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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第八編 廃鉱の男

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545/634

第543話 竜王種創造実験2

--------------------------------

 名前:ミネルヴァ

 クラス:-

 レベル:1


 竜力:1110


 筋力:512

 耐久力:512

 速力:507

 魔法力:520

 魔法抵抗力:520

 魔法制御力:515

 ◆取得スキル◆

 《領域完全把握+5》《標的刻印》《千里竜眼》

 《竜弾 Lv.2》《解魔法 Lv.8》

 ◆システムスキル◆

 《アイテムボックス+4》《マップ機能+4》

 残存スキルポイント:3

 ◆称号◆

 《半神格者》

 --------------------------------



 《領域完全把握+5》は半径1キロメートル圏内に存在する、ありとあらゆるモノを感知するスキル。

 これは他の隠密系スキルや闇と解魔法による偽装も看破できるので、ミネルヴァの1キロ圏内に気付かれずに入るのは難しいだろう。

 以前、魔王鳥騒動の時に出会ったエルフの冒険者ギルドの長──イッポリートという男性も同じ《領域完全把握》という名のスキルを持っていた。(※第312話登場)

 だが、こちらは等級がプラス5も高くなっているので、あちらと違い範囲も広く視力も失う事は無い。レアリティは20+3と表示されていた。


 《標的刻印》は解りやすく言えばロックオン機能がついたマーカーと言った所か。

 どんな手段でもいいので自分が把握した存在に対して刻印を付けることが出来、攻撃を自動で誘導できたり、《領域完全把握+5》などの索敵スキルを使わなくても刻印された相手がどの方角に何キロ離れているかなどが克明に理解できるようになる。それもどれだけ離れていてもだ。

 ただこれが魔法抵抗力が自分よりも高い相手だと刻印できなかったり、効果時間が短かくなったりする場合があるので要注意。レアリティは20。


 《千里竜眼》は目に込めた竜力の量に比例して、遠くのものが見えるようになる。

 これは遮蔽物も任意ですり抜けられるので、《領域完全把握+5》圏外にいる相手も探すことが出来るだろう。



「なんというか。狙撃手になれそうなスキル構成だな」

「ちょっとカルディナちゃんに似てるかもね」

「ピィュー」



 さすがにカルディナほどの戦闘能力はないが、それでも成長すれば敵を近付けさせずに遠距離から一方的に攻撃する事も容易になるだろう。



「そういえば疑問なんですけれど、人化はスキルではありませんの?」

「え? ああ、スキルが必要な竜といらない竜がいるんだ」



 奈々の疑問に、そう答えたのはイシュタルだ。

 曰く、元より素養のある竜はスキルが無くても人化でき、それは瞬きをするように当たり前に体の機能として備わっているものなので、スキルとして認定されない。

 逆にそうでない竜だけれど人化が絶対にできないわけではない種だと、スキルとして覚える事で人化が出来るようになるんだとか。

 ちなみにスキルで行った場合は、今のミネルヴァのように中途半端な人化になったりもしないらしい。

 その反面、部分的に竜化する事も出来ないのでスキルの場合は、戦闘能力が下がるケースが多い。



「確かに言われてみればイシュタルのスキルにはそんなの無いしな」

「そういうことだな。真竜はある程度成長すれば、簡単にできるようになる種なんだよ。

 それで納得して貰えたか? ナナ」

「もちろんですの。ありがとうですの~」



 そうして奈々の疑問も解けた所で、竜郎は再び竜王種が生み出せそうな素材構成を考え始めた。



「なあ、イシュタル。逆に何故あの素材構成で竜王種が生み出せたと思う?」

「ん? そうだな……。おそらくだが、一番重要になっているキー素材はニーリナの心臓だろう。

 それを外した場合、どんな素材を使おうとも竜王種は生み出せない──と思っている」

「そうね。ニーリナさんは、エーゲリアやイシュタルに匹敵するほどに、イフィゲニア様と深く関わりのある竜だったんですもの。

 イフィゲニア様だけが好きに生み出せる竜王種という種を生み出すきっかけになったと見て、まず間違いないでしょう」

「ってことは他の竜王種を生み出すにしても、ニーリナさんの心臓は必須ってわけだね。

 となるとこっちで考えなきゃいけないのは他の素材かぁ。何がいいんだろ」

「それなら今度は何故、毒竜の素材で生み出せたのか。そこを考えてみたらどうでしょうか?」



 リアのその言葉に竜郎は首をひねる。そうなのだ。ニーリナの心臓だけで生み出せるのなら、ミネルヴァの時に生まれていてもおかしくはなかった。

 と言う事は少なからず毒竜の素材の方にも、何かしら竜王種を引き寄せる要素があったと考えるのが自然だろう。



「そうは言ってもなぁ。属性は関係なさそうだし、素材的価値が高いってくらいで他に変わった……ところ…………なんて………………──あ」

「兄さんも気が付きましたか? 毒竜の素材構成で1つ特殊なものが含まれてますよね。私はそれが原因じゃないかと考えています」



 特殊な素材。それは本来なら存在しないはずの物。竜郎も意図せず偶然、手に入れただけの物。すなわち──。



「毒竜の心臓か」

「そっか。それって本当は魔石だったはずなのに、復元したら普通の心臓になってたんだよね」

「ああそうだ。ってことはダンジョンにいる竜に同じことをすれば、竜王種の素材が手に入るか?

