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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
最終章 帰界奮闘編

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第622話 最後の調整

 アレを倒した喜びを皆で分かち合っていると、その途中でニーナが突然倒れた。



「ニーナ!?」「ニーナちゃん!?」



 当然、竜郎と愛衣、他の皆も驚きながら駆け寄り、すぐさま容体を確かめてみればなんと…………。



「ぐーぐー……ふふっ……おばーちゃん……ニーナやったよぉ……むにゃむにゃ……」

「ね……寝てるだけかーーい!」

「しー! 疲れてるんだろうし、そっとしておいてあげよーよ。たつろー」

「──あっと、それもそうだな。……あんな状態になっても助けに来てくれて、ありがとう、ニーナ」



 竜郎がお礼を言いながら頭を優しく撫でると、さらにニーナの表情がほころんでほにゃっと笑った。



「むふぅ…………ぐーぐー…………」

「それにしても、おばあちゃんって誰の事なんでしょうかね?」

「ははっ。リア、それは母上の事じゃないか?」

「イシュタル……。あなた、それエーゲリアに言ったらブッ飛ばされるわよ……」

「あっ──」



 レーラのその言葉にはっとしたイシュタルは、彼女を拝み倒して黙っていて貰える事になった。

 現在彼女は竜郎たちと話しやすいようにと人間形態に戻っているので、見た目は美少女。

 少しからかってやろうかと思っていたのだが、その姿ではレーラも意地悪な事は言えなかったようだ。


 それから皆で軽くアレを倒した時にどんなアナウンスが流れたのか情報共有してみると、意外と大きく変わっている事が判明した。


 まず解っていた当然の変化は大幅なレベルアップ。

 今回、竜郎に全員で繋がった状態で止めを刺したので、最後の一撃も全員で刺したことになった。

 なので分け隔てなく全員のレベルがちゃんと上がっていた。


 竜郎や愛衣、リアやレーラは2500そこそこだったのが、3300ほどまで上昇。

 カルディナたちは、1800そこそこだったのが、2200ほどまで上昇。

 竜種組の蒼太やニーナ、アーサー、ミネルヴァ、ヘスティア、テスカトリポカたちは、1000以上だったのが1600以上に。

 他の大体1500以上で統一されていたウリエル達も、大よそ2600ほどまで上昇した。


 さらにまだまだ特典があった。

 竜郎の分霊神器で無理やり気魔混合に近い状況で止めを刺したので、なんとシステム持ち全員が竜郎と愛衣の持っていた称号《響きあう存在》を取得した。

 もちろん、竜郎と愛衣はまたプラス値が増えていた。



「連絡が取りやすくなったね」

「ここにいるメンバーはこれから眷属が増えていっても要になるメンツだろうし、いつでも念話で気軽に会話できるのはありがたいな」

「それに私も、これが終わった事で竜大陸に戻る事になるだろうからな。

 そう言う意味でも、タツロウ達と簡単に連絡が取り合えるのは個人的にも、身分的にも有難い」

「あーそっか……。イシュタルちゃんは帰っちゃうんだよね……。さびしいよ……」

「すまないな。アイ。私にも立場があるんだ。だが、いつも忙しいわけではない。

 お前たちの所ならなんだかんだ理由を付ければちょくちょく会いに行けるから、そう寂しがらないでくれ」

「うん。いつでも待ってるからね!」



 愛衣とイシュタルは仲良く抱擁しあい女の友情を深めた。

 今後何があろうとも、竜郎たちとイシュタル。ひいてはイフィゲニア帝国との友情も揺るぎないものとなったと皆が確信した。


 そして驚きの特典はまだある。なんと、半神格者たち全員がいずれかの神々に目を付けて貰い、神格者に格上げになった。

 これには特に蒼太が喜んでいた。神格者になれたといっても、怪我を負って帰って来たニーナはまだまだはるか高みにいるが、それでもとてつもなく離されていた距離が少しでも縮められたのだから喜ばないわけがない。


