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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第十編 妖精郷

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第554話 イェレナ来訪

 元の時代に帰ってくると、竜郎たちは某邪神さんのせいで疲労困憊の精神を癒すべく、それぞれの部屋へ直行して爆睡。

 そうして12時間ほどゆったりと睡眠をとり、帰ってきてから1日が過ぎていった。


 そんな帰還した翌日の事。朝食を食べ終わり皆でゆっくりしていると、爺やから客人が来たことを知らされた。

 こんなところに来られる人間などそうはおらず、近々訪ねてくる予定の人もいたので見当はついた。

 なので、すぐにリビングへと上がって貰った。



「おはよう。タツロウ君。急に来てごめんなさいね」

「おはよう、イェレナさん。別に、いつ来ても大丈夫ですから気にしないでください」

「おはよー!」

「ふふっ、おはよう、アイちゃん。今日も元気ね」

「うん、元気だよー」



 竜郎は直ぐに椅子をすすめ、お茶をさっと出してくれたフローラにお礼を言ってから、さっそく本題に入っていく。



「それで今日来た理由っていうのは、妖精郷のことでいいんですよね? イェレナさん」

「ええ。長らく待たせてごめんなさい。明後日以降に妖精郷を訪ねる事は出来るかしら?

 皆で来るときは歓迎しようって事になったから、出来れば来る日付が知りたいの」

「歓迎してくれるって、たつろー。嬉しいね!」

「ああ。そうだな。そういうことなら明後日のお昼ごろに──ってのはどうでしょうか」



 リアも早く行きたそうにしていたので、出来るだけ早い方が喜んでもらえるだろう──そう考えて竜郎が答えると、イェレナもそれで大丈夫だと言ってくれた。



「それじゃあ。明後日のお昼に行くって、向こうには伝えておくわね」

「お願いします。ああ、そういえば、実際にあそこに住んでみてどうですか? 不便とかないですか?」

「まったく問題ないわ。むしろこっちの方が快適なくらいよ。もうこっちに住んじゃおうかしら」

「あははっ、全然いーよ。もういっそイェレナさんの別荘にしちゃえば?」

「そうでなくとも、あの辺に妖精郷の人達用に宿泊施設を建てるのもいいかもしれませんね。

 妖精樹もありますしルナの守りも鉄壁みたいだし、衣食住の食住は満たしてるでしょうから」

「子供たちに外の世界を見せる最初の一歩としては良いかもしれないわね」

「妖精の子供ちゃん達の遠足とか見てみたい! かわいーんだろーなぁ」

「子供の場合、ダンジョンには入らない様に言っておく必要はありそうだけどな」

「あはは……。私も何度か入らせてもらったけれど、あそこ……子供はトラウマになるから止めておいた方がいいでしょうね……。

 子供じゃ危険だってのも、もちろんあるけれど」



 イェレナは妖精の要素も持っている竜郎の眷属のフローラやランスロットと直ぐに仲良くなり、たまに臨時パーティを組んで潜ったりもしている。

 そしてそんな彼女自身はホラー系は楽しめる方なのだが、相棒の従魔──大蛇のミロンと大鹿のシードルの方はそうではなかったようで、しばらく夜は一人で眠れなくなってイェレナと一緒に過ごしていたそうな……。



