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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
最終章 帰界奮闘編

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第573話 《強化改造牧場》の中に入ろう

 さて。これで竜郎は等級神とのやっておかねばならない約束も果たした。

 となれば次にやっておきたいのは、《強化改造牧場》内にレベリングの為の修行スペースを作る事だろう。


 それをやっておけばウリエル達眷属組の強化は勿論、従魔たちの魔王種化なんてのも直ぐに出来るようになる。

 従魔たちに眷属化してもいいかどうか聞いて回ろうかとも思ったが、こちらを優先させておいた方が順番的に効率がいいだろう。



「確か必要だったのは《強化改造牧場》と《時空魔法》、《侵食の理》と称号の《創造主・急》かな。

 これらを侵食して一時的に合成して発動させれば、《強化改造牧場》内の空間に入って好き勝手いじれるようになるって話だったが……はてさて」

「軽く言ってくれるが、改めて聞くととんでもないな」



 成功すれば新たな疑似世界を手に入れるに等しい。

 冷静に考えればイシュタルの母、エーゲリアでもなかなか困難な事をしようとしているのだから驚きだ。


 けれど当の本人はそんな事は気にも留めずに、さっそく自分に対して《侵食の理》を使い、その全てをスキャンしていった。

 

 異世界人だからもしかしたら何か違ってくるかもと少し身構えもしたが、特に問題も無く自身の固有属性構成が判明していく。



(なるほど、確かに俺の固有属性構成には神格を司る部分が2つあるな。

 魂やシステムの構成もハッキリ解るようになって来たぞ)



 いじっていい所といじってはいけない所を慎重に確かめていき、システムの構成部分の中に含まれているスキルや称号にあたる属性構成部分を密に見極めていく。



(これが俺のシステムに入ってる《強化改造牧場》の固有属性構成。

 それでこっちが《時空魔法》で…………これが称号の《創造主・急》だな。

 あとは──)



 今回竜郎が最良の結果だと考えているのは、この3つを繋いで発動させたスキルを、竜郎がレベル50の壁を越えた時に覚えた《複合魔法スキル化》で無理やりスキルとして登録させるという事。


 等級神たちも同じことを思っていたかは定かではないが、竜郎の中ではこれが一番よさそうな方法であり、今後もいちいち《侵食の理》で作業しなくても行き来できるようにするのに最も適した方法だろう。

 まあそれも、できたのなら。の話ではあるが。


 まず竜郎は《強化改造牧場》を侵食したまま、シュベ太を目の前に呼び出してみる。そして直ぐにスキル内に戻す。

 別の魔物にも同じような事を数度繰り返し、《強化改造牧場》というスキルのどの構成部分が現実世界とスキルによる世界を繋いでいるのかを反応で見極めていく。



(よし、必要な部分はここだな。次は──)



