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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第七編 集団暴走

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第529話 大当たり?

 共有化について新たな事が解ってから直ぐにリアに色々観て貰った結果、どうやら【劣化版】は通常版の20%、【微劣化版】で50%、【極微劣化版】で80%程度の性能に落ちるらしい。

 けれど20%の性能も、6人で協力し合えば120%の性能にまで持ち込める事も解った。



「俺も含めて7重《竜族創造》だ! ってのもやってみたかったが、カルディナ達を合わせても2.2重《竜族創造》がマックスって感じなんだな」

「まー竜ってだけで強いんだし、それでも十分でしょ」



 フェネックは現在レーラの元にあるので、愛衣は子パンダのアンアンを撫でながらそう言った。

 それもそうか。と竜郎はすっぱりと気持ちを切り替えながら、まだ埋まっていなかった最後の素材1枠を決定した。



「7重が出来ないなら質で勝負だ。ニーリナさんの心臓ドン!」

「合わせずに格上でいく事にしたのか」

「ここは攻めの姿勢でいこうと思ってな」



 そういうわけで竜郎はニーリナの心臓を最後にシートの上に乗せ、準備は完了した。



「それじゃあ、カルディナ達も劣化版でいいから加わってくれ」



 先の一件でばらけていた並びを元に戻し、再び竜郎の周囲にカルディナたちを呼び戻す。

 綺麗に陣取ったのを確認した後、共有化によってカルディナ達に《竜族創造》スキルを貸していく。皆で神竜魔力を大量に練って事前準備も怠らない。

 そして事前準備も整った所で、いよいよ本番開始だ。



「ふぅ──!」



 《竜族創造》+《竜族創造【劣化版】》×6の実質2.2重複創造。

 ただでさえ消費エネルギーの大きい竜族創造を重ねるのだから、消費は馬鹿にならず2倍どころか10倍でも効かない程に吸い取られていく。

 それでもここまでレベルが上がって竜郎たち側のエネルギー総量も上がっている。

 そのくらいで枯れはしないと果敢に神竜魔力を押し込んでいく。


 やがて素材たちが液状化して混ざり合っていき、何かになろうとスライムが如く蠢き始める。

 そしてそれは形を定め、竜へと変貌を遂げていった。



「キュ~~」

「えーと……あれれ? 竜の赤ちゃん?」



 大きさは立てば40センチほどと小ぶりで、全身エメラルドグリーンの美しい光沢のある鱗で覆われている。

 背中には体格に見合った小さな両翼。額からはまだ小さいが、ユニコーンの様なプラチナ色の一角。

 顔立ちは非常に幼く、あどけない表情で竜の威厳の欠片も見せない真ん丸お目目が可愛らしい。

 それらを総合して一言で言ってしまえば、まあ竜の赤ちゃんである。



「うん、かわいーんだけどさぁ。これは、たつろー的に成功って事でいいの?」

「いやぁ……そう言われもな。でもこの成りで等級5~6くらいはあるぞ?

 赤ちゃんで成長するっていうんなら、今後どれだけ強くなるか。

 なあ、イシュタル。この竜は知って──イシュタル?」



 竜の種類に詳しいイシュタル博士にご教授を──などと思って竜郎がそちらに振り返れば、口をポカーンと開けたままその赤ちゃんを見入っていた。

 しかしそんな事はお構いなしに、かまってよ~とでも言うように赤ちゃん竜が竜郎の所までパタパタ飛んできて、胸にゴンゴン頭突きをかましてきた。

 もし竜郎がレベル1000オーバーでなかったら、かなり痛かったであろう威力でだ。角が地味に痛い……。



「はいはい。お~よしよし」

「キューー♪」

「あははっ。面白い子だねぇ」



 竜郎がガシッと掴んで無理やり抱っこし頭を撫でてやると、ちょっとくすぐったそうにしながらも嬉しそうにして大人しくなった。

 そんな姿に愛衣と2人でなごんでいると、急にイシュタルが動き出して竜郎に抱っこされている赤ちゃん竜をじっと頭から尻尾の先まで観察する。

 そして最後に顎をくいっと上げて、喉元の鱗を確認した。

 するとそこだけタイルアートのように鱗の色がエメラルドブルーになって、Y字に似た模様になっていた。

 上から見下ろしていただけだったので、竜郎の見えない位置にあったようだ。

 そんな所に模様があるのか。へ~。と言った感じで、イシュタル以外がのほほんとしていると、当の彼女がポツリと呟いた。



「間違いない……この赤ん坊はヴィント種だ」

「──え?」

「「「「「ヴィント種?」」」」」



 その言葉を理解して反応したのはレーラだけ。他の面々はなんじゃそりゃ状態でレーラに視線を送る。

 だがレーラは口元を引き攣らせながら、集中する視線を無視してイシュタルに話しかける。



「えーと……イシュタル? 私の聞き間違いかしら?