「まあなんにしても、こちらも妖精郷の方々なら信用できますし、そういう交流する場所を開拓するのもいいかもしれないですね」

「そうね。陛下に言ったら喜ぶと思うわ」



 そうして和やかな雰囲気のまま歓談は続いていき、その日は妖精郷について色々と話も聞けてためになる一日だった。




 そして翌日。明日は妖精郷に行く事になったが今日は自由時間だ。

 そうとなれば竜郎はまたまた新たな魔物を作るべく、愛衣とデート感覚で少し離れた砂浜まで手を繋いでやって来た。



「今日は何するの?」

「うーん。今日は大天使と大悪魔の魔卵を何とか、魔王種に引き上げられないかと思ってな」

「ん? ああそっか。その2体は魔王種じゃなかったんだっけ。でも当てはあるの?」

「一応当てはどっちも2つある。今回はそれを試してみるつもりだ」



 そう言いながらまず竜郎が取り出したのは、昨日の内に用意しておいた大悪魔の魔卵。等級は大天使と同じ7。もっと細かくいうと7.6。

 そしてもう一つは闇の精神体の魔王種候補──黒田の魔卵。

 等級は7.2だったものを合成で調整して、大悪魔と合わせた7.6のものになっている。



「まずは、この二つの魔卵を合成してみよう」

「おー、さらに闇堕ちさせるって感じだね」

「ああ。言い方はちょっとあれだが概ねそんな感じだ。

 ただ魔族と魔生族の合成がどういう風に変化するかは解らないんだけどな。

 てなわけでほいっとな」



 いちいち溜めるのも時間の無駄なのでパパッと合成。禍々しい雰囲気の黒い魔卵同士が合成されると、何故か赤黒い魔卵に変化していた。

 魔王種候補になれれば、もっと禍々しい濃厚な邪気を放っていそうなものなのだが、これはむしろ邪気が薄れている。



「ん~? なんだろね、この魔卵ちゃんは」

「シミュレーターで見てみよう…………………………これは、女性型のヴァンパイア? しかも最初から真祖系統で魔王種候補だぞ」



 異常に肌が白い美しい外見をした160センチほどの背丈に、真っ赤な血のような紅の瞳。そして黒と赤の露出の少ないドレスを纏った女性。

 種族などを表示させてみれば、魔王科吸血鬼[真祖]種と表示されていた。



「一応、欲しかった魔王種は手に入ったね。

 でも、たつろーの考えていた大悪魔の魔王種じゃあ無かったね。何でヴァンパイアなんだろ?」

「悪魔と闇の精神体を合成するとヴァンパイアになるのかもしれないな。

 ある意味新しい発見だ。ちゃんと記録に残しておこう。

 しかしそうなると、何を混ぜれば大悪魔を魔王種に……」

「それなら大天使の方での当てもみてみたら?」

「そうだな。こっちは当然、大天使と光田の魔卵の合成だ。さっきとちょうど真逆だから比べるにも良いだろう」

「こっちもヴァンパイアになるとしたら、シャインニングヴァンパイア! とかかな。かっこいーかも!」

「シャイニングて……。それにヴァンパイアが光ってかっこいいか? 自分の光で死ぬんじゃないか?

 まあ、いいや。とりあえず、そっちの魔卵も用意してあるからパパッと合成っと」



 こちらの合成魔卵も聖なる雰囲気がやや薄れ、白に若干の血を垂らしたような模様が付いたものに変化した。

 それを見ながら、まさか本当にシャイニングヴァンパイアが!? と内心驚きながら竜郎が《強化改造牧場》のシミュレーターで見ていく。



「…………これはワーウルフか? 天使と光の精神体だと、そっちにいくのか」

「おー。首回りの毛皮がふっさふさでモフモフしたいかも!」



 それはライオンのような立派な金のたてがみをもった、二足歩行する金眼で灰銀毛皮の狼といった風貌。

 ただ、狼を二足歩行にしたといった感じではなく、やや猫背気味で太く発達し鋭い金の爪がついた5本指の手。

 二足でも素早く動けそうな、がっしりと地面に食い込む金爪、しなやかながら筋肉質な両足。

 そして種族は──。



「これも魔王種になれる魔物だ」

「今日は魔王種のバーゲンセールでもやってるのかな?