 時空魔法、《創造主・急》の称号効果、複合魔法スキル化。これらも何度か発動させて寸分の間違いも無く必要な部分だけを確かめ終わる。


 後は実際にそうやっているわけではないので、あくまで竜郎のイメージの話になるが、システム構成で余っている部分を使ってコードを作る。

 そしてそのコードで、それぞれ必要な部分を結合していきスキルを起動させる。

 ──というような事をやってみた。


 すると空間にかまぼこ型の穴──牧場への入り口が竜郎のイメージした通りに出来上がる。

 あとはここを通っていけば、魔物しか入れないはずの《強化改造牧場》内へと誰でも入ることが出来、さらに自分の思い浮かべた通りの環境が出来あがっているはずだ。

 これで当初の目的は終えたと言ってもいい。


 だが、ここで打ち切ってしまうと、次の起動の際にも同じように《侵食の理》で3つのスキルを繋いで~といちいちやらなくてはいけない。

 下手にいじると危険な行為でもあるので、何度もやるのは避けたい。


 ということで、ここで先ほど属性構成を解析しておいた《複合魔法スキル化》の出番である。

 今現在、無理やり連結させて別のスキルとして実行したまま保っている3つの合成スキルを、魔法だと誤検知させスキル化させる。


 一度でも使った事のある複合魔法だけ(・・・・)をスキル化させるものであり、本来なら魔法ではないこれをスキル化など出来ない。

 けれど侵食し一時的に構成をいじって判定をあやふやにしてしまえば、いけるのではと竜郎は考えたのだ。


 試しに《複合魔法スキル化》を起動してみれば、ちゃんと《強化改造牧場・改》という見たことも無いスキルが、スキル化できる候補として挙がっていた。

 竜郎はすぐさまそれをスキル化すると、彼のシステムを構成する固有属性構成に別のスキルが生まれたのが確認できた。


 ここで一旦、維持していた《侵食の理》で発動させていた3つの合成スキルを解いた。



(ん? 何かこれだとおかしいな)



 念のためその《強化改造牧場・改》を侵食して中身を見てみると、何か違和感を感じた。

 いうなればパズルのピースは全部そろっているのに、嵌っている場所が違って絵柄が変になっている感じだろうか。


 竜郎はすぐさまその《強化改造牧場・改》を発動してみると、入り口が先ほどのような綺麗なかまぼこ型ではなく、グニャリと歪んでしまっている。

 さらに少し解魔法を使って中を探ってみると、そこもなんだか別々の空間をパッチワークしたかのような妙な空間となってしまっていた。



(さすがに誤検知させてスキル化したものだと使えないみたいだな。

 だが──)



 竜郎は先ほどの3つのスキルをもう一度合成してから行使し、今度はそれで実行されている合成スキル本体を《侵食の理》で属性構成をスキャン。

 そして天照の入った魔力頭脳の演算もフルに使って、完全な状態と不完全な状態を比べながら、《強化改造牧場・改》の間違ったピースを整えていく。



(これでどうだ!)



 今度は《強化改造牧場・改》でスキルを行使しても、ちゃんと《侵食の理》で無理やり繋いで行使した状態のものと同じように使えるようになった。


 そこで竜郎は自分への侵食をやめ、ようやく人心地付けた。



「ふうっ……。多分できたぞ」

「お疲れ様ー。ちょっと汗かいてるよ。拭いたげる」

「ありがとう。愛衣」



 愛衣は《アイテムボックス》に入っていた自分のタオルで、竜郎の汗を拭っていった。

 それにお礼を言いながら、竜郎は自分が汗に気がつかないほど集中していた事にようやく気が付いた。



「無理もないわよ。自分の固有属性構成の変質なんて、一歩間違えれば大惨事になりかねない行為なんだから」

「それに、間違えた時に修正できるのも兄さんだけですからね」



 そうなのだ。もし竜郎が別の誰かの属性構成をいじっておかしくしてしまったとしても、バックアップと言うのか、もとの属性構成配列は天照のコアがしっかりと記憶してくれているので復元は可能。

