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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
最終章 帰界奮闘編

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第574話 フレイヤの特訓

 《強化改造牧場》によって作られた影は、元の魔物の8割のエネルギーを自分のシステムに取り込めるようになっている。

 なのでレベル1のフレイヤへ、大量の経験値が入り込んでくるが──。



《『レベル:49』になりました。》



 当然、彼女もまずはレベルキャップに引っかかる。

 これより上にあげるには、自分の中で何か一つ壁を乗り越えなければならない。


 フレイヤに他の眷属たちのバックアップをして貰おうと考えるのなら、今度は出来るだけ速やかに壁を超えられるよう強敵との戦闘などをするのが近道か。



「ところがどっこい」

「どったの、たつろー?」

「その制限も所詮システムがやっている事に過ぎない。

 何らかの制限を設けていると言うのなら、それを《侵食の理》で解くことが出来るんじゃないだろうか?」

「確かにシステムの構成にも手を出せるという事みたいですし、制限みたいなものがどういう風にされているかは謎ですが、可能かもしれませんね」

「それにまだ俺の眷属で49を超えていない者達もいるし、真面目に時間を掛けて壁を越えさせる時間を取るより、レベル上げの方を優先しておきたい。

 というわけでフレイヤ。レベル49になった状態の固有属性構成を見せて貰えるか?

 もしかしたら直ぐに50以上に上げられるかもしれないぞ」

「それは楽ちんで──こほん。他の先輩方の助けになるのなら、このフレイヤ。粉骨砕身の思いで謹んでやらせて頂きますわ。ご主人様」

「いや、お前……今、楽ちんって──」

「さあっ! 早くやって下さいまし!」

「……はいはい、解ったよ」



 別にやる事をやってくれるのなら、いくらでもぐーたらしてて貰っても構わないのだが、フレイヤのプライド的にはあまり認めたくはない様だ。

 なのでこちらも聞かなかった事にして、さっそく彼女の今の属性構成をスキャンさせてもらった。



「一気にレベル49まで上がったから、だいぶ固有属性構成も変わってきてるな。

 天照。前のパターンも記憶しつつ、こっちもバックアップしておいてくれ」

「────!」



 小まめに色々な情報を記録しておけば、後々に何か発見があるかもしれない。

 それを見越して天照の魔力頭脳に様々な人や物の固有属性構成を保存するデータベースを構築していき、いつでもカルテのようにその時々の状態が解るようにする。


 そうして完璧なバックアップを取り終ると、今のフレイヤの固有属性構成を調べていき、レベル49で制限しているシステムの属性構成部分を検知していく。



「これで間違いなさそうだな」

「────」



 天照の新型魔力頭脳による、今までのデータに基づいた判断も間違いないと肯定してくれる。

 あとはこれを超えた状態に変質させてしまえば良いだけだ。

 超えた状態のサンプルは自分自身や天照。月読。などのデータがあったので、比較的難しい事でもなかった。


 そうして──。



《《『レベル:50』になりました。》》

《《称号『天衣無縫』を取得しました。》》



「やりましたわ! 何もせずにレベル50になりましたの!」

「やっぱりできたか。こりゃ、他の眷属たちにもやってあげないとな」

「なまじ初期能力が高いと、壁に当たる事がまず難しくなってくるからなぁ」



 イシュタルは世界最強の母との模擬戦によって壁を無理やり超えたが、もしエーゲリアがいなければ彼女自身、最初の壁を見つけるところから始めなければいけないところだったので、その気持ちは良く解る様だ。