 あんまりあれは濫用したい手ではないんだが……」



 ニーナの時は生き死にがかかっていたからこそ、あれだけの苦しみを強いてしまった。

 もちろんダンジョンで無限に生成されるダンジョン竜に情などさほどないが、被験者にはとんでもない苦痛を強いると言う荒業なので、それでも無理にやるのは可哀そうに思えてしまう。

 またそれ以外にも移植作業となると手間と時間と集中力がとんでもなくかかるので、こちらの負担も大きい。

 竜王種が手に入るのならやってみてもいいが、他に方法があるならそちらを試してみたい。



「それに質の問題もあるっすよね? さすがにダンジョンでもモブとして出てくる奴じゃ無理だと思うっす」

「だろうな。せめて蒼太の元になったクラスの竜くらいでないと竜王種には届かないだろう」

「では、おとーさまの復元魔法を闇魔法で歪めてダンジョンボス竜の死骸に使い、魔石ではなく心臓として元に戻るようにする──なんてことは出来ませんの?」



 奈々のその何気ない一言に一瞬固まり、竜郎はその可能性について考えてみる。



「──それならいけるかもしれない! ありがとう、奈々!」

「ふふっ、どういたしましてですの~」



 奈々は竜郎によしよしと頭を撫でられ、にこにこ笑顔でご機嫌な様子だ。

 そして奈々を十分撫で終ると、近くに愛衣の頭がぴょこりと出てきたのでそちらも撫でつつダンジョンボス竜の綺麗に復元してある完全版の死骸を新たに複製して1つ、砂浜の上に取り出した。



「よし。それじゃあ、やってみるか」



 まずはこの死骸の胸の辺りを切り裂き、心臓の代わりとして鎮座している魔石を取り出した。

 そして天照の杖を構えながら《復元魔法》と《闇魔法》を、神竜魔力を練ってそれで発動する。

 しかし──。



「なんか変なのが出来たな」

「これは……お肉がこびりついた魔石って感じかな?」



 なんというのか。愛衣が表現したように、綺麗にカッティングされた宝石のような魔石だったそれに、無理やり接着剤で肉片を張り付けたような不気味なものがそこに出来上がっていた。



「これじゃあダメですね……」

「だよなぁ」



 一応リアの目でも確かめて貰ったが、これは心臓ではなく、ただの劣化した魔石モドキらしい。



「ですが完全に魔石ではなく、お肉が出てきたと言う事は方向性は間違っていない気がしますの」

「ならとーさんの《親子能力共有》で復元魔法と闇魔法を共有化して、あたしたちと一緒にやってみるってのはどうっすかね」

「ああ。俺も今それを考えていた。それじゃあ、皆たのむ」

「ピィュー」「ヒヒーン」「はいですの」「了解っす~」「「────」」



 6人に《闇魔法》、《復元魔法》を共有化していってもらうと、《闇魔法》は問題なかったものの《復元魔法》には竜族創造の時同様に《復元魔法【劣化版】》と表示されてしまった。



「それならこれでどうだろうか」



 だが竜郎は《復元魔法》の取得条件に《時空魔法》が必要だったことを思い出し、そちらも一緒に共有化してみれば《時空魔法【劣化版】》《復元魔法【微劣化版】》と復元魔法の劣化具合が少なくなった。

 なら《時空魔法》に必要な条件、《重力魔法》。《重力魔法》に必要な条件12属性魔法を──と次々共有化していく事で、最終的に《重力魔法【極微劣化版】》《時空魔法【微劣化版】》《復元魔法【極微劣化版】》まで押し上げることに成功した。