 新しく2種類も作っちゃったよ」



 魔王科人狼[真祖]種。こちらも魔王科に属した人狼の真祖らしい。

 等級はヴァンパイアとも一緒の7.6。合成前の大悪魔や大天使と全く同じだが、魔王種化できるところを加味すれば先の2種よりも強くなれるかもしれない。



「ってそうじゃない。こっちも気になるが、大天使と大悪魔を魔王種化しちゃおう計画を進めねば」

「変な計画名なのはいいとして、当ては2つあるって言ってたもんね。でも、この2種は生まないの?」

「あとでやろう。今はこっちが気になってるとこだから」

「りょーかーい。ていていっ」

「いててっ」



 愛衣に変な計画名と言われたことに若干驚きながらも、それを得意のポーカーフェイスでやりすご──せずに脇腹を軽くグリグリされながら、竜郎は次の当てに移行していく。


 そうして取り出したるは、大悪魔と大天使の魔卵二つだけ。



「あれ? それだけ?」

「ああ。今度はどっちかの属性を弄って合成しようと思ってる」

「魔卵の属性変換だね!」

「そうそれだ。ってことで愛衣は最初どっちを見てみたい?」

「う~~~~~ん──悪魔!」

「はいよ。悪魔いっちょー」

「悪魔いっちょー!」



 二人で悪魔コールをしてふざけ合いながら、竜郎は《魔卵属性変換》による大天使の邪属性化を試みる。

 特にもたつくことも無く聖属性の魔卵を完全に邪属性に変換し、試しにどんな魔物になったか覗いてみる。

 すると細長い黒槍を右手に持ち、軽装の鎧を着た6枚羽の黒髪の男悪魔がそこに表示されていた。



「髪色とかはさておき、あとは武器が棍から槍に変わってるだけって感じだな。

 結構強そうだ。こっちも大悪魔と呼んでもいいかもしれない」

「でもさ。男と女の違いもあるし、それにこっちの悪魔君は前衛物理タイプで、悪魔ちゃんは後衛魔法タイプって、けっこう反対要素があるけど大丈夫?」

「案外、前後衛あわせ持ったオールラウンダーが生まれるかもしれないぞ」



 前向きに考えていこうという事で、大悪魔(男)の魔卵を複製してから大悪魔(女)の魔卵と合成。

 そうしてできたのは、前二つのものと似たような漆黒の魔卵。けれど等級は6.7と下がってしまっていた。


 その事に少し凹みながらも、じゃあどんな魔物に変化したんだとみてみれば、シミュレーターに出てきたのは重厚な鎧に巨大な盾を持った6枚羽の悪魔。

 かるく筋力や魔法力などのレーダーチャートや習得可能なスキルを覗いてみる限り、オールラウンダーではなくガチガチの物理魔法に対しての防御タイプ。そして魔王種でもなかった。



