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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
最終章 帰界奮闘編

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第571話 新型の性能チェック

 まずはコアの固有属性構成をスキャンしていく。

 杖を通して演算しながら、その杖に嵌っているコアを調べていくと、竜郎の頭の中に細かな見たことも無い記号の羅列がずらっと流し込まれていく。

 その慣れない感覚に一瞬ぞわっとした気持ち悪さを感じるものの、身を任せてみると、その記号の羅列の意味を不思議と理解することができた。



(要はこれがこの新型魔力頭脳の設計図──人間でいう所のDNAみたいなもんなのか)



 竜郎はその全てを理解し終わると、今度はコアの中にいる天照をスキャンしていく。

 新型魔力頭脳の方も結構な情報量だと思っていたが、いざ天照の情報を調べていくと先ほどの物は子供騙しだったと笑ってしまいたくなるほど膨大な情報が流し込まれてきた。



(こりゃ、魔力頭脳の演算補助が無かったら途中で諦めてただろうな)



 それだけの膨大な情報量も難なく処理して竜郎が理解しやすいよう最適化してくれることに感謝しつつ、スキャンが終わるのを待つ竜郎。


 やがてスキャンが終わり、新型魔力頭脳とアマテラス双方の固有属性構成を調べることに成功した。

 あとはこれを天照がしっくりくるようにフィッティングするだけなのだが、なにぶん初めて試みだ。

 もっと情報を集めてみることにした。


 そこで選んだサンプル情報は、元々天照が使っていた最高にフィットしている旧型の魔力頭脳。

 そしてどうせ月読もやることになるので、月読自身とその旧型魔力頭脳。新型の月読が入る予定の魔力頭脳。

 それらの固有属性構成も調べていった。



(同じ人が同じ素材を作って、同じ人が同じ様に創造した魔力体生物の器になったモノなのに、本当に同じ属性構成のものは無いんだな。

 だがこれでなんとなく天照が喜んでくれそうなものに変質できそうだ)



 固有属性構成を理解し、それらの微妙な違いから最適な変質をイメージしながら《侵食の理》を行使していく。

 変質させると言っても見た目を変える訳ではなく、微妙な属性配列を入れ替えるだけ。


 竜郎の属性魔力に浸された新型魔力頭脳が、天照にフィットするよう属性配列が変質していった。



「こんなところでどうだ、天照?」

「──!」



 帰ってきた返事は「最高!」の一言。むしろ以前よりも、しっくりくるほどらしい。

 どうやら《侵食の理》を使えば、こういった技術では難しい微調整も、固有属性構成さえ解ってしまえばそう難しい事では無いようだ。


 そしてそんな様子を、しっかりと見ていたリアはと言えば──。



「私の目で観ても何が変わったのかさっぱり解りませんでした。

 レーラさんは何か解りましたか?」

「いいえ。魔力の流れを見ていたけれど、精霊眼では何をしているのかさえ解らなかったわ」



 竜郎のやった事は、例えるのなら原子のように小さいものの順番を微妙に動かしただけ。

 精霊眼と同じ機能をもった電子顕微鏡でもない限り、今の流れを見る事など出来ないだろう。


 またリアの《万象解識眼》でも、その物質の機能や内部構造が変わったわけではないので、理解する事は出来なかったようだ。



「まあ、何にしてもこれで天照ちゃんの問題は解決って事でいいんだよね?」

「ああ。このまま感じを掴んでいる間に月読のもやっておこう。

 リア、もう一つの新型魔力頭脳を頼む」

「解りました。ああ、ついでに直ぐに取り変えられるように前の物を外しておきたいので、セコム君のついたコートを私に貸して下さい」



 直ぐに取り変えられるようにと言っても、水の魔力で動くスライム型魔道具──セコム君の中に埋め込まれている旧型魔力頭脳をとりだすだけでも、ダンジョンにいた頃のリアならひと苦労だっただろう。

 だがその様な事も今となっては、竜郎が月読に新型魔力頭脳をフィッティングしている間に改修を終えられるようになっていた。


 それから竜郎が調整した月読の入った魔力頭脳をずむっとセコム君の中に手を突っ込み差し入れると、何やら内部で鍛冶術らしきものを使って設置完了したようだ。



「──♪」

「月読も調子がいいみたいだな。それじゃあ二人とも、《神出力体》になってみて貰ってもいいか?」

「「────!」」



 リアの方に竜郎がチラリと視線を向けると、胸を張ってこの魔力頭脳ならば大丈夫だと頷いてくれる。

 竜郎もそれに頷き返しながら、2人を最高出力モード《神出力体》へと移行させていった。


 すると内部の螺旋から放たれていた優しい光がさらに光量を増していき、新型魔力頭脳本体からプラチナ色の光の粒子がキラキラと零れ始めた。



「こっちのモードは隠密行動には向いてなさそうだね」

「けっこう光とかが派手になってるしな」



 そう言いながら、まずは試しにただの光魔法に属性を混ぜて赤、緑、青色の光を作り、その3色を用いて多彩な色を表現しながら虚空に地球では誰もが知る様な絵画の数々を描いてみる。

