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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
最終章 帰界奮闘編

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第616話 1%以下の偶然

 除去班や救護班が頑張ってくれている中。残りのメンバーたちも分霊偽神器のスキルを、竜郎が何とかしてくれる事を信じて奮闘中。

 竜郎もその思いに応えるためにも必死で行動を起こしていた。


 さて今回の最初のゴール。竜郎がやろうとしている事はと言えば、一言で言えば《侵食の理》でのスキルの書き換えである。


 書き換えるくらいなら壊してしまえばいいのでは──と思う者もいるかもしれないが、それを完全に確証を持って壊すとなると解析情報量、変更情報量共に膨れ上がり、属性構成量が膨大なアレに対してやるのなら相当な時間を要する事になるだろう。


 そんな悠長な事をしていたら、さすがにこちらの体力が続かない。

 向こうは永遠に変わらない傷付かない、エネルギーも消耗しない化物なので何日も何年も戦い続けられるだろうが、こちらはそうもいかないのだ。


 となると現実的な方策を取る必要がある。


 これまで竜郎は色んな者達の属性構成を解析し、その習熟度もかなり高くなった。

 さらに様々なスキルの構成や、カルディナたちの分霊神器の構成なんかもデータベースに入っている。


 そのおかげで、例えば5番の情報を変えたいと思った時。

 初期のころは、1~10までの情報全てを集めてからでなければ変えることは出来なかった。

 けれど今なら1~5までの情報まで集めれば、大よその今までのデータによる予測と技術的な向上によって、書き換えられるまでに至っていた。


 なので今回はアレの全固有属性構成を解析せずに、アレの魂の奥底の一番大事な場所に刻まれているであろう分霊偽神器と、そこまでに至る入り口までの最小限の経路情報だけを集め、ほんの少しだけ書き換えるのだ。


 それでも分霊系統のスキルは、魂と自分の本質に非常に近い部分にあるスキルだ。

 なのでその情報を書き換えてしまうと、何らかの回復スキルでは回復できない肉体の変化も起きてしまう。

 それがどんなに小さな魂の変化だったとしてもだ。


 そうなればアレは最適な元の自分に戻ろうと、完全に書き換える前に変化を始めてしまう肉体を、《分霊偽神器:多次元私参照復元》で復元しようと試みる可能性が高い。

 そうなってしまうと、いつまでたってもやり直しが続いて一生終わらない。


 なので今回の書き換えはある物はあるままにしつつ、それでいてこちらの都合の良いように書き換える必要がある。

 そしてその都合のいい形とは、《分霊偽神器:多次元私参照復元》を《分霊偽神器:多次元私参照復元 Lv.○○》というレベルのある形に変換させると言うものだ。


 直接使えない様に変えてしまうと肉体に変化が起きる。

 だがこの場合、例えば『5+5=10』という形が《分霊偽神器:多次元私参照復元》を構成する式だとする。

 そしてここでいう『10』が《分霊偽神器:多次元私参照復元》というスキル本体となっている。


 と言う事はだ。答えが『10』という形が変わらなければ、途中式は『2+8』だろうが、『4+6』でもいいわけだ。

 そこで途中式を変え、レベルの『無い』スキルの式から、レベルの『有る』スキルの式に、それが起こす事が出来る能力──結果だけは変わらない様にしながら変換してしまう。


 そうすることで根底にある《分霊偽神器:多次元私参照復元》という形を変えることなく、レベルの有るスキル《分霊偽神器:多次元私参照復元 Lv.○○》に変換できる。

 向こうに何をしているかまでは気付かれる事無くだ。


 こうすればアレの肉体的変化は一切起きない。なのでアレは途中でスキルを使って復元しようとも思わない。

 さらにレベルの有るスキルならば、《多重レベルイーター+α》とカルディナ達の《レベルイーター補助》を組み合わせれば、どれだけ高いレベルであっても、かなり素早く回収できるだろう。


