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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第六編 ダンジョンと妖精樹

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第514話 未来と繋がる今

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 レベル:1691


 スキル:《吸血【真祖】》《血液操作【真祖】》

     《吸血眷属化【真祖】》《月光興起》

     《日光克服》《増血無限強化》《血使超治癒》

     《部分獣化》《呪傷 Lv.20》

     《超増血 Lv.20》《完全目視 Lv.14》

     《五感強化 Lv.16》《体術 Lv.8》

     《かみつく Lv.20》《ひっかく Lv.20》

     《飛翔 Lv.6》《血弾 Lv.7》

     《魔王の覇気 Lv.20》

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(真祖って魔物だとこんなのなのか。もっとカッコいいイメージがあったんだが……。

 ただまあ、何にしても《吸血》《超増血》で血を稼いで、自己強化と治癒能力を高めていくって感じのスタイルなのか。

 確かにこれなら増血スキルさえ無くして、あとは吸血されないように立ち回れば、かなりの戦力ダウンに繋がるだろうな。

 それと……《吸血眷属化【真祖】》ってのは大丈夫なんだろうか。

 俺は思い切り吸われてしまったが……解魔法で調べても異常はないし大丈夫みたいだな)



 そんな事を考えながらも、竜郎は下から上に向かって狂った様に猛攻撃してくる吸血鬼の攻撃に細心の注意を払いながら《超増血》のレベルを0まで落とした。


 ちなみに竜郎の疑問である《吸血眷属化【真祖】》による眷属化。

 これは血液ごしではなく直接牙を刺して吸血する必要があるので、最初に竜郎がされた吸血では不可能。なので眷属化のスキルは発動すらされなかった。

 ただ竜郎や愛衣ならば、称号効果で時間と共に戻ってしまうので大して意味は無かったりもする。



(あと一個くらいなら俺達の魔法も持ちそうだな。となると──)



 この後に楽になりそうなものはどれかと一瞬で頭の中で考えて、残り時間と効果を考慮した結果、《完全目視》を0にしてから黒球を飲み込んだ。



「──ジャンヌ、天照! もういいぞ!」

「ヒヒーーン」「────!」



 協力してくれていた二人に指示を出し、指示をされていない者達も吸血鬼叩きで癒えない傷をいくつも負いながらも魔法が止まるという事で身構える。



「──ヒヒッ」



 面倒な聖炎が消え去ったとニヤリと笑い、血の鎧を張り直し、翼を生やして上空の竜郎達の方へと飛び込んでくる。

 だが最初の脚力によるジャンプと、翼や鉤爪から伸びてくる無数の血棘さえ気を付ければ、飛翔のレベルが低い事もあって対処はしやすい。

 さらに──。



「《増血無限強化》というのは強力なスキルですが、その反面、血が少なくなるほどに弱体化していきます!

 素の血の増産量を上回るだけの血液を使わせれば、勝つのはそう難しくないはずです!」



 そう言ってリアの虎型の機体の口から筒状の砲身が伸びてきて、さらに背中からも5門の砲台が。

 そしてそれらが力を溜めこんでいき、口と背中の砲台計6門から竜力収束砲が放たれる。



「──ヒッ!?」



 優先的に竜郎を狙っていたのと、リアへの警戒が一番低かった事も有り、その6筋の収束砲をさらに収束した強力な6重竜力収束砲をもろに受けて、全身の血鎧が吹き飛んでいく。



「俺ばかりに気を取られてるからだよっ」

「──ギビィッ!?」



 さらに驚いている隙をついて、竜郎も含めた全員の攻撃が吸血鬼に襲い掛かる。

 しかし血の鎧をまた一瞬で着こんで、またそれを散らす事で肉体へのダメージはほとんど0にして見せた。


 だがそこで吸血鬼は違和感を感じるようになる。

 何故か時間と共に強化されていた体が怠く重く感じるのだ。

 そしてどんどんと量産されるはずの体内の血液の量が、明らかに減っている。

 おかしい──。それほど良くない頭でそう思うものの、竜郎達の攻撃は待ってくれない。

 血の鎧は攻撃を受ける度に吹き飛ばされて、血の残量がゴリゴリと削られていく。


 そうなってくると種族的にもスキル的にも吸血鬼にとって最悪の状態──貧血になってしまう。

 体は鉛のように重く、生まれ出でた頃の半分以下の力しか出せなくなっていた。

 これ以上血の量を減らすわけにはいかないので、血液操作による血の鎧も翼も血棘も、もう使えない。


 これは吸血による摂取が急務だと本能が訴えかけてくるままに、竜郎めがけてジャンプして右手で殴り飛ばすように構えると、右手が黒い狼となって竜郎に噛みつこうとしてきた。



