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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第六編 ダンジョンと妖精樹

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第515話 ピポリン放流

 今一理解しきれていないイシュタルや、あの後に生まれたアテナ達にも状況説明していく。

 それで大雑把には理解してくれたようなので、さっそく竜郎はその未来に即した手法でここを処理していく事にする。



「まずピポリンの魔卵をつくろう。ちょうど以前ダンジョンでピポリンの元となる魔石や脳はゲットしていたからな」



 リアの存在を隠すために何気なく入ったレベル7のダンジョンだったが、そこで竜郎はピポリンの原種を数匹狩っていて、その素材もちゃんと《無限アイテムフィールド》に入っている。

 さっそく竜郎はその魔石と脳を取り出し魔卵を作成。



「まずは解毒のスキルを付けられるかどうかだが……おっ《水質浄化》。

 このスキルなら水を綺麗にする過程で毒も無くしてくれるみたいだな。

 んであとは海水から淡水に適応できるように《淡水適応》スキルを付けて──」

「あー。あそこにいたピポリンが淡水に適応できたのって、たつろーに改造されてたからだったんだね」

「ああ。これで博士が実験したピポリン達のどの個体も適応できなかった理由が判明したな。

 スキルで生まれる前に、淡水に適応できるように弄らなきゃいけなかったんだ」



 当時解らなかった事が解明されていく中で、竜郎はもう一つ《脱皮若返》というスキルを見つけて付与してみた。

 魔物は長生きと言っても、さすがに老いるし31万年は持つかどうか解らないからだ。



「もし本当に俺が放流したピポリンだったとしたら、約31万年も生きていて貰わなきゃいけないしな」

「脱皮すると若返るなんて面白いスキルだね」



 後はこれからピポリンを放流しようとしている場所まで何かが来れるとは思えないが、念のため耐久アップスキル《鱗生成》を付けておいた。

 そのほかにも出来るだけ安全に延命して、水質を浄化し続けられるように《水食》という水や、その中に含まれる微生物などを食料として、それだけで生き続けられるようにもしておいた。


 残りのスキル付与の為に余った領域にも、似たような生き残るために必要なスキルを付けていった。



「あとは体自体も頑丈になる様に改造していって~。できるだけコンパクトに~」



 原種のピポリンの大きさは約3メートル程もあるので、出来るだけ小さくなる様に改造していく。

 そうして40センチ程まで小さくしたところで、改めてシミュレーターを覗いてみると、リアと初めて会ったあの森で捕獲したピポリンそっくりになっていた。



「これで下準備は完了って所だね」

「ああ、後はこの似非ダンジョンを水の中に沈めるだけだ」

「でもただ攻撃しただけじゃ無理じゃないですか?

 空間自体が捻じ曲がっているみたいですし」

「そこは時空魔法で何とか出来るんじゃないかと思ってる」



 竜郎は捻じ曲がった空間を現実の空間に固定して、今見えている似非ダンジョンの入り口である穴のある川底を下げれば、それに引っ張られる形で似非ダンジョン空間も下に落ちていくのではないかと考えていた。


 実際に時空魔法で固定してみてリアにも観て貰い、確信が持てた所でその方法について話し合う事にする。

 そこで最初に口を開いたのはイシュタルだった。



「手っ取り早く攻撃して沈めてしまえばいいんじゃないか?

 全員でやれば下手に土魔法で穴を作るより深くできるだろ」

「お父様は時空魔法の維持もしながらですし、確かにそれがいいかもしれませんの。

 どうせ人は誰もいないし住んでもいないのですから、多少地形が変わっても誰も気にしないですの」



 奈々の言う通りここには人は誰も存在せず、いるのは魔物だけなので周辺被害は度外視してもいい。

 土魔法で地道にコツコツ穴の位置を下げていくにも限度はあるだろうし、それならば、このメンバーで思い切りバーンと攻撃して沈めてしまった方が深く、そして早く事を終えられるだろう。


