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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第十編 妖精郷

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第566話 空いた時間で創造実験

 ダンジョンの飛地を開放した翌日。

 今、妖精郷に行っているのはリアとレーラとイシュタル。ウリエル、フローラ、ランスロット。幼竜組と彩人&彩花With豆太も最近仲良くなった、ちびっ子妖精たちと遊びたいと言ったのでフローラとランスロットに頼んで連れて行ってもらっている。

 普段リアの側にいる奈々には今日手伝ってほしい事があるので今日は行かずに、リアの体調管理というか、ちゃんとご飯を食べるように見届ける役兼お手伝い係はウリエルに頼んだ。


 そして竜郎はと言えば、本日はカルディナ達、魔力体生物組を全員連れて砂浜までやってきた。



「それで今日はどうするつもりなの?」

「リアの方がもう少しだけかかりそうって事だからな、俺の方は創造でやってみたい素材があるから、それを使って2、3やっていこうと思ってる」



 現在のリアの進捗状況は非常に順調に進んでいるようだ。

 妖精郷のトップの技術者たちのアイディアもグングン吸収していき、今は何故かリア&妖精開発室に竜大陸の技術者のトップまで加わり、あらゆる角度からの着眼点も盛り込めると、にこにこ笑顔で竜郎や愛衣に語ってくれた。

 この調子なら、近いうちに天照や月読の新しい体も出来あがりそうである。


 そんなこんなであちらは何かと忙しそうという事もあり、こっちはこっちでアムネリ大森林にアタックする前に気になっている事をやりきってしまおうと言うわけである。



「最初は軽めのとこからって事で、おととい生み出した生属性の魔王種をとりあえず生んでみよう」

「あのモフモフちゃんね」

「私も抱っこしてみたいですのー」



 シミュレーターで見る限りでは、アンゴラウサギ並みにもっこもこの毛をしたウサギ小人だ。

 外見の可愛さは魔王種と言われてもピンとこない程。

 カエル君などの可愛い物も大好きな奈々もまた、愛衣の話を聞いて手をわきわきとさせていた。



「等級は最初から7.4あるし、とりあえず8まで上げてみるか」

「見た目がごつくなりませんよーに──ぱんぱん!」



 愛衣が隣で柏手を打ちながらお祈りしだしたのに笑ってしまいつつ、竜郎は合成を3回繰り返して等級8まで上げた。

 一度試しにシミュレーターで見てみたが、愛衣の希望通り外見はそのままだった。

 ただその赤ちゃんのように小さな手に、指揮棒の先に星をつけた玩具の杖のようなものを新たに握っていた。



「セーフ!」

「愛衣もお気に召したみたいだし、このまま魔王種として生みだしてみるか」

「それがいいですの!」



 わくわくと愛衣と奈々から視線を向けられる中で、竜郎はさっそく強化を施していく。

 初期スキルには広範囲に自分や他者からのスキルによる治癒効果を大幅に向上させるスキルや、広範囲を一辺に回復させるスキル。そして個々に強力な治癒を施すスキルも──と、ヒーラーとして高い能力を持たせていく。

 そして余った容量には傷口を広げるスキル。体調を崩すスキル。興奮を抑え眠らせるスキル。など相手の足を引っ張る技能も与えておいた。

 さらに《健脚》《跳躍移動》などの移動に優れたスキルもオマケに付けられたので、後方でちょこまか動きながら味方を回復。敵の状態を崩すという優秀なお助け係としてやっていけそうだ。


 強化も終えた所で竜郎は孵化を促していく。今回は半神系にしないで魔王種として生みだすつもりなので、普通に神力を少しだけ混ぜ込んで孵化させた。


 そうして生みだされたのは、全長40センチほどの兎小人。手には玩具の杖。

 だが神力も少し入れた事で毛皮が豆太のようにプラチナ色に輝いていた。



「ちちちち~おいで~」

「──?」



 その場にしゃがみ込み、指をクイクイとさせて呼んでくる愛衣に対して、兎小人はどうしたらいいの?という感情をテイム契約のパスで竜郎に伝えてきた。

 なので好きにしていいぞと伝えてみた。

 するとぴょんとジャンプして愛衣の胸に飛び込んだ。



「おーもっふもふだぁ! よしよし」

「人懐っこくて、なかなか可愛い奴っすね」

「わたくしも抱っこしたいですの! おかーさま!」

「ふふ。あまりのもふもふに驚いちゃだめだよ、奈々ちゃん」

「もちろんですの──ふぁ~お布団みたいですの~。抱っこして寝たいですの~」



 兎小人──後にウサ子と名付けられる魔王種候補の魔物は、直ぐに竜郎以外の皆も受け入れられたようだ。

 愛衣や奈々以外にも撫でられ、嬉しそうな感情が竜郎にも伝わってきた。



「よし。あと孵化関連だと猿たちもかな」

「癒し隊だね!」



 生魔法使いがカルディナ城などにいない時でも誰かが怪我をしても大丈夫なように、回復系スキルが得意な猿たちを生みだそうかと前に話していた。

 なのでそちらもパパッと生みだし、取りあえずカルディナ城勤務のテナガザル雌雄5匹ずつ。テナガボスザル雌雄2匹ずつ。テングザル雌雄2匹ずつ。ビックテングザル2匹。の計20匹の猿を生みだした。