「舐めるなっ!」

「──ヒィッ!?」



 竜郎は血がなくなった場合、誰に向かってくるかは予想していた。

 なので、いつでも放てるようにしておいた極光の光を目に直接浴びせかける。


 《完全目視》は暗闇でも光の中でも濃霧の中でも深海でも、どこでも完璧に見渡す事が出来る様になるスキルだった。

 なので閃光による目くらましなど警戒に値しないと光の予兆を察知したのに、目をつむる事すらしなかった。


 けれど、そのスキルは竜郎の《レベルイーター》によって無効化されている。

 《五感強化》でさらに強化された視力で諸に眼球に強烈な光を浴びせられ、目が潰される。

 血が十分にあれば血を消費して目を治すのだが、今は貧血状態なので自動回復しない様にしていたのもアダとなり、その視界を奪われた一瞬の隙で後ろからカルディナの《天翔竜神刃》が腰から上下に吸血鬼の体を切り裂いた。


 2分割された体が床に落ちていく。

 だが両手両足を黒い大コウモリにして、上半身と下半身を掴み逃がそうとする。



「逃がさないわ!」「逃がさん!」



 しかし既に下で待ち構えていたレーラとイシュタルの、氷のハンマーと銀砂のハンマーに別々の方角に向かって殴られ、左右の壁にほぼ同時に強く打ち付けられた。



「これで終わりですの!」



 《滅竜神の放恣》で奈々は暗黒空間を広げ、一瞬で限界ギリギリまで味方を強化、吸血鬼を弱体化。

 吸血鬼は貧血で壁に強く打ち付けた時に更に血を少し消費してしまって、大きく弱体化していた所だったので、奈々の弱体化もかなり強めに入ってくれた。


 さあ後はもう竜郎たちは2組に分かれて、上半身と下半身を数の暴力でごり押ししてすり潰すのみだ。


 弱体化に弱体化を重ねてさらに二分割した状態でも、レベル差のせいで1対1では厳しいが、この人数ならば押し通せる。


 《部分獣化》して両手と両足を黒狼にして本体を守りつつ、こちらに抵抗してくる吸血鬼。

 けれど圧倒的に手数が足りず、竜郎たちに軽傷を負わせることが出来ても、その程度の吸血では足りない程にボコボコに攻撃を撃ちこまれてドンドン血が消費されていく。


 ──そして、次第に黒狼たちの動きも鈍くなり叩き潰される。


 両手を失った上半身と、両足を失った下半身はなすすべなく攻撃を受けて、回復する血も無く、中途半端に再生して止まってしまった人体模型のような皮の無い筋肉剥き出しの無残な姿で枯れ果てようとしていた。


 竜郎はちゃっかりとその間に《レベルイーター》で全てのスキルレベルも頂いておいたので、もうこの吸血鬼に用はない。


 いっせーのっせ! という掛け声とともに、後に復元しやすいようにと綺麗に細かく体を分断して、完全に吸血鬼の息の根を止めた。



《『レベル:rkひsrhぴおあえとkhprtjひr──────》



 前の時と同様に、似非ダンジョンと言う特殊空間に強力な竜が繋がれたまま毒を生み出し続けていた──という特殊な環境が、世界力をこの地に集積させてしまっていた。

 その為、ダンジョンの個の魂の残滓も消費されずに残っていたようだ。

 レベルの表示がまたおかしくなっていた。



「やっぱりこうなるか……」

「うーん……でもこれって嫌なダンジョンの魂の残滓って奴を取りこんじゃった事になるんだよね?

 そんなのを私たちのダンジョンに入れて大丈夫なのかな」



 それはここにいる誰しも思っていた事であり、例え自分たちのダンジョンレベルが上げられるのだとしても、それで妙な変化が有ったらたまったものではない。

 だがそんな不安を、迷宮神が聞いていたのか直ぐに否定してくれた。



『魂の残滓と言っても、その元となった個の情報は完全に消し去ってあるから大丈夫よ。

 なにせ水神の監視付きだったから、いつもよりも念入りに個を破棄したから、あるのはもう入れ物だけで中身は無い状態と同じと思ってくれていいわ』

「そういうことなら少なくとも私達のダンジョンに混ぜても、変な事にはならなさそうですね」

『ええ、だから安心して使ってちょうだい……といっても、タツロウは少し気になる様ね』

「ええ、まあ……」



 害がないのは理解できたが、竜郎からしたら某黒い虫が皿の上で死んでいたけれど洗ったから大丈夫だと、その上に料理を乗せて出されても気分良くは食べられない──そんな気分だった。


 これから毒竜を連れていくのなら、ダンジョンを少なからず目にする機会もあるだろう。

 だからここのダンジョンの個に少しでも関わっていたモノを入れたくないとも思ってしまう。



『そうね。だいたい言いたい事も解るわ。

 なら私が全く別の新しいダンジョンの欠片と、今あなた達のシステムに入っている元ダンジョンの魂の残滓を入れ替えてあげましょうか?』

「それはありがたいですけど、そんな必要のない事で僕らに干渉してしまってもいいんですか?」

『まあ世界からしたら同じ窯で焼かれた同じパンを一つ交換する程度の違いでしかないし、何が変わるというわけでもないから大丈夫よ。ほんとは良くないから頻繁には出来ないんだけれど……。

