第530話 創造実験おかわり
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名前:アーサー・ペンドラゴン
クラス:-
レベル:1
竜力:1102
筋力:510
耐久力:510
速力:505
魔法力:510
魔法抵抗力:510
魔法制御力:505
◆取得スキル◆
《見極必流》《竜聖極砲》《竜魔鋼体》
《武技の冴え》《水魔法 Lv.1》
《火魔法 Lv.1》
◆システムスキル◆
《アイテムボックス+4》《マップ機能+4》
残存スキルポイント:3
◆称号◆
《半神格者》
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これがアーサーの初期ステータスらしい。
《竜聖極砲》は竜力のエネルギー弾を打ち出すスキルで、その威力はチャージしただけ伸びていく遠距離まで攻撃できる溜め技。
武器に溜めて直接敵に打ち込む事も出来るが、その場合は余波で自分が吹き飛びかねないので注意が必要。レアリティは20。
《竜魔鋼体》は物理魔法双方の耐久耐性が大幅に上がるスキル。レアリティは18。
《武技の冴え》は武術系スキルを自力で覚えやすくするスキル。レアリティは16。
そしてユニークスキル《見極必流》。
これは目で認識できた攻撃ならどんな攻撃も明後日の方向に流されていく、回避スキルというよりは防御スキルと言った所だろうか。
例えば目の前で剣を振り下ろされたとする。けれどアーサーがその攻撃を見て認識出来れば、それは物理法則を無視して自分から強制的に逸れて当たらない。
これは1度認識出来てしまえば、そこから目を離しても効果は継続される。
なので目の前の剣を認識したら目を離し、横から来る槍の突きを認識し目を逸らし、後ろから飛んでくる弓矢に自分で対処した時。
何もしなくても剣と槍は勝手にそれていき、自分は弓矢だけに集中できる。
ただ目視で一度認識する必要があるので、真後ろからや認識できない程の大量の攻撃だと、このスキルだけでは対処できなくなってくる。
が、1対1で真正面から相対するような状況では無類の力を発揮するだろう。
なにせ物理攻撃だろうが魔法攻撃だろうが、お構いなしに逸れていくのだから。
「ただこれは発動するごとに体力を消耗するらしいので、乱発していると戦闘中にばてる可能性があるようです」
「そうか。でもアーサーの場合、竜だからそうそうばてる事も無いだろう。
説明ありがとう、アーサー」
「はっ!」
「え~と……、もっと気楽にしていいんだぞ?」
そう竜郎が言っても最敬礼のまま、キラキラした目でこちらを見つめてくるアーサー青年。
まあ、それで本人が疲れないなら別にいいかと考えた所で、竜郎は次はどうするか思案する。
竜王種なんていう非常に珍しい竜と、人竜というこれまた珍しい種族の聖竜にして円卓の騎士の中核になれそうなアーサーを迎えることに成功した。
それに恐竜の様なラプトルに似たクリエ種の上位地竜種らしきものや、フェネックにそっくりな亜竜もだ。
これでひとまず竜郎のやりたかった実験は済んだと言ってもいいだろう。
だがしかし、このいい流れのままに創造を行えば、また頼もしい眷属が産みだせるのではないかと、もう一人の自分が囁くのだ。
あと一回、あと一回くらいならいいじゃないか──と。
複製ポイント確認してみる。まだあと一回くらいはいけそうだ。
うん。それじゃあ、もう一回やってみよう!──そう結論付けた竜郎は、今日の最後を飾る創造はどうしようかと考えていく。
(素材もあって、重複もしやすい奴をやってみたいな)
先ほどは天魔族創造の天に焦点を当てたわけだが、今度は魔に当ててみるか──とも思ったが、大天使に匹敵する邪系統の素材が思い浮かばないのでとりあえず却下する。
大天使の死体をアンデッド化する方法もあるが、その手間をかけるのなら別のものにチャレンジしたいからだ。
(それなら《魔生族創造》なんてのはどうだろうか。
魔力体生物だからなのか、カルディナたちは皆これだけは【微劣化】だし、天照と月読に至っては劣化無しで共有できる。
そうすると俺1、天照と月読で2、他4人で2の5重。これは十分やってみる価値がありそうだ)
ならば素材はどうするか。《魔生族創造》の素材は特殊で、属性物質という曖昧なものである。
だが曖昧ゆえに広義的にとらえる事も出来、つまりは何らかの属性の力が宿っていれば、だいたい適応できますよと言う事でもある。
(それでいうと妖精樹の種の失敗作の結晶体が使えそうだな。
あとはルトレーテ様の脂肪──じゃなくて宝珠。そうなると妖精樹の実も使えそうだが……さて)
1人で考えているよりも、色々意見を集めてみようということで他のメンバーにも、どういう組み合わせがいいか意見を募ってみた。
その結果、妖精樹の種の結晶体×5、ルトレーテの宝珠×5で妖精樹の実は先送りとなった。
しかしここまで話し合っていた過程で、竜郎の好奇心がまた疼き始める。
妖精樹関係の素材だけで作ってるんだから、《妖精族創造》も混ぜたら面白いんじゃね? ──と。
ちょうど妖精の素材も極上の物が先日手に入ったので、妖精族創造が足を引っ張る事も無いだろう。
ならばやらない手はない。
竜郎は複製した種の結晶体と宝珠を必要な数だけシートの上に並べると、さらに妖精魔王の素材を妖精脳:妖精心臓:妖精羽=4:4:2の割合で置いていった。
「これこれ、たつろーさんや。話していたのと違うのが置かれてるんだけど?」
「致し方ないこと故、許されよ愛衣殿」
「なんで似非サムライ言葉? んで、それは何の素材──てか、妖精魔王の素材かぁ」
さすがに心臓と脳みそだけでは判断が付かなかったが、羽には見覚えがあったので直ぐに当たりをつけたようだ。
「って事は妖精族創造を混ぜるつもりなんすね」
「ああ。魔生族創造の素材が妖精樹がらみの物ばっかりだろ?