 そしてそのレベルを回収してしまえば、アレは《分霊偽神器:多次元私参照復元》の使用が出来なくなる──というわけである。


 さらにこれには、もう一つメリットがつくとリアは予測していた。

 《多次元私劣化複製》というアレモドキーズを生み出すスキルは、《分霊偽神器:多次元私参照復元》があるからこそ発現したスキルでもある。


 と言う事は《分霊偽神器:多次元私参照復元》が使えなくなった場合、全く使用できなくなるという事はないだろうが、恐らくそのスキル自体が劣化する可能性が高いのだ。


 それがどの程度の劣化なのかはわからないが、生み出せる数が減る、モドキーズの劣化具合がさらに深まる。またはその両方か。


 できれば両方であってほしい所だが、そのどちらかでも、アレとの決着の為の戦力を多く呼び戻せる。

 後は寄ってたかって、最初の時のようにアレを一度でもいいから殺せば、この戦いは本当の決着を見せてくれることだろう。



「レーラさん、それはガウェインさんの方角へ飛ばしてください」

「了解──はっ!」



 アレの近くに新たに産まれたモドキーズ。蒼太の尻尾がべしっと叩いて切り離したものを、レーラは氷の滑走路を作って氷のハンマーで殴りつけて放り出す。


 イシュタルも未来予測をしながらなので、ガッツリと戦線に加わる事は出来ないが、それでも銀砂を操りモドキーズを絡め取っては切り離し班がやりやすいように調整してくれる。


 そしてリアも虎の機体に大猩猩ゴリラの上半身が生えたような、機動力とパワーを2で割ったようなモードに変形し、その大猩猩に持たせた大きなハンマーで殴り飛ばしたり、魔道具による多種多様な攻撃で翻弄し爆発で吹き飛ばしたりと大活躍だ。


 さらにシュベ太も、遠くで情報を皆に送信して頑張っている相棒ミネルヴァと、離れた状態であるにもかかわらず共闘しながら戦っていた。


 彼に与えられた主な任務は、蒼太が掻き回したモドキーズの群れをさらに掻き混ぜる役。

 どうしても蒼太だけでは大雑把で、数体かたまっている部分もあったりする。

 そういう塊を崩し、出来るだけ分散させて細かく都合のいい方向へ弾き飛ばせるようにするのだ。


 けれどそれだけではない。



「シュベ太さん。後ろからきます────そのまま横に進んでください。上に飛んでください」

「────」



 シュベ太が塊を崩しながら、一体を誘い出す。

 群れの中に飛び込んでいるので一斉に攻撃が襲い掛かってくるが、ミネルヴァが全体のイメージを脳に送りつけてくれるので、言葉が解らなくても何処から何が来るか良く解る。


 そうやって周りに味方がいない時は、黄金の蝕風を極小規模まき散らしモドキーズ達からエネルギーも回収し回復する。


 そしてさらにその中から数体を自分に引きつけていき、ミネルヴァのイメージ情報通りの場所に誘い込めば──。



「──ビョブッ」



 ミネルヴァのグングニルによる遠距離射撃によって、1体の頭が粉砕。

 それに気を取られている間に、シュベ太は尻尾槍を手に持ち別の個体を刺し穿つ。

 そうやってミネルヴァとシュベ太のチームも、余った余力で始末しているのだった。




 そして、本丸に当たっている竜郎たちはと言えば──正直まだ、それほどの成果を出せてはいなかった。



「またそっちに行ったっす!」

「またかっ」



 アテナの2本に分化した大鎌の2撃を華麗に躱し、ジャンヌの波動を纏ったハルバートによる突きも躱される。

 そして数メートル先で《侵食の理》によるスキャンをしている竜郎に向かって、1発でも直撃すれば即死級の卵型爆弾を何個も口から飛ばしながら、周囲には角を射出したり手から粒状爆弾を放って牽制し、自分自身も竜郎に向かって突撃してきた。