 というわけで竜郎は愛衣に抱きついてもらい、さっそく時空魔法で似非ダンジョンの空間と川底の空間を完全にリンクさせて固定する。


 似非ダンジョンの内部全てを固定しなければいけないので、思っていた以上に竜郎の負荷は高く、やはり土魔法でやるのは現実的ではなかったなと改めて思い知らされる。



「よし、固定は出来た。後は上から押し込めばいいだけだな」



 空に上がって似非ダンジョンの穴の真上までくると、全員で時間をたっぷり使って攻撃の溜めにはいる。

 竜郎は空間の固定作業があるので愛衣に竜力と魔力を渡して、竜気魔混合で竜郎の分も威力を稼いでもらう。


 敵もいないので余裕を持って溜めこんだ攻撃スキルを、穴の一点に向けて正確に照準を合わせていく。

 タイミングを合わせるための掛け声は愛衣に任せ、竜郎は固定した空間が攻撃の衝撃で解けない様に集中する。



「それじゃーいっくよー! ──せぇーのっ!!」



 愛衣の拳から竜郎の竜力と魔力を混ぜた強力無比なエネルギー砲が放たれる。

 それと同時に竜郎以外の面々の攻撃も放たれて、似非ダンジョンの穴に直撃。

 轟音響かせながら川底に穴を穿ち、似非ダンジョンの空間の入口となっている穴を地中深くへと押し込んでいく。


 ゴリゴリと大地を掘削していき、似非ダンジョンは竜郎の思い描いた通りに円柱状の穴の底にくっ付いたまま遥か下へと移動していっ──たのだが、そこで少々考えが足らなかった事に気が付いた。


 時空魔法で固定するのは良いのだが、固定し続けるには竜郎が常に魔法を維持しながら繋がっていないといけない。

 イメージ的には見えない糸が繋がっている様な状態と考えて貰っていいだろう。


 だがその糸の長さには限度というものがある。

 竜郎との繋がりの糸が細くなっていき、次第に解れて時空魔法が不安定になり始めてしまう。



「──まずっ」

「えっ?」



 竜郎がその事に思い至った時にはもう遅い。

 あまりにも掘削までの時間が早すぎて、前兆を感じる間も無かったのだ。

 そして普段は魔法との繋がりなど特に意識しなくても出来てしまっていた事も、竜郎の感覚を鈍くしていたのだろう。


 このままでは膨大な時空魔法の魔力がどのように作用してしまうか予測できない。

 下手をすれば妙な所に似非ダンジョンの入り口を飛ばしてしまう事すらあり得る。

 ならばもうわずかでも繋がりが残っている間に、その魔力を処理してしまう他ない。



「──間に合えっ!」



 竜郎は似非ダンジョンの穴を今もなお掘削中の穴の側面に無理やり張り付けて、固定するのに時空間魔法の魔力を消費。

 それでも余った分は転移魔法に使わせてもらう。


 転移するモノは今、穴を掘っている攻撃だ。

 これだけ強力なエネルギーを転移となると、それだけでかなり消費してしまうので距離はそこまで遠くには出来ない。

 出来れば近場で竜郎がイメージしやすい所が望ましいだろう。

 だが下手な方向に転移させては、こちらに被害が及ぶ。

 