 あとは生めよ増やせよの精神で自由に繁殖していって、その数を増やしてくれることを祈っておいた。


 だが小さい方のテングザルは繁殖力が非常に強いので、最高でもとりあえず100匹くらいに留めておくように言っておいた。



「よし。これで魔卵関係はとりあえず終わりでいいかな。

 次はカルディナ達にも手伝ってもらいながら、創造を試していこう」

「ピューィ」



 次に竜郎がやろうと思ったのは、大悪魔の素材と吸血鬼の素材を使った《天魔族創造》と《魔族創造》と《鬼族創造》と《怪人族創造》による重複混合創造だ。



「うーんと、鬼と吸血鬼の魔卵を複製したら黒田──闇の魔生族の魔卵が出来たわけでしょ。

 んでもって悪魔と闇の魔生族を混ぜたら吸血鬼になったと。

 確かに吸血鬼と悪魔の融合は面白そうだね。何になるのかな?」

「だろ。今度は魔卵の合成じゃないから、また違った結果になる可能性の方が高いんだろうけど」



 吸血鬼の素材は調べたところ鬼と付くだけあって、《鬼族創造》の素材として使えるらしい。

 また《怪人族創造》は人型の素材なら使えるので、こちらは大悪魔と吸血鬼、両方の骨や脳、心臓を使うつもりだ。


 素材自体は昨日のうちに用意しておいたので、後は砂浜に敷いたシートの上に並べていくだけ。

 細かい内訳としては《天魔族創造》と《魔族創造》は邪物質として、大悪魔の体を丸のまま10体ずつ。《鬼族創造》は吸血鬼の頭10個。

 