「そー言えば天照ちゃん達の時もだけど、何のスキルも新しく取得しないで壁を越えたら、クラスが選択できるようになったんじゃなかったっけ?」

「言われてみればそうだったですの。フレイヤのクラスは今、どーなっているんですの?」

「えーと……」



 フレイヤが自分のシステムを起動し確認する様な動作をしだしたので、竜郎たちもならって彼女のステータスを覗いてみた。

 すると──『クラス:無冠の神級天魔─>☆☆★★』と表記されていた。



「つまり4種類の選択肢が生まれたって事っすね」



 一番左の『☆』を指でタップしてみれば、天族系神級天魔と。

 真ん中の『☆』を指でタップしてみれば、魔族系神級天魔と。

 右から2番目の『★』を指でタップしてみれば、真祖系神級天魔と。

 そして最後の『★』を指でタップしてみれば、命神の系譜と。

 それぞれ表記されていた。



「なにか一つ、とんでもないのが潜んでいるんですけど……。私の見間違いでしょうか、兄さん」

「いいや。見間違ってないぞ、リア。等級神と同じ第2位格の命神の系譜がある」

「ですよねー……」



 この時点でどれが一番この先強くなれそうか解ってしまった気もするが、念のため他の3種も含めて全部調べてみる。


 まず『天族系神級天魔』。これは今よりも前衛系のスキルが覚えやすくなり、魔族系のスキルの行使が苦手になる。

 次に『魔族系神級天魔』。これはその逆で、後衛系のスキルが覚えやすくなり、天族系のスキルの行使が苦手になる。

 次に『真祖系神級天魔』。これは純粋に今の上位互換。スキルなども変わらず、何処にでも入っていける中衛タイプで、天族魔族どちらのスキルも得意。


 そして最後『命神の系譜』。これは上記の『真祖系神級天魔』のクラスの効果にプラスして、命を司る神の系譜に入り、少しばかりその恩恵が得られるようになるようだ。



「これは考えるまでもない気がするけれど、選ぶのは本人よね。

 フレイヤちゃんはどうするつもりなのかしら?」

「そうですね……」



 フレイヤからしたら神というのは、産まれて直ぐに睨みを利かせてきた恐い存在という認識しか持っていない。

 であるが故に、神と繋がりを深くするという事に若干の抵抗を覚えたようだ。

 だが、竜郎たちや他の眷属たちと一緒に戦うというのなら、力を求めた方がいいとも思い、その合間でどちらにしようか踏ん切りがつかない様子。


 それを竜郎は目ざとく察し、彼女が一番いいと思う方を選択するように促す事にした。



「フレイヤ。俺達の事を考えてくれるのは本当に嬉しい。

 でも、それ以上にまずは自分が一番納得できる方を選んでほしい。俺は絶対に強制はしないから。

 手助けしてくれるのなら、選んだ範囲内でやってくれるだけで十分だ。

 だから気の向くままに、好きに選んでみてくれ」

「ご主人様……」



 その竜郎の言葉が背中を押して、フレイヤは決断を下した。



「決めましたわ。わたくし、命神の系譜を選択いたします」

「…………それでいいのか?」

「ええ。わたくしにとって大切なのは、御主人様とその家族、お仲間たちですわ。

 その為に力がいると言うのなら、わたくしはそれを選ぶまでです」



 フレイヤから眷属のパスを通して伝わってくる感情には、もう迷いは一つも無かった。

 たとえ恐い存在だとしても、自分を思いやってくれる人たちの為ならば、逆にその力も利用してやるくらいの気持ちになったのだ。



「解った。フレイヤ自身がそれを望むのなら、俺からは何も言わない」



 その竜郎の言葉にフレイヤは優しく微笑み返すと、彼女はそっと自分のシステムを操作し、新しいクラスを選択した。



《無冠の神級天魔 より 命神の系譜 にクラスチェンジしました。》

《スキル 至上命令 を取得しました。》



「新たな力を手に入れたようですわね。これは……」



 調べてみると、《至上命令》とは、それを発動しながら発した命令は格下相手なら、その命──魂に直接命令され、自分の意志よりもフレイヤの言葉を最優先に実行するという、人の命を言葉で縛るスキルのようだ。