 また半神格者ではなかった武蔵は、その代わりなのか《鬼神の加護》という鬼種を司る神からの加護が貰えたようだ。


 さらに千子、エンター、亜子がレベルアップと同時に人間化してシステムがインストールされた。

 それと同時に初期スキル、称号《天衣無縫》《響きあう存在》を得る。

 また千子は《不死神の加護》。エンターは《天族神の加護》。亜子は《魔族神の加護》を得た。

 ただエンターや亜子は半神種が半神格者になっただけで、神格者にはなっていなかった。

 さらに人間化したことで、この領域の負荷を受けるようになり辛そうにしていたので今は休んで貰っている。

 千子などは半神格者でもないので、特に辛そうだった。



「なんで人間化したり神格者に格上げになったりしたんだろうね?」

「さあ? 案外、神達からのお祝いみたいなものなのかもしれないぞ」

「まあ、そうでしょうね。普通はいくら強い敵を倒したからと言って、ここまで大盤振る舞いはしてくれないでしょうし」



 レーラの言うとおり、これはこの戦いを観戦していた神達がお祝いとして色々と調整してくれた結果である。

 普通ではありえない事なので、今後同じような事をやっても同じ結果にはならないだろう。



「さて。千子たちが辛そうだし、最終調整といこうか」

「あ、そっか。アレの最後の悪あがきのせいで、また微調整しなきゃ、ちょっと多い状態になってるんだったね。

 すっかりもう終わった気でいたよー」

「……実は俺もそうだったんだが、今思い出した。

 ってことで皆、疲れてるだろうが大丈夫そうな者達は近くで身構えていてくれ」



 そうして等級神と連絡を取り、再調整に入っていく。その途中での雑談では、こんな事を話した。



『それにしても、お主の分霊神器はかなりやばいのう。

 今また成長したお主の眷属たちや、今後成長するであろう幼竜達。

 さらに今後増えていくであろう魔物達や竜達。それら全てを繋げば、いずれ一撃の強さだけならエーゲリアすら超えてしまうかも知れんぞ』

(へーそうなんだ)

『へーって……お主、これは凄い事なんだぞ?』

(これからはのんびり過ごすつもりだし、エーゲリアさんと敵対するつもりもないし、第一それだけの力を手に入れても、使いこなすのがしんどそうだ。

 よっぽど必要にかられなきゃやりたくないよ)

『まあ、なんというか、お主らしいのう──っと、そこでストップじゃ』

(はいよ)



 調整して魔物化するだけの世界力だけの状態にしてみれば、アレの後と言う事もあるが、ひどく小さな黒渦に思えた。

 だがここで油断して怪我をするのも馬鹿らしい。竜郎はレア魔物が出てくることを祈りながら、気は抜かずに杖を構えた。


 すると黒い渦が魔物へと変化していき──。



「ぎゃあああああああああああっ!!??

 たつろー! はやくやっつけてよー!!

 この世界に塵一つ残さないで! あれはある意味アレより危険だよ!」

「いや、しかしあれって……なあ、リア」

「ええ、魔王種候補ですね」

「素材くらいは取っておいても……いや、でもそれは……うーん……」

「いーやーーー」



 何の因果だろうか。

 竜郎が少し前に某ゴッキーさんもビックリのしぶとさだ。なんて事を発言したからだろうか。

 そこにいるのは『カサカファジョ』とこの世界で呼ばれている、巨大なゴ○ブリそっくりな魔物の最上位種である魔王種候補だった。


 レベルは250以上290以下といったところで、まだ魔王種化はしていないので、奇妙な魔王種スキルも無く危険度は無いと言ってもいい。

 ただ……今現在は竜郎の捕縛と封印魔法を混ぜ込んだ土闇魔法の鎖でがんじがらめに囚われ、足をがっさがっさと動かしているさまは非常に背筋がぞぞぞとなる光景ではあった。

 何せ全長10メートルはあろう、巨大『G』にしか見えないのだから。


 けれど、けれどだ。これを魔卵にして育てれば、竜郎の魔王種100体できるかな計画に、新たな魔王種を一体加えることが出来るだろう。


 竜郎は見た目をカブトムシみたいに改造してしまえばいけるんじゃないだろうかと思いつつも、実質その中身は『G』だ。竜郎も正直言って気持ち悪い。


 けれど魔王種候補という一点だけが、竜郎の決心を鈍らせていた……のだが、愛衣の一言であっさりとその天秤は片方に傾いた。



「あんなのの素材を《無限アイテムフィールド》に入れてたら、私、たつろーに抱きつけないかもしれないよっ!」

「──よし。塵も残さずこの世から消し去ろう」

「よっしゃあ! いったれ、たつろー!」



 この世界の住人のリア、レーラ、イシュタルからしたら昆虫の魔物なんて数多くいるのに、なぜあの魔物だけを目の敵にするのだろうかと不思議がっていた。


 そんな間に竜郎が魔法で有言実行、塵も残さず滅却した。

 竜郎と愛衣は「「いえーい!」」とハイタッチしてはしゃいでいた。



「…………なあ、レーラ。こんなのが締めでいいんだろうか?」

「えーと……私に聞かれても困るのだけれど」

「何を言っているの? イシュタルちゃん」

「な、なんだ。アイ」

「何もここにはいなかったの。私たちはアレをちゃんと倒して、大団円を迎えたんだよ。

 何も、ここには、いなかったの」

「何故、二回言ったのだ?」

「大事な事だからだよ?」



 ヤンデレ気味な愛衣の目に一歩後ずさったイシュタルは、そうだな。何もなかったなと、全面肯定する事に決めたようだ。


 そんなイシュタルに愛衣の後ろから、ありがとうと手を合わせると、竜郎は等級神と再び連絡を取った。



(終わったぞ。後はそっちに全部任せておけばいいんだよな?)