 そう。こいつは先ほど完全に竜郎に目を付けてしまったのだ。


 というのも、まず耐久的に観て一番死にやすいのは魔法使いの竜郎だ。

 そのくせ《侵食の理》でスキャンするために、のこのこと近くをうろついているので、数を減らすならアイツから──という気持ちになってしまうのも無理はなかった。


 だが初めは、それでもアテナやジャンヌ、愛衣やニーナ、カルディナや奈々なんかにも注意を向けていた。

 なのに今は全力で竜郎をまず排除しようとやってきているのだ。



「──ふっ」

「ゲジャボラァアア!」



 竜郎の背中には武蔵本来の腕に加えて、《鬼腕八刀》による鬼の刀を持った鬼の腕が8本生えていた。

 それでいて本人の手は右は天照の竜腕。左は月読の竜腕と化して、さらに天照月読双方の分霊神器も使って火力に耐久もあげて、近接戦闘にも十分耐えられる状態ではあった。


 なのでまずは《鬼腕八刀》による鬼の腕たちをフルに使って、《刃流し》というスキルで卵型爆弾を鬼腕の何本か犠牲にしながら刀で何とか受け流す。

 そうしながらイシュタルの未来予測情報をミネルヴァから受け取り、《瞬動》と《移動多足》で細かく動き最善の対処をしていく。


 けれどその時、近くに行ったり遠くに行ったり、フェイントを仕掛けたりとしているせいで、竜郎の集中力も途切れさせざるを得ずに、作業はその都度中断に追いやられてしまった。

