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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
最終章 帰界奮闘編

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第588話 ヘスティアの相棒

 新たにアイギスも加わり、さらに盤石な体制を整えられたなと思っていると、ふと竜郎は閃いた。



「アーサーの相棒も武器も揃ったんなら、ヘスティアの相棒も揃えてあげたいな」

「生まれ方も人竜って種族も、武器を持った日にちも一緒だしね。せっかくだし、そこも合わすのもいいかも。

 でも誰を相棒にするの?」



 ヘスティアは守りと言うよりは圧倒的な火力で押し潰す攻めのタイプだ。

 それでいくのならアーサーのように守護系の相棒を付けてあげるのもよさそうだ。



「でも長所をさらに伸ばすって言う手もあるっすよ」

「長所を伸ばすと言うと、オフェンス力を上げる方向か。ヘスティアはどっちがいい?」

「ん…………攻めの方が、私の好みには合ってるかも」



 ヘスティアの場合はガウェインのように攻撃が最大の防御戦法で特攻をかますわけでもなく、戦闘に熱中しすぎて周りが見えなくなるタイプでもない。

 なので防御の補助は無くても、冷静に自分で対処する事も可能だ。


 となればさらに攻撃力の高い相棒と組むことで、殲滅力を伸ばするというのも十分候補に挙がってくる。



「うちで純粋なオフェンスと言うとシュベ太、ウル太がいるが、あの二体だと前に出過ぎてフォローしなくちゃいけなくなりそうだな」

「それだとヘスティアちゃんの持ち味が薄くなっちゃうから、相棒という意味では止めといたほうがいいかもね」

「魔法系アタッカーとなると亜子がいるし、こっちとなら役割が被らなさそうか。

 他には中衛系のアタッカータイプでもある千子なんかはいいかもしないな」



 魔王種候補や半神種の魔物達で、まだ相棒を付けていない者達を思い浮かべていく。

 戦力層がかなり増加したもんだなと、竜郎は我ながら感心しながら候補をヘスティアへと告げていく。

 だがそのどれもヘスティア的にはピンとこなかったのか、上手くかみ合わなさそうと思ったのか、感情のバロメーターでもある翼の動きも芳しくない。



「……ん。アーサーおにーちゃんみたいなので、攻撃系のは作れない?」

「アーサーみたいなのだって? ああいうゴーレム系の相棒がいいのか、ヘスティアは」

「ん? ゴーレム系がいいかどうか解んないけど、自分の近くいるけど邪魔にもならないような相棒がいいなって」

「近くにいてほしいけど、いざという時にヘスティアの攻撃に巻き込まれたり、動きの邪魔になったら嫌だという事の様ですの。

 そこのところどうですの、おとーさま」

「邪魔にならない様には特訓で息を合わせて行けばどうとでもなるんだろうが……」

「ん、めんどい」

「だろーな。そもそも熱血タイプでもないわけだし」



 眷属であろうとも嫌な事を無理にやらせるのは竜郎の信条に反する。

 それにいやいや特訓をしたところで、大して身にもならないだろう。

 なので竜郎は即席でも、先ほど言ったヘスティアの要望にそった存在がいないかどうか頭の中で考えていると、愛衣が何か思いついたようだ。



「そーいえば、たつろーって《強化改造牧場》に+1が付いたおかげで、近縁種?ってのにも孵化させられるんだよね。

 あの魔王盾の近縁種でそう言うのはいないのかな?」

「ああっ、それは考えていなかった。さっそく見てみよう」



 もともと盾の見た目の癖に《剣術》を持っていた様な魔物だ。

 ひょっとしたら見た目が盾ではなく、攻撃系の近縁種がいても不思議ではない。

 竜郎は愛衣を一度ぎゅ~っと抱きしめてから、《強化改造牧場》に等級7にした魔王盾の魔卵をセットして、シミュレーターを通してどんな存在がいるか確かめていく。



「おっ! 剣の形をした奴がいるな」

「他にも色んな武器の形をした奴もいるじゃねーか。より取り見取りだな」



 ガウェインがそう言うように、近縁種の種類は予想以上に豊富だった。

 元となっている盾以外に剣、斧、槍、弓、鞭──などと武術系全種の武器が揃っていたのだ。



「ヘスティアは、どれがいい?」

「………………ん。これ」



 そういってシミュレーターの画面に映し出された中で指差したのは、2メートル級の大剣で剣のつかの部分が悪魔になっており、その悪魔が赤いコアを咥えていると言う彫刻がほどこされたものだった。