「これはこれで頼りがいが有りそうなんだが、求めていたのとは違うんだよなぁ」

「それじゃあ、天使の方でもやってみよ」

「ああ」



 大悪魔の魔卵を聖属性化させると、それは金髪の女性天使で後衛魔法タイプといった、愛衣曰く2Pカラーのような存在になっていた。

 それを先と同じように大天使と合成させると、こちらもまた2Pカラーのような防御タイプの天使が生まれた。

 やはりこの2体の合成では魔王種は生み出せそうにない。


 どちらの当ても外れたことで、竜郎はこの2体を魔王種にすることは現状、出来そうにないのかもしれない──そう思いかけた所で、愛衣が何気ない一言を口にした。



「属性変換で思ったんだけど、邪属性と闇属性って近いけど違うよね」

「そうだな。どちらも延長線上には存在するけれど、同じ属性ではないって感じか。それがどうかしたのか?」

「えっとね。大悪魔と黒田を混ぜたら邪も闇も薄くなってヴァンパイアちゃんになった。

 んでもって、大天使と光田を混ぜたら聖も光も薄くなってワーウルフ君になっちゃった。

 これさ。黒田を闇から邪属性にして、光田を聖属性にして混ぜたら、もっと邪や聖が濃くなったりするんじゃない?」

「──それだ! 愛してるぞ、愛衣!」

「うわっ──と。ふふっ、私も愛してるよ~」



 突然抱きついてきた竜郎に苦笑しながらも、自分からもぎゅっと抱きついて抱擁を受け入れた。

 そのまま軽くキスの応酬を繰り返し、満足した所で離れて愛衣の言った案を採用していく。


 まずは黒田を闇属性から邪属性化してからの大悪魔との混合だ。

 邪属性化すると、白い人の顔を模した無表情な仮面がピエロのように笑う不気味な仮面になっていた。

 さらにスキル構成などだが、こちらは状態異常などで敵を足止めして不意を突くような戦闘スタイルではなく、ガンガン攻撃をしていく攻撃型になっていた。

 そんな邪気の精神体の魔卵の等級を複製と合成を繰り返してキッチリ合わせ、いよいよ大悪魔の魔卵を混ぜていく。


 そうして出来たのは、邪なる雰囲気が一切薄れる事も無く、純粋な闇だけを内包したかのような光が吸い込まれる闇色の魔卵が出来あがった。



「見てみるぞ……」

「うん……」



 する必要もない緊張を味わいながら、2人はシミュレーターに映し出された存在に目を向けていく。


 そこに映っていたのは、まごう事なき大悪魔。

 外見は美しい女の顔で、黒銀色の足元まで伸びた長い髪と紫色の瞳。

 頭から生えた羊のような丸まった長い2本の角。

 豊満な胸元とすらりと伸びた足を大胆に出した露出の激しい漆黒のドレス。

 背中からは8枚4対のカラスのような濡羽色の翼。


 と、ほぼ元になった女大悪魔と同じ容姿に格好だ。けれどこちらの身長は3メートルから170センチ程まで縮小。

 頭には黒銀色の王冠をかぶり、手には黒く禍々しい気を放つ宝石が杖頭に嵌った、身の丈ほどもある杖を握っていた。

 明らかに竜郎達が倒した大悪魔の上位互換といえるだろう。



「種族は……魔王科、第一級魔族種。種族の方は良く解らないが、魔王種候補に間違いない! 成功だ!」

「やったね! たつろー!」



 2人はまた互いに抱きしめあい、竜郎は喜びのあまり愛衣の腰を抱えてクルクル砂浜の上で回りだす。

 きゃいきゃいとひとしきりはしゃぐと、今度はこのままの勢いで大天使の方も作ってしまう事にする。

 光田の魔卵を聖化して十字に光の輪が重なった様な、聖気の精神体の魔物の魔卵を手に入れる。

 大悪魔の時同様、その魔卵の等級も調整してコンマ以下も合わせる。

 そして大天使の魔卵と合成した結果、魔王科第一級天族種という天使の魔王種候補、と字面だけ見るとややこしい存在が生まれた。


 こちらも大天使の時とほぼ容姿は同じく、天使の輪の下で金色に輝く長髪で細身の男、三対の白い大きな鳥のような六翼。

 元の大天使よりも装飾が派手になった白銀の軽装鎧と、手に持っている黄金の六角棍。

 だがこちらも身長は3メートルから190センチほどまで縮小化。軽装鎧の背には赤い豪華なマントを羽織り、頭には黄金の王冠をかぶっていた。



「よし。こっちも大成功だな。さっそくヴァンパイア、ワーウルフ、魔王種候補にした大悪魔に大天使を生み出すぞ!」

「大盤振る舞いだねぇ! いいぞ、やっちゃえ!」



 複製ポイントを大量に手に入れる手段を得た竜郎は、もうそれをケチる必要もない。

 今日の実験で生み出した魔卵もちゃんと手元に残し、新たに作りだした魔王種の魔卵──ヴァンパイア、ワーウルフ、大悪魔女王、大天使王の魔卵を複製し、いよいよそれらを生み出す事にしたのであった。

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