 けれどそれが竜郎だった場合、もし《侵食の理》を使えない様な状態にしてしまったら取り返しがつかなくなってしまう。


 だからこそ、竜郎は新型の魔力頭脳での演算もある中でも、絶対にミスをしない様に集中を重ねていたと言うわけだ。



「というわけで、少し休憩を挟ませてくれ。その後で《強化改造牧場》の中に入ってみよう」

「そうした方がいいね。ほら、たつろー。また私の膝の上で寝る?」

「寝る! ひゃっほう!」

「……じゅーぶん元気じゃん」



 砂浜に大きなシートを敷き、その上に皆で座りながらも竜郎だけは愛衣の膝の上に意気揚々と頭を乗せて寝転びその感触を堪能した。




 休息を充分に取り、竜郎も愛衣成分をバッチリ補給できて精神的疲労も癒えたようだ。

 愛衣も愛衣で無防備な竜郎をずっと膝の上に乗せて頭を撫でていられたので、こちらも心の中の竜郎成分充填はバッチリできたようだ。



「よし! それじゃあ、魔物の牧場へと突入だ!」

「おー!」



 竜郎は念のためにもう一度、自分のシステムに《強化改造牧場・改》が有るか確認すると、それを発動。

 すると時間が経っても特に問題なく、かまぼこ型の《強化改造牧場》内に繋がる入り口が開かれた。



「やっぱりスキル化して正解だったな。起動が楽だ」

「まー今後も何回も使ってくなら、ショートカットは作っておきたいよね」

「眷属たちのレベル上げの度に開け閉めするわけですしね」



 このスキルで《強化改造牧場》内の空間を繋ぐのは、結構なエネルギー消費になるので開けっ放しは遠慮したいところ。

 一度中に入ってしまえば、自己世界創造の機能を繋いだ《強化改造牧場》での内部改造や、修行用の魔物の影を生みださない限り燃費は良いので、開け閉めの簡略化は一番欲していた機能でもあった。


 そうして今回は一緒にいた眷属がフレイヤだけだったので、眷属はフレイヤだけを連れていき、さっそく中へ。



「これはっ! わたくしのぐーたら空間──げふんげふんっ……もとい、わたくしが暮らしていた空間に瓜二つですわ」

「ぐーたらて……お前やっぱりそっちの人なのか?」

「な、なんのことやら……。わたくしには解りかねますわ」

「なんか、いー性格した子だねぇ」

「まったくだ。まあ、面白くもあるけどな」



 そこは寝転がったらさぞ気持ちよさそうな、そよ風が吹く広大な短く刈られた草原地帯。

 竜郎たちの立っている場所から少し離れたところに休憩用のログハウス。

 近くには大きな川も流れているので、シャチ太などの水辺が得意な魔物たちでも戦いやすいようになっている。

 これで陸海空どれに適した味方たちでも、パワーレベリングの過程で困ることは無いだろう。



「それじゃあ、さっそく魔王鳥あたりでも呼び出してみるか。

 今の俺達ならそう強い魔物と言うわけでもないし、天照と月読の本領も見てみたいからな」

「それじゃあ、基本的にタツロウ君とアマテラスちゃん、ツクヨミちゃんに任せて、私たちは観戦していればいいのかしら?」

「ああ、そうしてくれていても構わない。ただ、巻き込まれて事故るのは止めてくれよ」

「そこまで魔物の前で気を抜いたりはしないわよ」



 半ば冗談交じりな言葉をレーラと交わしつつ、天照の杖と月読のコートを着込んで少し離れた場所までスライム翼を広げて空を飛んで行く。

 そして《強化改造牧場》が本来持っている機能を使って、以前戦った事のある魔王鳥の影を竜郎のいる上空へと召喚した。



「けっこう魔力を吸い取られたが、この位なら大丈夫そうだな」

「「────!」」

「クケェエエエーーー!」



 それは元の魔王鳥よりも少し色彩が黒ずんで見えるが、能力は戦った時そのままだ。

 レベルは466。警戒するべきスキルは《痛受痛反治癒》という、受けた痛みや傷の分だけ威力の増した攻撃を敵に飛ばし、自分を完全に癒すカウンターと回復を併せ持つスキル。

 これは攻撃する側の強さに依存するものなので、竜郎が本気の一撃を放った場合、そのカウンターは今の竜郎にとっても脅威になる可能性が高いからだ。


 他は今の竜郎にとってレベル的にも大した脅威ではないので、今は妖精郷で寛いでいる鬼武者幽霊──武蔵のアシストも無くてもいいだろう。


 さっそく魔王鳥の影が気炎を上げて竜郎に《突進》を放ってきた。



「遠距離での攻撃もあるのに初手で自分から突っ込むなよ」

「──グェッ」



 月読の属性体による左竜腕で、それをやすやす真正面から受け止める。

 そしてそのまま嘴を握り離れられない様にしてから、天照の属性体による右竜腕で体を持ってゴキッと首をへし折り地面に捨てる。

 すると以前見たそのままに、怪鳥の瀕死体が黄緑色の眩しい光に覆われ──かと思えば、幽体離脱でもするかのように怪鳥の形をとった光の塊が竜郎に首をもたげて猛スピードで突っ込んできた。



