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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
最終章 帰界奮闘編

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第603話 ボス竜討伐ミッション1

 全5つの候補が上がっている、竜がボスとして出てくるダンジョンへの振り分けは以下のようになった。


 ウリエルと白太。ミネルヴァとシュベ太。

 この2組はジメジメとした湿地帯の階層が多いと言われるダンジョンへ。


 フローラと清子さん。ヘスティアとカラドボルグ。

 この2組は雪原地帯の階層が多いと言われるダンジョンへ。


 彩、ウル太、千子。フレイヤ、エンター、亜子。の2組は、状態異常や不意打ちを得意とする魔物が頻繁に表れる、少しばかり癖のある厄介なダンジョンへ。


 アーサーとアイギス。ランスロットと光田。ガウェインと黒田。

 この3組は難易度が一般的には、かなり高いと言われている天魔の魔物が大量に出てくるダンジョンへ。


 蒼太とニーナ。テスカトリポカ、ヒポ子、ウサ子。

 この2組は砂漠地帯の階層が多く、道中数は少ないながらも1体1体強力な魔物が出現するという、今回候補と上がっているダンジョンの中では最難関のダンジョンへ。


 これを今回の組み分けとして、ダンジョンへと向かって貰う。

 システムが無く《竜殺し》の称号を取得できない魔物達も、経験不足を補うために、特殊な環境での戦闘を多く体験できるダンジョンへと人間組の眷属たちと一緒に行ってもらう。


 また竜郎、天照、月読、武蔵。奈々、ダーインスレイヴ。そしてオマケの愛衣。

 こちらは蒼太やニーナと同じダンジョンへ、タイミングをずらして後から入り、別行動で最深部を目指すことになっている。

 ここを二重に回る場所にと選んだ理由としては、ここだけは極稀にボスでもなく最深部でもないのに珍しい竜の魔物が出てくることがあるのだとか。

 レーラ曰く眉唾物の噂レベルの話らしいが、チャレンジだけはしておこうと言うわけだ。

 例えそれが本当だとしても、蒼太たちと竜郎たちの2回で出るのは難しいだろうが、とりあえずワンチャン狙っていくつもりだ。


 そうして竜郎はまず組み分けされた通りに、魔王種や竜が入る時に他人に見られないようにする認識阻害の魔道具を持たせたうえで、転移魔法で送り届けていったのだった。




 そして少しばかりの日数が過ぎていき──。



「キシュァァァーーーー!」

「ウリエルさん。右下の毒の湖から尻尾が来ます」

「了解よ。白太、避けて釣り上げるわ!」

「グォー!」



 そこは蒸し暑い湿地帯。

 ジャングルのように鬱蒼とした草木が生え、地面は足が沈むほどぬかるんでいる。

 そこらじゅうに落とし穴のように水草で隠された小さな、されどかなり底が深い毒の湖もあった。


 そんな人が生きるには劣悪な環境の中で出てきたボス竜は、全長60メートルもある目が無くサメのような背びれを持つヘビ型の地竜だった。


 この竜は、ぬかるんだ地面を沈むことも木を倒すことも、音を立てることも無く滑るように移動することもでき、さらには地中や毒の湖に潜り自在に泳ぎ回れる──そんな、この地において高い機動力を持った存在だった。


 現在、その地竜はモグラのように頭だけ別の場所から地面より出てウリエル達の注意を引きつけ、長い自分の体の尻尾の先にある槍のような毒針を離れた湖の底から出して不意をつこうと狙っているようだ。