 となればもう選択肢はほとんど無かった。

 竜郎は穴の100メートルほど下あたりに転移先を設定し、川下のほうに向かって全員の攻撃を拡散するように転移させた。


 ──ドバーンっと穴の開いていた川下の方角の大地が吹き飛んでいく。

 それに驚いて竜郎以外の面々も異常に気が付き攻撃を止めた。


 けれど似非ダンジョンのあった場所には、およそ200メートルほどの落差の崖が出来あがっていた。

 ──いや。川上から水が零れていき、その崖は滝へと変わって深い深い穴の中へと水が吸い込まれていく。


 図として頭の中にイメージするのなら、円柱状に掘っていた穴の片側半分、上部200メートルほどから向こう側を扇形に吹き飛ばしてしまった──といった感じだろうか。



「あ~皆、驚かせてすまん。ちょっと予想外のことがあってな──」

「びっくりしたよ、も~。いきなり、どっかーんって地面が吹き飛んで崖になっちゃったんだもん」

「崖というか、滝になってますけどね……」



 とりあえず皆で滝壺という名の穴の側までやってきて竜郎から事情を聞き、一様に納得はしてくれた。


 レーラもまた天才ゆえに魔法が距離のせいで維持できなくなったという事象を起こしたことが無かったため、失念していたようだ。



「にしても……滝を作ったのも俺達だったのか。

 てっきり穴を作ったら水の流れる方向の片側だけが水流で削れていって、何万年もかけて滝になると思ってたんだが」

「んん? まあ、良く解んないけど人も住んで無い場所が抉れただけだし問題ないでしょ。

 はやくピポリンを放流しよーよ」

「それもそうだな。と言っても穴の中に水がまだ溜まってないし、このままだと放流できないな。

 水魔法で埋めとくか。カルディナ、一緒に頼む」

「ピィューー」



 竜郎とカルディナ二人がかりで穴の底に向かって放水していき、水で埋め立てていく。

 無理のない範囲でとはいえ二人でやっているというのに、その作業は数時間に及び、夜になり日が昇り、夕日が差し込む頃になってようやく終わった。


 けれど竜郎もカルディナも寝る必要は特にないのが幸いし、休むことは無かったが愛衣や魔力体生物組と戯れたりして遊びながらやっていたので、割とのんびりと寛げる時間だった。

 その間に毒竜の様子を見てみたが、まだお休み中の様で無理に起こすこともないと、そっとしておくことにする。



「後は……木や植物でも植えていくか」

「すんごい殺風景にしちゃったもんね」



 滝上から向こう側は毒に侵されてはいるが、木々はちゃんと生えている森となっている。

 けれど竜郎たちが吹き飛ばした崖の下から向こう側は、ごっそりと剥き出しの地面が広がっていた。



「ついでに毒も浄化していってもいいかもしれませんの」

「そのほうが早く元通りの森になっていくでしょうしね」



 という事で奈々はカルディナと共に滝上の森の浄化。

 竜郎はジャンヌと共に草木の栽植作業に向かった。



「ちょっと地形も見栄え良くしておくか」

「なんか違和感しかないもんね」



 竜郎は不自然な形になってしまった地形を自然な感じに凸凹させたり、川の水が通る道も無いような状態なので、消し飛ばされなかった川まで上手く繋いでおいたりと自然な感じの地形に戻す。

 そのついでに川下の水も綺麗に浄化しておいた。


 それから草木は少し前に採取していた、毒の土壌に生えていた木々を復元して生やして、その種などから一気に広げていく。

 これで緑生い茂る森の出来上がりだ。時間にして一時間もかかっていない。


 奈々たちの方も終わったようで、滝の上からゆっくりと飛んで降りてくるのが見えた。

 そこで合流したら、最後に作った時から《強化改造牧場》でレベリングさせていたピポリンを呼び出して滝壺のある川に浮かべた。



「産みだしておいて放置ってのも可哀そうな気もするが、あの滝壺の中で毒の浄化を頼む」

「────」



 鱗の生えたフグのような見た目のピポリンは、コクリと頷き滝壺の中へと潜っていった。

 いつか契約は切れてしまうだろうが、性格は穏やかになるように改造しているので、のんびりと暮らしてくれるだろう。



「これで数十万年後には博士に脱皮してるところ見られて、その数十年後に私たちがここに捕まえに来るんだよね」

「ああ。そう考えると不思議な感じがするな」



 過去と未来を行き来することで思わぬところで繋がっていくのだなと、少し感慨にふけった所で、竜郎たちは元の時代へと戻っていくのであった。

また修正報告です。

前話で倒した吸血鬼のスキルに、真祖と言っているのに眷属化させるようなスキルは無いのか?

という御指摘を受け、自分でも違和感を感じたのでスキル構成の中に《吸血眷属化【真祖】》を追加しておきました。

またそのスキルが表示されているすぐ下の文で、なぜ竜郎が脇腹を刺された時に血を吸われたのに眷属化されなかったのか──について少し加筆しました。

特にこの先の展開に響くわけではないので読み返す程ではないですが、気になる方は読んでみてください。

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