「確かあと13回発動させれば打ち止めだったよな。よっと!」

「グェェッ」



 カウンタースキルによる怪鳥の形をした光塊をひらりと躱しながら、右の竜腕の手の平から手加減したレーザーを射出し、回復したてほやほやの魔王鳥にヘッドショットをかまして再び殺す。


 それに対してまたカウンターがやってくるので、今度も躱してヘッドショット──カウンター──ヘッドショット──と繰り返す。



『たつろー。もうちょっと遊んであげてもいいのにー。せっかく復活してくれてるんだからさ』

『これから何度も相手にするんだから、効率的な殺し方を考えときたいんだよ』

『あーそれもそっかー』



 愛衣と念話で会話する余裕すらあり、以前はこの魔物に多対一で手こずっていたのかと思ってしまう。


 そうして流れ作業をこなしながら天照と月読の慣らし戦闘を続け、あと1回殺すとカウンターが切れて、追加でもう1回殺せば本当に死んでしまうという状況にまで追いやった。


 なので今、竜郎に向かって飛んできているのが最後のカウンターだ。



「それじゃあ、月読!」

「──!」



 月読の属性体を纏った方の左手を前に突き出すと、《竜神絶晶盾》を展開。

 目の前に大きな何ものをも通さない、竜の頭を模した巨大な水晶盾が出来あがる。

 ゴンッ──と、鳥の形をしたカウンター攻撃がそれに弾かれ消えていく。役目を終えた盾も消えていく。



「天照!」

「──!」



 盾が消えるや否や、そこから既に右の竜腕には《竜神絶炎嵐槍》による、何ものをも貫く槍が握られ、それが魔王鳥のお尻の部分に向かって正確に投擲された。



「グェェエエエエーーー!?」

「──はあ!」



 体の下半分近くが消え去り、地面にも大きな穴が開き竜郎の魔力を吸って修復されていく。

 さらに追撃とばかりに二又に分かれたレーザーを射出し、両翼を根元から切り裂いた。

 これでも生きている辺り恐ろしくもあるが、今は好都合。

 直ぐに死なないよう出血している個所を凍らせて、延命処置をしてから捕縛と封印魔法で封じフレイヤを呼ぶ。



「お呼びですか? ご主人様」

「ああ。こいつに止めを頼む。今更こいつの経験値を貰っても大したことは無いし、何よりフレイヤは優先的にレベルを上げておきたい」

「そうなんですの?」

「ああ」



 ここでフレイヤに止めを刺させ、他の眷属たちより先に大幅なレベリングをさせておきたかったのは、別に《崩壊の理》を持っているから──というわけではない。

 もちろんそれも理由の一つに入っていない事も無いのだが、彼女のレベルを先にあげる事が、今後の効率的な狩りに必要だと思ったからこそ、ここに一番に連れてきたと言ってもいい。



「なにせ前衛も適度にこなせ、火力も十分。守りも硬ければ回復も足止めも出来るときてる。

 誰と組ませても、その時々に合わせた動きが出来るからこそ、俺達以外にパワーレベリングを手伝える人材だと思ったんだ」

「ああ、そう言う事なんですのね。解りました。

 先輩方には悪いですが、お先にレベルを上げさせてもらいます──わ!」

「グェ──」



 身動き一つできない魔王鳥の脳天に右手の平を向けて、そこから灰色の球体が飛び出し当たる。

 するとまるで砂が崩れ落ちるように、ボロボロと魔王鳥の脳天が崩れ去ったのであった。



「これが《崩壊の理》か……。450以上離れたレベル差すら物ともしないとか、恐ろしいな」

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