 これで一体、何度目だろうか。


 確かに《侵食の理》の技術力も上がり、アレの構成情報をついばむように少しずつ情報を収集し、後でそれらをパズルのピースのように繋げていく──なんて事も出来る。


 だが《侵食の理》は非常に繊細なスキルであり、本来戦闘中にやる様なスキルではない。

 なのでこのように邪魔をされてしまうと、必要な情報部分かどうか確かめる──なんて事も出来ず、ほぼランダムに情報を集めているような状況。


 つまりパズルの一部分だけを完成させればいいのに、いらないピースまでも集める破目になっているということだ。

 もちろん一度取り込んだ情報は、使う情報かそうでないかは見分けられるので、必要なピースといらないピースがごっちゃになって解らないと言う事はない。


 けれどただでさえ少しずつしかピースが取れないのに、そこにランダム要素まで加わってしまうと、時間と試行回数がどんどん増していってしまう。


 そしてアレはアレで、そんな竜郎を非常に気持ち悪く感じていた。

 竜郎が攻撃するでもないのに、何かを自分にしている事になんとなく気が付いてしまったようなのだ。

 それは何度も何度も、チマチマチマチマと《侵食の理》を当てていたせいに他ならない。


 ナリに似合わず意外とそういうことに敏感だったようで、無性に気持ち悪く感じる竜郎を速く消し去りたくてしょうがなくなってしまっていた。

 だからこそ、さきほどから竜郎だけを執拗に、集中的に亡き者にしようと襲ってきていると言うわけだ。


 まさに悪循環が悪循環を呼んでいると言ってもいい。

 だが救いもちゃんとあった。アレは竜郎にまた突撃しようと前かがみになったが、不意にやめて《多次元私劣化複製》による仲間の補充に取り掛かる。

 これをやっている間だけは動き回ることはせずに、こちらへの牽制攻撃だけになるのだ。


 そこが固有属性構成取集のチャンスでもあり、モドキーズを討伐してくれる皆に竜郎は心から感謝である。


 何もしないのは癪なのか、周囲に卵型爆弾をスイカの種でも飛ばすような気軽さで連続で飛ばしてくるが、《多次元私劣化複製》に集中しているため、躱すのはたやすい。

 竜郎は武蔵のスキルを駆使して近くまで行き、《侵食の理》でアレの情報を啄んでいく。

 この時ばかりは向こうも隙が多いので8割ほどの確率で、必要なピースのみを収集できるので本当に助かる。



「「「「「ゲシャシャシャ」」」」」

「「「「「ビュシシシッ」」」」」

「「「「「ウヒャヒャッ」」」」」



 アレの周りの空間からモドキーズがゲラゲラと笑いながら大量に湧き出してくる。

 そして湧き出し始めると、直ぐに切り離し班が反応して攫って行ってくれる。


 なのであっという間にアレの近くからはモドキーズはいなくなる。

 それに対してアレは忌々しそうに表情を歪め、さらにまた何かしているなと、竜郎をものすごい形相で睨み付けてくる。


 そしてまたアレは竜郎に向かって爆弾をばら撒いてくる。

 けれどそれは愛衣が盾術と体術の気獣混合奥義──《竜亀掌壁》による、竜の指が生えた亀の甲羅と化した盾で受け止める。

 盛大な爆発を上げながらも守りに特化しているだけあって、なんとか耐え抜き、そのままアレに向かって盾で殴るように押し付けていく。


 だがそれをアレは《断絶破掌》で強制キャンセルし、愛衣は無視して竜郎に向かっていく。

 だがそこへニーナが素早く横から現れ、《超竜闘気》を纏った拳が当たり──はしなかったが、無理な体勢で無理やり避けたせいで一瞬動きが止まった。


 そこへカルディナとミネルヴァが待っていましたとばかりに、スキルによる弾丸を一度に大量にお見舞いしていく。

 アレは《空間反転》を発動する。そこでもまた隙が生まれるので、竜郎は遠慮なく情報を収集していく。

 このカウンター技は、そっくり来た方向にしか返せないので予測は非常にしやすいのも嬉しい。


 ──と、だいたいこのようにして一応ことは進んではいた。

 欲に駆られて無理をするよりはいいだろうとも思うが、このペースだと正直誰かバテるものが出てくるだろう。


 今の状況はギリギリのラインで戦力分散しているので、このままではどこかからか崩れていき、最終的に竜郎の作業が終わる前に向こうが優勢になっていき、そのまま押し潰される──なんていう未来も十分予想できるようになってきてしまっている状況だ。



(どうにか活路を開かなくては──こちらが危うい。

 ……大事に取っておいてもしょうがないし、あのカードを切るか)



