛衣の方はちょっとだけ、魔法系のステータスも上がってるか」

「まあ、称号が無かったら3なんだけどね。ん~パッと見できそうなことは、もう無さそうだね」

「そうだな。んじゃ、いっちょ行きますか!」

「おー!」



 緊張して萎縮してしまわない様に、あえて元気に振る舞いながら、二人はボードに乗り込んだ。

 そして足を片方だけ固定すると、二人を乗せたボードが宙を舞い、すぐに町の外壁の高さを追い抜いて、湖に向かって空を駆け抜けていった。


 しばらく飛んでいると、やがて湖が見えてきた。

 そしてそれと同時に、その湖の主の様にして湖中に居座る、首長竜のようなフォルムをした魔竜が鎮座していた。



「あれか……こっからでもかなり大きいな。──カルディナ」

「ピュィー」

「〈愛衣にくっついて、あの声の魔法を常に打消し続けてくれ〉」

「よろしくね!」

「ピューイ!」



 私に任せておけとばかりに、器用に空中で胸を張るカルディナを、二人は微笑ましく見つめながら、高度を一気に上げていった。

 そうして魔竜に見つからない様に近づいて行き、ゼンドー達のいると言っていた作業場が三つ並ぶ内のどの棟なのか、探査魔法をかけて探っていく。

 すると、一番湖に近い棟に全員隠れているのが解った。

 しかしあの棟は元々古いせいか、扉を開けるときにかなり大きな音を立てる。

 そのため隠れたはいいが、逃げることが出来なくなったのだろうと二人は推察した。



「やっぱり救出するには、あのデカブツを何とかしなきゃいけないか」

「だね。そんじゃ、一発アレをぶつけてやりましょうか」

「そうだな」



 あれでも効かなかったらという不安を押し殺し、二人は高度をさらに上げて、魔竜のちょうど真上に位置する場所に辿り着く。



「竜郎は、それを制御しながらじゃ難しいよね。どうするの?」

「そりゃあ、制御を手放して落下しながらやるんだよ」

「まさかの紐無しバンジー!?」



 愛衣の驚きの表情に、竜郎はにやりと笑った。

 だがこれは別に竜郎がしたいからというわけではない。したくないとも言わないが……。

 理由としては、あの巨体を一撃で決めるためには、解りやすい急所で面積も一番小さく効果が高い頭を狙いたい。

 だが正面から行ったら奇襲にはならないし、後ろや横からだとあの巨体では遠すぎる。

 だからこそ頭上からの強襲が一番安全かつ、確実にダメージを与えられるポイントだと考えたのだ。

 それにたとえ地面に落ちそうになっても、愛衣には《空中飛び》があり、竜郎にはボードなしでは効率が悪いが、風魔法で不時着も出来る。

 だからこそ、十分やる価値があるのだ。



「じゃあ、行くぞ」

「うー、こうなりゃ自棄やけだ! ばっちこーいっ」



 愛衣の準備も整ったところで、竜郎はボードをしまい風魔法の使用を止める。

 すると、重力に従って落下し始めた。

 その間、二人は手を繋ぎ合ってスカイダイビングの様にしながら眼下を見つめる。



『愛衣っ、気力をこっちに分けてくれ』

『了解!』



 落下時の風圧で喋りにくくなったので、お互い念話で意思の疎通を取り合いつつ、愛衣は以前よりも増した気力を、竜郎に注ぎ込んでいく。



「うっ」

『大丈夫、たつろー?』

『この入ってくる力は、愛衣なんだ。平気に決まってる』

『なんかその言い方は、ちょっとエッチな感じがするなあ』



 そんな愛衣の軽口に気付かない程に集中して、竜郎はその気力を自分の魔力に融合させていく。

 お互いに、魔力も気力の量も上がって以前よりも難易度がさらに上がっているはずなのに、竜郎は以前よりもスムーズに力と力を合一していく。

 そしてそれは、直ぐに出来上がった。



『やるぞっ』

『うんっ』



 そして二人は繋いでいない左手と、右手を前に突き出して、あの時よりもさらに大きい三メートルの白炎纏う拳を練り上げる。

 高度もドンドン下がっていき、落下まで数秒と言った所。

 しかし、二人の心に迷いは無い。

 そして、はっきりと魔竜の頭部を視認して、狙いを定め──。



「「いっけえええええーーーーーーー」」



 気合と共に、強大なエネルギーの籠った拳を射出した。

 それは、轟音を上げながら魔竜の頭部にしっかりと向かって行く。

 魔竜はそれに気付いて、口から氷を吐いて止めようとするが、二人の拳の前に蹴散らされていく。

 そして拳は魔竜の開いた大きな口の中に吸い込まれていき、その頭を丸ごと吹き飛ばしていった。



「よっし!」「やった!」



 頭を消し飛ばされ、短くなった首から血を噴き上げて、湖に崩れ落ちてそこを血で染めていく。

 その姿を見ながら、竜郎は直ぐにボードを取り出して、二人でそれに飛び乗り魔竜の近くに不時着した。



「たつろー、早くゼンドーさん達を安心させてあげようよ!」

「ああ。そうなんだが……」



 目の前の魔竜はどう見ても死体にしか見えないし、解魔法で調べても死亡判定が出ている。それなのに、竜郎は何かが引っかかっていた。

 しかし今は愛衣の言う通り、人命救助を優先しようと死体に後ろを見せた瞬間、カルディナが甲高く鳴き叫んだ。



「なんだっ」「なにっ」



 その声に二人して振り向くと、そこには何ごとも無かったかのように、魔竜がこちらを睨んでいた。



「ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーー」

「ピュィイイイイイイーーーーーーー」



 竜郎と愛衣がそれに驚愕している間に、あの声の魔法にカルディナが忠実に命令を守って、愛衣の周りを囲むように解魔法で中和結界を張り巡らせて対抗してくれた。

 その姿を見た二人は直ぐに立ち直って、魔竜から距離を取るため、愛衣が竜郎を抱えて後ろに飛び去り、竜郎はこのチャンスを逃すまいとその前に《レベルイーター》を発動させて、至近距離で黒球を当てておく。



「なんで元に戻ってるの!?」

「───これかっ!」



 そして《レベルイーター》から送られてきた情報を、竜郎は忌々しそうにその解を示すスキルを睨んだ。



 --------------------------------

 レベル:86


 スキル:《完全再生》《かみつく Lv.10》《竜飛翔 Lv.6》

     《竜尾閃 Lv.9》《氷の息吹 Lv.11》《氷刃 Lv.12》

     《恐怖付与 Lv.3》

 --------------------------------



 《完全再生》。

 これこそが、死すら乗り越える、世界の法則すら捻じ曲げ再生した要因だった。

 そして先ほど感じた違和感は、レベルアップのアナウンスが聞こえなかった事だと、今更ながらに竜郎は気付かされたのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