 すると竜郎のイメージが甘い個所も勝手に新型魔力頭脳が補完してくれ、それっぽくみえる細かな光絵がテレビ画面のように虚空に映し出された。


 以前の旧型であったら、ここまでの補完は出来ずに竜郎の記憶の浅い部分はぼやけた箇所が出てくる所なのだが流石は新型。

 そんなぼやけも勝手に補正してくれているあたり、小型化された上に性能面での向上も著しいようだ。

 現に今使っている小型ライフル杖にはサブコアは無く、新型一つで難なく回せてしまっている所も驚くべきところだろう。

 

 今度はその世界の名画映像を維持しつつ、さらに秒ごとにザッピングするかのように絵柄を変えながら、月読のスライム翼を広げて飛んでみる。



「もう自分で魔法を使ってるって感覚がほとんど無い位だな」

「「────」」



 ただコレがやりたい、アレがやりたいと思いながらそれに必要なエネルギーを杖に流し込むだけでいいと言った感じ。

 前も同じような感覚はあったが、こちらの方が演算処理が速いと体感で解るほどだ。



「それじゃあ、次は──」



 カルディナ達が《神体化》状態になると、分霊ではなく分霊神器が使える様になり、さらに神系の強力なスキルが使えるようになっていた。

 けれど天照と月読の2人はボディとなる魔力頭脳が能力的に足りず、今まで使うことが出来なかった。


 なので今、軽くどんなふうに変化したのか確かめることにしたようだ。

 さすがに様子見段階でしょっぱなに妖精郷内で攻撃スキルは不味いだろうから、分霊から進化した分霊神器を見せてもらう。



「2人とも頼んだ」

「「────!」」



 まず天照。彼女の分霊は《分霊:火力増幅輪》という、大小伸縮可能な金の輪だった。

 そしてその輪の中に攻撃を通して放つと、その威力が魔法でも武術技でも強化されると言うものだった。

 そして今回。《分霊神器:火力増幅輪》となったものはと言えば、金輪の円周部分に小さな金輪がぐるりと一周するようにいくつも張り付いていた。


 次に月読。彼女の分霊は《分霊:内通外防球》という、伸縮自由な球状の結界を自身の周りに造り、外からの攻撃は弾き内からは通すと言う、その分霊が壊されない限り一方的に攻撃できるものだった。

 そして今回。神器となったものはといえば、竜郎の握りこぶしほどの大きさの青い水晶玉のようなモノとなっていた。


 神器になった事で具体的にどういう機能の変化が起こったのか、竜郎はさらに2体に聞いていく。



「ふむふむ。なるほどな」

「何が変わったって?」

「簡単に言うと2人とも個人が対象ではなく、多人数に対応できるようになったみたいだな」



 もうすこし詳しく説明すると、《分霊:火力増幅輪》は輪の中に攻撃を通す必要があったが、こちらは体のどこかに装飾品のように金輪を身に着けた者の攻撃だけを強化するものになったようだ。

 個数は大きな金輪の周りにくっ付いている小さな金輪を切り離し、それを身に着けさせることで、恩恵を得られる人数を増やすことが出来る。

 だが小さな方の金輪の場合は、大きな金輪より強化率が半分ほど落ちるのだそう。


 また月読のこぶしほどの大きさの青い水晶玉となった分霊神器はと言えば、こちらは水晶玉から伸縮可能なシャボン玉のような球状の結界を生みだし、対象者を包み込む事で外からの攻撃を防ぎ、中からの攻撃を通すことが出来る。