 それに面白いものも見せて貰ったし、そのお礼だと思ってくれていいわ。

 他の神も何人か喜んでたしね』

「他の神がですか?」

『ええ、まず水神はざまあみろってはしゃいでたし、命神や全竜神、怪神なんかも思いもよらない方法でその命を救った事に感心していたわよ』



 水神は過去の遺恨故それはそれは喜んでいたらしく、竜郎に新しいスキルを取れるようにコッソリしておいてくれたらしい。

 また他の迷宮神が挙げた命神達も、ただ殺すという選択を取らずに助けるという方法を選択し、その上で毒竜の命を救ってみせたことで竜郎たちへの印象が元から悪くはなかったが、より好意的なものになったようだ。


 そんなこともあって、ちょっと竜郎たちのシステムに入ったダンジョンの魂の残滓と、新品で同量のダンジョンの欠片とを入れ替えるくらいならやってもいいと判断してくれたらしい。


 それならと竜郎達はシステム内に入っているものを新品に入れ替えて貰った。

 現状、レベルが上がらない状態であるのは変わらないが、どこかすっきりした気分だった。



「こんな所にいてもしょうがない。外に出てから傷の手当をしていこう」



 ろくな思い出もない上に未だに毒が残っているこの場に残り続ける理由も無いと、リアは機体のみだが、他の面々は大なり小なり体中のあちこちに呪傷を負ったままなので、竜郎達はさっさと吸血鬼の死体を回収して来た道を戻って穴から飛び出し川から上がった。



「まだヘドロ化はしてないみたいだね」

「吸血鬼戦は結構短期決戦的なものだったっすからね~」

「やはり明確な弱点があってくれると、格上でも戦いやすいですよね」

「私も最初はどうなる事かと思ったが、弱点を突くように立ち回ればそう難しい相手ではなかったからな」



 などと話しながら、呪いを解いて全員の傷を癒していった。

 そうして余裕が出来たところで竜郎は改めて、似非ダンジョンへの穴が空いている場所を見た。



「うーん、にしても毒はまだ少しずつだが出続けているんだよな。

 流石にもうヘドロ化はしないだろうが、生態系には悪影響を与えそうだ」

「それに見て解らないくらいだと逆に誰かが飲んじゃうかもしんないよ。

 穴も3メートルくらいあるから気付かずに落ちたら危ないし」

「ならもう似非ダンジョンごと誰も来れないくらい水中深くまで沈めるか。

 ただの穴だと降りてこられる人もいるだろうし。

 んで深海系の魔物に解毒スキルを付けて、置いていけば水も浄化されて…………あれ?

 なんかそんな所見たことある様な………………あっ」

「どったの、たつろー?」

「いや、ちょっとまってくれ」



 竜郎は改めて《完全探索マップ機能》を起動し、今いる場所をよくよく確かめる。



「やっぱり……アレはそう言う事だったのか」

「むー。解る様に説明してよー」



 頬を膨らめて竜郎の手をぶんぶんと振り回す愛衣を鎮めるために、一旦頬にキスして萎ませる。



「いや、愛衣。どうやら俺達は前にもここに来たことがあるらしい。

 まあ正確には今の時代よりも、ずっと未来の話になるんだが」

「え? こんな所来たことあったかなあ?」



 愛衣は周囲を見渡して、紫色の木々を見つめて首をひねった。

 だがその辺りで竜郎の先の話を聞いていたリアは察しがついて自分でもマップを開いて確認し、レーラもマップを見て現在地を確認し、将来的にここに何があったかを思い浮かべて理解した。


 そんな様子に竜郎は愛衣に微笑みかけながら頭を撫でて、彼女のためにヒントを出していく。



「ヒント1。滝」

「たき? 滝なんてどこにもないけど……」

「ヒント2。ピポリン」

「ぴぽりん? あれ……? もしかして──」

「ヒント3。リアと初めて会った場所」

「ああっ! そう言う事だったんだ!」



 ヘルダムド国どころかイルファン大陸にそこまで明るくないイシュタルは未だにモヤモヤしているようだが、そこで愛衣もようやくここがどこなのか思い至った。


 それはお米が欲しいと、とある博士の依頼を受けてナツェート滝へ行きピポリンという深海の魔物を捕えに行った時のこと。

 竜郎は馬鹿みたいに水中深くにいるであろうピポリンの居場所を探るために、水中探査を試みた。

 そしてその時に、ピポリンの直ぐ近くにダンジョンの入り口らしき場所を発見していたのだ。


 ──そう、あの現世でミステリースポット扱いされていた滝壺のある場所こそ、今現在竜郎たちが立っている場所だったのである。

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