「ナナの眷属、ダーインスレイヴのような感じだと思えばいいんでしょうかね」

「ダーインスレイヴの場合は、なりはああでもゴーレムではない様ですし、少し違う気がしますの」



 ダーインスレイヴにはゴーレムコアが無く、魔族の幽霊系の魔物に分類されているようなので、実は創物系のゴーレムとはかなり違う。

 けれどそれを聞いたヘスティアの表情は無表情ながらも、翼がへにょんと下に垂れ下がった。



「ん……。奈々おねーちゃんと一緒が良かった……」

「で、ですが見た目が似たようなモノなら、それはもはや一緒と言っても過言ではない気がしてきましたの。だから一緒ですの!」

「ん、そっか」



 奈々はいじらしい妹が可愛くて仕方がないのか、ぎゅ~と抱きしめれば、ヘスティアもその抱擁を受け入れた。

 奈々は同じ邪竜であり、竜郎から生まれた存在でもあり、自分に甘えてくれるヘスティアを妹として殊更可愛がっている。

 そして可愛がってくれて自分に優しい奈々に、ヘスティアもおやつをくれるフローラと同じくらい懐いていた。


 だが今現在の状況は、奈々の外見は幼女形態なので、中学生から高校生くらいの姉に抱っこされている幼い妹にしか見えないのだが……竜郎は見て見ぬふりをした。



「よし、まあヘスティア自身がいいならこれでいこうか。

 ふむ……しかし剣か」

「剣に何かあるの? たつろー?」

「いやな、そういえば前に戦った空飛ぶ巨大サメの魔王種にも、良く切れる刃が付いてたなと思ってな」

「あー。あれは直撃したら私の耐久力でも越えてきそうなくらいの切れ味だったからね。

 んで、それがどったの? もしかして、そのサメさんとゴーレム剣の魔卵を混ぜ混ぜしたいってこと?」

「まあ、うん。正直に言ってしまえば興味はある」



 ということで、少し寄り道になる可能性もあるがやってみることにした。

 もしヘスティアが気に入らない結果となったとしても、魔卵は複製した予備があるので問題ない。


 巨大飛行サメの魔卵は作っていなかったので、急きょ素材をかき集めて製造してみれば、その等級は6。

 現魔王剣にして元魔王盾の魔卵の等級は7まで上げてあったので、合わせるために合成を繰り返し巨大飛行サメ等級7まで調整──からの魔王剣との合成。

 さてどうなったかとシミュレーターを起動して確かめてみれば、そこに映っていたのは一言でいえばサメの歯──だった。



「なんというか、妙なものになりましたね」



 中央に浮かぶのはサッカーボール程の大きさをした、まん丸い紅のゴーレムコア。

 その周囲には正三角形に近いサメの歯のような形をした刃が、上下互い違いに──△▽△▽△▽──と言った風に並びながら輪を作って浮遊していた。

 その三角形で構成された輪っかは、頂点が上向きの三角形同士と、下向きの三角形同士の動きが連動しており、それらが上下に動けばまるでサメの歯だけが浮いて何かに噛みつき咀嚼しているように見えた。