 こちらの場合は分霊の時と違い、いくら破壊されても神力と竜力を消費するだけで、その2つのエネルギーが尽きない限りはいくつでも生みだせる。

 また耐久度合いは込めた神力と竜力の量で調整できるようになっているとのこと。

 だが分霊神器の本体である水晶玉のようなモノを破壊されると、一気に半分以上体を維持するためのエネルギーが失われてしまうので、それだけは死守する必要がある。



「どちらも使い勝手がよくなったようですの。

 特に月読の分霊など分霊本体で敵の攻撃を防ぐと言うものでリスクが高かったので心配してましたの」

「今回のは分霊を矢面に出さずに済むから安心っすね」

「それにアムネリ大森林には予想以上に団体で行くことになる様ですし、多人数に強化と防御を気軽に掛けられるスキルを得られたのは大きい気がしますね」



 天照や月読も大人数での行動を知ったからこそ、そうなるように望み、それに応えるように変化したのかもしれない。

 そんな事を感じて竜郎は2人にお礼を言っておいた。


 さて、分霊を確かめ今の魔力頭脳に慣れた所で、少し危険なスキルのお披露目だ。

 実際に使わずに見るだけなら大丈夫だろう。



「じゃあ、天照。《竜神絶炎嵐槍》を発動してみてくれ」

「──!」



 そのスキル効果は凄まじく、相手の防御の一切を無視して貫く神槍を一時的に創造する──というものだった。

 今までは旧型の魔力頭脳だったので使えなかった為に、ずっとお預け食らっていたが、新型に切り替わった今なら十分発動できる。


 そうして現れたのは、赤と緑のエネルギーが絶えず流動する3メートルサイズの大槍。

 ただ大きさは1メートルから5メートルくらいまでなら変えられるそうだ。



「あとはこれを投げつければ、どんな防御も無視して相手に穴をあけられるって事か」

「だが効果が効果だけに、成長したアマテラスでもエネルギー的に数回が限度の様だな」

「そこはしょうがないんじゃない? ここぞと言う時に撃ちこんで当てられさえすれば絶対に大ダメージを与えられるわけだし」

「姉さんの言うとおりですね。それに、こんなのがポンポン撃てたら、たまったもんじゃないですよ」



 お次は月読の《竜神絶晶盾》。

 こちらは天照と真逆の効果で、相手の攻撃の一切を無視して防ぐ神盾を一時的に創造する──というものだった。


 そうして現れたのは、竜の頭を模した海のようなコバルトブルーの大きな水晶の盾。

 大きさは3メートルから10メートルまでなら変えられるらしい。



「盾なら試してみてもいいかな。誰か試しに攻撃してみてくれないか?」

「ピューーイ」

「それじゃあ、カルディナ頼んだ」



 盾を空に展開し、そこから少し離れる。

 そしてカルディナは一瞬で《神体化》すると同時に空に一直線に飛んで行き、その盾に向かって遠慮なしに神系スキル《天翔竜神刃》を撃ち放った。


 けれど──ガキンッと甲高い音を響かせて、カルディナの攻撃は完璧に弾かれてしまった。



「ピュィーー……」

「同じ神系スキルなら何とかなるかもと思ったそうですの。

 ですがまったく歯が立たなかったようですの」

「みたいだな」



 そう竜郎は呟きながら盾を展開していた空を見上げると、攻撃を受けられるのは一度だけのようで、カルディナの攻撃を受けた盾は光の粒子となって消え去った。

 やはりこちらもカルディナ達の神系スキルより消費が激しいようで、月読が少し疲れたような雰囲気を出していた。


 ちなみに天照は作っただけで使用してないので、ほとんどのエネルギーは回収済みでそれほど疲労はしていない。



「御2人の神系スキルや分霊神器を使用しても、私の考え通り問題は何一つ起きてない様ですね」



 スキルと分霊神器を試した後に、念のためリアが2人の新型魔力頭脳を点検していったが、破損は何処にもなく、中の構造も何一つ劣化は見られなかった。

 《侵食の理》でフィッティングした影響もないようで、竜郎もそれを聞いてほっとした様子を見せる。



「特に構造もいじってないから大丈夫だとは解っていたが、これで一安心だな。

 リア。凄い物を2人の為に作ってくれて、本当にありがとう」

「どういたしまして、兄さん。そしてアマテラスさんとツクヨミさんも」



 お礼を言う竜郎に合わせて魔力頭脳を点滅させて、お礼らしきことをしていた天照と月読にもリアはそう言って微笑んだ。


 こうして天照と月読もリアのおかげで全力で戦える様になった。

 新型魔力頭脳の性能チェックも十分出来たと言えるだろう。

 となれば等級神と交わした約束を守らなくてはいけない──即ち。



「今からフレイヤの眷属化を試みることにする。もしその途中で暴れ出したりして危険なようだったら、構わず全員で攻撃してくれ」

「解った──って言いたいところだけどさ。それなら一度カルディナ城の方に戻って、誰もいない砂浜でやった方がよくない?」

「あ──そうだった」



 ここは妖精郷の中のジャンヌ城。

 どうなるか未知数の《崩壊の理》を持つ危険な存在の眷属化をするのに、妖精たちの聖地でやるわけにはいかない。



「それじゃあ、戻ってからさっそくやってみよう」

「だね!」



 そうして竜郎たちは、急いでカルディナ城のある領地へと戻っていったのであった。

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