『うむ。最後は任せておくのじゃ』



 あと数日もすれば、竜郎がここに残した世界力が再び密集して強力な世界力の塊となる。

 それを等級神たち世界の管理者が外に放てば、竜郎たちが落ちた余震だけが竜郎達の世界を襲い、竜郎と愛衣はこちらの世界に落ちたけれど、世界は滅びなかったという矛盾の少ない結果を導き出すことが出来るというわけである。



(ああ、頼む。俺達はひとまず元の時代に戻るよ)

『む? 今からお主達の世界に戻ってしまっていいのじゃぞ?

 ここまでお膳立てされておきながら、儂らが失敗するわけもないしのう』

(いや、ここにいる全員をここに残す、または向こうに連れていくわけにはいかないだろう。

 いつか連れていくにしても、少しずつの方がいい。

 こっちも親に異世界の事やリアの紹介やらしておきたいのに、ワラワラ連れていったら説明ばっかり長くなって纏まらないだろうしさ)

『言われてみればそうかもしれんのう。まあ、好きな時に帰るが良い』

(ああ、そうさせてもらうよ。……ところで、等級神。少し聞きたい事があるんだが)

『なんじゃ?』

(こっちの世界に俺と愛衣の両親を連れてきてもいいんだよな?)

『まあ、そうじゃのう。それくらいなら構わんぞ』

(それってさ。どこまでの範囲でならいいんだ? 俺と愛衣の間に子供が出来たらその子は? またその子の子や孫は? それに俺のじいさん、ばあさんとかはダメか?)

『う、う~む……。さすがに好き勝手に異世界人を連れてこられるのは困る。

 せめて信用できる人間で一親等以内。さらに4、5人の範囲に留めておいてほしい。

 儂らの世界はお主達の世界と違って不安定じゃ。それほど大きくはないが、異世界人の受け入れにはこちらが少しばかり調整する必要も出てくるからのう』

(そうか。一親等以内で4、5人となると、俺と愛衣の両親で4人。残り一人となると、俺達の子供が二人以上向こうで産まれたら一人は連れてこれないのか。残念だ)



 こちらで産むにはエンデニエンデの称号のせいで愛衣に生理が来ないので、子供が出来ない。

 向こうの世界でシステムを切ってしまえば大丈夫だが、子供は2人欲しいねと言っているので、そうすると1人はお留守番だ。

 それは流石に可哀そうだなと、竜郎はいつか子供が生まれても異世界の事は黙っていたほうがいいかもしれないと、少し気落ちした。


 けれど、そんな竜郎に等級神は少しとぼけた感じで口を開いた。



『ただのう。なんにでも例外というものはあるものじゃぞ、タツロウよ』

(……例外?)

『うむ。儂らがお主達の身内を受け入れる手間を請け負っていいと思うくらいに、お主達に恩を感じていたら、さらにそこから許容人数を増やしたり、2親等まで広げてもいいかなと思うかもしれんなぁ』

(つまり……これからも何かあったら手伝ってね♪ ってことか)

『まあ、そう思ってくれてもよいぞ。ただ、今のお主達でも危険だと思うようなことはまずないから安心してほしい。

 それにそうしてくれるのなら、お主達の両親がこちらの世界に来た時、少々、初期スキルを優遇しても良いと考えておる』

(それは……魅力的だな。解ったよ。それに新しいレア魔物とかに会える可能性も高いだろうし、アルバイトだと思って都合がつけばやってみるよ。

 もともとそのつもりではあったんだしさ)

『おお、助かるのじゃ! 正直、今のお主の力が借りられると言うのは、本当にありがたいぞ』

(俺達でもヤバいのはエーゲリアさんとかに頼んでくれよ? そのバックアップとかなら協力するが。

 イシュタルもそろそろ自分だけで世界力の循環も出来るようになるだろうし)

『解っておる。お主達でも手に余る様な事があるのなら、それはこちらの世界の住人で何とかして見せる。じゃから安心するのじゃ』

(ああ、その辺は信頼してるよ。──それじゃあ、そろそろ戻るよ)

『うむ。ではの──』



 そうして等級神との会話を終えた竜郎は、戦闘中に落ちたアレの残骸や鱗にいたるまで綺麗に処分した。

 一欠けらでも残っていたら、どうにかして復活しそうで不気味だったからだ。


 さらにイシュタルを強制的に人化させていた、腕輪の破片も欠片一つ逃さず回収しておく。

 ここはこの世界においても特殊な力場を持つ場所。腕輪は壊れてしまったとはいえ、エーゲリアお手製の品。

 そんなものを放っておいたら、予想もできないような影響を互いに及ぼしあい、何か妙な事が起きるのではないかと危惧したからである。


 そんな後片づけもきちんと済ませると、竜郎は全員を連れて『ヘルダムド国歴992年.3/11』の時代から、『ヘルダムド国歴1029.6/18』を目指して未来へと転移した。


 それから竜郎達は『ヘルダムド国歴1029.6/19』、昼時。カルディナ城、地下室に到着。

 それに気が付いた爺やに出迎えられながら、竜郎達は直ぐに自室に直行して泥のように眠って体を休めたのであった。

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