 されどそれは全てミネルヴァに看破され、情報共有のスキルでウリエル、白太、シュベ太全員に丸わかりだった。

 シュベ太は引っかかっている振りをするため、先陣を切って竜の頭へと飛んで行く。

 それに遅れて空を飛ぶウリエルと滑空する白太が、シュベ太の後ろを付いていくような素振りを見せた瞬間、直ぐ下の小さな湖の底から尻尾毒針が飛び出してきた。



「──ふっ」「──グォーン!」

「キシィー!?」



 けれど華麗に空中で体を捻ってギリギリで躱すと、直ぐにカウンターをお見舞いする。

 ウリエルは使徒の一体でもある十字架炎槍──レーヴァテインを、白太は虹水晶の大きく尖らせた鉤爪を尻尾の先端近くに思い切り叩きつけて食い込ませる。



「はああああっ!」「グゴォオオーーーー!」

「ギジィィィーー!?」



 そのまま地上に体を引きずり出すように上へ上へと1人と1匹で、空へと持ち上げていく。

 竜は、このままで不味いと尻尾の先を自切して逃げようとするが──。



「させませんよ」



 《強粘着竜弾》という強力な粘着性を持つ弾丸を、皆からは少し離れた場所で観測してた竜形態のミネルヴァが、グングニルの先端から撃ち出した。

 巨大な砲丸のような粘着質な弾丸が、切れ目の入った場所に着弾。

 自切はするが切れた先と先がくっ付いて、切り離される事なく上空へ持ち上げられていき、どんどんその身があらわになっていく。


 だが相手も竜。それなりに強い力で頭の方を必死で地面の底へと潜り込ませて逃げようとする。

 そのせいで目に見えて持ち上げるスピードが遅くなる。ウリエル達が明らかに優勢だが、まるで綱引きのようになっていた。


 けれどここでシュベ太の溜め動作が終わりを告げる。

 ウリエル達より下の方でとどまって、攻撃の為のエネルギーを溜めていたのだ。



「────!!」



 それは下から上へと流星が如く猛スピードで突き進み、ドリルのように回転しながらの飛び蹴り。

 ウリエル達の持つ尻尾の先と地面に潜った部分の間に一瞬で到達して、斜め上へと掬い上げるように蹴りあげた。

 すると『つ』の字に蛇のように長細い体が折れ曲がると共に、一気に頭がズルンと地面から顔を出す。



「最初は自切で地面に逃げられましたが、もう逃がしませんよ」



 バン──バン──バン──と、ミネルヴァが完全に出てきた竜に向かって、貫通しないで衝撃を与える弾系スキル《打撃竜弾》で長い蛇の体を連続で撃って丸めていき、そこへ《強粘着竜弾》を浴びせて体中をくっ付けていく。