だったら相性もいいかなってな」
そうと決まれば実行あるのみ。
さっそく竜郎は5重《魔生族創造》+2.2重《妖精族創造》で創造スキルを発動した。
アーサー創造の時にかなり消耗していたが、ステータスを見たり調べたりしている間に大分回復できたのでそれほど問題はないだろう。
そう思いながら事に及んだわけだが、事前に練っていた神竜魔力が予想以上にどんどん素材へと吸収されていく。
その量は素材が素材だけに、下手をしたらアーサーの時に匹敵するかもと思えるほどに。
ひーこら言いながら神竜魔力を練り続け、なんとか詰まらせる事なく全ての工程を終えることが出来たようだ。
創造によって生み出された存在が、シートの上に姿を現した………………のだが。
「くぅー…………くぅー…………」
「ね、寝てやがる……」
「お寝坊さんなのかな?」
新たに産まれたそれはドリュアスもしくはドライアド──などと呼ばれる木の妖精に近いかもしれない。
外見の年齢は15、6歳くらいの可愛らしい少女で、身長は155~160センチくらい。
基本的に人型だが足は木の太い根っこが絡み合ったようになっている。
ただドリュアスとは違い、腰まで伸びた長い髪は一本一本が水で出来ているような水色の不思議な質感。
服装は水色を基調にしたフリフリのワンピースに身を包み、頭には花冠を乗せて堂々と仰向けでシートの上に寝そべり爆睡していた。
「おーい。おきろー」
「あと……5分寝たいでふ……むにゃむにゃ」
「今起きろー!」
「はぁ~~~い……んっしょっと」
人で言うと足になっている木の根を広げてしっかりと地面を掴むと、そのまま腹筋するような感じで上半身を持ち上げ立ち上がった。
そしてぱっちりとした大きな虹色の瞳で、背中の妖精の羽をピンと伸ばしながら竜郎たちのほうを真っすぐ見てきた。
「よっろしっくねー! 御主人さま♪」
「あ、ああ……。よろしく」
黙って立っていれば貴族の御令嬢のように見えなくもないのに、本人のノリはやたらと軽かった。
さすが生まれてすぐに爆睡していただけはある。とんでもない外見詐欺師だ。
けれどその身に宿している力はウリエル、アーサーの様な半神格者と変わらない。
おそらくこの子もそうなのであろう。
「え? 《半神格者》の称号があるかってー?