 そして《怪人族創造》では大悪魔の心臓と脳を2つずつ、全身骨格を1つ。吸血鬼の心臓と脳を2つずつ、全身骨を1つ。での計10個の素材。

 これら40個もの素材を設置し終わり、竜郎はカルディナ達とスキルを共有しながら重複混合創造を成していった。


 神竜魔力を注ぎ込んでいくと全ての素材が溶けて混ざり合い、子供が粘土遊びをするかの様に蠢き始める。

 その様を見つめながら、集中して出来上がるその瞬間まで途切れさせることなくエネルギーを注ぎ込んでいく。

 すると2メートルほどの大きさの人型へと変化していく。


 そして──。



「強そうな気配がビンビン伝わって来るぜ。まさに俺のマスターに相応しい」

「そりゃどうも」



 現れたのは身の丈2.3メートルで、がっしりとした筋骨隆々の赤目の大男。

 服装は黒のレザーパンツに黒のブーツ。上には半袖の黒いシャツ一枚とラフな格好。

 髪型は黒銀色のロン毛をドレッドヘアにして後ろに流すスタイルで、中東系で浅黒い肌の整った顔立ち。白く長い犬歯が笑った時にちらりと顔を出す。

 そして普通の人種でない事を大きく示す特徴として、背中から1対漆黒のコウモリのような翼が生えていた。



「それで……君は吸血鬼? それとも魔族? どっちなんだ?」



 吸血鬼といえば病的に青白い肌が印象にあるが、こちらは寧ろ血色のいい健康的な褐色肌だ。けれどチラリと見える牙は吸血鬼のそれに見える。

 また魔族といえば黒い翼と言う印象があるが、この男にはその特徴がしっかりとみられた。

 故に竜郎は一体どういう種族なのかと本人に確認してみたくなったわけだ。

 それを受けた男は腕を組んで少し考えた末に──。



「うーーん……──わからねぇ!」

「えー……自分の種族ってのは、本能的に解ったりとかはしないのか?」

「そう言う奴もいるのかもしれねえが、少なくとも俺はちげーな」

「なら、スキル構成なんかを覗いていけば解るかもしれませんの」

「それは良い案だな。ちょっと見せてくれ」

「ああ、いいぜ」



 随分ワイルド系が加わったなぁと思いながら、竜郎のパーティに入れてそのステータスを見せて貰った。



 --------------------------------

 名前:----

 クラス:----

 レベル:1


 気力:555

 魔力:550


 筋力:515

 耐久力:515

 速力:510

 魔法力:511

 魔法抵抗力:511

 魔法制御力:506


 ◆取得スキル◆

 《闇邪超興起》《吸血【真祖】》《血液操作【真祖】》

 《邪纏掌》《体術 Lv.5》《闇魔法 Lv.1》

 ◆システムスキル◆

 《アイテムボックス+4》《マップ機能+4》

 残存スキルポイント:3

 ◆称号◆

 《半神格者》

 --------------------------------



「スキルを見る限りだと、やっぱり吸血鬼なのか?」

「でも最近生み出した魔王種の吸血鬼の千子ちこちゃんは、《日光克服》ってスキルがあるから、お日様の下でも平気だったんだよね?」



 今は朝と昼の間。空は綺麗に晴れており、竜郎たちが立っている場所に直射日光を燦々と照らし続けている。

 けれど《日光克服》を有していないにもかかわらず、目の前の男は日陰に入ろうともしないで平然としていた。



「あんたは今、何ともないんすか?」

「俺か? 特に何も感じねーなぁ」



 とのこと。だが吸血鬼の──それも真祖に類する存在が取得できるスキルを持っているのだから謎である。

 こういう時にリアや知識の深いレーラがいて欲しかったなぁと、改めて2人のありがたみを覚えた竜郎なのだった。



「まー解らないならしょうがない。保留にして次を見て行こう。この《闇邪超興起》てのは何だ?」

「ああ、それはな──」



 《闇邪超興起》とは周囲に闇や邪が満ちているほど、指数関数的にステータスが増加していくスキル。

 なので例えば夜なんかであれば、常に周囲が闇に覆われているので朝や昼よりも、ずっと力が出せるようになるんだとか。

 またそれは自然現象でなくてもいいので、人工的に魔法などで作った環境でも効果は出る。


 《邪纏掌》。これは読んで字のごとく邪を纏った掌底。

 威力は本人の筋力値に比例してドンドン上がっていくので、本人のレベルが上がれば上がるほど、こちらの威力も向上していくようだ。



「全体の総評としましては、超近接型のアタッカーと言った感じですの」

「体術を戦闘の基本ベースにしていくタイプっぽいしな。闇魔法も覚えているが、《闇邪超興起》の為だけにある補助スキルみたいなもんだろうし」

「ねーねー、たつろー。思ったんだけどさ、この人って黒田とすっごい相性良くない?」

「え? ああ! そうだな」

「ああん? 黒田ってのはどこのどいつだ? マスター」

「ちょっと待て、今見せる」



 闇の精神体の魔王種──黒田。プラチナの人の顔を模した仮面を付けた、闇の魔力自体が濃厚に集まった魔物だ。



「こいつぁ……」「────」



 二人の目と目?が合った瞬間、互いに惹かれあうものがあったのか自然と双方近寄っていく。

 すると黒田が男に纏わりついていった──かと思えば、外套のように闇の形を変えて仮面を男の顔に張り付かせた。

 それを男は拒む事無く、どっしり構えて受け入れた。



「こいつぁいいぜ……」「────」



 黒田の外套に包まれた瞬間に、男は自分の力がグンと強化されるのを感じ取ることが出来た。

 黒田もまた、彼が強化されるほどに滲みだす濃厚な闇の魔力を吸ってご機嫌な様子だ。



「高火力のアタッカーと敵を惑わし不意を衝くトリッキーが売りの黒田。

 スキル構成からしてもお似合いの相棒だな。どうだ? 互いに組んでみる気はあるか?」

「むしろ、こっちから頼みたいくらいだぜ! マスター!」「──────!」



 男も黒田も心は同じようだ。なら竜郎としても問題ない。

 アーサーの相棒の方は何となく竜郎の中で決めていたので、そちらが先になるかと思いきや思わぬところで最高のタッグが出来あがったようだ。



「うんうん。いい感じだね。でも相棒ができたのはいいとして、名前はどうする? いつまでも名前の欄が空白じゃ可哀そうじゃない?」

「ああ、名前か。そっちはもう決めてある」

「おおっ! 俺の名前か! 早く教えてくれよ、マスター」

「ああ、お前の名前は──ガウェイン。

 元ネタの人物は太陽が登っている間、通常の3倍の力を発揮できるって事だったみたいだが、こっちは月が登る夜に力を増すって感じで真逆だが、だからこそ対照的で合っている気もしたからな。どうだ? 嫌なら他の候補に変えるが」

「一つ聞きたい。その元ネタの奴はつえーのか?」

「ああ。物語の中では間違いなく最強クラスの騎士だったはずだ」

「なら文句はねぇよ! 俺の名は今日からガウェイン。よろしくな、マスター」

「ああ、こちらこそ。よろしく、ガウェイン」



 立派な体躯のガウェインが差し出す大きな手を取り、竜郎が新たな眷属と硬い握手を交わしたのであった。

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