 ヴィント種っていったら、6種いる竜王の内1種と同じ種族って事になるのだけれど……」

「ああ、それで間違ってないぞ。しかし、タツロウはこの種も産みだせるのか……」

「なんかそれだと不味いんすか?」

「いや、別に不味いって事もダメってこともないんだがなぁ。

 そもそも竜王と言うのは──」



 そうしてイシュタルが語ってくれたのは、竜王たちについてだった。

 元々竜大陸を統べる際に初代真竜イフィゲニアを中心に国を興したわけだが、広い国土を統治するにあたって自分と側近の眷属たちだけでは手が届き切らないと当時のイフィゲニアは思ったらしい。

 何せその頃は世界も安定せず、ゴロゴロと凶悪な魔物が生まれる大乱の時代。

 討伐や調整作業で世界中あっちへこっちへ行って奔走しているイフィゲニアとその側近眷属だけでは、落ち着いて国を作る事も出来なかった。


 そこでイフィゲニアは、眷属の他に竜王と言う地位を持った特別な竜を6種産みだす事にした。

 種類をバラバラにしたのは、あらゆることに対応できるように。


 そうして生まれてきたのが、現在の竜王たちの祖先となった6種の竜たち。

 それぞれ──聖雷のドルシオン種。邪炎のフォンフラー種。沃地のソルエラ種。狂嵐のヴィント種。蒼海のラマーレ種。森厳のフォルス種。

 これらを総じて竜王種と呼んだ。

 また竜王種は真竜の側近眷属竜に近い能力を秘め、尚且つ成体になれば自動的に神格者となれる。


 余談だが、以前海底都市でイシュタルが思い浮かべた聖竜とは、聖雷のドルシオン種のことである。



「この世界でこの6種が自然的に産まれる事はありえないし、直系以外は微妙に種が変異していくようにもなっている。

 だから本来、竜王種は竜王とその直系以外は存在しないんだ」

「おー、なんだかお前は凄い種みたいだぞ。良かったなー」

「キュッキューー♪」

「はぁ……」



 竜郎の中では竜王種=超激レア種となり、喜びながら抱っこしている幼竜に話しかければ、幼竜もなんだか褒められてるぞとご機嫌だ。

 どれだけ竜の常識でありえない事をなしたのか理解していない竜郎に、イシュタルはため息しか出なかった。

 イシュタルやエーゲリアでさえ、竜王種だけは狙って生み出す事が出来ないと言うのに。



「とりあえず今は赤子だ。言葉をしゃべる事も出来ないが、もう少し大きくなれば話す事も出来るようになりシステムもインストールされるだろう。

 しかしそうなると……グレウスに言うべきか否か…………」

「グレウスってのは?」

「ヴィント種の現竜王の名前だったはずよ。確かあの人、娘の婿を探してなかったかしら?」

「そうなのだ。そして奇しくもこの子は男。そして、これほど格の合う存在も他にいないだろう。

 グレウスや娘のペーメーなんかが知れば、是非将来婿に! と迫って来るぞ。

 タツロウ達には解らないかもしれないが、顔立ちもかなり整っているしな」

「流石我が息子、イケメン竜万歳! だが、うちの子はやらんぞ!」

「キュッキューー!」

「いやもうどっちでもいい……ああ、だが、私の立場からしたら推奨した方がいいのか?