 そのカードはアレにとって有効な手段であり、動きを大きく鈍らせる事も出来る手段だが、いかんせん回数が限られている。

 なので使いどころが難しいのだが、貧乏性な竜郎は7回しかできないそれを使う決心がついた。


 そこで竜郎はミネルヴァ経由で奈々に指示を出す。

 直ぐに了承し奈々はダーインスレイヴが融合し、さらに禍々しくなっている牙を両手に構えタイミングを計り始めた。


 この場にいる全員もそれを理解し、絶対に失敗しない様にフォローに入っていく。

 カルディナは上空からアレに威嚇射撃。アテナ、ニーナは縦横無尽に駆け回りヒット&アウェイで注意を引く。

 愛衣、ジャンヌは防御と攻撃で竜郎の守りをしつつ、アレから付かず離れず無理のない範囲で注意を引いていく。


 そうして若干竜郎への注意が散漫になりながらも、やはり竜郎を追いかけ始めるアレ。

 武蔵や月読の助けも借りながら、アレの情報を天照と一緒にかすめ取っていく。


 そしてまたアレは動きが鈍りモドキーズ召喚の構えに入っていく。

 アレの周囲にモドキーズが湧き出し始める。竜郎はそこで動きだし、アレの単調な攻撃をかわしながら近づき注意を引いていく。


 モドキーズ召喚と竜郎という2つの事をしつつ、さらにカルディナ達の邪魔まで入り、アレの意識から極限まで奈々への注意が薄らいでいく。


 そして最後のモドキーズの補充を終えた所で、《急加速》で一気に近づいた奈々がアレの右足──ふくらはぎの辺りに牙を一本穿つ。



「アビャッ──ウガァビュィ!」



 何をする!──と、刺された方の足で蹴りを奈々にお見舞いしようとするが、ズキリと痛みを感じると共に、片膝をついて蹲る。

 さされたふくらはぎを見れば、そこは超がつくほど強力な蠱毒の毒蟲を使った猛毒により黒色に変色していた。


 これは流石のアレでも抵抗しきれない様で、強力な回復能力と抵抗力が打ち勝つまで少しばかり動けない──という程ではないが、非常に動きにくくなる。

 だが少し待てば回復するので、このために自己を復元させるほどのことではないと考え、できるだけ動かなくても出来る攻撃で竜郎達を牽制してきた。

 自己復元は今の自分を消す行為でもあるので、余程の事でもない限り踏ん切りがつかないのだろう。


 だが解毒に意識がいっているおかげで、攻撃の精度は高くない。

 さらに多少とはいえ動き回る事で解毒までの時間も長くなって一石二鳥。

 こちらは出来るだけアレを動かし、さらに解毒の時間を稼いでいく。


 竜郎はそこで稼いだ時間を使って、ここぞとばかりに一気に情報を取得していった。



(これならいけそうだ)



 モドキーズ召喚作業と、あと数回の毒による時間稼ぎ。そして戦いながら何とかかすめ取っていく僅かな情報を加味すれば、大幅な時間の短縮が見えてきた。


 そうして竜郎たちは奈々の──というより、ダーインスレイヴによる毒攻撃での時間稼ぎも使い、着実に必要な固有属性構成のピースを集めていくのだった。




 ダーインスレイヴの《蠱毒壺造》で作った蠱毒蟲も残り3つ。僅かになったが、それでもあと3つあれば余裕でピースが全て揃うだろう。

 その情報はアレに対している全員に共有され、皆の心にも余裕が出てきた。


 ……だからだろうか。

 あと少し──あと少しだと気が急いていたのかもしれない。

 またはイシュタルの未来予知に頼りすぎ、本来生物が持つ直感が薄れていたのかもしれない。


 ──そこで悲劇は起こる。


 回数を追うごとに奈々への警戒は深まっていくが、そこは皆で協力して今回も何とか刺す事に成功。

 いつも通り近づき、終わりの見えてきた情報取集を始める竜郎。

 それを守るためにアレ対策班も行動に出ていく。ここまでは、これまでの流れと大差はなかった。


 イシュタルによる未来予知も問題は無かった。──というのに、アレはイシュタルの未来予知とは違う行動を初めてとった。


 アレはそもそもこの世界にとっても初めての存在。

 それに次元に干渉することが出来るスキルを持っているせいか、本当に極々僅かだが予測の精度が不安定だった。

 それらが極々低確率な割合で噛み合って、世界の予測から外れた行動をたまたま起せたのだろう。


 毒牙に刺された左足首の辺りを気にするそぶりを見せ、アレは片膝をつきながら攻撃を周囲に放つ──というのが本来予測されていた未来。


 だがこれは、竜郎たちが近づいて来たのを確認すると、自分の足を自分で爆破した。

 そしてその時の爆破の推進力で一歩分前に飛び出し、さらにもう片方の残った足で地面を蹴る。

 その時、皆は驚きながらもちゃんと反応は出来ていた。

 そしてアレは絶対に竜郎の方に来るだろうと、ほぼ条件反射で一斉にそちらの守りに入り始めた。


 けれどアレが地面を蹴って向かったのは──。



「ギャウッ!?」



 ニーナの方だった。

 アレは光線が如くニーナの目の前にやってくると、思い切り右手を振るってニーナのお腹に殴りかかってきた。


 もしこれが竜郎の方に向かうようだったのなら、この世界も見事その未来を予測していただろう。

 けれど何故かこいつはニーナを選んだ。

 それが何故なのか、それはアレ自身も解らない。ただの我武者羅に起こした奇跡とも言える偶然だったのだろう。



「ジィヤアアアアッ!!」

「────ギゥッ」



 拳がニーナの腹部に直撃する。

 ニーナも竜郎に行くと思っていただけに、反応が一瞬遅れてしまったのだ。

 その拳はアレ自身の拳ごと爆破しながら、ニーナの腹部を破壊した。


 《超竜闘気》で頑丈になっていたはずの鱗は剥がれ肉は弾け、臓物も吹き飛び撒き散らしながら、彼女は爆発の勢いのままに、遠い向こう側へと弾き飛ばされてしまうのであった。



「ニーナぁああああああああっ!!」

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