ちょ~っとまってねー…………おっ、あった、あったよー♪」
「そうか。これでワルキューレの方は2人目が来たと──思っていいんだろうか」
「いいんじゃない?」
「わるきゅーれ? なにそれっおもっしろそーう♪」
アテナも結構気さくで軽い感じの話し方をするが、こちらはなんというか言動がギャルっぽい。
騎士という言葉がまるで似あわないが、入るか入らないかは本人の希望次第なので別にいいかと切り替える。
「まあ、いいか。それじゃあ複製ポイントはもう50近くになっちゃったし、今日はこれで終わりって事で名前を付けていこう」
「そういえば、まだ名前なかったねー。あははっ♪」
アーサーはもういいとして、新たに産まれた地竜クリエ種?のラプトル、亜竜のフェネック、ヴィント──竜王種の幼竜、そして目の前の種族不明──あえて言うのなら魔生妖精?の少女の名前を考えていく。
今回も愛衣を中心に名前決めが始まり、すったもんだあった末に──。
ラプトルはマロン(クリエ種……クリ……栗! マロンだね!)。
フェネックはスカイ(薄青色の毛は空の色! スカイだね!)。
竜王種の幼竜はヴィータ(某携帯ゲーム機とは一切関係ないよ!)。
そして少女の名前はフローラ(植物に関係してそうな女神様の名前を貰ったの!)。
──となった。
ちなみにフローラのステータスを見せて貰うと以下のようになっていた。
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名前:フローラ
クラス:-
レベル:2
気力:750
魔力:750
筋力:577
耐久力:578
速力:568
魔法力:599
魔法抵抗力:601
魔法制御力:599
◆取得スキル◆
《全属特大耐性》《魔技の冴え》《睡眠学習》《精霊眼》
《樹魔法 Lv.7》《水魔法 Lv.5》《生魔法 Lv.1》
《土魔法 Lv.1》《風魔法 Lv.1》《解魔法 Lv.1》
《雷魔法 Lv.1》《呪魔法 Lv.1》《氷魔法 Lv.1》
《火魔法 Lv.1》《光魔法 Lv.1》《闇魔法 Lv.1》
◆システムスキル◆
《アイテムボックス+4》《マップ機能+4》
残存スキルポイント:6
◆称号◆
《半神格者》
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「なぜ何もしてないのにレベル2になってんだ……?」
「あははっ♪ たぶん《睡眠学習》の効果だよー。
寝た分だけ経験値が貰えるんだって♪ おとくっしょー。
まーレベルが低かったからあの程度でも上がったってだけでぇ、効果量はそれほどでもないみたいだけどね♪」
「てか、12属性全部覚えてるのも驚きなんだけど」
「多分、ばあ様の全属性の力が籠った種の結晶を使ったから……かもしれないな」
「あ~なーるっす。けど樹属性と水属性が高いのは何でっすかね?
樹属性はまあ、解らなくもないっすけど」
何せ妖精『樹』に関係したもので魔生族を構成したのだから、樹属性に寄るのはアテナも納得はできた。
けれど水属性が何故、他よりも4レベルも高いのかが気になったようだ。
そしてその疑問に答えてくれたのは、何となく察しがついたリアだった。
「ルトレーテ様の宝珠が水属性に寄っていたからだと思います。
おそらく体内?と言っていいかどうか解りませんが、とにかく内部である程度属性毎に分けて保存していたんだと思います」
「それは何のためですの?」
「もちろん、属性に偏りが出た時に平均化させるためにですよ」
「ああ、妖精たちが魔力を上げているそうだが、供給側が調整してくれるわけじゃなさそうだしな。
自分の内部に脂肪みたいに溜めこんで、少ない属性をそこから引き出してバランスを取っているってことなのか」
「水属性の宝珠をくれたのはワザとだったのかな?」
「それは偶然じゃないか? 私には適当に吐き出しているようにしか見えなかったからな」
なるほどランダムで景品が出てくるガチャみたいだ──そんな事を考えながら、竜郎は他のスキルにも注目していく。
《全属特大耐性》は基本の12属性全ての攻撃に対し、かなり高い耐性を持つことになる。
このおかげでフローラは、ノーガードでもそん所そこらの魔法使いでは傷一つ負わせられない。
それは呪魔法などの間接的な害も予防してくれるので、これを生かせば優秀な魔法系防御職になれるはずだ。レアリティは20。
《魔技の冴え》はおわかりだろうがアーサーの《武技の冴え》と対を成すスキル。
つまり魔法系スキルの自力取得に補正がかかり、他者よりも覚えやすくなるということだ。レアリティは16。
けれど基本的に後ろの方に記述されているスキルほど効果が薄くなっていくので、フローラの場合、闇、光、火、氷を1レベル以上あげるのは難しいだろう。
その逆に樹、水、生、土に至ってはかなり恩恵を得られそうだ。
《睡眠学習》はフローラが言っていた通り、寝る子は育つを地で行くスキル。レアリティは16。
「まあ、ようするにフローラは後衛の魔法職って所か。ウリエルと相性がいいかもな」
「かもしれませんね。主様」
「そーなのー? よっし、フローラちゃんも頑張るね! ウリ姉さま♪」
「う、ウリ姉……? えーと、それじゃあアーサーはどうなるのかしら?」
「アー君?」
「アー君……。私も一応、兄弟で例えるのなら兄なのだが……」
「いーじゃん! 大して変わんないっしょ♪」
「そうなのだが……」
「うんうん。眷属同士、みんな仲が良さそうで俺は嬉しいよ」
「え? 私にはフローラちゃんに2人が振り回されているようにしか見えないよ? たつろー」
竜郎は愛衣からそっと視線を逸らしたのであった。
次話から廃鉱の男編始動です。
 