 まるでロープを適当にグルグル巻いた様な形で接着され、必死でくっ付いた体を離そうともがき始める。


 ウリエルと白太は既に尻尾の先からレーヴァテインと水晶の爪を外して、シュベ太と合流。

 落下してくる竜の下で待ち構える。

 そして一斉にとどめの一撃をお見舞いし、このダンジョン最強のボス竜は息絶えた。


 それと同時にウリエルとミネルヴァに、《竜殺し》と《高難易度迷宮踏破者》の称号とダンジョンレベルと同等のSPが付与された。

 これで目的は達成した、というのにウリエルやミネルヴァ、そしてシュベ太や白太まで若干不満そうな顔をしていた。



「竜と言っても、今の私たちなら危なげなく勝てるようね。

 道中で使いこなせるようになったアレを使うまでも無かったわ」

「ですね、ウリエルさん。私も他にも覚えた弾系のスキルを試してみたかったのですが……残念です」

「けれどこのダンジョン自体は様々な経験を積ませてくれたわ。それで良しとしましょう」



 高レベルのダンジョンと言っても、レベル1500オーバーのウリエル、白太、シュベ太。そして1000オーバーの竜種

ミネルヴァ。

 これだけの戦力があれば道中の魔物との戦いで、負けるようなことはありえなかった。

 だが環境や罠、特殊なギミックやスキル持ちの魔物達。そんな様々な初めての経験を一度潜っただけでも与えてくれた。


 そのおかげでこの2組は連携もさらに噛み合うようになり、さらに新スキルやスキルの習熟とともに新たな戦い方が出来るようになった。


 一番期待していた竜戦では少々不完全燃焼だったが、それだけでも十分満足のいく結果だった。



「アーサーさん達も同じような感じなんでしょうね」

「そのはずよ。ただ攻略するだけでなく、色々と試して戦ってみて欲しいと主様はおっしゃっていたし、皆も多くの何かを得られるはずだわ」



 そのウリエルの言葉にミネルヴァは頷き返してから、視線を外して周囲に目をやる。

 そこには先ほど倒した竜の死体と、帰還の入り口が出てきていた。



「では、主様へのお土産を余すことなく回収していきましょうか」

「ええ、指示はお願いね。ミネルヴァ」

「はい。任せてください」



 解魔法も得意なミネルヴァの指示に従って、ウリエル、白太、シュベ太は蛇竜の素材を欠片も逃さず集めていった。




「へっちゃん! そっちいったよー♪」

「了解、フローラおねーちゃん。ボーちゃん、清子さん──行くよ」

「キィィーーー」「──!」



 南極を思わせるような吹雪吹き荒れる白銀世界。

 視界が悪く雪に足を取られたり、場所によっては滑りやすい上に、地面は雪に隠され亀裂が入っている箇所があちこちにあり、踏み抜けば奈落の底に落とされる可能性まである。


 そんな場所に出てきたボス竜は、世界最速動物──チーターを思わせるような風貌をしている竜だった。

 全長は頭から先まで6メートルと竜にしたらわりと小柄で、鱗ではなくやや毛足の長いフワフワしたブチ模様の毛皮をまとっている。

 けれど4本ある足首より下、首回りから頭、尻尾は硬い竜の鱗で覆われていた。


 見た目がチーターに似ているからというわけではないだろうが、ステータスが見られるとしたら、ほぼスピードに振っているのではないかというほど移動速度は速い。

 その上で、この地形でも走り回れるようなスキルも所持しているのだろう。


 今までの挑戦者は足場も悪く気温も低く体力を奪われるこの地で、とんでもなく速く走り回って襲ってくるこの竜に何人も狩られてきた。

 ちゃんとそれらに対策してきても、対策するためにある程度リソースを割かれるので、それだけでも不利になるからだ。


 けれど今、何人も屠って来た優秀な狩人は、たった2人と2体に追い詰められていた。


 フローラは視界が悪い中、解魔法で敵の位置を的確に特定。その方向に火と光の太いレーザーを放って狩猟豹竜の位置をヘスティアたちに知らせながら、罠へと追いやっていく。


 自由に属性魔法のレベルが入れ替えられるフローラは、さらにダンジョンで経験を積んだことによってあらゆる魔法を使いこなす魔法使いとして、確実に成長を遂げていた。


 そんなフローラの思惑通り、見事狙った場所に狩猟豹竜が足を踏み入れ──。



「──ギャンッ!?」

「ナイス、ボーちゃん」



 ボーちゃん事、カラド()ルグの《無限刃造操作》によって作られたトラバサミが、深く狩猟豹竜の右後ろ足に食い込み離さない。

 そのトラバサミは雪の中を通じてカラドボルグと繋がってもいるので、カラドボルグと綱引きするような形で捕獲される。


 そこへ清子さんがやってきて、横っ面にビヨーンと伸びる腕で連続パンチ。

 遺伝子異常系スキルは、素材もダメにしてしまうので今回は封印だ。


 清子さんにタコ殴りにされながらも、さすが竜。体中を凹ませながらも、なんとか一矢報いようと爪の斬撃を飛ばす──が、清子さんの物理耐性を破る事も出来ずに弾かれて終わる。


 そんな事をしている間に、この中で最も火力の高い存在が真横に来てしまった。



「これ邪魔」

「────ギャヴッ」



 本来は槍であるロンゴミニアドを2本の斧に変形させ、それを《超竜重撃》で重さの増した2撃をクロスさせるようにして足元を薙ぎ払う。

 たったそれだけで4本の足は消えてなくなってしまった。



「こらー、へっちゃん! 出来るだけ素材をダメにしない様にって言ったでしょー」

「あ、わすれてた……。ごめん、おねーちゃん」

「うーん。まあ、これくらい──ありがと♪ 清子さん」

「キィイイー」



 足を失いながらも背筋と腹筋だけでバネのようにフローラに突撃してくるも、清子さんが壁となって守ってくれる。



「これくらいなら、復元魔法でなんとかなるかな? なるよね♪

 ってことで、これ以上ダメになる前にやっちゃおー♪」

「さんせー」「キィー」「──」



 そうして一斉に攻撃を放ち、狩猟豹竜はあっさりとその命を散らした。

 それと同時にこちらも、目的である称号とSPを手に入れたのであった。

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