「格下って制限はあるけど、そうじゃなくてもけっこう恐ーいスキルだね」

「フレイヤさんよりも格上を探す時点で、そこいらにはいないでしょうしね」



 これは単純に種族的に上だとか、レベルが上だとかではなく、その命令に初動で耐えられるだけの強さを持っているかどうかで判断される。

 なので戦ったら勝てる相手でも、相手次第では弾かれる事もあるし、戦闘して負ける相手でも、相手次第ではかかってしまう事もある。


 またこれは命令を聞いた瞬間にピクリとでも従おうとした瞬間、命を縛られることになるので、一度かかってしまえば命令を完遂するか死ぬまで縛られたままになってしまう。



「にしても何故、命神はフレイヤに系譜のクラスを用意したのだろうな。

 もうタツロウの眷属となった今、監視をする必要もないだろうに」

「さあなあ。等級神や魔神なんかとは話したことはあるが、命神はそんな神様もいるんだ~くらいの認識だし」

「今度、武神ちゃんに聞いてみよっかな。案外気まぐれだったりしてね」

「ははっ、かもな」



 などとイシュタル、竜郎、愛衣などが話していたが、実際は少し違う。

 では何故、命神がフレイヤにそのクラスを用意したのか。といえば、ひとえに贖罪の気持ちがあったから。


 命神もせっかく生み出したというのに鍵をかけて、竜王種のように個体制限をかけるどころか、その種自体をいっさい生みださないようにしてしまっていた。

 それは命を司る神としても、非常に残念な結果だった。

 出来る事ならこの天魔の真祖も、地上にいる他の人間たちのようにこの世界を謳歌してほしいと思っていたからだ。


 だが実際には他の神からも反対されるし、命神自身も危険な事は重々承知していたからこそ、心を鬼にして封じていたのだ。


 けれど竜郎が好き勝手やらかしてくれたおかげで、生まれるはずの無かった天魔の真祖が生まれた。

 この一度を逃したら、再度対策をほどこした封印によって、二度と生みだされないかもしれない存在がだ。


 だからこそ、この最初で最後になるかもしれない一体にはせめて幸せになってほしいと願った。

 しかし最初に強く注目してしまったせいで、彼女は神を恐れるようになってしまった。

 それなのに押し付けるように系譜に入れてしまうのは気が引ける。


 なのでもし、フレイヤが何のスキルも新たに取得することなくレベル49の壁を越える様な事があり、自由に自分のクラスを選べる権利を有したのならば、選択肢の一つとして紛れ込ませようとシステムがインストールされた瞬間に思ったのだ。


 それはもう少し後になるかと思いきや、これまた竜郎の行動によって直ぐにその時が訪れた。

 幸い《崩壊の理》は命神にも関係があるスキルなので、系譜に入れるのはたやすいという事情もあって直ぐに用意しねじ込むことが出来た。

 選ばれなくても、これからも見守っていこうと思いを込めて──。



「さて、それじゃあフレイヤ。まずは他の皆に先駆けて、とりあえずレベル800くらいまで上げていこう! 目指せ魔王鳥単独撃破だ」

「望むところですわ! このままでは、ダラダラしているだけの女と認識されかねませんからね!!」

「ふふふっ、無茶しない程度でいいんだからね」

「解っていますわ、アイさん!」

「それじゃあ、他の皆も交代でサポートを頼む!」



 そうして魔王鳥との連戦が始まり、レベル300くらいになった時には単独での撃破が出来るようになった。

 500になれば危なげなくこなし、この辺りでさすがにレベルの上昇率が落ちてきた。



「せっかく全員揃ってる事だし、スッピーと出会った海底遺跡で戦った飛行サメでも狩ってみるか」

「たしかレベル1400くらいはあったよね」

「正確にはレベル1488でしたから、8割の経験値でも十分レベル500のフレイヤさんも800くらいまでなら余裕で上げられるはずですよ」

「ただこのレベルだと、今の私たちでも気を付けなきゃいけないけれどね」



 竜郎の現在のレベルは1784なので、単独撃破もやってやれない事もない。

 が、その飛行サメの本気の一撃は、こちらを殺す事の出来る威力を持っている。

 なので少人数ではなく、そちらは全員でよってたかって叩きのめし、フレイヤに止めを──なんてことを続けた。

 そしてついに──。



「レベルが1000に届きましたわ!」

「初期目標を超えてしまったが、森に行くまでに最低そのくらいまでは上げていくつもりだったし、ちょうどいいか」



 途中からはフレイヤもちゃんと戦闘にも加わっていたのと、本人の才能値が上級竜並みに高い事もあってスキルレベルも軒並み上昇。

 これなら他の眷属たちのサポートをしながらでも、魔王鳥くらいなら余裕で狩っていけるだろう。


 そのご褒美──というわけではないのだが、頑張ったフレイヤに広大な土地の一角に全ての注文を聞いて創造したフレイヤのログハウスを建ててあげた。

 もちろん、他の面々も望むのなら建ててあげるつもりだ。

 というか、土地はほぼ無尽蔵にあるので城の一つでも建ててもいいと言ったのだが……。



「そんな大きなところではのんびりできませんわ!」



 などと見た目の令嬢然とした印象と違い随分と庶民的な理由で、ちょっとおしゃれで小粋な1人暮らし用のログハウスが出来あがったと言うわけだ。

 中にもフレイヤが拘りぬいたベッドと枕も用意し、「頑張った後のゴロゴロは格別ですわ~」などと竜郎達が見ている前で思わずゴロゴロし出す程に気に入って貰えた。



「とまあ、これで大体建造物や物体の創造の訓練も出来た所で、ちょっと自分たち用の趣味の空間も作っておくか」

「おっ! またお城でも建てちゃう?」

「それもいいかもな。ここなら、いつでもどこでも来ることが出来るし。

 となると次の城の形は──」

「わたくしですの! 楽しみですの~!」

「カルディナ、ジャンヌときているし、順番的には妥当だな。

 それじゃあ奈々の形で──」



 そこで竜郎は完成予想図を頭の中で思い浮かべ、ふと我に返る。



「なんか馬鹿でかい幼女のフィギュアになりそうな気が…………」

「幼女のお城。幼女う…………幼城ようじょうだね!!」



 ある意味、外でなくて良かったかもしれない──そう竜郎は密かに心の中で呟いたのであった。

次回、第575話は9月26日(水)更新です。

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