「これも魔王科に属しているみたいだから、300レベルまで育てれば魔王種化するみたいだな。

 こんなんが出来たけど、ヘスティア的にはどうだ?」

「ん~~…………微妙?」

「そうですの、おとーさま。ヘスティアはわたくしと(・・・・・)同じようなのがいいのですから」



 ヘスティアの反応にお姉ちゃんぶりたい年頃の奈々が、「そうでしょうとも」と言わんばかりにうんうんと腕を組んで頷いていた。


 やはり属性的に相性が良かったわけでもなければ、種族的に相性が良かったわけでもなかったのか、等級は7と据え置きだ。

 それなら別に前の魔王剣でも同等の強さを発揮してくれるだろし、こちらは《無限アイテムフィールド》の肥やしにしてしまってもいいだろう。


 だが竜郎が掲げる魔王種100体できるかな計画的には、同じような魔王種の魔物が並ぶよりも、バリエーションに富んでいたほうが嵩増し感も無く見栄え的にいい。

 なのでヘスティアの相棒にはなる事はなさそうではあるが、それでも生み出してみたいと思った。



「まー複製ポイントにも余裕があるんすから、とーさんの好きにしてもいいと思うっすよ」

「それに強い仲間が増える分には、我々にとっても良い事だと思います。マスター」



 アテナやアーサーの言に続き、他の皆からも特に異論はないようなので試しにこの魔卵を孵化させてみる事となった。

 今回は形にこだわりはないので、なんの小細工もなしに遠慮なく神力を混ぜ込んで孵化させていく。

 そうして孵化したサメ歯ゴーレムを目の前に出してみれば────そこにはただ一つ真っ赤な、まあるいゴーレムコアだけがフワフワ浮遊していた。



「あれ? サメさんの歯みたいな刃はどこいっちゃったの?」

「ぬぅ……コアが丸出しなのだが、こいつは大丈夫なのか? マスターよ」



 ゴーレムにとって心臓とも言うべき急所コアのみで構成された謎の魔物。

 これで戦いにおもむいた場合、裸で敵前に飛び出すのと同義であろう。

 これでは神力での強化どころか弱体化したと言ってもいいのではないだろうか。さすがにこの結果には竜郎も冷や汗が出てくる。

 神力を入れたせいで、なんらかのバグが生じたのではないかと。


 竜郎は急いで確認すべく、この魔物と従魔のパスを通じてコンタクトを取ってみる事にする。



「お前は、どうやって身を守ったり攻撃したりするんだ?」

「──? ………………────」

「解った」

「なんだって?」

「少し離れて欲しいみたいな感情が伝わってきた。ちょっと皆、距離を取ってくれ」



 一体何を見せてくれるのだろうかと、ゾロゾロとカルディナ城の方に下がってゴーレムコアを見守っていると、そのコアが一瞬ブルッと震えた。

 するとコアから吐き出されるように、何か平たく細長い物が4本勢いよく、ぞろぞろ飛び出した。



「何あれ?」

「何本もの刃物が繋がりあったものの様ですが……」



 這い出てきたものは、20度ほどの鋭角な3角形のような、一本が30センチほどの刃。

 それらの刃が先端と末端で軽く交差しジグザグと雷マークを描くように、数珠なりに長く10メートル程になるまで伸びたものが4本。

 一本は砂浜に深く突き刺さり、一本は空に向かって伸び、一本は海に向かって伸び、一本は竜郎達のいる方向に延びていた。



「どうやらまだ自分の体の制御に苦労しているみたいだ。もう少し見守ろう」



 それら4本は無軌道にうねうねとヘビのように動き回り、周囲の空気や砂浜、または海を切っていく。

 竜郎の言葉に皆頷きながらその行動を見守っていると、4本のジグザグ刃の動きが纏まり始める。

 そして長さを調整することが出来るようになったのか、コアからぞろぞろと出ているジグザグ刃をテープメジャーのメモリをしまうように、あるいは掃除機のコードをしまうように少しずつ吸い込んでいく。

 長さの調整の練習なのか出したりしまったりを暫し繰り返していたかと思えば、今度は3メートル程まで短く調整したジグザグ刃をグルンとコアの球面を滑らせるように移動させた。



「どうやら球面のどこからでも4本まであのジグザグ刃を出せて、出した後でも自由に排出場所を移動できるようですね」



 リアの解説を耳にしながら、そうなのかと感心している間に、ようやく体の動かし方を理解したようだ。

 4本のジグザグ刃を三角刃2本分ずつにまで調整し、コアを中心に上から見ると卍型に見える位置に固定して竜郎の元まで浮遊しやって来た。



「それがお前の武器なのか?」

「──」



 肯定の意志が返ってくると共に、4本あるジグザグ刃の先端の三角刃の部分だけをドローンのプロペラの様に回した。

 そこに試しに竜郎が人間の肉と同等の柔らかさと硬さを模した土を、土と闇魔法で作りだし放ってみる。

 するとガガガガッ──とミキサーに巻き込まれた肉塊のようにバラバラになった。



「ん。か、かっこいい……。主、私それを相棒にしたい」

「あれれ? わたくしと、お揃いみたいにしたいのではなかったのですの?」

「ん。それはそれ。これはこれだよ、奈々おねーちゃん」

「えー……。そ、そうなんですの……?」



 ダーインスレイヴとゴーレム剣を互いに持ち合う仲のいい姉妹像を想像していた奈々は、少しだけ──いや、かなり残念そうにして肩を落とした。

 そんな彼女へ、リアが生暖かい笑顔で慰めるように肩をぽんぽんと叩くと、奈々はリアにひしっと抱きついた。

 姉妹の仲は据え置きになったものの、麗しい女の友情の方は深まったようで何よりである。



「ん。他には何が出来る?」

「マイペースなやっちゃな、ヘスティアは。

 まあいいや、何かデモンストレーションでもしてみてくれないか?」

「────」

「おー」



 ヘスティアの感嘆の声が漏れる先では、コアから自在に4本のジグザグ刃を操作し、遠く離れた海や地面、空に至るまで上下左右全方位、最長20メートルまで伸び縮みさせ空気や砂や海面を切り裂いて見せた。



「やっぱりかっこいい……。主、いいよね?」

「あー……ああ、いいぞ」



 一瞬だけ奈々に視線を送ると、もう気にしてないのかリアとイチャイチャしていたので、竜郎は二つ返事で快諾したのであった。

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