「よし。それじゃあ、もう一度やってみよう」



 実質5.8重《復元魔法》に7重《闇魔法 Lv.20》による性質変化を加え、練りに練った大量の神竜魔力でのブーストでさらに成功率を高めていく。



「──ん?」



 竜郎の少しの違和感と共に復元されたそれは、半分以上が肉となった魔石モドキだった。



「これでもダメだったみたいですの……」

「いや、これはいけるかもしれないぞ」

「え? でも出来てないよ、たつろー」



 愛衣の指差すそれは、確かに失敗作だろう。けれど竜郎は先ほどの違和感の正体を掴み、これが決して不可能ではないと確信したのだ。

 それを竜郎は皆にも説明していく。



「最初に俺だけでやった場合と、今とでは最初のスタート地点が違ったんだ」

「スタート地点が違う? ああ、もしかして最初の失敗の分が加算されていたって事ですか?」

「その通りだ。リア」



 もう少し詳しく説明していくと、例えば心臓レベルなんてものがあり、それが10で完全な心臓になるとする。

 最初の失敗した肉片がこびりついたような魔石を1とすると、皆でやった失敗のものは6といった感じだ。

 だが皆でやった時に実際に復元した分は5であって、最初の失敗の時の1が加算されていたのだ。

 つまり、復元魔法を繰り返す度にこの死骸が持つ体の情報自体が変質していき、失敗した分もちゃんと積み重なっていっているのだ。

 なので回数をこなしていけば、1→6→~→10と完全に魔石ではなく心臓を持つ死骸に変質を遂げさせられるはずだと竜郎は言いたいのだ。



「ってことでもう一回たのむ。今の復元魔法の感覚を覚えていれば、次はカルディナ達にもその違いが何となく解るはずだ」



 と言う事でリトライ1回目──心臓レベル7まであがった。先ほどよりも上がり幅が低くなって来たが、それでも同じ魔法だと言うのに肉の部分が更に増えていた。

 リトライ2回目──心臓レベル7.5。リトライ6回目──心臓レベル8。リトライ18回目──心臓レベル9。リトライ72回目──心臓レベル10。



「やっと終わったか……」

「もー! 9から10に上がるまでの幅が小さすぎですのーっ!!」

「みんな、お疲れ様ー」



 愛衣のねぎらいの言葉の中、竜郎や魔力体生物組は全員ぐったりしていた。奈々は元気よく憤慨しているようだが……。


 エネルギー量的には問題なかったが、精神的に最後のコンマ単位でしか上がらない魔の9~10ゾーンが相当に応えたようだ。

 これでもしスキルを共有化するスキルが無ければ、一人で無限にやっていたかもしれない──と竜郎は1人遠い目をした。



「でもこれでダンジョンボス竜の体と魔石、そして心臓が手に入りましたよ。兄さん!」

「ああ。これでようやく実験が再開できる……」



 これで終わりじゃないと自分に言い聞かせながら、竜郎は今作り上げたカルディナ達との努力の結晶──ダンジョンボス竜の本来この世にないはずの心臓をシートの真ん中に置いた。

 そしてそれを囲む様にダンジョンボス竜の魔石や脳、肉などの素材も並べていき、最後のピース──ニーリナの心臓を置いて全て完了だ。



「もうこれで出来なかったら暫く竜王種の件は忘れる事にするよ」

「諦めはしないのか」

「ここまで来たら、ちょいちょい試してみたいからな。どうせなら全種生んでやる!」

「はははっ、まあ、理想は大きい方がいいからな」



 どうもイシュタルは、これでも出来ないだろうと思っているようだ。

 しかし竜の常識をよく知っているイシュタルだからこそ、1種でもありえないと言う事を知っている。

 だから2種目がそうそう生まれるはずも無し。と考えるのは当然のことなのだ。

 この場にエーゲリアがいても似た反応を示していた事だろう。


 けれど竜郎はその反応に対し「見てろよ!」と、逆に対抗心を燃やしながら並べた素材に向かって天照の杖を構えた。


 そしてカルディナたちに目線で合図を送り共有化も発動。皆で神竜魔力を十分すぎるほど練り上げていく。

 思えばこれも早くできるようになって来たなとぼんやりと考えながら、これで準備は整った。

 竜郎は心を静めながら《竜族創造》を発動した。


 ──そうして現れたのは全長50センチ程。山吹色の鱗に覆われ、四足歩行するティラノサウルスといった形態をした幼竜。

 ティラノサウルスと違い、左右のこめかみ辺りから「く」の字に生えたプラチナ色の2本の角。後ろ足よりも大きく太い、トカゲのものと似た形をした前足が特徴的である。


 さらに、この幼竜。良く見ると顎の下には逆Uの字に似た、そこだけ鱗の色が違うマークが記されていた。まるでヴィータの顎の下にあるYの字の様である。

 その事に気が付くと、皆一斉にバッとイシュタルに顔を向けた。すると──。



「そんなアホな……」



 イシュタルは皆の視線が突き刺さるのも無視してフラフラとした足取りで今現在、竜郎の足元に来て尻尾を絡ませ甘えている幼竜に近付いていく。

 ものじしないタイプなのか、なんだろう?と言った感じで近づいてくるイシュタルに関心を示していた。


 そんな幼竜の周りをぐるぐるとまわって、イシュタルは目を皿のようにして観察していき、「えぇ……いやいや、まさかまさか」などと言いながら距離数センチの所でまじまじと顎の下のマークを念入りに調べていく。



「それでイシュタルちゃん。この子はどうなの?」



 焦れた愛衣が急かすように回答を促すと、イシュタルはようやく納得したのか、その答えを口にした。



「ま、まちがいない……。この子はソルエラ種の幼竜だ……」

「よっしゃあっ!」



 竜郎は全身全霊で喜びながら、苦労が報われたと両手でガッツポーズを決めた。

 それに関わったカルディナたちも皆、声を上げて喜びをあらわにする。


 ソルエラ種。それは6種いる竜王種の中で、よくのソルエラ種と呼ばれる大地に愛されし竜種の事である──。

次回、第544話は8月9日(木)更新です。

次話から邪神教編が始動予定です。

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