 より強い王が産まれるのは歓迎するところなわけだし……今度母上に相談してみるか」



 まあ冗談はさておき、将来この子がグレウスさん家の婿になってもいいと言うのなら、竜郎も婿に出すのに反対はしない。

 けれど自分で決められるようになる前に、婿だのなんだのと決めさせる気は毛頭ないのだ。

 それがイフィゲニア帝国で、一国を任されるほどの竜王種だとしても。



「うーん、でも将来王族になるかもってゆーなら、威厳のある名前を付けてあげるのがいいかもしれないね」

「威厳ねぇ。見るからにやんちゃ坊主だぞ、こいつ」

「キュ~? キューー!?」



 なんかバカにされてる!? と思ったのか、竜郎の胸にゴンゴンと頭突きをかましてくる。

 それに竜郎は「ほらな」と愛衣に見せると、皆が笑ってしまった。



「まあ、名前は後で全員分じっくり考えていこう。とりあえず今日は、まだやっときたい事もあるし」

「今度は何するの?」

「竜族創造と他の魔物創造系スキルが混ぜられるかどうかを試してみるつもりだ」



 という事でさっそく色々と創造自体は発動させずに、重複発動が出来るかどうか試行錯誤していった結果──。



「竜族創造と魔物創造系スキルは一種のみなら混ぜられるようですね」



 ──という事が判明した。

 例えば《竜族創造》+《鳥族創造》は出来るが、《竜族創造》+《鳥族創造》+《獣族創造》は出来ない。

 上記の例えで言うと、やるなら鳥か獣かのどちらかを選択する必要が出てくるというわけだ。

 ただし天魔族創造だけは天族創造、魔族創造の上位互換と言うだけなので、《竜族創造》+《天魔族創造》+《天族創造》+《魔族創造》なんて事も出来るらしいが。


 だが竜族創造+1種ということさえ守れば、何人でやっても発動は可能。

 なので最初の例で例えるのなら、2.2重《竜族創造》+3重《鳥族創造》であるなら可能というわけだ。

 ちなみに3重《鳥族創造》の内訳は、共有化を使って【劣化版】も合わせ、竜郎とカルディナで2。他5人で1。である。


 これで言うと現在竜郎たちが《竜族創造》において出来る最大の重複を試すとするならば、天魔族創造が挙がってくる。

 《天魔族創造》共有で竜郎が1、ジャンヌと奈々で1.6、残り4人で0.8の3.4重。

 加えてジャンヌと奈々の天族創造と魔族創造を共有化によって、竜郎含め他に又貸ししていけば竜郎が2、ジャンヌと奈々で3、他4人で0.8の5.8重。

 ※ジャンヌの場合、魔族創造は【微劣化版】の50%。奈々の場合、天族創造は【微劣化版】の50%。なので1.5+1.5=3となる。


 これにより、2.2重《竜族創造》+3.4重《天魔族創造》+5.8重《天族創造+魔族創造》の創造が出来ると言うわけだ。



「さらに今回は奈々に竜邪典二節を発動して貰って、《天族創造》に寄せた創造が出来ないかも試してみようと思ってる」



 共有化した時に同様のスキルを持っていたとしても、別のスキルと換算されるので、奈々が聖竜に一時的になって天族創造に変換した上で共有すれば、5.8重《天族創造》となるはず。


 これについても昨晩、天族創造の方の素材は考えていたので、その通りにシートの上に並べていく。

 内訳としては、大天使の心臓:大天使の脳:大天使の骨一体分=4:4:2の割合で置く。


 また竜族創造の方の素材はと言うと、ニーリナの心臓:ボス竜の脳:ボス竜の魔石×2:ボス竜の骨:アンタレスの鱗:アンタレスの牙:アンタレスの爪:ボス竜の目:ボス竜の肉で行く事にした。


 それぞれ定位置にセッティングを終えると、またそれぞれ並んで陣形を整え神竜魔力を練りこんでいく。

 それが終わると奈々は竜邪典二節を使って聖竜化し、魔族創造を天族創造に切り替えてから全員と共有していき──2.2重《竜族創造》+3.4重《天魔族創造》+5.8重《天族創造》の創造を発動させた。


 その瞬間。グン──と、こちらがさっき練りこんでいた神竜魔力の8割程をごっそり持っていかれた。

 余裕を持って練ったと思っていたのだが、どうやらそれでは見込みが甘かったらしい。

 竜郎を中心にして急いで神竜魔力を練っては吸い取られ──を繰り返していき、そんな作業を30分は続けさせられた所で、ようやく形を取り始めた。

 今のところギリギリ詰まりは発生させていないはずなので、ここでも気を抜かずに最後まで神竜魔力の生成をしながらエネルギーを送っていく。


 そして──────。



「マスター。お会いできて光栄です」



 そこに現れたのは見た目はどう見ても竜ではなく人間だった。

 しかし背中からは紅い鱗に水で出来たような皮膜の一対の竜翼が生え、天使の翼がその上下に2対生えていた。

 外見は金髪灼眼で純白の軍服の様な服装に身を包む、ハリウッド映画に出てきそうな20代手前くらいの美青年。

 程よく引き締まった体に意志の強さを宿す燃える様な赤い瞳で見つめてきて、竜郎の前で片膝をついて微笑みかけた。

 なんとも爽やかな好青年である。竜郎がヒロインならプロポーズの現場の様に見えていた事だろう。



「ふむ。竜人ならぬ人竜か。これはこれで珍しいな」

「ん? それって何が違うの?」

「人型の竜を竜人──これは私の眷属のミーティアや母上の眷属のセリュウスが該当するが、知っての通り見た目はれっきとした竜だ。

 そして人化したわけでもないのに人の姿をした竜を人竜と呼び、そこにいる男のように見た目は竜ではなく人種に近い。

 竜人種はそこそこ存在するが、人竜種は竜大陸全体でも1%もいない。さらにそれでいて聖竜となると、もしかすると世界に1人かもしれないな」

「それは確かに珍しいわね。私も長く生きているけれど、人竜種にすら会った事がないわ。後で色々調べさせてもらわないと」



 などと女性陣が話している中、竜郎はこの青年に問いかけた。



「君は何の武器を持って戦うのが得意なんだ? それとも魔法の得意か?」

「マスターが望むのであれば、いかなる武器も使いこなしてみせましょう。

 そして自分は魔法も使えますが、武術の方が得意だと思います」

「そうか。それじゃあ、もう一つ。君のステータスに《半神格者》という称号はあるか? 《神格者》でもいいんだが」

「少しお待ちを………………《半神格者》の称号がありました」

「そうか。よしっ、決めた!」

「えっと……何をでしょうか? マスター」

「君の名前だ。なくては困るだろ?」

「マスターが付けてくださるのですね。光栄です!」

「うん。喜んでくれるのなら俺も嬉しい。

 それじゃあ今日から君は────アーサー・ペンドラゴンだ!」

「はっ! 了解です、マスター!」



 そうしてこの日。竜郎が将来作り上げる2つの騎士団の一つ、円卓の騎士最初の一人にして最強の剣士が──今ここに生まれたのであった。

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